つれづれ、北野坂探偵舎 感情を売る非情な職業 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 198
レビュー : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041021668

作品紹介・あらすじ

佐々波と雨坂が、本当に編集者と作家だった、若き日の物語。ある一人の女性の存在と本にまつわる謎が、眠れる天才を呼び覚ます。推理しない探偵コンビの語られなかった過去が今明らかに!

感想・レビュー・書評

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  • つれづれ、北野坂探偵社シリーズ4作目。
    今回は雨坂続がまだ事故で目を覚まさない、佐々波は編集者で、恋人の萩原春と一緒に暮らしている、そんな五年前の出来事を中心に語られる。
    編集者と作家、校正者という密な関係が大いに語られて、一つの作品にかける情熱が感じられる。だんだんとデジタル化されてきている時代だが、やはり私は紙の書籍を大事にしたい。本が出来上がるまでに込められた想いは深い。
    少し見えてきた「紫色の指先」は私にとっては意外な正体で驚いた。これからどう展開していくのか楽しみ。そしていつか、天才朽木続の本が読みたいな!

  • 図書館で。
    登場人物もあらかた出そろった所で過去編。優秀な編集者と彼の恋人で優秀な校正者と目を覚まさない天才の話…なのかなぁ。もし、続さんの才能を彼女が天才幽霊の存在を知る前に知っていたとしたら結末は変わったのかもしれない。けれどもまあ、展開のためには彼女はこの選択をするために出てきたキャラなので仕方ないといえば仕方ないのか。

    とは言え結構簡単に生と死の境を飛び越えちゃう登場人物が多いような気がする。前作のおばあちゃんもそうだったし… というわけで大分材料は出そろったのでそろそろ佳境!といったところだなぁと思いました。

  • 北野坂探偵舎シリーズ第4弾。
    佐々波がまだ編集者をしていたころ、歴史ある新人賞である「はやて文学賞」は応募数が少なく、2年連続で大賞作品は該当なし。そんな「はやて文学賞」を途絶えさせたくない編集長の新尾と、新人編集者の工藤。編集部にはそれぞれの思惑が渦巻いていた。
    そんなある日、佐々波は最愛の恋人・萩原春を失う。
    はたして彼女の死の真相と、はやて文学賞の行方は……?

    彼らの過去が明らかになる物語。いつもと雰囲気が違うお話だけれど、安定して楽しかった。
    そして作家、編集者、校正者、それぞれが「本」について語る言葉が愛おしい。
    本好きにはたまらないシリーズ。

  • 当作にはショートショートが書いてあるチラシが挟まっていました。
    ファンには嬉しいオマケ付きです。

    当作は、過去の話になっています。
    佐々波は東京の大学に進学した後、編集者として働いていています。
    女っ気がないと思っていましたが、佐々波さんには恋人がいたようです。

    春さんは優秀な校正者で、「佐々波よりも本を愛している」と言い切っています。
    学生時代に佐々波が告白をしたらOKが貰えて、同棲する仲になります。
    甘ったるさはありませんが、お互いを尊敬し合っている感じです。
    結婚の話が出ますが、まだ踏み切れない状態でした。

    佐々波が所属する部署のメンバーは、上司の新尾と新人の工藤です。
    新尾さんは穏やかそうな感じでいて、腹で何を企んでいるのか分かりません。
    一方の工藤さんは、前作は電話で登場していました。
    入社したてなので、若いというか青いです。
    真っ直ぐなコで、ノリが体育会系です。

    新尾は「はやて文学賞」を継続させたいと考えているが、佐々波はもう終わらせた方がいいと考えていた。
    「はやて文学賞」は、設立された当初は有名作家を輩出していたが、最近では投稿数が少なくなっている。
    このままでは賞が廃れてしまうので、新尾は今回が正念場だと考えていた。

