営繕かるかや怪異譚

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 1370
レビュー : 261
  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041024171

作品紹介・あらすじ

ありふれた日常の、どこにでもある古い家で起こる不思議な出来事は怪異が原因であるのですが、その怪異に蝕まれた家を主人公である営繕かるかやが補修していくという話の流れです。ミステリーなどとは違う不思議なホラー体験が小野不由美さんの独特の世界観で描かれているのが営繕かるかや怪異譚で、短編として6編おさめられています。

感想・レビュー・書評

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  • 「建築物の描写がうまい小説家」と杉江松恋さんが小野不由美さんを評していたのが気になって読みました。「奥庭より」の冒頭からびしびしその空気を感じます。

    説明を重ねれば重ねるほどわかりにくくなりがちな建築物の描写。表現力の拙い私なぞは諦めて図面をつけちゃいたい!とさえ思うのですが、本書では実に明解なイメージとともに、入ったこともないその家の姿を浮かび上がらせてくれます。登場人物の背景に常にある「家」をきちんと描いているからなのでしょう。

    生きていけばぶち当たる、自分の思い通りにならないこと。「イエ」もそのひとつ。自分の努力でどうにもできないことの裏には凄まじい執念や怨念などの魔が宿りやすいものです。「家」は籠もる人間の想いを静かに見つめる目撃者であり、その想いの障りから守る庇護者であり、凄まじい怨念を抱かせる原因の束縛者でもあります。

    本書ではびっくりするぐらい依頼者の「なぜ?」「どうして?」には答えてくれません。なんでかはわからないけど、こうすれば対処ができる。対処しか出てこないのは、問題の原因を探っても、それを根本的に変えることができないからなのではないでしょうか。努力で変えられない問題のほうが、生きていくうえでは多いように思います。

    本書の一番最後に収録されている「檻の外」は、対処できない問題にがんじがらめになっているのが私自身だったらどうすればいいのか。そうした場合においての作者からの答なのだと思います。

  • 面白かったー!一気に読んでしまった。何となく怖いモノがあったとき、それとの付き合い方を考えてくれる営繕さんがいたらどうだろうかって話。
    成仏させたり供養したりして解決するのではなく、付き合い方を考える。
    普段の生き方にも通じる考え方だなと思う。

  • 小野不由美さんのどこの誰にでもあるような日常の
    ふとした違和感を書くような文章が本当に好き。
    残穢も読んだけど、あれと同じような
    お化けが飛び出してくるリングとか、
    ゾンビに襲われるバイオとかみたいなホラーじゃなくて
    こういう身近にありそうで
    気づいてしまうと忘れられないホラーが好きな私にはうってつけだった。
    障りのあるところをなおす…なるほどなぁと思った。

  • 切なく、読後感は不思議とさわやか。
    怪異が起これば、生きている人間は恐怖を感じる。
    しかし悪意や害意はあまり感じず、祓い消滅させるべきものとも思えない。
    生きていないものに寄り添い、生きている者が共存できるようにする。
    除霊ではなく、営繕というアプローチが優しい。
    特に「檻の外」は泣けた。

  • 恐れに対し、奉るのでも封じ込めるのでも攻撃するのでもなく、ただ干渉しあわず互いのまま共存できる方法をとる、という考え方にちょっと目から鱗でした。
    そこに、必ずしも理解が必要なわけではない、というのがまた好い。互いの在り様への尊重がありさえすれば。
    何はともあれ、充分に怖かったけれど。

  • 面白かった! 思ったよりライトに読みこなせる。怖さと切なさが同居した感じ。
    家にまつわる怪奇現象を、不思議な力を持つ営繕屋・尾端が修繕して解決する話。
    霊を鎮めるのではなく、共存したり、広い世界に出してやったりという解決の仕方。

    ・奥庭より
    亡き叔母から引き継いだ家には、箪笥で入り口をふさいだ部屋があった。気付くとそこはいつも開いていて、何かが出てこようとしている。どうやら女の霊らしい。主人公・祥子の家系は不思議と短命だった。それはその女の霊が関わっているに違いない。
    病に苦しみ、閉じ込められて死んだ霊を慰められるように、部屋に窓を設けて庭と繋げ、そこに水場を作ってやることで解消。

    ・屋根裏に
    屋根裏を誰かが歩く足音がする、という。屋根裏を取り去り、リフォームしてもそれは続いた。リフォームの際、屋根裏からはお守りのような瓦が出て来ていた。
    足音の正体は、河童とよばれた怨霊だとわかる。一度は表に出した屋根裏の一部を閉じ、瓦を再び戻すことで解消。

    ・雨の鈴
    袋小路に住む独身の七宝焼き作家・有扶子が主人公。
    雨の日に鈴を持った喪服の女が佇んでいる。その女は生きている者ではなさそうで、家に入られると不幸になると言われていた。それは雨のたびにだんだんと向きを変え、袋小路の有扶子の家に近づいてくる。
    幽霊なのに壁にぶつかるまでまっすぐ進むと言う機械的な感じが奇妙。
    袋小路の行き止まりにある門の形状を変え、細い路地に女の霊を導いて袋小路から外に出してやることで解消。

