罪の余白 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
3.25
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本棚登録 : 457
レビュー : 51
  • Amazon.co.jp ・本 (309ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041023877

作品紹介・あらすじ

高校のベランダから転落した加奈の死を、父親の安藤は受け止められずにいた。娘はなぜ死んだのか。自分を責める日々を送る安藤の前に現れた、加奈のクラスメートの協力で、娘の悩みを知った安藤は。

感想・レビュー・書評

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  •  一人娘の転落死の真相を追う大学講師の父親の姿を描いたサスペンス。

     小説のテーマはどちらかと言うと使い古された感のあるものだったのですが、非常に巧くまとまった秀作だったと思います。

     心理描写が個人的に良かったです。娘を失った父親の後悔などの心理描写はもちろんのこと、ヒエラルキーや仲間外れを恐れる女子高生の心理描写、そして自分の行為が明るみに出ないか恐れる心理描写が非常に真に迫っていてサスペンスフルで読まされます。

     登場人物でもう一人重要な位置にいるのが主人公安藤の同僚の小沢早苗。アスペルガー症候群などではないものの、相手の言い回しや比喩表現が理解できない彼女と、安藤のやり取りが安藤の、そして陰鬱なストーリーのこの本の救いでもあります。
    複雑な人間関係や”空気”というものに対し彼女が無自覚で、冷静に外から見ているからこそ、彼女の心理描写が描かれる場面は一種のエアポケットのような安心感がありました。

    第3回野生時代フロンティア文学賞

  • 女子高生の娘がいじめで自殺したとわかった時、父の復讐がはじまる。狡猾な女子高生は裏をかき、自分だけは復讐の魔手から逃れようとするが……

    話にしてみればシンプルな内容で謎らしい謎もないのだが、妻をガンで失い、そのうえ娘加奈を失った安藤の壮絶な日常や、いじめていた側の咲、真帆の少女特有の自意識過剰や仲間外れにされることへのすさまじい恐怖が、とにかく詳細に描かれているので…読んでいくと疲れてしまうかもしれない。

    その中で特異な位置にいるのが、安藤の同僚で他人の気持ちが理解できない、言葉通りに受け止めてしまうことを悩む早苗の存在だ。理解されない、してあげられない年月を重ねた末、他人と関わらないことを選んでいた早苗が、安藤には関わっていく。彼女の存在が普通の復讐モノ(?)とは違ったものとなっている気がした。

    そして安藤が咲を試すラスト。咲はどう応えるのか? 本当に反省していれば死ぬことはないと聞き…面白かったですね。ただちょっと都合よすぎな気もしたので(どこがかはネタバレになるので言えないが)、普通に☆3つ。

  • 学校のベランダから転落して一人娘を亡くした父親が、その真実を追ううちに、いじめの事実に突き当たっていき、そして…というサスペンス。
    理性を保っていたはずの父親が、あるエピソードをきっかけに強い殺意を抱く場面が恐ろしくてそして哀しい。その憤りと気づけなかった自らに抱く後悔が限界まで高ぶって、あまりにも残酷だと感じました。
    父親の敵となる女子高生は生々しい造形で、エゴのかたまりな行動と言動のすがすがしいまでの迷いのなさには彼女の空虚さの深さを感じ取りました。誰よりも実は彼女の思考は幼い。けれど発達した知能が、ひどく冷酷な結果を抱いていくという歪みがリアルに迫るように感じました。
    もうひとりの大学教員の女性のキャラクタもまた一つのスパイスとなり、双方の「対決」を冷静な視点から眺める役割ともなっていて面白いなと思いました。彼女ほどは行かなくても、巧く相手と距離感をつかめないと感じるときはだれしもあるもので、だから彼女に親近感や頑張ってほしいという気持ちを抱きもしました。

  • なんか、モヤモヤする本だなぁ。
    読んでる間も、読んだ後も。
    正体わかってて罠にかけようとするくだりは読めるんだけど、なんかなぁ。
    結局、理不尽に大切な人を奪われると、どんなことをしても気は晴れないんだよね。
    全く同じような思いを味わわせたくても、子どもを子どもに殺されたら、どうしようもないね。
    その犯人に、子どもができるまで待って実行に移す?
    現実味がないし、子どもを失って悲しみに暮れる思いを知っていればいるだけ、そんなことはできない。
    難しい。
    どれだけ、大切な命を失うことに関与していたのかを自覚して、自分の身を責め苛んでほしいと思うけど、そこまでできるくらいなら、最初からそんな酷いことできるわけない。
    この問題は、ほんと際限ない。