    新尾は工藤に声を掛けて、「非常口」という作品を読ませる。
    「非常口」は群を抜いたクオリティだったが、結末まで書かれていないという欠点があった。
    しかも、元プロで、ペンネームを変えて新尾に作品を書くように依頼されたらしい。
    新尾は工藤に、「非常口」の作者・スズキミノルと打ち合わせをして、結末まで書くよう指導して欲しいと頼む。
    他の投稿者から見れば不公平な出来レースではないかと工藤は悩むが、スズキと会うことにした。

    工藤ちゃんは何度もスズキと打ち合わせをしますが、行き詰ってしまいます。
    前半は順調に筆が進んでいたのに、どうしても結末が思いつかないようです。

    スズキは以前、結末が思い付かなくて盗作をしたことがありました。
    盗作の話を聞いて、工藤は色々と考えますが、それでもスズキの才能と「非常口」が面白いと思った自分を信じることにします。
    当作は、工藤ちゃんの成長物語でもあります。

    春が実家に戻った時、小学校の外壁にある梯子から落ちて亡くなる。
    春が「小学校の絵を描く」とメールで送っていたので、佐々波は棺に油絵のセットを入れた。

    佐々波さんが春さんの死を受け入れるまでの過程は、読んでいて胸が痛かったです。
    佐々波さんはアップルパイに拘りがあるのかなと思っていましたが、最後に口にした春の料理がアップルパイだったのね。

    春と入れ替わるように、雨坂が七年振りに目を覚ます。
    佐々波は定期的に雨坂の入院先を訪れていたが、報せを聞いてすぐさま向かった。

    目覚めたばかりの雨坂に乞われるまま、佐々波は春について話す。
    雨坂が何かを書こうとする様子を見せたので、佐々波はPCを用意する。

    希望と不安を抱えながら、佐々波は雨坂が綴る物語を待っていた。
    途中だがプリントアウトしたものを読もうとした時、幽霊になった春が現れる。
    佐々波は春に、雨坂の小説を校正して欲しいと頼む。

    校正されたものを見て、雨坂は「殆どは的外れな指摘だ」と言いつつも、丁寧に読み込まれていたことに驚く。
    書くこと以外、どうすればいいか分からない雨坂。
    雨坂の編集者でいることを譲りたくないと思う佐々波。
    作家と編集者としての関係が、ここで成り立つ。

    雨坂の作品を「はやて文学賞」に捻じ込むと、見事、受賞した。
    「非常口」は次点扱いだったが、スズキは工藤のお陰で、前向きに小説を書く姿勢を見せる。

    春の死は「紫色の指先」が関わっていた。
    以前、「はやて文学賞」で話が途中なのに受賞していた作家がいた。
    タイトルは未定で、原稿は絵具セットの中に入っていた。
    未完作の作者は既に死んでいたが、その理由は「完璧な作品を作る無限の時間が欲しかったから」だった。

    春は、未完作の校正をする為に死んでしまった。
    天才に憧れていて、本の為に死にたいと思っていた筈だった。
    しかし、佐々波への気持ちが一番強かったことを知る。

    佐々波が雨坂を作家にするという願いが叶えば、春の未練がなくなる。
    恋人は消えて欲しくないのに、佐々波は自分のしたいことを選んでいた。

    「紫色の指先」は幽霊の集合体で、その中には未完作の作者や雨坂の姉もいた。
    しかも、作家の名字も雨坂だった。

    当作を読んで、編集者や校正者がどんな仕事なのかが分かって勉強になりました。
    素人が趣味で小説を書く場合、文章のチェックは自分でしますが、どうしても甘くなります。
    その点、編集者や校正者は売れる作品にする為、しつこいくらいに読み返して、細かいところまで調べて修正したり物語の方向性を進めたりします。
    売られている作品は、一人で作っている訳ではないのよね。
    作家さんが物語を作るのは「孤独な作業」と言われていますが。

    当作を最後まで読んで、佐々波さんは春さんよりも雨坂に強く執着しているように見えました。
    古臭い表現になりますが、「男は家庭よりも仕事を選ぶ」ということかしら。

