光圀伝 (上) (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
4.08
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本棚登録 : 695
レビュー : 67
  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041020487

作品紹介・あらすじ

なぜ「あの男」を殺めることになったのか。老齢の水戸光圀は己の生涯を書き綴る。「試練」に耐えた幼少期、血気盛んな”傾寄者”だった青年期を経て、光圀の中に学問や詩歌への情熱の灯がともり――。

感想・レビュー・書評

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  • 水戸光圀の知識は全くなく、「水戸黄門様の話かぁ」程度しか知らなかったが、『天地明察』がとてもよかったので、期待して読み始めた。はじめは、情報量が多い上に、自分自身の知識が乏しいために、なかなか進まなかった。

    でも、幼少期の兄とのやりとり、宮本武蔵との出会い、林読耕斎との出会い、様々な人との出会い、やり取りの中で、自分を、自分の運命を見つめ、あるべき姿を考え、運命に抗おうとする姿勢や、詩歌の道を極めようとする姿勢などから、人間味のある言動が多く見られ、親しみも持て、どんどんおもしろくなってきた。
    特に、読耕斎とのやりとりは、おもしろい!得難い、そして有難いものは、いつの時代も、切磋琢磨し合える友なのだなぁ。と思った。

    歴史は面白い。学ぶところも多い。どこまでが史実なのかは、恥ずかしながら分かっていないが、とにかく早く下巻も読みたい。

    水戸光圀の人生に、どっぷりと浸かりたい。

  • 国民的時代劇のイメージを根底から覆す「誰も見たことのない“水戸黄門”伝」。

    水戸徳川家の三男にして世継ぎという宿命を背負った光圀。
    「何故、兄でなく俺なのだ?」
    「水に流されたかもしれない」出自への煩悶。

    江戸中を傾奇者として闊歩した少年時代。

    剣豪・宮本武蔵との出会い。

    詩歌で天下を取るのだと情熱を燃やす青年時代。
    学を競うかけがえのない仲間とも出会う。

    徹底した研鑽と己を鍛え上げていくその生命の奥から湧いてくる、狂うおしいまでの熱と力。

    若き英智と、激しいまでの情熱に、読んでいて身が焦がれそうになる。

    尊敬する伯父・義直が遺言の様に語り残す。
    「史書に記された者たち全て、生きたのだ。わしやお前が、この世に生きているように。彼らの生の事実が、必ずお前に道を示す。天道人倫は、人々の無限の生の連なりなのだから。人が生きる限り、この世は決して無ではなく、史書がある限り、人の生は不滅だ。なぜなら、命に限りはあれど、生きたという事実だけは永劫不滅であるからだ」

    熱い熱い求道者に痺れる。
    そして、彼が今を生きているかの様に、魂を揺さぶってくる。

  • 面白くて、面白くて、仕方ないのだけど……情報量が多いからか、なかなか読み終わらない!
    ハードカバーも持っているのだけど、文庫も購入しちゃいました(笑)

    光圀と宮本武蔵の出会いが、実は一番好きなシーンかもしれない。
    他を圧する怜悧な殺気が、文面からバシバシ伝わってきて、緊張した。

    なぜ、自分なのかという問いと、家と政。
    その中で光圀が見出す義にも、ゾクッとする。

    自分自身の生が、全てのものに対して何を為せるか。そういう考え方は、私には出来ない。
    けれど、人と人の関係を正し、個と全の関係を常に想定し、生きていく様というのは、大人だと思うのだ。

    いつの間にか、個は個の在るがままを重んじ、自由の代わりに得るべき責任を全うしなくなった。
    日本人は最早、勤勉ではないと聞こえる。
    何を為すかを失ってしまった人々だからでは、ないだろうか。

  • 「天地明察」にも登場していた水戸光圀を題材とした作品。



    本作主人公の光圀は水戸徳川家の三男として生まれたが、長男である兄・頼重を差し置いて何故か世継ぎに選ばれ、そんな自分の生い立ちなどに疑念や不安を抱えながら過ごしていた。

