牛家 (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 160
感想 : 32
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  • Amazon.co.jp ・本 (208ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041021620

作品紹介・あらすじ

あるゴミ屋敷の清掃をすることになった特殊清掃員。清掃期間は二日間。清掃は順調に進んでいたが……いてはいけないもの、片付けられない部屋、様相を変え続ける内装……これは夢か現実か……!?

感想・レビュー・書評

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  • 『牛家』
    気持ち悪い。もう二度と読み返したくないです(褒め言葉)
    ゴミと死臭の中をジェットコースターでぐるんぐるん進まされるような悪夢体験。意図的に想像力をカットしながら読んでもまだ気持ち悪い。
    でも主人公がこの悪夢みたいな怪奇現象から抜け出したところにあるのは地獄のような私生活なんだよなぁ……っていう二重の地獄。
    登場人物全員に秘密や暗い過去があって、きっとそれ前提で再読すれば新しい発見もあるんだろうけど、ちょっともう再読する気にはならないですね……ってくらい、気持ち悪さを感じさせる表現が上手すぎる!

    『瓶人』
    前提が不気味だし登場人物みんなおかしいし結末も最悪なんだけど、なんでか心温まる読後感だった。なんでだよ。
    基本的には「死者を蘇らせる」って要素の入ったヒューマンドラマだなと思った。たぶん。
    ラストがハッピーエンドと思うかメリバと思うかはその人次第かな……

  • とあるゴミ屋敷。空いた玄関を覗くと山頂から見下ろした雲の様にゴミ袋が廊下を埋め尽くす。そしてその奥に一際大きな物体が鎮座している。男か女か人なのかも怪しい牛の様な肉の塊。導入部のこの1文に心の琴線がソクソクしたのだが…いや、確かにゴミ屋敷に於ける次に何が出てくるか分からない恐怖の疾走感は気持ち良かった。前半までは。後半は何やらSFっぽい展開となり、あらま!というオチに消化不良。危機的状況下のジョークや妙な冷静さに緊迫感が失せた。非常に面白い設定だけに後半の失速が残念。不気味さと異様さは秀逸。こういうの大好き。

  •  ゴミ屋敷の清掃にやってきた特殊清掃員が体験した奇妙な出来事を描く表題作と、奇妙な親子の関係を描いた「瓶人」の2編を収録した作品集。

     表題作「牛家」は日本ホラー小説大賞の佳作を受賞した作品なのですが、これは感想が難しい…。巻末でホラー小説大賞の選考委員、宮部みゆきさんの選評が載っているのですが、これが一番この作品を表しているように思うので引用します。

    「『牛家』は問題作です。「おいしい?」と問われて、「……たぶん」という返答しかできない異国の料理のような味がします。」

     言いえて妙です(笑)。あらすじもオチもへったくれもなく、ただゴミ屋敷で奇妙な体験をするだけの話。だんだん主人公たちが体験していることの現実と幻想の区別がつかなくなり、そしてそのまま放り投げられます。いわゆる不条理ホラーですが、文章はなかなか板についていると思いました。

     なんとなく大賞が取れなかったのも分かりますが、かといって埋もれさせるのがもったいない、という気がしないでもない、そんな作品です。こんな言葉はどうかと思いますが納得の佳作作品!

    「瓶人」はそれと比べるとインパクトは落ちるものの、話は上手くまとまっていて、作者紹介によると既に別の賞でデビューされている方らしいので、そうした地力の確かさが出ているように思いました。

    第21回日本ホラー小説大賞佳作「牛家」

  • 第21回日本ホラー小説大賞佳作受賞作品。
    第21回の受賞作品の中で唯一の短編です。

    清掃業者の三人が、ゴミ屋敷の中で体験する奇妙な出来事を追った物語。
    序盤は不吉や予感が漂っていて、期待十分なのですが、、、あれあれ?
    途中で、怖い世界から、異次元世界へと足を踏み入れ間違えてしまったようです。
    きっと、牛の胃と反芻は関係あるのでしょうけれど、よく分りませんでした。そうしておくことで不安と不気味さを読者の中に残していくつもりなのでしょうか?
    しかし、それはあまり上手くいっていない気がします。
    物語の舞台がゴミ屋敷であるだけに、あらゆるものを読者の中に不法投棄していくような作品でした。

    臭いもの、汚いもの、グロテスクなもの、おかしくなった人間、、、それらを使えばホラーだと考えるのは、いかがなものでしょうか。

  •  迷路のようなゴミ屋敷、かつての住人だった牛のような男、訳ありの主人公にその同僚たち、精神的に壊れた妻……ガジェットだけ見れば興味のあるものだし、むしろ自分好みのテイストなはずなのだが。
     ホラーのはずが次第に不条理SFのような展開を見せていき、エッシャーの絵画よろしく複雑に絡み合った屋敷の中のように物語自体が整合性を失っていく。

     酩酊感ということでは成功なのかもしれないが、果たしてこれがホラー大賞の佳作なのかと問われると……。

    ゾンビものの「瓶人」は、フランケンシュタインテーマの変奏ともいえそう。

    詳しくはこちらに。
    http://rene-tennis.blog.so-net.ne.jp/2015-02-24

  • 飽きずに読ませてくれるホラー短編2編を収録。収録された『牛家』も『瓶人』ともにグロいながらも、どこかユーモラスである。

    『牛家』。ゴミ屋敷の清掃を任された主人公と同僚は、次第に夢とも現とも判別出来ない奇妙な世界に足を踏み入れる。

    『瓶人』。所謂、ゾンビ物なのだが、面白い設定になっている。

    第21回日本ホラー小説 佳作受賞作。

  • 【牛家】
    前半のゾクゾクするような感じが、後半になると急に訳の分からない話になる。
    怖いとはまた、違う感じだ。
    自分の内面の真実が、現れては消える。
    消えた先からまた、現れる。
    繰り返す、見たくもない場面は、実は見なきゃならない真実だ。

    【瓶人】
    後半になると雑になる感じは否めない。
    が、心の通じ合う瞬間は感動すら覚える。
    って、言うか、すき。
    なにをもってして、大切と言うのか。
    大切ならばなにをしてもいいのか。
    あなたなら、どうしますか?

  • 気味の悪い雰囲気のあるホラーだが、なんというか、ただ気味が悪いだけ。

  • 牛家は雰囲気がよかったが、なんとなく惜しい感じだった。瓶人は優しさと暴力性がミックスされており、すごくよかった。瓶人みたいな話をもっと書いてくれるといいな。

  • 気持ち悪くていい!! すき。
    最初はホラー路線を辿るのに、後半になるにつれてSFになる。
    牛がそう絡んでくるのか……! と、にやにやしながら読んだ。

    「瓶人」は、よく考えると気持ち悪い話なのだが、語り手が子供であり、一人称視点で描かれており、狭い世界内(友達)を全世界として捉え、それと比較して自分の「家庭」を見ているため、強烈に異質であるはずの「瓶人」も、あくまで「他の家のお父さんに比べて、変」というようなレベルで語られており、コミカルに感じられる。

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著者プロフィール

1984年生まれ。第6回講談社BOX新人賞優秀賞を受賞し、2009年『ようこそ、ロバの目の世界へ』でデビュー。14年『牛家』が第21回日本ホラー小説大賞が佳作に入選。他著作に『三丁目の地獄工場』『その花束は少年で出来ている』『煉獄ふたり』(いずれも講談社)がある。

「2020年 『事故物件7日間監視リポート』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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