或るろくでなしの死 (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 348
感想 : 25
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041021613

作品紹介・あらすじ

浮浪者が見た「或るはぐれ者の死」、故郷喪失者が迎える「或る嫌われ者の死」、ダメな若者が直面する「或るごくつぶしの死」、欲望全開の大人が辿りつく表題作など、意志や希望と関係なく訪れる7つの死!

感想・レビュー・書評

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  • ホラー、グロ、なんでもこい!の物好きな私でも1話ずつしか読めなかった本当に問題作。友達に読んでることを知られたくないし、絶対に身内の誰にも読んで欲しくない作品。けど、嫌いじゃないんだよな〜こんな気分の悪くなる小説生み出してくれてありがとうと言う気持ちになりました。でももう読みたくない笑

  • 短編集。
    『嫌われ者』『ごくつぶし』『愛情』『ろくでなし』『英雄』は面白かったが『はぐれ者』『からっぽ』はあまり好きじゃないかな。とはいえ7本のうち5本も面白かったら大満足ですね。

  • 息子を亡くした母親が狂っていく「ある愛情の死」が怖すぎて傑作。ハムスターを殺す少女と殺し屋が出会う表題作「あるろくでなしの死」も素晴らしい。

  • [或るはぐれ者の死]
     ホームレスのJJが幼女の死体を見つける。幼女は地面に張り付いていて、パッと見は人には見えない。どうにかしてやりたいが、誰も相手にはしてくれない。
     JJは何もしてこなくてホームレスになった。そのJJが道端の幼女に哀れを感じている。周りの仕事をしている人たちは忙しそうで興味がない。この持たざる者の慈悲と、一般人の拒絶を見るべきか。
     それともJJは、ゴミのように捨てられた幼女に自己憐憫にも似た感情が湧いたのかもしれない。
    [或る嫌われ者の死]
     ジェイは結婚記念日に呼び出されて、電車に挟まったイトーを助けようとしている。
     日本人は二千人を切っていて、その理由は生物兵器が国内で暴発したからだ。その影響は隣国にも及んで、日本人は蛇蝎のごとく嫌われている。これ以上、日本人を減らさないように、種の保存が優先されていた。
     イトーの下半身は圧迫されていて、体を引き上げると失血してショック死するのは目に見えていた。イトーは妻と電話をして産まれたばかりの子供の様子を聞いた後に死んだ。
    [或るごくつぶしの死]
     ともくんは小海のことを物同然として見ていた。自分が都合の良いように解釈をして、あたかも普通のことように自分の生活は維持していた。
     ともくんは自分と小海の子であるナムの目を見て現実を理解したのだ。小海もナムも現実で、自分は都合よく逃げていたが、全て自分が起こしたことだった。それに気づいて、ともくんは20歳で心が死んだ。
    [或る愛情の死]
     障害を抱えた長男がいる家庭。母は長男ばかりを面倒見て次男にはあまり構っていない。事故の時に、長男から助けようとしたがやめて、次男に取り掛かったのを妻はずっと気にしていた。そのせいで長男が死んだのだからと。
     どの家庭でも少しはありそうな話だ。平等に見るなんて難しい。
    [或るろくでなしの死]
     殺し屋をしている男はサキに、その姿を見られてしまった。その代償としてハムスターを買ってくれと言う。サキは買ったハムスターで一通り撫でると潰して殺した。サキは涙を浮かべていた。サキの母親は、サキに首を締めさせて苦悶する表情を見て楽しんでいた。サキはしっかりと殺してしまうために動物で練習していたのだ。
     ハードボイルドな作品。母親は死に、サキをおもちゃにしようとしていたカネコも死に、サキはまた男に会いに来るのだろうか。そこまで男は生きていないとデデは言うけど、こう言う作品では再会を期待したい。
    [或る英雄の死]
     ばふんには命を救ってもらったことがある。川で溺れいたところを助けてもらったのだ。その時にばふんは足を怪我してしまって陸上をやめた。年月が経って、誰からもばふんと付き合うのは止めろと言われたが、今でも男の中でばふんは英雄のままだった。
     二人は老婆をからかいに行って、その息子達にボコボコにされる。ばふんは目を潰された。10年たち、毎日、老婆の家に行って自分がどんな酷いことをしたのかと睨む。更地になった後もばふんは気づかずに頭の中にある家をにらみ続ける。それは生活の張りにもなっていた。
     なぜ水玉のパンツを履いていたのかは聞けずにいる。という余韻のある終わり方。
     良いことをした人が人生を転落していく。そういう遣る瀬無い話が著者は好きだ。良いことをしたから報われるわけでもない。そして人が驚くシーンが著者は上手い。
    [或るからっぽの死]
     からっぽは自分に関心の無い人は見えない。透明人間のように服が浮いて見える。
     カメラマンとして何となく行った撮影会で、被写体ではなくてドライブインの女に目を惹かれる。その子は透けていないのだ。シニコは家族から保険のためにさっさと死んでくれと言われている。からっぽはシニコを抱き、車に轢かれたシニコを最後は自分の手で殺してあげる。
     なぜシニコは最初から見えたのだろうか。死ぬことだけを考えているシニコは、自分を殺してくれそうな人を探していたのかもしれない。
     そしてからっぽはシニコを殺して、親父の目玉を抜いた。シニコのカッターで死のうと思っている。鏡を見ると、もう自分の姿も写っていなかった。

