田舎でロックンロール

著者 : 奥田英朗
  • KADOKAWA/角川書店 (2014年10月31日発売)
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  • レビュー :46
  • Amazon.co.jp ・本 (278ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041022535

作品紹介

70年代、英米のロックは百花繚乱の様相を呈していた。そして、日本の片田舎に暮らすオクダ少年もその息吹を感じていた。少年にロック魂はいかに宿ったのか? 著者待望のエッセイに、青春音楽短編小説も特別収録!

田舎でロックンロールの感想・レビュー・書評

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  • 自我が確立されゆく思春期にロックにハマり、
    親や教師の干渉から逃れロックにのめり込んで行く、
    片田舎に住む奥田少年の、輝かしい青春時代が描かれている。
    わかる、わかるなぁ。みんな経験するよね。
    この時期特有の、過剰な自意識が作り出すこっぱずかしさや、
    こまっしゃくれた感じを思い出し、身悶えするほど懐かしいのである。
    (音楽に限らず)あの頃心を揺さぶられたものが、
    今の自分の根っこを作っているような気がする。
    他の作品を読み、作者に対し、ひょうひょうと生きる自由人というイメージを持っていたが、
    当らずとも遠からずかな?
    そのアイデンティティーの根っこは、こんなふうに形成されたんだなぁ。

  • 久しぶりの奥田エッセイ。期待通りに、いやそれ以上に面白かったー。好きだなあ。

    著者がロックおじさんであることは知っていたが、その始まりとなる中学から高校までのゴールデンエイジのことが語られている。同い年である私には、ああそれよくわかる!というエピソード満載。①田舎育ちの②50代で③多少なりとも「洋楽」に興味のあった人は、心から楽しんで読めるはず。ディープパープルやツェッペリンに魂を奪われた人なら、悶絶ものでは? これに当てはまらなくても、一風変わった青春記として十分読む値打ちがある一冊だと思う。

    レコードを買おうにもお金はなく、町にレコード店と呼べるほどのものもなく、そもそも家にステレオもない。そんな中学生がロックに目覚め、ラジオにかじりついて好きな曲を何とか聴こうとする。念願のステレオを買ってもらったときの天にも昇る心地、高校生になり初めて行ったライブのめくるめく興奮、やっとの思いで買ったレコードがスカだった時の激しい落胆。いやいやまったく、ロックに限らず、昭和の(田舎の)子供は好きなものが容易には手に入らなかったものよ。情報もすごく限られてた。オクダ少年の喜怒哀楽はまことにうなずける。

    私自身はロックにさほど興味がなくて、「洋楽」との出会いはカーペンターズやミッシェル・ポルナレフ、その後ビートルズ、流行ったのはそれなりに聴いたけど「ホテル・カリフォルニア」止まりであった。奥田氏の当時から今に至るロックへの「愛」と傾倒ぶりに感嘆しつつ、そういうマニアになる人とならない人との違いを指摘した次のくだりに、かなり納得した。
    「わたしの印象では、洋楽ファンの枝分かれは、このインプロビゼイションに反応できるかどうかだったような気がする。延々と続くギターソロやドラムソロを退屈に感じる少年少女も当然いるわけで、そういう子たちは演奏よりも曲が好きだったのだと思う」

    マニアではない身にとっては、当然ほとんど知らないミュージシャンの名が次々登場することになるが、絶賛したりクサしたりするその評がとても面白いのだ。知らないのにねえ。各章の終わりについているレコード評も、字が小さいのにみっちり楽しんだ。やっぱり愛があるからかなあ。難解とされるライ・クーダーについて「世の中にはこういう高等遊民がいないとそれは味気ないもので」と述べているところなんか妙に心に残った。

    奥田英朗といえば、偏屈で鳴らしているわけで、ここでもそれは遺憾なく発揮されている。
    プロフェッショナルな熟練の技を尊敬するゆえ、パンクも社会派も大嫌い。アイドルにも同じ理由で無関心。
    「学芸会レベルの歌と踊りに夢中になる心理がまるで理解できない。あんなものがクール・ジャパンとは国辱もの」「日本人は永遠にコドモですな。ははは」

    音楽性と商業的成功との兼ね合いについて書かれたところも面白い。
    「さり気なく問題発言をするが、売れるというのは馬鹿まで相手にするということである。スタジアムでライヴをやるようなミュージシャンは、それを引き受ける図太さ(あるいは強烈な自己顕示欲)がなくてはならない」「(売れるというのは)聴き手のリテラシーを不要にするということなんですね」
    これって音楽に限らないわけで、奥田さん自身、作家としての自分のポジションについて、ロックシーンにおけるスティーリー・ダン(えーっと、よく知らないですが)が憧れだと書いている。
    「一年に一作ぐらいのペースで本を出し、それなりに売れて、評価もされ、長く愛してくれるファンがいて、裏切らない。ああ、そんな作家でいられたら--。わたしはずいぶん虫のいいこと書いてるなあ。ははは」 まったくだ。ははは。

    それにしても、こういうものを書いて、同世代にしか通じない懐かし話にならないのはさすがである。その上で、同い年としてはやっぱり、つまらん小ネタに喜んじゃうのである。わたしも放課後の教室でコックリさんをしてキャーキャー言ってた中学生だったし、石橋正次の「夜明けの停車場」を今でも歌えるよ、奥田さん!

