散り椿 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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感想 : 103
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  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041023112

感想・レビュー・書評

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  • 先に映画を観ていたのですんなりと読み進めることができた。人の世も心も、時が経てもそれほど変わるものではない。だが、変えていかねばならぬことはしっかりと変えていきたい。そんな風に思った。

  • 最愛の妻をなくし、その最後の遺言の意味に気づいた時涙が止まらなくなりました。

    大切な人を想う気持ちで生きている武士達の物語です。
    時代劇を読んだことのない人にもおすすめです。

  • 2019年、37冊目です。

  • 時代小説のど真ん中とも言える、筋の通った男を軸に展開する人間ドラマ。
    力を感じる、まさに散り際に思いの込もった作品。

  • 2/8は「つばきの日」
    岡田准一さん主演で映画化され、
    日本アカデミー賞7部門を受賞したことでも話題になった『散り椿』。

  • 襖絵や焼き物の器にありそうな椿の絵のカバーが目に留まり買った本です。
    このページでは「椿」に合わせて、気に入りの写真を貼ってみました。

    書店の「今月の新刊コーナー」にて一目惚れしました、中身は時代劇ものです。

    大まかには、、、
    主人公は18歳の扇野(架空の藩)藩士。
    かつて道場で鬼と恐れられた流れ者の伯父と共に、自決した父の謎と藩内の因縁に立ち向かうストーリー。
    勧善懲悪の時代物、という印象で読み進めましたが、
    次第に明らかになっていく登場人物の過去や想いにじっくりと引き込まれ、夢中で読み終えました。
    全てが全てめでたしという訳でもないと思いますが、読後感は気持ちの良いものです。

    今回この作家さんのことを初めて知りましたが、
    07年「銀漢の賊」で松本清張賞
    12年「蜩ノ記」で直木賞
    受賞だそうです。

    いかにも時代劇らしいセリフが少し重々しいかもしれませんが、
    雨の山道で刺客の姿に目をこらす緊張感、
    屋敷の庭に落ちた椿の前に佇む人物、
    見事な剣さばきを見せる伯父の逞しい後姿、
    …と、鮮やかに物語の景色を想像させてくれる一冊です。

  • すぐ読み終えられました。面白いです。椿は花ごとぽとりといっぺんに落ちるイメージですが、タイトルの散り椿は花びらが一枚ずつ散るそうです。残る椿があると思えるからこそ見事に散っていけるという話です。藩での権力争いですが、四天王のみんな、生き様と心が素晴らしい。愛する人のために生きたいと思いました。自分の苦しむことが癒される術がこの本にはありそうです。

  • 映画にもなっててぜひ読んでみたかった。主人公二人の関係はそういうことだったのかと。妻を思い妻のために友を見守り、若き日の想いを隠し静かに強く公に生き。改めて振り返ると公私の生き方が書かれたんだと思いました。

  • 書店でたまたま購入したもの。
    時代小説を読むのは何年ぶりだろうか、というぐらい読んでいなかった。そのためなのか、読了後は素直な感動を覚えた。
    時代小説は、決して避けているわけではないが、定期的に必ず読むというわけでもない。自分の中で、時代小説といえば、ある程度「型」が決まっており、形式面でそれほど新鮮さを感じることがないと思い込んでいる節があるからかもしれない。例えば、想いを寄せ合う男女がいても、家長同士が憎み合っているため結ばれないとか、武士として、個人としての誠実さを通そうとすれば、藩や君主の意に背くこととなる葛藤など。こうしたいわば時代小説の約束事的なものは、ワンパターンと言ってしまえばそれまでかもしれないが、つまり読者と作者の間の共通理解のようなものであって、読者の物語世界への理解を早めたりする役割こそあれ、なんだいつも同じ展開ではないか、とは感じないのが不思議である。
    本書も、これまで読んできた時代小説に共通する諸要素を余すことなく含んでいる、藩内の覇権争い、青春の恋と挫折、「秘剣」的なもの、など。しかし、本書では登場人物たちの関係性が、それぞれ単純でなく、伏線も含めて丁寧に描かれている印象があった。主人公の亡妻の最後の願いの内容とその真意は、意外であったし、主人公に生きる意味を与えるといっても、そのような依頼をするだろうかとは思ったが、つまり単純な善意・悪意の区別だけではなく、(解説にもあったが)それぞれの人物がその人なりに誠実であろうとした結果、不意に不幸な結末や誤解を生んでしまうことは、現実の生活でも起こりうる。そうした人の心の機微を丁寧に表現しようとしている小説だったと感じた。もう一人の主人公、藤吾の成長の過程も読んでいて清々しく、久しぶりに時代小説を存分に楽しめた。

