この闇と光 (角川文庫)

著者 : 服部まゆみ
  • KADOKAWA/角川書店 (2014年11月21日発売)
3.76
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  • レビュー :181
  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041023815

この闇と光 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • ある国の王であった父親が失脚し、
    森の中の別荘に囚われた盲目の姫レイア。
    父親と召使いのダフネ、そして父が語り聞かせてくれる美しい物語だけが、レイアの世界のすべてだった。
    ところがレイアが13歳になったある日、信じていた世界は、音を立てて崩れ去ってしまう。
    そこでレイアが目にした驚愕の真実とは…。
    幻想と耽美の極致とも言えるゴシックミステリーの傑作。


    祝復刊!
    いやぁ~、なんと美しく切ない物語か( >_<)
    (新装文庫版の皆川博子さんの解説がまた秀逸!)


    心の奥底から湧き出す
    どうしようもなく激しい感情。
    読む者すべての胸の奥を掻きむしる何か。
    この泣き叫びたくなるような、切なさの正体は一体何なのか。

    ミステリーとしての仕掛けを期待すると物足りない人もいるだろうけど、
    (それでも僕個人としては充分に驚かされました汗)

    この作品のキモはそこではないのです。


    幽閉された5歳の少女。
    父のいない夜にカセットテープで聞いた「いばら姫」の物語。
    沈丁花に似た甘い香りが引き連れてくるのは、
    闇よりも濃い恐怖と
    孤独よりも恐ろしい敵意。
    耽美でとろけるような蜜の世界と
    甘やかに匂い立つ美しき幻想の日々。

    小説とはストーリーを楽しんだり
    意外性やオチを楽しむ以外に、
    その作家にしか書けない
    文体そのものを味わう醍醐味があります。
    (文体こそ人なり!)

    この物語もまさにそう。
    服部まゆみさんの審美眼が如実に投影された、
    驚愕の真相が明かされるまでの
    幼きレイア姫と父親である王との
    夢のように甘い蜜の日々の
    なんと淫靡で官能的なことか。
    (物語前半のこの部分だけで、ご飯三杯は食えるし、★8つは献上したいくらいの見事な世界観!)


    王である父は目が見えなくなったレイア姫に
    色や言葉や食べ物や動物や花の名前を教え、書き方を教え、言葉遣いを教え、ピアノを教え、
    絵本を読み聞かせ、
    やがてレイアは数や時の概念を知り、
    小さな哲学者となっていきます。

    目が見えないレイア姫が
    文字や言葉を覚えた喜び、
    音楽や物語にのめり込む切実さは
    三重苦を克服したヘレン・ケラーの「奇跡の人」が頭に浮かんだし、
    闇を抱え、闇と葛藤するレイアの苦悩と
    中庭の芝生での「ピクニック」と言う名の幸福を絵に描いたような昼食のシーンのコントラストが
    より物語を美しいものにしています。

    目は見えないが、輝くように美しく妖精のような5歳の少女レイア姫に
    怒りと憎悪が凍りついた声で
    「死ねばいいのに」と囁く
    召使いのダフネの圧倒的な悪意。

    父がくれた巨大なくまのぬいぐるみの「プゥ」と
    レイアの騎士となる犬の「ダーク」を従え、
    「赤頭巾」「ヘンゼルとグレーテル」「ピーターラビット」「ラプンツェル」「小公子」「小公女」「嵐が丘」「デミアン」「罪と罰」「緋文字」などの物語の世界を夢想し、
    やがてその幻想とシンクロし、取り込まれていくレイアが
    なんとも切なく胸を打ちます。
     
    けれども、やりきれないリアルな現実の中で
    物語の中に真実を見いだそうとする少女の姿を誰が笑えるだろう。

    無垢な魂だけがたどり着くことができる残酷なまでに美しい世界を幻想的に描いた
    ギレルモ・デル・トロ監督のダークファンタジーの傑作
    『パンズ・ラビリンス』を彷彿とさせる世界観に
    とにかく僕は耽読し、酔いしれました。

    後半の衝撃的真相にはあえて触れなかったけど、
    少女小説や幻想小説が好きなら
    必ずや前半の展開だけで、
    充分に満足してもらえる作品です。


    なお、著者の服部まゆみさんは
    2007年に肺ガンのため、58歳の若さで亡くなられました。
    心からの御冥福をお祈りいたします。
    (紹介してくれたkwosaさんにも最大の感謝を!)