  • 文庫版で再読。う〜む。やはり面白い。表題作が一番好みかな。

  • "先の読めない物語。死をテーマにいくつももやるせない、不条理な世の中で起きる死。
    暴力の洪水を浴びつつ、カタルシスを感じさせるものもある。
    誰にでもお勧めはしない。読者を選ぶ小説だ。"

  • デブを捨てにの方が面白い。冒頭のホームレスが子供の死体を拾うも誰からも信頼されず全てを失う話と赤ん坊を見捨てて人でなしに転落する話とネコにフェラチオさせて霊的に破滅する話は戦慄モノ。

  • 自分に子どもができてから、変態が出てくるような作品は、読みたくなくなって、本棚に眠っていたが、思いついて読んでみたら、やっぱり気分が悪い。
    今の私には受け入れないが、傑作だとは思う。
    平山さんは、文章が上手でもなく、ストーリーはありきたり。
    でも、勢いと描写でとにかく持っていく。
    ひどい話だけど、悲しくて笑わせる。
    ダイナーもだけど、殺し屋と女の子の話は得意で、素晴らしいものを書かれますな。

  • 平山夢明著の短編集。過去にいくつか彼の作品を読ませて頂いているが、今回も案の定描写が惨いが爽やかという一見矛盾している世界観を見事に描いている様は流石と言うべきであった。
    解説文にも書いてあったが、決して笑える描写はないのだが、何故だか非常に笑える作品。ただ、今までの平山夢明の本に比べて惨さの部分に焦点を当てすぎて肝心の内容や愉快さが抜けているような気がした。所々、流れが掴めなくなる部分もあり(これは読み手である私自身の読解力の問題かもしれないが)、過去の作品を読んでいる身としては物足りない感じがした。

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著者プロフィール

1961(昭和36)年、神奈川県川崎市生まれ。法政大学中退。デルモンテ平山名義でZ級ホラー映画のビデオ評論を手がけた後、1993年より本格的に執筆活動を開始。実話怪談のシリーズおよび、短編小説も多数発表。短編『独白するユニバーサル横メルカトル』(光文社文庫)により、2006年日本推理作家協会賞を受賞。2010年『ダイナー』(ポプラ文庫)で日本冒険小説協会大賞を受賞。最新刊は『俺が公園でペリカンにした話』(光文社)。

「2023年 『「狂い」の調教 違和感を捨てない勇気が正気を保つ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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