散り椿 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
4.13
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本棚登録 : 454
レビュー : 63
  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041023112

作品紹介・あらすじ

最愛の人を失ったとき、人は何ができるのか――

かつて一刀流道場の四天王と謳われた勘定方の瓜生新兵衛は、上役の不正を訴え藩を追われた。
18年後、妻・篠と死に別れて帰藩した新兵衛が目の当たりにしたのは、藩主代替わりに伴う側用人と家老の対立と藩内に隠された秘密だった。
散る椿は、残る椿があると思えばこそ、見事に散っていけるもの――たとえこの世を去ろうとも、ひとの想いは深く生き続ける。
秘めた想いを胸に、誠実に生きようと葛藤する人々を描いた感動の時代長編!

≪熱き信念が胸を打つ、扇野藩シリーズ≫

感想・レビュー・書評

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  • 時代小説で定番ともいえるお家騒動が背景。
    さらに、男同士の友情と、彼らが想いを寄せる一人の女性。これもよくあるパターンだけれども、著者は、叙情豊かに美しく一編の詩の如くに、物語を紡ぎだした。
    人が人を想う気持ちと、それが相手に伝わらず、それでもそれぞれが誠実に生きようと葛藤する人々。
    現代を舞台にしたら、陳腐となってしまいかねない設定も、時代小説では、切なく美しい物語となる。
    やっぱり、時代小説って、いいですねえ。

  • どこまでも不器用でどこまでも誠実な男達の切ない物語。
    最愛の妻の最期の願いを叶えるため、男は一人故郷に戻ってきた。
    妻に褒められたい一心で。
    そして因縁深い幼馴染みと決着をつけるために。

    過去に起こった事件の真相を解き明かすにつれ、浮かび上がる亡き妻の想い。
    妻が願いの奥に潜めた想いは実に切ないものだった。
    散る椿は残る椿があると思えばこそ見事に散っていける…潔くて儚いセリフに泣きそうになる。

    葉室さんは男同士の友情を描くことが本当にお上手な作家さんだったのだと改めて思った。
    岡田准一さん主演の映画も楽しみ。
    葉室さんも楽しみにされていたんだろうな…。
    本当に残念。

  • わかっていても泣いてしまう。
    普遍的なメロドラマなのだが、読ませてしまう。

    平易な文章で、鮮やかに情景を切り取り、人の心の機微を描くのは、難しい文章で書くことより難しいのではないだろうか。何より読みやすいし、物語への没入は深くなる。

    妻を失った浪人の哀しみがしみじみ伝わってくる物語だ。
    彼の心の隙間を埋めるかのように襲いかかるお家騒動。
    それに巻き込まれながらも立ち向かう主人公とその朋友たちとの友情も熱い。

    哀切なラストがいつまでも胸に残った。

  • 葉室作品は蜩の記に次いで二冊目
    映画化の話題に乗って

    一本芯の通った壮年の男性と、その人に関わる事で成長する若者
    どうにもならない世の中だけれど、己の信じるものを求め、ひたむきに生きる事の素晴らしさと切なさ
    語彙が少ない自分がもどかしい

  • 「散り椿」
    公開日:2018年9月22日
    享保15年、藩の不正を訴え出たことで藩を追われた瓜生新兵衛。しかし病に倒れた妻・篠は、死の床で最期の願いを新兵衛に託す。新兵衛の旧友で、かつ藩追放にも因縁がある榊原采女を助けてほしい、と。故郷へ戻った新兵衛はやがて采女と対峙するが……。
    キャスト: 岡田准一、西島秀俊、黒木華、池松壮亮、緒形直人
    監督:木村大作
    http://chiritsubaki.jp/

  • 全1巻。
    藩を放逐された浪人が、
    亡き妻の遺言を守るために帰ってくる。
    帰参した浪人を待っていたのは
    藩を二分とする御家騒動。
    保身に勤しむ甥っ子とともに
    好まざる争いに巻き込まれていく。
    って話。

    や。
    いいね。
    本当、葉室先生は小藩の政争が抜群にうまい。
    今の作家達の中でピカイチだと思う。

    ロマンチックな「想い」の設定は
    胸が苦しくなるほど切ないし、
    どんでん返し連続なミステリーは、
    だれもが怪しく見える前半とか本当秀逸。

    ただ、惜しむらくは謎解きパート。
    それぞれの謎の答が深く絡まり合ってなく、
    小粒な謎が一杯って印象になっちゃってる。
    「想い」についても駆け足消化な感があり、
    「事件の真相」「妻の真実の想い」に絞って
    うまく昇華してほしかった。
    ちょっと要素が多すぎ。

    まあ、
    少し白けた後味は残るかもしれないが、
    グッとくるのは間違いないと思う。

  • 日本人らしい美徳に
    後半 涙する場面もありました
    散る椿は、残る椿があると思えばこそ
    見事に散っていけるもの
    という 犠牲を払いながらも
    相手を生かそうとする 愛の証ですね

  • 藩内部の権力争いに巻き込まれ死にゆく人達。
    逝く人達の思い。
    残された人達の思い。
    どちらの思いも心を打つ。

    散り椿のように見事に散っていく友たち。
    その散り様を見守ることしかできない新兵衛を思うと胸が痛む。
    本の最初から、最後の最後まで、余すところなく情景が浮かぶ。
    すばらしい作品でした。
    読めて良かった!

