営繕かるかや怪異譚

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 1790
感想 : 312
  • Amazon.co.jp ・本 (268ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041024171

作品紹介・あらすじ

ありふれた日常の、どこにでもある古い家で起こる不思議な出来事は怪異が原因であるのですが、その怪異に蝕まれた家を主人公である営繕かるかやが補修していくという話の流れです。ミステリーなどとは違う不思議なホラー体験が小野不由美さんの独特の世界観で描かれているのが営繕かるかや怪異譚で、短編として6編おさめられています。

感想・レビュー・書評

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  • 頼りにしていた営繕屋さんが、霊感もなくお祓いもしないというので、初めはそんなぁと思いましたが、解決していたので一安心。祓うのじゃないというのが、珍しいと思いました。
    「雨の鈴」が怖かったです。

  • 何度閉じても開く襖、屋根裏を這い回る跫音、雨の日に現れる喪服の女、扉を開けるといる老人、井戸から出てくる生臭いモノ、ガレージに現れる子供。

    様々な怪異現象を解決する『営繕かるかや』の尾端。
    彼自体は霊能者でも見える人でもない。まれにお寺の僧侶を連れてくることはあるものの、解決方法はあくまでも家の修繕。

    怪異という不可思議なものと、物理的な解決法という相反するものが面白い。
    喪服の女と井戸の話はゾッとしたし、ガレージの話は辛かった。
    全体に通して言えることは昔の人がやったことには一見迷信や意味のないことのないように見えて、ちゃんと意味があることが多いということ。
    昔から井戸や大木を触るときはお祓いをするように、古いものを動かす、あるいは廃棄するときは慎重にということだろうか。

    文体が淡々としているし、解決後はサラッと書かれているので物足りなさはあるが、尾端のテキパキしているようで気配りもある話し方も良く安心出来る。
    最近続編が出たようなので、尾端の更なる一端が見られると嬉しい。

  • ◆『奥庭より』
     亡くなった叔母から受け継いだ古い町屋
     奥座敷の襖が開く…。何度閉めても開く…。

    ◆『屋根裏に』
     古い武家屋敷。老いた母が屋根裏に誰かいる。歩いている…。

    ◆『雨の鈴』
     袋小路の奥に建つ古家を祖母から受け継いだ。
     雨の日喪服姿の女が鈴の音と共に佇む…。

    ◆『異形のひと』
     引っ越して来た古びた田舎家
     痩せこけた老爺を家の中のそこここでみてしまう…。

    ◆『潮満ちの井戸』
     古家の庭の井戸の神様を祀ってあった古い祠を壊してしまう。
     あれ以来何かが可怪しい…。ゆっくりと庭が腐り始めたように思えてならない…。

    ◆『檻の外』
     古家のガレージ。車のエンジンが良くかからない…。
     子供の姿が…ママと呼ぶ声が…。


    古い家に起こる家の障り
    人が住めば疵が付く、良い疵もあれば、悪い疵もある。
    古い家にはそんな疵が折り重なっているもの
    それこそが、時を刻むという事なんでしょうね。

    家の障りを「修正」する方法が素晴らしい。
    修正するのが、営繕かるかやの尾端さん
    霊能力者でもなんでもなく大工さん
    怪異を忌み嫌ってお祓いをするんじゃなくて
    怪異の意に寄り添って家の補修やリフォームを提案してくれる。
    障りになる疵は障りにならないよう直す。

    日常生活のそこかしこに「いないはずのもの」を感じさせてくれた。
    やはり、じんわりホラーでした。

  • とある城下町を舞台に、住居にまつわる怪異を「営繕かるかや」の尾端が修繕していく短編集。六話が収録されています。

    古い町、古い家ならではの“陰”な雰囲気が良く出ていて、じわじわとくるものがあります。
    営繕屋の尾端さんは、あくまで修繕をする人で、霊能者のように怪異を“解決”するのとは少し違うのですね。
    “繕う”ことによって、常世と現世のバランスをとって調整するような感じかなという印象を受けました。
    第一話「奥庭より」第四話「異形のひと」第六話「檻の外」は、怪異の背景にあったとされる出来事が結構残酷で、胸が痛みました。
    そして個人的には第三話「雨の鈴」に出てきた“喪服の女”にゾワっとしました。一見佇んでいるだけのようですが、実はとても禍々しくて、しかも彼女があらわれる理由がわからんというのが、めっちゃ怖くないですか。マジで来ないでほしいです。
    そんな中で尾端さんが登場するとホッとするのですが、各話ちょっとずつしか出番がないので、彼も謎といえば謎の人かもしれません。
    続編も一緒に借りてきたので、これからまた異世界の入り口を覗きにいこうと思います。