  • 盲目の王女さまレイア姫の話、中世とか近代かと思ったら…いやはや。王女さまの成長とともに違和感が出てきて…。これ以上はネタバレ過ぎて書けない。

    闇の中にありながら、「おとうさま」に与えられた言葉、物語、書物、音楽、イメージの世界は秀逸で、盲目であったからそれは尚更だ。俗なもの醜いもの(特にそういう魂)はより際立ってしまうよね。物語終盤に書かれた、主人公が求めた「真に己の魂を震わせる『美』であり、魂によって選び抜かれた『極上のもの』」に集約されている。「闇の中に在って、世界は何と美しく輝いていたことだろう!」

    ミステリーに分類されると思うが、物語全体に漂う耽美な雰囲気がとても好き。皆川博子さんが解説を書いており、著者服部まゆみさんの他の著作にも興味が湧いた。作中に出てくる画家の絵も見てみたい。

    • ゆっきーさん
      読んだよー!アーッ!!ってなった:(;゙゚'ω゚'): レイア1の世界観私もすごい好きだー。作者の描写が素晴らしいね。
      2017/06/13
  • どんでん返しのネタは途中で分かってしまったが、それでもとても楽しめ、考えさせられる作品だった。まだ自己が充分に形成されていない時に誘拐され、美しいものばかりを与えられて育ったが故の、外界の醜さへの失望。レイアだった方が幸せなのか、怜である方が幸せなのか。押し付けられる"幸せ""普通"ばかりが最良とは限らない(ましてあのような低俗な両親であればなおさらだ)。とても歯がゆく、胸が締め付けられるが、ミステリ読みの方以外にもぜひ読んでもらいたい、素晴らしい本だった。

  • 主人公が「盲目」という設定を利用したトリックで、読者を闇の世界に惹き込ませる新感覚ミステリー小説…!

    前半のおとぎ話の世界のような、幻想的でいかにも耽美な雰囲気。クラシックな音楽を聴き、海外文学に触れ、優しい父親の愛で満たされた日々、だけどそこはかと漂う違和感と謎。
    そして、混乱の中で終わる甘い日々と
    一転する主人公の世界!
    まさかここまで騙されるとは思わなかった…。
    何の予備知識もなく読み進めていたら、冒頭から「レイア 一」の(これ本当に角川文庫…?)と思うような、濃厚ファンタジー。しかし、そこから急展開を見せる「囚われの身」「病院」「帰還」「十五歳、夏」あたりは一気読み。「レイア 二」で全ての真相が明かされ、そして、最後「ムーンレイカー」では全てを知った主人公が進む“これから”の出来事が綴られる。

    でも、本当の“これから”は全て読者の想像にお任せ。といった余韻を残しつつの締め方。…大好きです。こういうの読みたかった!と久し振りに1人読み終わった後に悶えた作品で、読了後も何だかもやもやそわそわしたような、何処かにこの物語の続きが転がっていないものか…!と、行き場のない熱を持て余してしまう。「闇の中に在って、世界は何と美しく輝いていたことだろう!」しばらくはこの闇の世界から抜け出せそうにないかも…。

    目が見えないからこそ感じられる恐怖や美しさ、目が見えることで感じられる恐怖や美しさ。それらはまさに表裏一体、闇と光のように真逆だけど、密接に関係し合っている現象なのだと感じ、光の世界と闇の世界をどちらも経験した主人公にとっては、どちらが幸せだったのだろう…。

    「世界は光と闇で出来ている。それを薄々知りながら、それでもなおかつ決して闇を視ようとしない人々…それは自身の暗い部分から、目を逸らすことでもある。そして一旦それに気づいた者は、もう光だけを視ることはできない。」p.259

    圧倒的な美しさ、極潤な純文学。それに、佳嶋さんの装画と皆川博子先生の解説付きだなんて、なんとも贅沢…!映画化もコミカライズ化も絶対不可能な作品、是非とも読むべき…!