  • 新兵衛、格好良すぎ!~徳川家康の故障を務めた先祖を持ち今は和紙生産で有名な扇野藩の殖産方である坂下藤吾は父が公金横領の疑いを掛けられ自害した家を盛り返そうと必死で、目標は側用人の榊原采女だ。死んだ父や許嫁・美鈴の父である篠原三右衛門の剣友であり、藤吾の母の姉・篠の夫であり今は浪人している瓜生新兵衛の剣友でもある。村廻りの帰りの峠道で、采女の養父・榊原平蔵の悪事を暴こうと藩を追放されたが、一時采女との縁談もあった妻・篠の遺言で、坂下の屋敷にあった椿を見に行き、采女を助けろ言われたからだった。和紙の金は田中屋という紙問屋を通して、藩主の庶兄奥平刑部から旗本へ養子に出た息子を通じ、老中などに賄賂として渡っている。奥平はあわよくば息子に藩主の座を引き寄せたいが、藩主は来年三月の世嗣国入りを機に、国家老・石田玄蕃を排し親政を始めたいらしい。藤吾は水路造りを計画し、郡方も乗り気なのだが、家老派は妨害してくるかと思うと、郡方への異動と蜻蛉組入りが命じられ、郡奉行・山路内膳を監視するように石田玄蕃に命じられる。山路は榊原同様、主君・世子派だ。困った立場に置かれ、村廻りの最中に狙撃され、頼りとする若手名主が殺害される。篠原は藤吾が蜻蛉組の編入されたのを知って、破談を申し渡しに来た。榊原平蔵を斬ったのは、坂下重乃助か、篠原三右衛門か、養子の采女か。藩主と世子が国入りした。病気がちな藩主は床に伏せ、世子は精力的に動く。殺された名主の家をお忍びで訪問すると聞いて、郡奉行は藤吾と新兵衛を討手が潜みそうな場所に急行させたが、狙撃された世子の影武者は蜻蛉組の組頭・篠原三右衛門で、弾が命中して絶命した。その頃、世子は城下での田中屋との談判に臨み、目的は果たしたものの、一服した茶に毒が仕込まれていた。藩主・世子側は謹慎が命じられ、蜻蛉組の解散が家老・石田から命じられる。家老は篠原の遺族の族滅を命じ、それを知った藤吾は美鈴を救うために走る。新兵衛は采女と椿の下で立ち合いに臨むが…~岡田准一が演じているのは新兵衛?采女?藤吾は誰がやるの?ってのは映画の話

  • 葉室麟さんの作品はいつもパワーをもらえる。
    大きな組織力にはびこる悪に対して、無力かと思われる小さな正義が、友情や家族愛の強いきずなで実を結ぶ長い過程が物語の主軸になっている。

    今回特に心に残ったのは、大きな組織の中で自分の身を守るために悪を悪と指摘せずに組織の残ることで精いっぱいだった若い侍が、小さな正義に次第にひきつけられて、自分の身を守ることより大切な人を守り、悪を懲らしめる側に成長していく姿だった。

    若い世代に身をもって生きざまを知らしめるようなぶれない信念を、果たして今の大人は持っているのだろうか。
    自分を見つめるに、恥ずかしながら未だにぶれて迷って後悔を繰り返す日々を過ごしている。


    人とかかわると何かしら思いを残す。「あー言えばよかった、こー言えばよかった」は常で、あんなこと言ったけどどう思ったかしら?あの話はどういう意味?本音では私に何が言いたかった?など、会話の一つ一つが気になったり、表情を思い出して私の気持ち伝わったかしら?と思い出したりし始めると、結局出会って話したこと自体を後悔するようになる。


    十年以上前のわずかな会話や文のやり取りから、相手の本心に心を寄せ、それを生きていく糧にして目の前の正義を貫いていく物語に、今更ながら自分の未熟さを思い知らされる。

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著者プロフィール

葉室 麟(はむろ りん)
1951年1月25日 – 2017年12月23日
福岡県北九州市小倉生まれ。西南学院大学文学部外国語学科フランス語専攻卒業。地方紙記者、ラジオニュースデスク等を経て小説家に。2005年に短編「乾山晩愁」で第29回歴史文学賞受賞(のち単行本化)、2007年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞受賞、2012年『蜩ノ記』で第146回直木賞受賞、2016年『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞受賞。
上記以外の代表作に、2018年9月に岡田准一主演で映画化される『散り椿』、第22回山本周五郎賞候補及び第141回直木賞候補だった『秋月記』がある。

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