  • どうしよう、お父さん、わたし、死んでしまう…。安藤の娘、加奈が学校で転落死した。「全然悩んでいるようには見えなかった」。クラスメートからの手紙を受け取った安藤の心に、娘が死を選んだ本当の理由を知りたいという思いが強く芽生える。安藤の家を弔問に訪れた少女、娘の日記を探す安藤。二人が出遭った時、悪魔の心が蠢き出す…。女子高生逹の罪深い遊戯、娘を思う父の暴走する心を、サスペンスフルに描く!

  • 意味深なタイトルに惹かれて手に取った一冊。なかなか良かったです。

    いじらしいほど「いい子」な加奈が、くだらない交友関係のために命を落としてしまうなんて… 自分が安藤聡の立場だったら、我を忘れて咲に復讐するだろうな、と思います。そうした点でどういった結末になるかが気になって、かなり興味を持って最後まで読み進められました。

    一点だけよくわからないのが小沢早苗の設定。アスペルガー症候群ぽい感じですが、この設定の必然性があまり感じられず。作品内のすべての設定に必然性がなくてはならない訳ではないですが、何となく「なんでこの人、こういう設定なのかな?」と疑問に思ったもので…

  • 娘を失った父親の悲しみと、思春期の女の子たちの自意識。ミステリとしても、登場人物たちの心の動きの描写も引き込まれて読んだ。初めて読む作家さんだけど、面白かったな。認知的な行きづらさを抱える女性や、ペタという熱帯魚のからませ方なども、なかなか魅力的な世界を見せてくれた。ちょっと盛り込みすぎかとも思えなくはないけど、エンターテイメントとしては、きれいにまとまっていたんじゃないかと思う。この作家さんの作品、もう少し読んでみたいな。

  • どうというとことろのないよくある痛々しい話。咲と早苗の登場人物の造形はなかなかユニークで、特に早苗の人物像は出色。物語のテーマとは直截関係しないのだけれど、この魅力ある人物の抱える懊悩の克服が主人公や彼女自身もまた救いへと導くという展開は読後感をよいものにしている。

  • まず、この著者は映像の言語化がとても上手で映画やドラマを見ているように小説を読むことができる。回りくどくなくて、自己陶酔してるわけでもなくて、中立的で客観的な表現でもって世界観を構築している印象を受けた。内容はイジメ。加害者が陰湿であることは間違いないが、センセーショナルなほどえげつないイジメというほどの描写はなされておらず、どちらかというと、ナルシスや自己愛、現実逃避、責任転嫁などの痛々しいほどの負のストレス回避法の成れの果てのような内容だった。これはこれでえげつない発想ではあったが。死んだ娘の父親の側にいる小沢さんの存在がちょっと謎めかしい。存在の必要理由がピンとこないが、父親の精神崩壊をすんでのところでとどめ続けた立役者…なのかな?この人が登場するのと登場しないのでは、小説のテイストはどう変わるのかも気になるところです。

  • 初読みの芦沢央さん。娘を自殺で亡くした父親と死に追いやった同級生の心理戦という設定に惹かれた。スクールカーストや女学生の心理は女性ならではの描写力だし、女子高生の思考原理が短絡的なのも妙にリアル。複数視点の導入により腹の探り合いが上手く描写されている。気になったのは時系列の表示が分かり難いこと。解説にもあるように後半早苗さんは完全に持て余されていた。しかし、主人公に救いがなさすぎるのは辛い…。

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著者プロフィール

1984年生まれ。千葉大学文学部卒業。出版社勤務を経て、2012年『罪の余白』で第3回野性時代フロンティア文学賞を受賞しデビュー。著作に『今だけのあの子』『悪いものが来ませんように』『いつかの人質』『雨利終活写真館』『獏の耳たぶ』、最新作に『バック・ステージ』がある。

「2018年 『いつかの人質』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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