  • すっごくよかった…
    皆川博子さんと、装丁にひかれて勢いで購入しました、後悔ゼロ。

    皆川博子さんが好きな方ならほぼ間違いなく好きなのではないかと思います。
    全体的に重くはないけどほのぐらーい雰囲気が漂っていて、幻想的だとか耽美的だとかそういう言葉をおもいうかべてしまう感じ。

    特に最終章、最後の最後のシーンが脳内ですごく印象が強かったです。
    あとは主人公が視力を取り戻したときの、視界に感動するシーンが素敵でした。

    作者さんが亡くなってしまわれているのが本当に残念です。
    他の作品も読んでみたいのですが多くが手に入りにくくなっているようで…
    他も改めて出版されることを祈っています!

  • やばい、めっちゃ好き。

    この作家さん全然知らなくて、たまたま電車乗り換えの時間つぶしに入った駅ナカの本屋さんで見つけて、購入。
    あっという間に読了。

    独特の世界観で描かれていて、読んでいる間は自分がそこにいるかのような錯覚さえ覚える。
    その闇の世界はとても魅力的だった。
    光を得ると途端に色あせていく世界。
    無造作に放り出されてしまった主人公と自分は、それを受け入れるのに時間がかかる。

    読み終えた後、エピローグを読みたくなる。というか自分で書きたくなる。エンディングは自分で。。。

    この作品は好き嫌いが分かれるかなって思います。
    私は、好き。
    服部まゆみさんって、もう亡くなってるんですよね。
    残念。
    残された作品がどれくらいあるのかわからないけど、他の作品もまた、読んでみたいなって思います。

    読了直後、☆4から時間を経て☆5になりました。
    なんかね、じわじわくるのよ(笑)

  • 長広舌となるので、はじめに記しておきたいことを。
    決して後ろから読んではいけない。
    多くの推理物を我慢できず途中から結末から読むタイプの私が、我慢の末に見た結末は、後ろから読んでは得られないものだ。
    乾くるみの「イニシエーション・ラブ」と同じく、これは決して読む順番をたがえてはいけない。
    必ず前から順々に読んでいくこと。
    ページを飛ばすこともおすすめしない。

    ****************
    2015年の元日に、違う本を買い求めに行った先でフェアの棚の中に見つけた。
    見るからにおどろおどろしい表紙。
    ホラーか?
    やばい、これはやばい気がする。
    今日は違う本を買いに来たんだ。
    しかし、一度気になった本というのはその場で買っておくに限る。
    売り場から離れようとした二、三歩分を戻り、手に取る。
    解説、皆川博子。
    こ・れ・は――そっち系だ、当たりだ!
    昨年読み漁った皆川博子が解説。
    しかも表紙のイラストは見たことあると思ったら初めに読んだ皆川博子の本の表紙も描いていた佳嶋。
    つまりは、そういうことだ。
    そういう系統の本だ。
    絶対自分、これ好きだ、気になる、読める、読んでしまう。
    というわけで、レジに並びながらすでに読み始めたら止まらなくなっていた。

    のっけからいっちゃった感のある会話が繰り広げられる。
    西洋風?
    王様と王女が監禁?
    フランス革命の時とか?
    いや、隣国の兵士が敵ってことはオーストリアとか?
    いやいや、それにしても、なんでだろう。
    この似非ヨーロッパ感。
    王様と王女様の会話なのに、なんだか日本感を拭いきれない。
    すごく日本ぽい。日本にトリップしてきたっていうより、日本なのにわざわざ王様と王女様ごっこをしている感じ。