  • ☆☆☆☆☆5つ!

    わたしと同じ1959年生まれの奥田英朗の出身地が岐阜県だということはづいぶん前からなんとなく知っていた。
    でも岐阜市で生まれてその後小学3年生から高校卒業の年まで各務原市で暮らした、という事はこの本で知った。

    実はわたしが住んでいる愛知県木曽川南岸沿いのF町の川向うが各務原市なのである。
    なので、犬山城下にあるダムの上にしつらえられた「ライン大橋」を渡って各務原へはしばしば行き来している。この本の舞台となる40年ほど前なら、なるほど大いなる田舎だったのだろうなぁ、と思える今でも田舎の町並みである。

    この本は奥田英朗が書く70年台前半の田舎のロックンロールの本である(あ、題名でもそう書いてあるな。しつこかった、すまぬ。)
    当時各務原の田舎では、いかに情報の伝達が遅くて東京の文化から取り残されていたかということが、ロックという題材を得てこれでもか、と描かれている。野球はドラゴンズでプロレスは新日本だったらしくて、巨人て何?ジャイアント馬場って誰?というぐあいだったらしい。

    わたしの生まれ育った四国徳島池田町も正真正銘の田舎だったが、岐阜各務原の如く独自の文化(中京圏)など無かったので、必然的に中央東京の文化しか入ってこなかった。大阪のほうが確かに近かったが、田舎過ぎると少し近くの都会より遠いけど東京、となってしまうのであった。いやこの場でわたしの田舎の話はどうでもよい。すまぬ。

    のっけの章ではオーディオの事に加えて何故かロックならぬフォークソングについても少し語っている。
    そのなかで「南こうせつが出てフォークを湿っぽくするのはもう少し後のことだ」という奥田自身の思ったことをさらりと書いたところがやけ印象に残っている。
    そうかそうか、こうせつがフォークを明るい場所から薄ら寒い四畳半(いや「三畳一間」だったかw)に引きずり降ろしてしまったのか。そうだったのか・・・というのは、わたしの印象でもある。同じ世代なのでそういうことなのだ、すまぬ。

    奥田少年は1973年中学2年生14歳の時に家にステレオ装置が来たのだそうな。本書にはVictorの4チャンネルStereo云々と書いてある。

    おやまてよ四国田舎の俺んちはもっとづっと早かったぞ。たしか小学生の早い頃から我が家にはNational Thechnics Stereoがあったぞ。そうです、うちの父親は音楽好きだったのです。当時いくらしたかは全然知らないがづいぶんと立派なStereo装置と、更にわなんとオープンリールテープデッキまであった。でっかい30cmくらいのリールが掛かる本格的なものであった。うちの親父は音楽の他に写真なんかも遣っていて自宅の階段下部屋には写真の現像/焼付けの時に使う暗室まであった。今思うと結構芸術性に富んだ家庭だったのな。

    でも当時の父親の音楽の趣向は流石に演歌一辺倒で、わたしの印象に残っている一番の曲が『星影のワルツ』であった。千昌夫の『星影のワルツ』はちょっと調べると1966年発売されて、長くゆくーりぢわぢわと浸透し、ヒットチャートに登ったのは1968年の模様。そしてその頃は既に我が家にはステレオがあったのだ!ドダ。奥田んち(同い年なのでいきなり呼び捨てw)よりづいぶん早いぞ!

    しかしわたしは奥田の様な軽いロック少年にはならづに、正しい日本フォークの道を歩いた。
    吉田拓郎のコピーに始まり古井戸チャボさんの究極アコースティックリードギターに極まったギター弾き語りの技は、その後のバブル絶頂期へ向けての殺人的会社労働環境の期間やむなく休止したが、ほどなきその崩壊とともに徐々にまた往年のギター演奏に戻って来てこんにちここに至る「弾き語りおっさん」への道がひらけてきているのだ。
    なに、お前のステレオ音楽鑑賞&ミュジシャンまがい伝記なんて別に読みたくないんだよ!って、あ、そうですね。すまんこってした。

    ともかくこの奥田英朗エッセイ、同世代の読者で少しでも青春時代に音楽と親しんだ経験ありの人ならもうほうずり物のオモシロ本であります。今すぐ近所の本屋でも、遠くて一番近い南米Amazonでもいいので、スッ飛んでいって読んでくださいましまし。絶体絶命的におススメです!

