散り椿 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
4.12
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本棚登録 : 463
レビュー : 64
  • Amazon.co.jp ・本 (422ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041023112

感想・レビュー・書評

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  • 時代小説で定番ともいえるお家騒動が背景。
    さらに、男同士の友情と、彼らが想いを寄せる一人の女性。これもよくあるパターンだけれども、著者は、叙情豊かに美しく一編の詩の如くに、物語を紡ぎだした。
    人が人を想う気持ちと、それが相手に伝わらず、それでもそれぞれが誠実に生きようと葛藤する人々。
    現代を舞台にしたら、陳腐となってしまいかねない設定も、時代小説では、切なく美しい物語となる。
    やっぱり、時代小説って、いいですねえ。

  • どこまでも不器用でどこまでも誠実な男達の切ない物語。
    最愛の妻の最期の願いを叶えるため、男は一人故郷に戻ってきた。
    妻に褒められたい一心で。
    そして因縁深い幼馴染みと決着をつけるために。

    過去に起こった事件の真相を解き明かすにつれ、浮かび上がる亡き妻の想い。
    妻が願いの奥に潜めた想いは実に切ないものだった。
    散る椿は残る椿があると思えばこそ見事に散っていける…潔くて儚いセリフに泣きそうになる。

    葉室さんは男同士の友情を描くことが本当にお上手な作家さんだったのだと改めて思った。
    岡田准一さん主演の映画も楽しみ。
    葉室さんも楽しみにされていたんだろうな…。
    本当に残念。

  • 全1巻。
    藩を放逐された浪人が、
    亡き妻の遺言を守るために帰ってくる。
    帰参した浪人を待っていたのは
    藩を二分とする御家騒動。
    保身に勤しむ甥っ子とともに
    好まざる争いに巻き込まれていく。
    って話。

    や。
    いいね。
    本当、葉室先生は小藩の政争が抜群にうまい。
    今の作家達の中でピカイチだと思う。

    ロマンチックな「想い」の設定は
    胸が苦しくなるほど切ないし、
    どんでん返し連続なミステリーは、
    だれもが怪しく見える前半とか本当秀逸。

    ただ、惜しむらくは謎解きパート。
    それぞれの謎の答が深く絡まり合ってなく、
    小粒な謎が一杯って印象になっちゃってる。
    「想い」についても駆け足消化な感があり、
    「事件の真相」「妻の真実の想い」に絞って
    うまく昇華してほしかった。
    ちょっと要素が多すぎ。

    まあ、
    少し白けた後味は残るかもしれないが、
    グッとくるのは間違いないと思う。

  • 残る椿のために散る多くの"散る椿".....久しぶりに葉室麟の世界を堪能

  • 襖絵や焼き物の器にありそうな椿の絵のカバーが目に留まり買った本です。
    このページでは「椿」に合わせて、気に入りの写真を貼ってみました。

    書店の「今月の新刊コーナー」にて一目惚れしました、中身は時代劇ものです。

    大まかには、、、
    主人公は18歳の扇野(架空の藩)藩士。
    かつて道場で鬼と恐れられた流れ者の伯父と共に、自決した父の謎と藩内の因縁に立ち向かうストーリー。
    勧善懲悪の時代物、という印象で読み進めましたが、
    次第に明らかになっていく登場人物の過去や想いにじっくりと引き込まれ、夢中で読み終えました。
    全てが全てめでたしという訳でもないと思いますが、読後感は気持ちの良いものです。

    今回この作家さんのことを初めて知りましたが、
    07年「銀漢の賊」で松本清張賞
    12年「蜩ノ記」で直木賞
    受賞だそうです。

    いかにも時代劇らしいセリフが少し重々しいかもしれませんが、
    雨の山道で刺客の姿に目をこらす緊張感、
    屋敷の庭に落ちた椿の前に佇む人物、
    見事な剣さばきを見せる伯父の逞しい後姿、
    …と、鮮やかに物語の景色を想像させてくれる一冊です。

  • すぐ読み終えられました。面白いです。椿は花ごとぽとりといっぺんに落ちるイメージですが、タイトルの散り椿は花びらが一枚ずつ散るそうです。残る椿があると思えるからこそ見事に散っていけるという話です。藩での権力争いですが、四天王のみんな、生き様と心が素晴らしい。愛する人のために生きたいと思いました。自分の苦しむことが癒される術がこの本にはありそうです。