    ・異形のひと
    親の転勤で都会からど田舎に引っ越すことになった中学生の真菜香。
    地域や学校に馴染めないでいる真菜香はある日家の中でお爺さんの霊を見る。
    やがてお爺さんの霊はあちこちに現れ、真菜香を脅かすようになる。
    そのお爺さんはかつて家で家族から虐待され、逃げ場を求めて家中を逃げ回り、隠れた。食べ物もろくに与えられず、死んでいったらしい。
    お爺さんの霊に安心して隠れてもらうための場所を家の中に作り、解消。

    ・潮満ちの井戸
    家にある古い井戸水を庭にまくと、なぜか庭木が枯れていく。実は井戸水は汽水(薄い海水)。そこは海に通じていた。
    井戸を通じて、海で死んだ者たちの霊が出てくる気配がする。
    シンプルに、井戸を埋めることで解消。

    ・檻の外
    シングルマザーの麻美が転がり込んだ古い家には車庫があった。そこに止めた車がたびたび不具合を起こし、車庫のシャッターが突然降りてきて子供が下敷きになる寸前になるなど、嫌な出来事が続く。やがて車の中に子供の霊が現れるようになる。
    最初は車が霊象の原因かと思われたが、実は車庫そのものが災いの元だった。
    かつてその車庫に虐待された子供が閉じ込められ、一酸化炭素中毒で死ぬ事件が起きていた。
    車庫のシャッターを取り払い、見通しの良い柵にして、子供の霊を外へ出してやることで解消。

    どの話も、霊を鎮めるわけではなく、共存する方法を取る。
    霊現象を通して、各登場人物たちの心に起こる前向きな変化が良い。
    怖い話なのに読後感は爽やか。見事です。

  • ◆『奥庭より』
     亡くなった叔母から受け継いだ古い町屋
     奥座敷の襖が開く…。何度閉めても開く…。

    ◆『屋根裏に』
     古い武家屋敷。老いた母が屋根裏に誰かいる。歩いている…。

    ◆『雨の鈴』
     袋小路の奥に建つ古家を祖母から受け継いだ。
     雨の日喪服姿の女が鈴の音と共に佇む…。

    ◆『異形のひと』
     引っ越して来た古びた田舎家
     痩せこけた老爺を家の中のそこここでみてしまう…。

    ◆『潮満ちの井戸』
     古家の庭の井戸の神様を祀ってあった古い祠を壊してしまう。
     あれ以来何かが可怪しい…。ゆっくりと庭が腐り始めたように思えてならない…。

    ◆『檻の外』
     古家のガレージ。車のエンジンが良くかからない…。
     子供の姿が…ママと呼ぶ声が…。


    古い家に起こる家の障り
    人が住めば疵が付く、良い疵もあれば、悪い疵もある。
    古い家にはそんな疵が折り重なっているもの
    それこそが、時を刻むという事なんでしょうね。

    家の障りを「修正」する方法が素晴らしい。
    修正するのが、営繕かるかやの尾端さん
    霊能力者でもなんでもなく大工さん
    怪異を忌み嫌ってお祓いをするんじゃなくて
    怪異の意に寄り添って家の補修やリフォームを提案してくれる。
    障りになる疵は障りにならないよう直す。

    日常生活のそこかしこに「いないはずのもの」を感じさせてくれた。
    やはり、じんわりホラーでした。

  • 家にまつわる怪異を営繕屋が解決するという短編集。しかし、解決する前の怪異のありようが詳しく描かれ、時にはそれが哀れを誘う。

  • こわい。そして、やさしい。
    この世界観が気に入って、短期間に3回も読んでしまった。
    大工の尾端さんは、得体が知れないものたちを退治するのではなく、住人が彼らとうまく付き合っていく手伝いをする。その仕事は『蟲師』のギンコと通じるところがあって、漆原友紀さんの装画はピッタリだった。
    リフォームを提案する尾端さん、棟梁の隈田さん、僧侶の秦さんの言葉が胸にジーンときた。
    また一つ、楽しみなシリーズが増えたなぁ…。

  • 古い町家の多い城下町で起こる家に纏わる障りや怪異、それを直す営繕の尾端のお話。

    尾端は最後にちょこっと出てきて、住んでいる人とそこに出るモノを救ったり、障りを直したりする。
    だんだんと近づいてくる喪服の女が怖かった。逃げられない感じが本当に袋小路みたいだし、その存在の異質さやラストがちょっと八尺様っぽくもあり、過ぎる17の春の母親っぽくも感じられる。
    開かずの間の女も現象だけだとすごく怖いけど、こっちは尾端の営繕によって読んでるいるこちらもガラッと視点が変わり、共存できるというか、救われる感じがあった。
    ガレージの子供や隠れるおじいさんも同様に。
    封じていたモノを損なってしまい、再発する怪異を描いた井戸の手や河童の話は、もっと背景事情が知りたいなと思う話だった。
    全体的には障りには不幸な、同情を感じる人の死が多くて、それを鮮やかに解決してくれる様はさすが読ませてくれるなぁと思った。長編とは違って、がっつりな怖さはあまりないけど、楽しかった。

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著者プロフィール

小野 不由美(おの ふゆみ)
1960年生まれ、大分県中津市出身の小説家。大谷大学在学中に京都大学推理小説研究会に所属。夫は推理作家の綾辻行人。
1988年、『バースデイ・イブは眠れない』でデビュー。2013年5月、『残穢』で第26回山本周五郎賞を受賞。代表作にテレビアニメ化された『悪霊シリーズ』、『十二国記シリーズ』、『屍鬼』など。

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