    世子と認められて以降、血気盛んな“傾奇者”として自分の身分を隠して街へ出掛け夜遊びをしていた光圀だったが、遊び仲間達から裏切られ、ある事件を起こしてしまう。再び戦国の世になることを望んでいた光圀は、この時期、宮本武蔵との出会いにより考えを改めることとなる。

    その後も夜毎に出掛けていた馴染みの居酒屋で、儒学者である林読耕斎と出会い文事に励んだのち、京の歌人であり学者の細野為景とも交流を持つ。

    弟である自分が世継ぎに選ばれたことで、兄に対してずっと申し訳なさを感じながら過ごしてきた光圀は、自分の信じる「大義」を通すためある計画を企てるが、いざ実行していこうとした途中で縁談が決まり、泰姫を娶ることになる。



    光圀の豪胆な性格とは裏腹に、世子としての運命に幼少期から不満を感じているという複雑な心情が、彼の人間味を増しており、つい読んでいるうちに感情移入してしまった。
    以前読んだ「天地明察」に出ていた保科正之も登場しており、私個人としては嬉しく思った。

  • これを読んだ多くの人と同様に水戸光圀に対して、某テレビの影響しか持ち合わせていない状態であり、また文量が多く、読書スピードが乗らなかったが、江戸武断政治から文治政治へと変化する時代背景に合わせ、強烈なキャラクターである光圀の内に秘めたる苦悩等を見事なまでに作り上げ、現代人に受け入れられやすい文体で書き上げたことには評価に値する。
    自身の出生、父親の存在、兄への尊敬と償いきれぬ思いなどなど、たとえ時代や身分が異なっても、そこには現代人と変わらぬ懊悩が垣間見れるからこそ本書を読んだ人に共感が得られるのではなかろうか。
    そしてその中にあって、詩文で天下を獲るという志の高さには、その頂きの高さを知ると愕然としてしまうも自らを奮い立たせ、かつ自らを自らとして成り立たせているものとして確立していく。
    その気高さにあやかりたいものである。

  • 冲方さんの本、初読破
    天地明察は、一冊目で止まってます
    ラノベ色の強い作家さんだなぁ、と思う。所々いかにもラノベっぽい言葉使いをしていて、歴史ものの範疇に入れるのかな?と心配になる
    けれど、歴史ものを若い人にも読んでほしい!みたいな気概が感じられるので、好きだなぁ

    これを読んでると、みんなが知ってる水戸黄門さまの意外な一面を沢山しることができてお得
    こんなイケメンいたら惚れそう
    ただ、最後は失速したかな、という印象です
    多分それは冲方さんの筆力だけではなく、水戸黄門さまの生涯が、様々な権利や圧力によって曲げられていった結果なんだと、私は解釈しました
    面白い、けどどっか三百年も続いた江戸幕府の淀んだ部分を感じられる作品

  • 若き日の光圀は放埓で無軌道な若者かと思えば詩歌にも造型深い文学青年でもあった。諸国を漫遊するのはフィクションだとわかっていても、好々爺のイメージが強すぎる人物のまったく異なる姿が人間臭く描かれていて痛快である。苦悶しながら目指す道を究めんと成長していく様子がなんとも力強い。

  •  冲方丁先生の『天地明察』と対をなす、という『光圀伝』。徳川光圀の生涯を描いた本。出来事とそれを光圀が振り返る「明窓浄机」という章立てで交互に現れていくのが面白かった。

     幼少期の父・頼房の過酷な試練と兄・頼重がいるにもかかわらず、世継ぎに選ばれた葛藤・そして、宮本武蔵や学を競う朋友として読耕斎・泰姫との邂逅など。泰姫のやんちゃぶりとそれによって、姫やその側近である左近と仲良くなっていくのは王道ではあるがとっても良かった。
     ただ、春海と絡むシーンが少なかったのが、天地明察ファンとしてはちょっと残念だった。(笑)
     また、光圀の小姓である藤井紋太夫が考えた大政奉還という思想が幕末に現れるというのも面白いある種の皮肉であろう。