  • 作家にとって、編集者にとって、校正者にとって、出版社にとって小説、文章とは何かという命題に対して、著者なりの青臭いともいえる理想を自問する内容。
    シリーズ4作目にして、突然こんな原点回帰した作品を出したことに驚いた。
    この順序にすることにどんな必然性があるのか、登場人物の口を借りてここまでのこだわりを見せているだけに、完結してから振り返って考察してみたい。

  • 今回は結構進展したし、色々明かされてこれから佳境に入っていくのを感じた。
    佐々波さんの過去、雨坂が眠ってた期間の描写と目覚め、紫色の指先がなんなのか。

    佐々波さんの過去を前巻読んだ後掘り下げてくれたらな〜と思ってたら、まさか今回すぐに掘り下げてくれるとは(笑)
    そのおかげでハッキリしたから良かったけども。
    佐々波さんの亡き恋人、萩原春は校正者であり、紫色の指先のために死んだ。
    ただ、紫色の指先のために死んだけど、結局そちらよりも恋人である佐々波さんの方が大切だったから彼の方を選んだ。
    佐々波さんと萩原の関係は淡白ではあったけど、確かにお互いを想ってた。
    二人とも名前呼びに発展するまでが遠いし、関係の発展が回りくどい(笑)
    そののんびりとしたペースが二人には合ってたんだけどさ。
    でも、萩原凄いな。リスペクトしてる作者の原稿を佐々波さんに燃やさせるなんて。
    そこには狂気を感じるくらいの校正者かつファンとしての執念を感じた。
    佐々波さんはその上を行くけどな。

    はやて文学賞、第三十六回の大賞「未定」の作者が雨坂って、血縁者だよな続の。
    紫色の指先は幽霊の集合体で、その中心にいるのは「未定」の作者、雨坂だよな。
    執筆をずっと続けていて、ひたすら完璧な作品にするために生きてる人を勧誘して紫色の指先に取り込んでいるのか。
    そして、その中に死んだ雨坂の姉、雨坂香苗も入っている。
    さらに雨坂がもう一人いる。
    義理の父は生きているから、香苗の夫だろうか?
    香苗の夫が「未定」の作者で紫色の指先の中心にいるのか?
    何故カラスはそこまで知っているのに未だ生きているのか。
    かなり判明してきたが、またカラスについての疑念が深くなった。

    続が雨坂になったのは、義理の父、香苗の夫の父親が引き取りたいって申し出たからなんだな。
    それで朽木から雨坂になったのか。

    それにしても、続は本当にチートキャラだな(笑)
    約7年間眠り続けてたのに、目覚めてすぐ執筆してそれをはやて文学賞に出し大賞を取るなんて。
    文才が衰えていることがなくむしろ成長してるってどんな(笑)
    ただ、その代償…いや、事故の代償とも言えるけど、明らかに欠落してしまったのが感情の起伏なのかな。
    泣いているのにそこには無感情にしか感じられないなんてな。
    紫色の指先を解決したら戻るのかな。
    それとも解決したら続は続でなくなるのかな、どうなるんだろう。

    次回はこのシリーズの核が表題になってるから、次回核心に迫るのかな?

  • これまでと違って過去の編集者時代の謎。シリアス。

  • シリーズ4作目。前回で物語に進展があったところで、今回は、この物語が始まる前、まだ佐々波が編集者であり、雨坂が目覚めていない時の話。佐々波と同棲する優れた校正者てあり恋人の萩原春の謎の死から「紫色の指先」へと続くこの物語の重要なパートを、文学賞における作家と新人編集者をめぐるストーリーに絡めて書かれた今作は、シリーズの今後をさらに期待されてくれました。

  • 佐々波の過去話。

  • 2015/5/18(月曜日)

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著者プロフィール

徳島県出身。グループSNE所属。2009年に『サクラダリセット CAT,GHOST and REVOLUTION SUNDAY』で、角川スニーカー文庫よりデビュー。若者を中心に人気を博し、シリーズは7冊を数える。他著作に「つれづれ、北野坂探偵舎」シリーズ(角川文庫)、『いなくなれ、群青』(新潮文庫)などがある。

「2017年 『ベイビー、グッドモーニング』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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