  • 書店でたまたま購入したもの。
    時代小説を読むのは何年ぶりだろうか、というぐらい読んでいなかった。そのためなのか、読了後は素直な感動を覚えた。
    時代小説は、決して避けているわけではないが、定期的に必ず読むというわけでもない。自分の中で、時代小説といえば、ある程度「型」が決まっており、形式面でそれほど新鮮さを感じることがないと思い込んでいる節があるからかもしれない。例えば、想いを寄せ合う男女がいても、家長同士が憎み合っているため結ばれないとか、武士として、個人としての誠実さを通そうとすれば、藩や君主の意に背くこととなる葛藤など。こうしたいわば時代小説の約束事的なものは、ワンパターンと言ってしまえばそれまでかもしれないが、つまり読者と作者の間の共通理解のようなものであって、読者の物語世界への理解を早めたりする役割こそあれ、なんだいつも同じ展開ではないか、とは感じないのが不思議である。
    本書も、これまで読んできた時代小説に共通する諸要素を余すことなく含んでいる、藩内の覇権争い、青春の恋と挫折、「秘剣」的なもの、など。しかし、本書では登場人物たちの関係性が、それぞれ単純でなく、伏線も含めて丁寧に描かれている印象があった。主人公の亡妻の最後の願いの内容とその真意は、意外であったし、主人公に生きる意味を与えるといっても、そのような依頼をするだろうかとは思ったが、つまり単純な善意・悪意の区別だけではなく、(解説にもあったが)それぞれの人物がその人なりに誠実であろうとした結果、不意に不幸な結末や誤解を生んでしまうことは、現実の生活でも起こりうる。そうした人の心の機微を丁寧に表現しようとしている小説だったと感じた。もう一人の主人公、藤吾の成長の過程も読んでいて清々しく、久しぶりに時代小説を存分に楽しめた。

  • とても綺麗な小説。
    最後に妻が夫を大事にしていた。夫の幼馴染の元婚約者への想いは無かった事実は、夫にも伝わったのだろうか。
    妻を大事に、第一に生きる姿に心が揺さぶられます。

  • 過去の事件の追求、藩内の権力争い等、背景は複雑ですが、そこに絡む人々の思いが繊細に描写されている秀作。
    愛、友情、成長・・。人が人を想う心の美しさがひしひしと伝わってきて胸を打ちます。

    映画では、新兵衛を岡田准一さん。采女を西島秀俊さんが演じたのですね。新兵衛はもうちょいワイルドなイメージ(岡田さんは格好良すぎかも・・。)でしたが、西島さんの采女はぴったりだと思いました。

  • 采女からの手紙を持ち続けた篠の心・・からの返信の和歌。 これでは新兵衛の思い込みの方がより自然な流れ。
    篠は、敢えてどちらにも取れる歌を残したのだろうか?・・なんて邪推も?
    新兵衛との祝言に至るまでの篠の心の内は、
    読者にはわかるが新兵衛や采女には知る由もない訳で、采女の閃きは少々強引な気も・・

    などと御託をいいながら、当然のようにまたも涙腺決壊な訳ですが


    女性は凄い・・


    妻・篠の今際の願いを胸に18年の時を経て故郷・扇野藩へ戻った浪人・瓜生新兵衛。
    かつて、上司・榊原平蔵(采女の養父)の不正を知り暴こうとした新兵衛は、返って咎めを受け藩を追われたのだった。

    扇野藩に戻った新兵衛は篠の妹・里美とその息子・藤吾の元に身を寄せるが、里美の夫でありかつての友・坂下源之進もまた横領の疑いをかけられ数年前に切腹していた。
    折しも、扇野藩は病弱な藩主の隠居を機に親政を目論む嫡男・政家と、長年にわたり藩政を動かして来た家老・石田玄蕃との勢力争いが佳境を迎えていたが、政家側の懐刀・榊原采女もまた新兵衛・源之進と並び四天王と称された親友であった。
    一方、藤吾は両派の間で微妙な立場となり、藩の暗部・蜻蛉組へと配属されるが、もう一人の四天王・篠原三右衛門の娘・美鈴との婚約が突然破断になる。

    愛妻・篠と采女、そして新兵衛の過去。

    裏で藩を操る政家の実兄・奥平刑部を絡め、藩の実権を巡って交わされる策謀の応酬。

    采女の父・榊原平蔵暗殺の真実とは、
    そして、篠の願いの真意とは・・

    ◯平山道場四天王
    ⚪︎瓜生新兵衛
    ⚪︎榊原采女・・新兵衛が糾弾し、後に暗殺された平蔵の養子。御世子側のトップ。篠への想いを断ち切れない。
    ⚪︎篠原三右衛門・・美鈴の父。馬廻り役だが・・
    ⚪︎坂下源之進・・里美の夫、藤吾の父。不正を疑われ自ら切腹。
    ◯篠・・新兵衛の愛妻。かつて采女と婚約したが・・。新兵衛に願いを託し亡くなる。
    ◯鷹ヶ峰殿・・政家の兄・奥平刑部の通り名。
    ◯蜻蛉組・・藩の諜報組織。藩の重役達の監視、時に暗殺も。
    ◯小杉十五郎・・平山道場の師範代。蜻蛉組の副頭。

著者プロフィール

葉室 麟(はむろ りん)
1951年1月25日 – 2017年12月23日
福岡県北九州市小倉生まれ。西南学院大学文学部外国語学科フランス語専攻卒業。地方紙記者、ラジオニュースデスク等を経て小説家に。2005年に短編「乾山晩愁」で第29回歴史文学賞受賞(のち単行本化)、2007年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞受賞、2012年『蜩ノ記』で第146回直木賞受賞、2016年『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞受賞。
上記以外の代表作に、2018年9月に岡田准一主演で映画化される『散り椿』、第22回山本周五郎賞候補及び第141回直木賞候補だった『秋月記』がある。

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