幾千の夜、昨日の月 (角川文庫)

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  • KADOKAWA/角川書店
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レビュー : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (175ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041023860

感想・レビュー・書評

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  • 僕は夜や月というモチーフに弱い。
    秀逸なタイトルがまた 
    おいでおいでと僕を惹きつける。

    冒頭を飾る『かつて私に夜はなかった』がいいなぁ~。
    角田さんが子供時代に初めて家族で夜の銭湯に行き、夜の匂いや空気を肌で感じた思い出。

    角田さんは言う。
    『夜はときとして、私たちがひとりであることを思い出させる』と。

    そしてひとりであると気づいた夜には
    人はいろんなことを思う。
    未来には悪いことしか待ち受けてないような漠然とした不安だったり、
    あるときは、たったひとりでどこまでも歩いていけるような、根拠のない自信だったり、
    そしてあるときは、いつも傍にいた人が心から大切だと痛いほど分からせてくれる「気付き」だったり。

    夜は自分の心と対話する、
    そんな孤独を与えてくれるのだ。


    深夜の異国で不審なベンツに追いかけられたり、
    特に用もないのにコンビニ探して深夜の町を徘徊したり、
    モロッコの砂漠ツアーで
    UFOかと見間違うほど巨大な月に圧倒されたり、
    気弱な金髪青年を守らなきゃと 
    モロッコの強引な客引きと喧嘩したり、
    帰りのタクシー代も考えずに夜通し異国のディスコで踊ったり、
    コワいコワいと言いながら角田さん、
    夜に出歩き過ぎやし(笑)
    勇敢過ぎるでしょ~!

    それにしても走る豪華ホテルと言われるオリエント・エクスプレスに乗った話はホンマ羨ましい限り( >_<)
    知らない乗客同士で自己紹介した後は美しい景色を窓越しに見ながら、
    思い思いのアルコールを手に、
    ピアノ演奏に聴き入るバー・カーでのひとときの描写に
    僕の中の妄想列車もブレーキの壊れた暴走列車と化したのでした…(笑)
    (かたや車内をネズミが走り回り、開け放たれた窓からあらゆる虫たちがびゅんびゅん入り込んでくる(笑)
    ミャンマーで乗った地獄列車の話には笑った!)

    そして思いは届かなくとも
    好きな人といた間はすべてがきれいに見えたという、
    角田さんが過ごした夜をめぐる20代の切ない恋の話。


    施設で育った僕は怖がりのくせに、
    なぜか子供の頃から夜が好きだった。

    大人たちが寝静まった後に繰り出す深夜の散歩。
    昼とは違う神秘的な夜の町の顔。
    音も光も薄れて
    声をあげるとどこまでも響く感じに心ワクワクして、
    ただただ夜を歩くことに好奇心旺盛だったあの頃。

    月の下で食べる夜店の綿あめや、銭湯の帰りに食べる冷たいアイスはホント美味しくて、
    月の灯りの下では普段言えないコソコソ話や、
    隠してた本音がポロリと出たり、
    誰もがほんの少しおしゃべりになったりして。

    誰かと腹を割って話して
    「本当のその人」と出会えるのも
    圧倒的に夜で、
    夜だからこその力によるものが大きい。


    たっぷりした満月と凍えた夜空に、いくつもの星たち。
    色とりどりのキャンディーを散らかしたみたいな街や車の灯り。

    しんしんと降る雪の中を
    泣きながら両親を探した夜。

    エロ本を求め町を探検した(笑)、
    中学生男子だけの夜のピクニック。

    汗だくで駆け回った
    甲子園球場のナイター戦でのビール売りのバイト。

    家出して、飛び乗った電車の窓から見た
    冷たく尖った夜の月。

    凍てつくような寒さだった
    阪神淡路大震災直後の燃えさかる神戸の夜。

    ボクシングのデビュー戦でボコボコに殴られた夜に泣きながら食べ
    た屋台の夜鳴きそば。

    自分を作る様々な夜の記憶。

    そんないくつもの忘れがたい夜を思い出させてくれたエッセイです。

  • 夜をテーマにした旅エッセイ。
    角田さんはあらゆる土地を旅されてて凄い。一人でタイやエジプト、モンゴルなどを旅する勇気。それだけで尊敬に値する。
    子供の頃は夜がなく、恋をしたら夜が怖くなくなるという件…わかるなぁ。この本には様々な夜が描かれていて、ただ毎日巡ってくる暗い時間という訳ではないんだと実感させてくれる。夜は怖くて、魅力的だ。

  • うん、うん、と頷きながら読み終わった。
    私は一人旅は二回しか行ったことがないけれど、その夜はどこか特別だったような気がする。
    そして、旅先で見るものは何故か、同じものでも違って見える。本当に不思議だ。

  • 夜に関するエッセイ。旅先の夜、学生だった頃の夜、引っ越しした最初の夜、、、夜にはいろいろな表情があるということを思い出させてくれる本でした。

    よく、夜書いた手紙(今の時代は手紙ではなくメール?)は朝読み返してから送ったほうがいいと聞きます。夜は私たちを昼間よりも少しだけ感情的にしてしまうから。でもだからこそ夜が好き。自分が過ごしてきた幾千もの夜の中の、自分にとっての特別な瞬間を思い浮かべながら読みました。

  • 夜にまつわるエッセイ。深くなっていく夜や、明けていく夜の表現が素晴らしい。

  • 私も夜が怖いと思うことがよくある。
    朝になり、日の光を見ると不思議と恐怖感は薄らぐ。
    角田さんの奔放な旅のエッセイが好きです。
    平和だからこそ、の旅。今読むと、心が痛いです。

  • 20170610読破

  • 同じ夜はない
    こんなにも様々な夜を感じることができるなんて
    すごいと思った
    挿画が素敵

  • 角田さんの旅の話、好き。
    夜についてあまり考えたことはない。

  • 小説でない角田さんを読むのは初めてでしたが、エッセイも、良いですねえ。小説よりも、エッセイの方が、より、その人柄がでる、といいますか、角田さん、なんというか、芯の所で、強い人だな、逞しいな、と思った次第です。で、ちゃんとしている。うん、ちゃんとしている。素敵だなあ。

    でないと、こんなに、色んな旅行できないっしょ。色んな旅をして、色んな夜を見て、色んな抱え込んだ自分の思いを、ちゃんと、できるだけちゃんと、誰かに伝える事、できないっしょ。羨ましいです。角田さんが。自分の思いを語る言葉を持っている、という人は、羨ましいよなあ、ホンマ。

    旅先での様々な夜が出てきますが、自分は殆ど旅行をしないですし、海外も一度も行ったことがないので、角田さんが描写する異国の夜よりも、日本の身近な夜のほうに、圧倒的に親近感が湧きました。

    引っ越し前夜の夜、引っ越し後の初日の夜を描写した「それを知る必要がある」

    病院という建物の中の夜の寂しさと優しさ、冷たさとホッとする感じを描写した「魂が旅する夜」

    は、なんというか、凄く素晴らしいですね。「すっごくわかる!あの感じ!」というのを、見事に、バッチバチに、自分の言葉で、自分の文章で、表しているというのは、本当に羨ましいなあ、凄いなあ。

    あと、西 加奈子さんの解説も、凄く良いです。角田光代さん、という人が、どういう人なのかを、物凄く愛情をこめて、語っておられる気がします。西さんの小説も、読んでみたくなったなあ。

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