この闇と光 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
3.77
  • (275)
  • (437)
  • (352)
  • (70)
  • (17)
本棚登録 : 4518
感想 : 409
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041023815

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • どんでん返しのネタは途中で分かってしまったが、それでもとても楽しめ、考えさせられる作品だった。まだ自己が充分に形成されていない時に誘拐され、美しいものばかりを与えられて育ったが故の、外界の醜さへの失望。レイアだった方が幸せなのか、怜である方が幸せなのか。押し付けられる"幸せ""普通"ばかりが最良とは限らない(ましてあのような低俗な両親であればなおさらだ)。とても歯がゆく、胸が締め付けられるが、ミステリ読みの方以外にもぜひ読んでもらいたい、素晴らしい本だった。

  • 盲目の王女さまレイア姫の話、中世とか近代かと思ったら…いやはや。王女さまの成長とともに違和感が出てきて…。これ以上はネタバレ過ぎて書けない。

    闇の中にありながら、「おとうさま」に与えられた言葉、物語、書物、音楽、イメージの世界は秀逸で、盲目であったからそれは尚更だ。俗なもの醜いもの(特にそういう魂)はより際立ってしまうよね。物語終盤に書かれた、主人公が求めた「真に己の魂を震わせる『美』であり、魂によって選び抜かれた『極上のもの』」に集約されている。「闇の中に在って、世界は何と美しく輝いていたことだろう!」

    ミステリーに分類されると思うが、物語全体に漂う耽美な雰囲気がとても好き。皆川博子さんが解説を書いており、著者服部まゆみさんの他の著作にも興味が湧いた。作中に出てくる画家の絵も見てみたい。

    • ゆっきーさん
      読んだよー!アーッ!!ってなった:(;゙゚'ω゚'): レイア1の世界観私もすごい好きだー。作者の描写が素晴らしいね。
      読んだよー!アーッ!!ってなった:(;゙゚'ω゚'): レイア1の世界観私もすごい好きだー。作者の描写が素晴らしいね。
      2017/06/13
  • 内容に触れずに感想を書くのが難しいので今回はネタバレありで。


    あらすじでどんでん返しを匂わせるのはやめてくれ!
    しかし、本作は読者を騙すことに全力集中でネタバレして終わり!ということはなかったので良かった。
    謎が明らかになった後も、それまでの幻想的な雰囲気を引き継いで物語が続く。

    謎も単純な一つではないのもよかった。
    舞台が単なるファンタジー世界ではないことには気づいたが、まさか自己認識まで偽られているとは。

    美しいものへのあこがれを植え付けられてしまったあとで現実の醜さを知ったら、もう一度戻ろうと自分の目をつぶして父の元に戻るくらいのことをするかと思ったが、ある意味それ以上にグロテスクな結末だった。
    結局父から離れられない怜、そして過去をうやむやにしたまま怜を弄ぼうとしている父。
    はっきりとさせないことで、善悪の議論を挟みにくくなっているのが怖い。
    父が完全に仕組んでいて、怜は被害者だとはっきりすれば単純で分かりやすい話なのだが。

    形が変わっただけで、怜が父の支配下にあることは変わらない。
    なのに、またあの美しい日々が始まると読者にまで何か期待させてしまうような状況になっていて恐ろしい。

  • ☆☆☆☆☆
    久しぶりの☆5かな。
    中世ヨーロッパ辺りで敗戦した隣国の王と王女が森の中に幽閉されている。
    可愛いそうな王女レイアは目が見えず、王なる優しい父と、沈丁花の香りをまとったお世話係のダフネ女史に怯え…
    童話の世界…非現実の世界にぐいぐいと引き込まれて、王女の絶望的な行く末を案じながらもやがて私も本の世界で迷子になった。
    人は…環境で生きていくしかない。
    恐ろしいのは現実か…非現実なのか。
    光と闇…御伽噺は常に残酷である。
    作者がもう永眠されているとは残念です。
    他の作品も必ずや読みたいと思う。
    今年の4冊目
    2019.2.17

  • 主人公が「盲目」という設定を利用したトリックで、読者を闇の世界に惹き込ませる新感覚ミステリー小説…!

