本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
本 ・本 (422ページ) / ISBN・EAN: 9784041023662
作品紹介・あらすじ
大恐慌以来、最悪の金融危機が訪れる――。なぜAIGは救済され、リーマンは破綻したのか。その対応の中心にいた本人みずから明らかにする。前FRB(連邦制度理事会)議長、ベン・バーナンキによる初めての著作。
感想・レビュー・書評
-
2006年から2014年までFRB議長を勤めたベン・バーナンキの回顧録。下巻はリーマン・ブラザーズ破綻から量的緩和の導入、FRB議長退任までを描いている。下巻は大きく分けると二部構成になっており、前半はリーマン破綻からの連鎖危機を防ぐためにAIGやシテイの救済を巡る話で、後半はQE1,QE2,QE3と立て続けに行われた量的緩和の実施について語られている。
AIGやシテイの救済に対しては、連邦準備法第十三条三項を発動させて、果敢にFRBは行動しており、「最後の貸し手」としての中央銀行の面目躍如といったところか。「大恐慌以来最悪の金融危機」に対して、FRBが重要な役割を果たしたのは間違いないが、本書で書かれているように、不良資産救済プログラム(TARP)による公的資金注入の役割が世間では忘れられていると思う。TRAPからの7000億ドルに昇る公的資金を注入したことで、多くの金融機関が救われた。危機発生時には中央銀行の役割は大事だが、それ以上に政府・財務省の役割が重要だったのではないかと思わなくもない。
量的緩和については、QE1からQE3まで一緒くたに語られがちだが、オペレーションの中味は結構違っており、QE1は、期待インフレ率の上昇を狙った「量的緩和」ではなく「信用緩和」なのが実情だ。バーナンキ自身も、「量的緩和」ではなく、「信用緩和」という言葉を使って欲しかったと述べている。(P.192) 量的緩和後も、インフレ率の低迷と失業率の高止まりの原因は、緊縮財政が原因だったとバーナンキは述べており、上巻の「究極的には、インフレはほぼすべて金融政策が引き締めか緩和かで決まる。」という発言を覆している。金融緩和でアクセルを吹いても緊縮財政でブレーキをかける現象はどの国でも同じようだ。
金融機関の救済や量的緩和といったFRBの仕事は、議会やマスコミに相当叩かれていた。ローン・ポールやバーニー・サンダースを極右と極左のポピュリスト呼ばわりしていたり、NYタイムズのクルーグマンの記事に対して内心怒っていたりと、当時のバーナンキの心境が垣間見られておもしろかった。それらの批判に耐えて世界恐慌を未然に防いだバーナンキはやっぱり偉いと思う。バーナンキは公開記者会見をFRBに創設したり、一般市民向けに講演会を開いたりと、常に「市場の声」を重要していた。「期待形成」とは絶え間ない対話から生まれるものでかくも難しい。現日銀執行部もそれ位はやって欲しいものである。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
グリーンスパン元FBR議長と比べて印象が薄いバーナンキ議長でしたが、本著を読んでリーマンショック前後の金融政策を果敢に取ってきたことが読み取れました。
米経済のため、ひいては世界経済のために、
公僕として仕事に取り組んできたにもかかわらず、
様々な批判を受けてきたくだりには、
「じゃあ自分(批判者)がFBR議長になってやってみればいいじゃないか」と言いたくなります。
客観的・専門的な経験・知識に基づいた事実の評価と、
各機関との調整能力は、感銘を受けました。
バーナンキ議長、8年間お疲れ様でした。
ちなみにブログをつけていらっしゃるので(英語力に余裕があれば)読んでみたいものです
https://www.brookings.edu/blog/ben-bernanke/ -
本書の帯、FT紙の抜粋の通り、あの金融危機に著者がFRB議長であったことは、世界にとっての数少ない幸運だったのだろう。
バ議長の学者としての知識・経験はもとより、組織でリーダーシップを発揮し、政策を実行に移す。THE COURAGE TO ACTという英文のタイトルがピッタリ。
金融危機後に景気回復が遅れ、QEによる緩和に追い込まれる、その記述もまた生々しい。
専門のライターとの共著なのであろうが、率直な記述に人柄が滲んでいるようだ。
期待通りの良書。
著者プロフィール
ベン・バーナンキの作品