    違和感は次第に現実味を帯びてくる。
    カセットテープ、はまだしも、CDときた日には、もうおかしい。どこの国やねん。時代錯誤のくせに最新の機械が出てくるとは。
    そして、娘に罪と罰やら緋文字やら草迷宮やら嵐が丘を読み聞かせる父親って……白い胸とか、そういう言葉入ってるもの、子供に聞かせないよね?
    どんな顔して読んでんだろう。
    はたして、偏りまくった早熟な子供が出来上がる。
    半ばまで読み終えてから、ぱらぱらと初めからページをめくってみたら、主人公の成長に合わせて漢字率が増え、語彙率が増え、一ページの文字の多さも増えている。
    これだからから一人称って面白い。
    まさに、本の大体半分までがこのごっこの世界を描いている。
    よくもまぁこれだけ書けたものだ、と思いながら後編。
    後編は章立てが細かい。この理由は読めばわかる。
    前半のおどろおどろしく閉塞感が漂いながらも、なぜか離れがたい甘ったるい悪い蜜の夢の中を漂うかのようだった雰囲気が、一転してジェットコースターのようにスピード感あるものとなっている。

    なんということだろう。
    これほどまでに色を変えるとは。
    カテゴリを推理にしようかファンタジーにしようか激しく迷う。
    書きたいことはやまやまある。
    でも、いくらネタバレの内容を含むとしていても、書けないことはある。
    書いてしまったら私の楽しみ自体も半減してしまいそうだからだ。
    何の楽しみかといえば、私と同じく楽しむ人を増やしたいということと、事の結末を文章化することで整理し、理解してしまうことが惜しいのだ。

    我慢できずにあとがきは途中でさらっと読んでしまったが、直木賞候補?と思いながら読んでいたことくらいは許してほしい。
    これは、そういう本だ。
    そして、一つの試みの結果が空想であれ綴られ、恐らく、それは正解からそう遠く離れていないはずだ。

    一つの罪の上に重ねられた年月と思いがけない愛の形に、感嘆するか、吃驚するか、はたまた怒りを感じるか。
    私はこのラスト、意外であった。
    それも、変だといわれるかもしれないが、とても望ましいものと感じている。
    なぜか救われた気さえしたのだ。
    彼らはきっと、おとぎ話の世界からは出られない。
    それでよいのだと、思う。

  • 気づかずに読んで良かったような、なぜ気づかなかったんだという悔しさが少し 笑
    久しぶりに没頭して小説を読んだ。レイア1の世界観がとても懐かしく、とても居心地が良かった。私もかつて王国にいたような。そんな気がした。『美しい』ということはどんなことだったかを思い出させてもらった。

  • 恥ずかしながら著者やこの作品に関する予備知識を何も持たずに読み始めたのだが、これはまんまとしてやられた。
    確かに序盤からいくつか「あれ?」と思わせるヒントは散りばめられていたように感じるが、それでもこれはクローズドなシーンに特化した変わったファンタジーなのかな…と思い込んで読んでいたから、中盤で作中世界の構造が明かされた時には素直に驚いてしまった。
    そして主人公を取り巻く環境とともに作品が醸し出す波長も一気に様相を変え、ラストは見事な幻想小説として幕を下ろしており、なるほど、巻末解説を皆川博子氏が請け、著者に賛辞を送っているのも当然だ、と腑に落ちた。

    目に見えるものの醜悪さ、見えないものの美しさ。
    感じた価値はいとも簡単に対極に転じ得る。
    すべては観察者たる私たち次第なのだ。

  • 『隣の家の少女』からの流れで、監禁モノつながり。こちらは、非常に上品で洗練された生活を送ることになった子供の人生が描かれる。で、途中でびっくりするような展開になった。笑いごとじゃないけど、あまりの不条理さに笑えた。キングが、『隣の家の少女』の映像化は無理っぽいと語っていたが、こちらも別の意味で映像化は不可能っぽい。

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