     光圀が途中で述べている、私は生涯の生涯はだれかを見送るためにあるというのは、途中までの渋川春海と同じなのではないだろうか。そして、春海と違う所は、光圀が最初に朋友を得て失いながら成長していくのに対して、春海は一人で成長しながら朋友を得ることによってさらなる成長が促されたところではないだろうか。二人の朋友の出会い方が対照的で、対を成す、と唄った一つの原因かと思った。

  • 水戸黄門の新たな一面を知った。
    https://ameblo.jp/sunnyday-tomorrow/entry-12054812123.html

  • 水戸光圀は、大日本史の編纂事業以外、あまり知りませんでした。
    上巻では、光圀の幼少から描かれます。
    父頼房の試練に耐え、なぜ兄を差し置いて世子に選ばれたのか悩み、傾奇者として非行に走り暴れまわります。
    宮本武蔵や渡辺崋山、林羅山らとの交わりが、光圀を成長させていきます。

    「天下が、よもやこんなにも遠いものだとは......。ここまでできた、ここまで書けた、そう思ったときには、詩業の頂はさらに遠く離れたところにある。近づけば近づくほど、頂は高くなるようだ」
    「それはそうだ。峠を登るとき、遠目には低くとも、ふもとに来れば高さがわかる。実際に登り始めれば、頂は見えないほど高くなる。そういうことだ」 ー 357ページ

  • 「おれは、不義の子だ」
    子龍こと徳川光國は、兄の竹丸(松平頼重)を差し置いて世子となったことにずっと深く悩んでいた。血気盛んな光國は、「谷左馬之助などと名乗って市中に繰り出し、傾奇者として巷を騒がせたり、「詩で天下を取る」と詩歌や史書にのめり込んでみたり。そして、「兄の子を、おれが養子として迎え、水戸藩を継がせる」ことによって不義を義に立ち返られる荒業を思いつく。が、様々な困難に直面して…。

    才気溢れる光國の心の葛藤、優しい兄 竹丸との兄弟愛、宮本武蔵や沢庵和尚との邂逅、儒学の泰斗 林羅山の次男 読耕斎との交流など、魅力触れるストーリー満載で、本書は掛け値なしに面白い。下巻が楽しみ。

  • 大人になっても童心を失わない人ほど愛情が深く、愛嬌があり、だから皆から慕われるという。
    光圀は虎の子のようではあったが、まさにそのような人だった。
    光圀は日本一の詩作となろうとしている。そこに、同じく詩作の頂を目指し精進している細川為景、目指すところは違うが光圀に直言してやまない林家の読耕斎らが若い執念を燃やして生きていく。
    後世に伝える人の生き方や物語は、その当時はまぎれもなくそうであり、また、人がうごかされ、現世にあっては、人に生きる意義や目標、人生観を決めう得るべきものである。光圀の目指した史書編纂は、そういう思いで進められた。
    史書、歴史小説はそのとき生きた人の命の記述である。写真やビデオでは、単に表面的な記録でしかない。命の記述とは、内面の、思想の記述であり、他の人にも大いに参考にすることができるものであり、万人に意味のあるものになる。光圀の目指す史書は、歴史の出来事を記載したものではなく、人倫を明示する史書であった。正義や道徳、哲学など、後世に道義を伝えるべきものとして編纂したのである。
    光圀や林羅山は、徳川三代の時代になってようやく、戦国の世から史書編纂、出版を通じて、日本を戦国の世から文事の世へと変革させたのである。
    そして、本署はクライマックスをむかえるのだか、水戸黄門、紋太夫、水戸家の血を引く最後の将軍に歴史的な役目を果たす思想へと繋がっていく。

    光圀は、死者を看とることが多い人生だった。73歳まで生きた。
    家族、兄弟、友人に恵まれた人生だった。
    全2巻

  • 面白い。
    自分も知識を広げたくなる。

    しまった。
    下巻を一緒に買っておくべきだった。

  • 天地明察でどはまりして、その中の強烈キャラの光圀が主人公なんて読むっきゃないでしょ~
    光圀と読耕斉の酒場のところのシーンで反吐まみれになったっていうのが大好き笑
    あと竹丸お兄ちゃんが、子龍に頼られるのが嬉しいっていうところにめちゃんこ泣いてしまった、好きだ!!