  • とても綺麗な小説。
    最後に妻が夫を大事にしていた。夫の幼馴染の元婚約者への想いは無かった事実は、夫にも伝わったのだろうか。
    妻を大事に、第一に生きる姿に心が揺さぶられます。

  • 過去の事件の追求、藩内の権力争い等、背景は複雑ですが、そこに絡む人々の思いが繊細に描写されている秀作。
    愛、友情、成長・・。人が人を想う心の美しさがひしひしと伝わってきて胸を打ちます。

    映画では、新兵衛を岡田准一さん。采女を西島秀俊さんが演じたのですね。新兵衛はもうちょいワイルドなイメージ(岡田さんは格好良すぎかも・・。)でしたが、西島さんの采女はぴったりだと思いました。

  • 采女からの手紙を持ち続けた篠の心・・からの返信の和歌。 これでは新兵衛の思い込みの方がより自然な流れ。
    篠は、敢えてどちらにも取れる歌を残したのだろうか?・・なんて邪推も?
    新兵衛との祝言に至るまでの篠の心の内は、
    読者にはわかるが新兵衛や采女には知る由もない訳で、采女の閃きは少々強引な気も・・

    などと御託をいいながら、当然のようにまたも涙腺決壊な訳ですが


    女性は凄い・・


    妻・篠の今際の願いを胸に18年の時を経て故郷・扇野藩へ戻った浪人・瓜生新兵衛。
    かつて、上司・榊原平蔵(采女の養父)の不正を知り暴こうとした新兵衛は、返って咎めを受け藩を追われたのだった。

    扇野藩に戻った新兵衛は篠の妹・里美とその息子・藤吾の元に身を寄せるが、里美の夫でありかつての友・坂下源之進もまた横領の疑いをかけられ数年前に切腹していた。
    折しも、扇野藩は病弱な藩主の隠居を機に親政を目論む嫡男・政家と、長年にわたり藩政を動かして来た家老・石田玄蕃との勢力争いが佳境を迎えていたが、政家側の懐刀・榊原采女もまた新兵衛・源之進と並び四天王と称された親友であった。
    一方、藤吾は両派の間で微妙な立場となり、藩の暗部・蜻蛉組へと配属されるが、もう一人の四天王・篠原三右衛門の娘・美鈴との婚約が突然破断になる。

    愛妻・篠と采女、そして新兵衛の過去。

    裏で藩を操る政家の実兄・奥平刑部を絡め、藩の実権を巡って交わされる策謀の応酬。

    采女の父・榊原平蔵暗殺の真実とは、
    そして、篠の願いの真意とは・・

    ◯平山道場四天王
    ⚪︎瓜生新兵衛
    ⚪︎榊原采女・・新兵衛が糾弾し、後に暗殺された平蔵の養子。御世子側のトップ。篠への想いを断ち切れない。
    ⚪︎篠原三右衛門・・美鈴の父。馬廻り役だが・・
    ⚪︎坂下源之進・・里美の夫、藤吾の父。不正を疑われ自ら切腹。
    ◯篠・・新兵衛の愛妻。かつて采女と婚約したが・・。新兵衛に願いを託し亡くなる。
    ◯鷹ヶ峰殿・・政家の兄・奥平刑部の通り名。
    ◯蜻蛉組・・藩の諜報組織。藩の重役達の監視、時に暗殺も。
    ◯小杉十五郎・・平山道場の師範代。蜻蛉組の副頭。

  • 映画になったが期待を裏切らない内容

  • おもしろい

  • 瓜生新兵衛は、かつて藩の不正を正そうとして追放された扇野藩へ18年ぶりに帰ってきた。藩の実権を握る家老の石田玄蕃の不正を暴き、次期藩主とともに藩の実権を取り戻そうとする。平山道場で四天王と呼ばれた新兵衛、榊原采女、坂下源之進、藤原三右衛門が物語と深く関わっており、次期藩主がお国入りしてから一挙にクライマックスへと進む。
    友情の物語であり、夫婦愛の物語でもある。最後に伝えられた愛の言葉に答えられない新兵衛であった。