    ああ、またもや無駄に長い文章を書いてしまった。再びもしここまで読んでくれた方がいらっしゃれば、深く感謝します。すまぬすまぬ。

  • Rockファンには羨ましいすぎる時代を生きたオクダ少年。クイーンの初来日行ったとかね。レコードやRockへの飢えもビシビシ伝わる。ジョニミッチェとジャニス、リンダロンシュタット、キャロルキングとの比較なども面白い。オクダ少年はホリデイ・ヒットホップスから、おいらはMTVから洋楽教わった。共通点は若い頃にRockに夢中になれて良かったってこと。ホント良かった。読了後はもちろんレコード鑑賞。Tレックスにしよかと思ったけど遅い時間だったのでアメリカにした。本作品で紹介された曲の私的1位は「名前のない馬」だった。

  • ロックが音楽ジャンルではなく、ムーブメントだった時代。ラジオにかじりつき、FM放送から流れる曲に息を止めてタイミング合わせ、録音ボタンを押していた。まさに同じ。本書に書かれている奥田少年の音楽体験は、最初から最後まで自分のそれとかなりの部分がぴったりシンクロし、当時の記憶を懐かしく思い起こしながら読んだ。
    他人の音楽遍歴や評論は、いつもそれほど共感できなくてそれほど面白いと思ったことがないが、本書はどんぴしゃだった。しかし、ただそれだけではなく、ところどころ作者が短くぽろりともらす意見、考察が憎いぐらい気がきいていて、なるほどそうだと膝を叩きたくなるんですね。そこらへんは、さすが力のある人気作家、着眼点、表現力に感心させられ、本当にうまいと思う。
    音楽のジャンルは生き物のように、誕生があり、ピークがあり、衰退があると思う。自分も今のポップミュージックは、80年代にあらゆることをやりつくしてしまって、以降、もちろん時々おお、っと思うようなヒット曲は出てくるものの、あらかたの楽曲はすでに原型があるものの再生産だと思う。
    でも、エルビスやビートルズがある時いきなり誕生したように、そのうち、これまで誰も聴いたことのない、まったく新しい音楽が産まれるんだろうな、と漠然と思うし、ぜひ聴いてみたいなと思う。

  • 小説と思ってたらまさかのエッセイ。

  • 2016.11.18

  • 世代は違えどわりと近い地元、非常に楽しく読ませていただいた。ビジネス臭のしない当時の熱気を感じられて(しかも多感なティーンエイジャー)、羨ましく思う。巻末の短編小説も面白かった。

  • 読んで良かった。奥田少年は、いや奥田さんは今でもザ・バンド、ライ・クーダーは分からんと書いている。僕もさっぱり分からない。ライ・クーダーなんて貰ったチケットで1978年の虎ノ門・久保講堂での初来日コンサート行ったけど、わかなくて帰りたかったけど、アンコール何度も何度も出てきて帰るに帰れなかった。

  • この本は大変面白い小説を書く奥田さんが、
    自らの少年時代を綴ったエッセイ集です。
    具体的には1972年から1977年、
    中学1年から高校3年までの間に
    出会った洋楽ロックの事を中心に書いている一冊です。

    読んでみたら、オクダ少年にとても親近感をもってしまいました。
    なぜなら洋楽ロックとの出会いや付き合い方が
    まるで自分の事を書いてるのか?
    と思ってしまうくらい似通っていたからです。

    筆者と自分では年齢がひとまわり離れていますので
    出会ったアーティストは違ってはいますが、
    感じた事やなんかがほぼ一緒なんですね。

    FM放送から流れるヒットチャートをノートに記録したり
    カセットテープにエアチェックしてみたり
    レコード店でLPレコードを視聴させてもらったり
    雑誌「ミュージックライフ」を穴が空くほど眺めたり・・・。
    TLEX、ビートルズ、Queen・・・・・。

    まさに同じような事をしていたし、
    同じような何かに憧れがあって。

    そう感じるのは僕だけではないでしょうね。
    LPレコードやラジオから聴こえてきた洋楽ロックは
    今YouTubeで聴ける音楽とは
    何かが絶対に違っていたような気がします。
    その点懐古趣味とは云わせません(笑)

    巻末にこのエッセイで書かれていた出来事を
    モチーフにした短編小説が収録されています。
    小説家が自分の体験を、
    どのように小説というカタチに昇華させていくのか?
    という視点からも興味深く読めました。

    2016/4/1 快晴

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