    天地明察より歴史要素が強すぎて本読むのに3日くらいかかってしまった。

    出てくる登場人物がみんな好きでみんな愛おしいな!
    光圀のまっすぐなところがかわいい。
    下も読むぞ~!

    2018.09.11

  • 天地明察が面白かったので、こちらも読もう読もうと期待しつつ、上下巻のボリュームから中々読み始めず、ようやく。期待を裏切らぬ展開、特に、水戸黄門のイメージしか持たず若い光圀公を知らない人であれば主役の意外性、心理面まで入り込んで楽しめるはず。林読耕斎が良い味出してます。

  • 皇室と国学から、光圀に興味が移り、本書を手にした。

    登場人物が魅力的だ。武と文のコントラスト、胆力の描き方が何とも言えぬ。当時の京の姿も忍ばれる。

    なにより、泰姫の登場で、上巻はすべてを持って行かれた感がある。

  • 単行本版に同じ

  • いい意味で時代劇「水戸黄門」のイメージを壊してくれる小説。
    父への複雑な感情、優秀な兄へのコンプレックスを抱えながら、宮本武蔵・沢庵・林羅山など道を極めた者たちとの交流を通じてエネルギッシュに成長していく光圀。
    そんな彼の姿が戦国の荒々しさを残しながら泰平の世に突入していく時代の力強さと重なる。
    特に憎まれ口を叩きながらも互いを認め合う林読耕斎との友情関係がなんとも気持ちがいい。

  • 『天地明察』の冲方丁が描く水戸黄門物語。
    たまには歴史物を読んで、日本を学ぼうかなと思い、読んでみました。『天地明察』が読みやすく面白かったので、同じ作者の本にしましたが、面白く上巻を読み終えました。

    水戸黄門はドラマの影響で、晩年のイメージでした。
    この本の上巻には、幼い頃から28歳の若い頃が描かれています。
    私は、水戸黄門がどんな家系のどんな人かすら、よく知らなかったので、読んでいるうちに家系図を描きたくなりました。徳川家康の孫なんですね。歴史物は登場人物が多く、誰だったっけなーとなりやすいのですが、それでも面白く、ぐいぐい読めます。台詞が今時で読みやすかったり、いろんなエピソードで人物が魅力的に描かれているからです。光圀は、好奇心旺盛の負けず嫌いで正義感が強く、男らしいというか男の子っぽく描かれています。
    下巻も楽しみです。

    ☆あらすじ☆
    「なぜあの男を自らの手で殺めることになったのか」老齢の光圀は、水戸・西山荘の書斎でその経緯と己の生涯を綴り始める。父・頼房の過酷な“試練”と対峙し、優れた兄・頼重を差し置いて世継ぎに選ばれたことに悩む幼少期。血気盛んな“傾奇者”として暴れる中で、宮本武蔵と邂逅する青年期。やがて文事の魅力に取り憑かれた光圀は、学を競う朋友を得て、詩の天下を目指す―。誰も見たことのない“水戸黄門”伝、開幕。

  • この人の描く保科正之公が好きなんだよなあ

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著者プロフィール

冲方丁(うぶかたとう)
1977年、岐阜県生まれ。4歳から9歳までシンガポール、10歳から14歳までネパールで過ごす。早稲田大学第一文学部中退。小説のみならずメディアを限定せず幅広く活動を展開する。
『マルドゥック・スクランブル』で日本SF大賞、『天地明察』で吉川英治文学新人賞、本屋大賞、北東文芸賞を受賞し、第143回直木賞にノミネートされた。『光圀伝』で第3回山田風太郎賞受賞。
代表作となる『天地明察』は2011年にコミック化、そして2012年に岡田准一主演で映画化されヒット作となる。2019年1月、『十二人の死にたい子どもたち』が堤幸彦監督により映画化。

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