  • 「建築物の描写がうまい小説家」と杉江松恋さんが小野不由美さんを評していたのが気になって読みました。「奥庭より」の冒頭からびしびしその空気を感じます。

    説明を重ねれば重ねるほどわかりにくくなりがちな建築物の描写。表現力の拙い私なぞは諦めて図面をつけちゃいたい!とさえ思うのですが、本書では実に明解なイメージとともに、入ったこともないその家の姿を浮かび上がらせてくれます。登場人物の背景に常にある「家」をきちんと描いているからなのでしょう。

    生きていけばぶち当たる、自分の思い通りにならないこと。「イエ」もそのひとつ。自分の努力でどうにもできないことの裏には凄まじい執念や怨念などの魔が宿りやすいものです。「家」は籠もる人間の想いを静かに見つめる目撃者であり、その想いの障りから守る庇護者であり、凄まじい怨念を抱かせる原因の束縛者でもあります。

    本書ではびっくりするぐらい依頼者の「なぜ?」「どうして?」には答えてくれません。なんでかはわからないけど、こうすれば対処ができる。対処しか出てこないのは、問題の原因を探っても、それを根本的に変えることができないからなのではないでしょうか。努力で変えられない問題のほうが、生きていくうえでは多いように思います。

    本書の一番最後に収録されている「檻の外」は、対処できない問題にがんじがらめになっているのが私自身だったらどうすればいいのか。そうした場合においての作者からの答なのだと思います。

  • 小野不由美さんのどこの誰にでもあるような日常の
    ふとした違和感を書くような文章が本当に好き。
    残穢も読んだけど、あれと同じような
    お化けが飛び出してくるリングとか、
    ゾンビに襲われるバイオとかみたいなホラーじゃなくて
    こういう身近にありそうで
    気づいてしまうと忘れられないホラーが好きな私にはうってつけだった。
    障りのあるところをなおす…なるほどなぁと思った。

  • 久しぶりの小野不由美さん。やっぱりまちがいないなー。

    ただのホラーで終わらない。どこか、人間味といったらおかしいけど、物哀しくて、切なくて、寄り添ってあげたくなるようなお話ばかりでした。

    本のタイトルを見たときは、なんのこっちゃ?やったけど、今までになかった新しい設定が新鮮で、さくさく読み進められます。

    怖いものに、ただ蓋をして閉じ込めるのではなく、救ってあげる。そんなお話の連続でした。

  • 石畳の残る、古い城下町が舞台になった短編集なのだけど、しっとりとした情緒が満ちていて物語に浸っていて終始心地が良かった。目に見えないものを孕んだ空気の描がき方がとても大好きです。
    怪談専門誌『幽』に連載されていたとあり、背筋がゾクゾクっとする怖さはあるのだけど、えげつないような怖さではなく、匙加減が実に上品に思えた。
    もっとこのシリーズを読んでみたいと思ったし、小野不由美さんの他の作品にも興味が湧いた。

  • 切なく、読後感は不思議とさわやか。
    怪異が起これば、生きている人間は恐怖を感じる。
    しかし悪意や害意はあまり感じず、祓い消滅させるべきものとも思えない。
    生きていないものに寄り添い、生きている者が共存できるようにする。
    除霊ではなく、営繕というアプローチが優しい。
    特に「檻の外」は泣けた。

  • 恐れに対し、奉るのでも封じ込めるのでも攻撃するのでもなく、ただ干渉しあわず互いのまま共存できる方法をとる、という考え方にちょっと目から鱗でした。
    そこに、必ずしも理解が必要なわけではない、というのがまた好い。互いの在り様への尊重がありさえすれば。
    何はともあれ、充分に怖かったけれど。

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著者プロフィール

大分県生まれ。1988年作家デビュー。「悪霊」シリーズで人気を得る。91年『魔性の子』に続き、92年『月の影 影の海』を発表、「十二国記」シリーズとなる。『東亰異聞』『屍鬼』『黒祠の島』は、それぞれ伝奇、ホラー、ミステリとして高い評価を受けている。「悪霊」シリーズを大幅リライトし「ゴーストハント」として2010年~11年刊行。『残穢』は第26回山本周五郎賞を受賞。『鬼談百景』『営繕かるかや怪異譚』『営繕かるかや怪異譚その弐』など。2019年、十二国記最新刊『白銀の墟 玄の月』を刊行し話題に。

「2021年 『ゴーストハント7 扉を開けて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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