  • 少しこじつけのように感じられるところもあったけれど、面白かったと思う。
    出世のため、お家再興のために努力して生きていた藤吾が、次第に、石高よりも大切なことがある、と気持ちを変化させていく姿が清々しかった。
    新兵衛は一途に篠を思い続けるが、篠は采女から新兵衛へ気持ちを移すところとか、男の人の書いた作品だな、とは思う。

  • 毒のない安心させる文章、伏線が張られていてストーリーの骨格も整っていて、人物もそれなりに色づけされている。いい話‥‥と言えなくもないだろうけど‥‥私的には何か物足らない。

  • ――ひとを愛おしむとは、自分の想いを胸にしまい、相手の想いを叶えることなのか。

    かつて、藩の不正を糺そうとしながら、それゆえ扇野藩を追放された瓜生新兵衛は、妻の最期の願いを胸に18年ぶりに藩へと帰参する。
    それは、闇に葬られた過去の罪を今に呼び覚ます行為でもあった。
    親子、夫婦、友人、そして主従。人が生きてゆくなかで切っても切れない深い結びつきと、死にゆく人の切なる願い。それぞれに気持ちを伝えること、受け取ることの「ままならなさ」に翻弄される人びとの姿を、一木に白から紅までさまざまに咲き分けながら、最後には一片一片花びらを散らせてゆく散り椿に寄せて描く。

    同じ道場で鍛錬し、四天王と並び称された新兵衛と彼のよき友人たち。
    彼らの上に流れた18年という歳月は重く、溌溂と輝いていた若者たちを、皆それぞれに生きてきた澱を身にまとい、複雑なものを抱えた中年の男に変えてしまった。
    生きることは難しい。
    おのれを殺して生きようとする。しかしそれが他の者の生きる道を閉ざしてしまうこともある。
    誰かを生かすために、心にもない言葉を吐かねばならないこともある。
    大切なものを守るために投げ出した命が、ほかの誰かの人生を大きく変えてしまうこともある。
    扇野に生きる人びとの、不器用なことといったらない。傷つき、傷つけられながら、それでも誠実に生き尽くそうとしている。その姿がとても愛おしい。

    「生きてくださいませ、あなた――」「生きろよ、新兵衛」
    自分の死を前にして、なぜそんな風に願えるのだろう。その答えもまた、彼らは残してゆくのだ。
    「散る椿は残る椿があると思えばこそ見事に散っていけるのだ」、と。

  • 妻の遺言で因縁の故郷に帰る凄腕の剣士瓜生十兵衛、そこで彼ら自身が出て行かざるを得なかった勢力争いに巻き込まれる。

    葉室燐らしい設定の、葉室燐らしい人間ドラマ、友情愛情義理渡世人情…、色々なものに縛られ色々な義を守って生きていく人間模様が切なく描かれている。渋くて上手い泣かせる小説である。

    難点を言えば、勢力争いの構図が少々分かりづらいことか、2派の争いかと思えば単純にそうでもなく、それが小説の味わいになり切れていればいいのだが、どちらかというと読みづらくさせてる印象が残念。

    映画化されるらしい、全く知らなかった。
    そして、この本を入手してから数日後に作者がお亡くなりになられた。なんてタイミングで読んだんだろうと思う。

  • 2017.12.20

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著者プロフィール

1951年、北九州市小倉生まれ。西南学院大学卒業後、地方紙記者などを経て、2005年、「乾山晩愁」で歴史文学賞を受賞しデビュー。07年『銀漢の賦』で松本清張賞を受賞し絶賛を浴びる。09年『いのちなりけり』と『秋月記』で、10年『花や散るらん』で、11年『恋しぐれ』で、それぞれ直木賞候補となり、12年『蜩ノ記』で直木賞を受賞。著書は他に『実朝の首』『橘花抄』『川あかり』『散り椿』『さわらびの譜』『風花帖』『峠しぐれ』『春雷』『蒼天見ゆ』『天翔ける』『青嵐の坂』など。2017年12月、惜しまれつつ逝去。

「2023年 『神剣 人斬り彦斎』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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