    前半のおとぎ話の世界のような、幻想的でいかにも耽美な雰囲気。クラシックな音楽を聴き、海外文学に触れ、優しい父親の愛で満たされた日々、だけどそこはかと漂う違和感と謎。
    そして、混乱の中で終わる甘い日々と
    一転する主人公の世界!
    まさかここまで騙されるとは思わなかった…。
    何の予備知識もなく読み進めていたら、冒頭から「レイア 一」の(これ本当に角川文庫…?)と思うような、濃厚ファンタジー。しかし、そこから急展開を見せる「囚われの身」「病院」「帰還」「十五歳、夏」あたりは一気読み。「レイア 二」で全ての真相が明かされ、そして、最後「ムーンレイカー」では全てを知った主人公が進む“これから”の出来事が綴られる。

    でも、本当の“これから”は全て読者の想像にお任せ。といった余韻を残しつつの締め方。…大好きです。こういうの読みたかった!と久し振りに1人読み終わった後に悶えた作品で、読了後も何だかもやもやそわそわしたような、何処かにこの物語の続きが転がっていないものか…!と、行き場のない熱を持て余してしまう。「闇の中に在って、世界は何と美しく輝いていたことだろう!」しばらくはこの闇の世界から抜け出せそうにないかも…。

    目が見えないからこそ感じられる恐怖や美しさ、目が見えることで感じられる恐怖や美しさ。それらはまさに表裏一体、闇と光のように真逆だけど、密接に関係し合っている現象なのだと感じ、光の世界と闇の世界をどちらも経験した主人公にとっては、どちらが幸せだったのだろう…。

    「世界は光と闇で出来ている。それを薄々知りながら、それでもなおかつ決して闇を視ようとしない人々…それは自身の暗い部分から、目を逸らすことでもある。そして一旦それに気づいた者は、もう光だけを視ることはできない。」p.259

    圧倒的な美しさ、極潤な純文学。それに、佳嶋さんの装画と皆川博子先生の解説付きだなんて、なんとも贅沢…!映画化もコミカライズ化も絶対不可能な作品、是非とも読むべき…!

  • 今までに読んだことのない類のミステリ小説で面白かったです。自分が見ている世界がいかに普遍と誤解しているかに気付かされる内容でした。

    ただ、トリックが面白い以上の何かをうまく感受できなかったことに自分の未熟さを感じました。またいつか再読してみたいです。

  • とにかく美しい世界を見たって感じ。
    主人公のレイアは森の奥に囚われた盲目の王女。
    レイアの視覚以外の五感から至上の美を感じた。

    途中でなんとなく仕掛けはわかってしまったから、ミステリものとして読むべきではない、、と思う。

  • 【本当の穢れを知っている?】

    本を読むわたしを祖父が咎めた。小説家は皆卑しい性格をしていて、異常で危険な思想を持っている。

    わたしは笑った。今更なにを言っているのだろうと。本当なんて苦しくて辛くてしんどいだけなのに。卑しくても異常で危険な思想を孕んでいたとしても、この時間だけがわたしを苦痛から解き放ってくれるのに。

    天国と地獄。暑苦しいだけの体温。一人になりたい。でも、ここにはない。全てかりそめ。

  • 大どんでん返し。騙された感が心地よい。傑作、

  • すっごくよかった…
    皆川博子さんと、装丁にひかれて勢いで購入しました、後悔ゼロ。

    皆川博子さんが好きな方ならほぼ間違いなく好きなのではないかと思います。
    全体的に重くはないけどほのぐらーい雰囲気が漂っていて、幻想的だとか耽美的だとかそういう言葉をおもいうかべてしまう感じ。

    特に最終章、最後の最後のシーンが脳内ですごく印象が強かったです。
    あとは主人公が視力を取り戻したときの、視界に感動するシーンが素敵でした。

    作者さんが亡くなってしまわれているのが本当に残念です。
    他の作品も読んでみたいのですが多くが手に入りにくくなっているようで…
    他も改めて出版されることを祈っています!

全409件中 21 - 30件を表示

著者プロフィール

1948年生まれ。版画家。日仏現代美術展でビブリオティック・デ・ザール賞受賞。『時のアラベスク』で横溝正史賞を受賞しデビュー。著書に『この闇と光』、『一八八八 切り裂きジャック』(角川文庫)など。

「2019年 『最後の楽園 服部まゆみ全短編集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

服部まゆみの作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
米澤 穂信
又吉 直樹
有効な右矢印 無効な右矢印
  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×