- Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041020487
作品紹介・あらすじ
なぜ「あの男」を殺めることになったのか。老齢の水戸光圀は己の生涯を書き綴る。「試練」に耐えた幼少期、血気盛んな”傾寄者”だった青年期を経て、光圀の中に学問や詩歌への情熱の灯がともり――。
感想・レビュー・書評
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“水戸黄門”として知られる水戸光圀の生涯を、『明窓浄机』として光圀自身の言葉で語る章を挟みながらたどる物語。
上巻は父・頼房の与える厳しい試練に耐える少年時代、三男なのに後継とされた事に悩み、若くたぎる血を持て余しつつ、詩歌への情熱を知る青年時代までを描く。
感想は下巻で。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
(上下巻合わせてのレビューです。)
テレビドラマ「水戸黄門」で有名な水戸光圀の伝記小説。
伝記と言っても、史実を元に著者が空想を加えたフィクションです。
著者は、冲方丁で、「天地明察」について、読むのは2冊目になります。
前回の「天地明察」を読んだのがはるか昔(数年前)だったのですが、
あのころの記憶がよみがえってくるような本でした。
「天地明察」の主人公同様、光圀が大きな「志」を抱いていく様に
どんどん引き込まれていきます。」
上巻最初の100ページほどは本当につまらなくて、
「あれ、今回は(本選びに)失敗したのかな?」と思っていたのですが、
いやはや全くの誤解でした。
フィクションと言っても著者はとても
史実の元ネタとなっている原著をよく読みこんでいる様子が分かります。
もともとあるファクトに著者オリジナルの空想を振りかけ、
大作を紡ぎ出しているのでしょう。
著者のボキャブラリーの豊富さに圧倒され、
よく理解できない単語や漢字の読み方、和歌などたくさん出てきますが、
それでも大きな「志」に向かっていく光圀を見ると、
彼の生きざまを最後まで見届けたいという気持ちになってきます。
自分の「志」とは何か?と考えさせられる小説です。 -
水戸光圀の知識は全くなく、「水戸黄門様の話かぁ」程度しか知らなかったが、『天地明察』がとてもよかったので、期待して読み始めた。はじめは、情報量が多い上に、自分自身の知識が乏しいために、なかなか進まなかった。
でも、幼少期の兄とのやりとり、宮本武蔵との出会い、林読耕斎との出会い、様々な人との出会い、やり取りの中で、自分を、自分の運命を見つめ、あるべき姿を考え、運命に抗おうとする姿勢や、詩歌の道を極めようとする姿勢などから、人間味のある言動が多く見られ、親しみも持て、どんどんおもしろくなってきた。
特に、読耕斎とのやりとりは、おもしろい!得難い、そして有難いものは、いつの時代も、切磋琢磨し合える友なのだなぁ。と思った。
歴史は面白い。学ぶところも多い。どこまでが史実なのかは、恥ずかしながら分かっていないが、とにかく早く下巻も読みたい。
水戸光圀の人生に、どっぷりと浸かりたい。 -
国民的時代劇のイメージを根底から覆す「誰も見たことのない“水戸黄門”伝」。
水戸徳川家の三男にして世継ぎという宿命を背負った光圀。
「何故、兄でなく俺なのだ?」
「水に流されたかもしれない」出自への煩悶。
江戸中を傾奇者として闊歩した少年時代。
剣豪・宮本武蔵との出会い。
詩歌で天下を取るのだと情熱を燃やす青年時代。
学を競うかけがえのない仲間とも出会う。
徹底した研鑽と己を鍛え上げていくその生命の奥から湧いてくる、狂うおしいまでの熱と力。
若き英智と、激しいまでの情熱に、読んでいて身が焦がれそうになる。
尊敬する伯父・義直が遺言の様に語り残す。
「史書に記された者たち全て、生きたのだ。わしやお前が、この世に生きているように。彼らの生の事実が、必ずお前に道を示す。天道人倫は、人々の無限の生の連なりなのだから。人が生きる限り、この世は決して無ではなく、史書がある限り、人の生は不滅だ。なぜなら、命に限りはあれど、生きたという事実だけは永劫不滅であるからだ」
熱い熱い求道者に痺れる。
そして、彼が今を生きているかの様に、魂を揺さぶってくる。 -
面白くて、面白くて、仕方ないのだけど……情報量が多いからか、なかなか読み終わらない!
ハードカバーも持っているのだけど、文庫も購入しちゃいました(笑)
光圀と宮本武蔵の出会いが、実は一番好きなシーンかもしれない。
他を圧する怜悧な殺気が、文面からバシバシ伝わってきて、緊張した。
なぜ、自分なのかという問いと、家と政。
その中で光圀が見出す義にも、ゾクッとする。
自分自身の生が、全てのものに対して何を為せるか。そういう考え方は、私には出来ない。
けれど、人と人の関係を正し、個と全の関係を常に想定し、生きていく様というのは、大人だと思うのだ。
いつの間にか、個は個の在るがままを重んじ、自由の代わりに得るべき責任を全うしなくなった。
日本人は最早、勤勉ではないと聞こえる。
何を為すかを失ってしまった人々だからでは、ないだろうか。 -
感想は下巻に。
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これを読んだ多くの人と同様に水戸光圀に対して、某テレビの影響しか持ち合わせていない状態であり、また文量が多く、読書スピードが乗らなかったが、江戸武断政治から文治政治へと変化する時代背景に合わせ、強烈なキャラクターである光圀の内に秘めたる苦悩等を見事なまでに作り上げ、現代人に受け入れられやすい文体で書き上げたことには評価に値する。
自身の出生、父親の存在、兄への尊敬と償いきれぬ思いなどなど、たとえ時代や身分が異なっても、そこには現代人と変わらぬ懊悩が垣間見れるからこそ本書を読んだ人に共感が得られるのではなかろうか。
そしてその中にあって、詩文で天下を獲るという志の高さには、その頂きの高さを知ると愕然としてしまうも自らを奮い立たせ、かつ自らを自らとして成り立たせているものとして確立していく。
その気高さにあやかりたいものである。 -
若き日の光圀は放埓で無軌道な若者かと思えば詩歌にも造型深い文学青年でもあった。諸国を漫遊するのはフィクションだとわかっていても、好々爺のイメージが強すぎる人物のまったく異なる姿が人間臭く描かれていて痛快である。苦悶しながら目指す道を究めんと成長していく様子がなんとも力強い。
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20230105再読
光圀の青春期の慟哭が力強くて熱かった