怪獣文藝の逆襲 (幽BOOKS)

  • KADOKAWA/角川書店
3.10
  • (2)
  • (5)
  • (18)
  • (2)
  • (2)
本棚登録 : 68
レビュー : 21
  • Amazon.co.jp ・本 (317ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041024195

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  •  怪獣映画はガチのリアリズムがないとだめだ。非現実としかいいようのない怪獣を召喚するにはまわりからリアルに固めていかねばならない。某ゴジラ映画には夢オチのが一本あって子供心にもあれは腹が立ったな。しかしまた、映画においてはとにもかくにも怪獣が出てきて、それが「絵」としてよくできていたら、放射能で巨大化したとかいうしょぼい設定であっても、それだけで説得力を持つ。何しろ人間は視覚をもっとも信じるのだから。
     だから視覚を欠く怪獣小説は最初からハンディを負っているのだと思う。

     本書は『怪獣文藝』の続編。続編といってもそもそもアンソロジーだから、話がつながっているわけではなくて、第2弾ということである。『怪獣文藝』のほうは読んでないのだが。

     で、その夢オチというか、最初から主人公が繰り返し見る怪獣の夢の話で押していくのが有栖川有栖。こういうのもありか。
     怪獣小説でリアリズムを追求すると、怪獣対策の行政組織ができて、というようになるだろうが、それは山本弘の『MM9』シリーズ。大倉崇裕は同工異曲の設定で、しかし怪獣の至近距離で迫力ある写真を撮って売る人々「怪獣チェイサー」を登場させたのが目新しい。
     その山本弘は別種のリアリズムを、かつてあった冒険物語──映画にもあったような、少年雑誌にもあったような──を復興させることで得ようとする。20世紀半ばの密林、怪しい宗教団体、生け贄にされる半裸の少年、そこに現れる巨大生物。ほらなんだか懐かしい。
     冒頭にはいまや特技監督の第一人者である樋口眞嗣が若いころに書いた怪獣映画の企画書が掲載されている。題して「怪獣二十六号」。土木機械で怪獣に立ち向かうのである。
     美しかった母親は50歳を過ぎたころから急激に老婆のように老け込み、山に捨ててくれと言い出すようになった。梶尾真治「ブリラが来た夜」。「ブリラ」の名の由来が面白い。
     怪獣とは少年の破壊衝動の具現化である。そしてそれが現実化したら世界は破滅する。ということを太田忠司はよくわかっているようだ。黒い虹を出す怪獣というのは『ガメラ対バルゴン』を踏まえているのだろうが、作品の暗い雰囲気に禍々しさを添えていて秀逸。
     今度怪獣映画を公開する園子温監督は自主映画時代のエッセイだかフィクションだかわからないものを寄せている。怪獣が登場するのは「怪獣映画を撮った」とほらを吹いているところのみ。
     脚本家小中千昭は東京地下の巨大ミミズをカルトに描くが、ちょっとシノプシス調。
     もと角川書店社長の井上伸一郎の処女作は、時代劇というか元寇の時代が舞台で、『ガメラ』シリーズへのオマージュとなっている。これだけが二大怪獣対戦である。

     以上8編。私は結構楽しんだ。
     怪獣というと、破壊される大都会、応戦する自衛隊がステレオタイプでもあり期待されるところでもあるのだが、それは最初に述べたように周囲をリアルで固めていくことである。ここでも多くの作品がありきたりな現代生活に怪獣を登場させているのは、怪獣にリアリズムを持たせる方策かもしれない。だから遠未来を舞台にしたものとか、スペースオペラ+怪獣といった趣向がないのだろう。
     ただ、「怪獣文藝」の場合、特撮映画とはやはり違う線を追求せざるを得ないのであろうから、私は本書では第一に太田忠司「黒い虹」、次に園子温「孤独な怪獣」が面白かったとしておこう。

  • ☆5つ

    いつも通りに巻末の「解説」から読む。解説を書いたのは東雅夫という人。知らない。で、その後に作者陣の生年月日等のプロフィールを書き示したPageが続く。当然そのまま全部読んだ。そしたら全9人の執筆陣の内たぶんわたしと同級生が4人。一番若い田島光ニくんは悪いがちょっとはづしておいて、後の方々も大体同世代の人たち。

    そうです映画やテレビで「怪獣」を観て、寝られなくなったり心身に一時的でわあるが支障をきたした世代なのである。ちなみにわたしは『サンダ対ガイラ』を観た時何歳だったか記憶が定かではないが、確かに寝られなかった。寝てる間に食われる!と真剣に思った。

    本書の前作『怪獣文藝』や、系譜は別だけど内容的には限りなく近い『MM8』、『MM9』などと並んで、わたくし りょうけん のツボに嵌る作品集なのでございます。

    ただ、ウルトラマンは決してここには出てこないので、登場させてしまった怪獣のあと始末をどうするかが結構重要なストーリーのポイントとなっている。
    最初から人間の武器の方が強い場合(この場合わ撃退の方法がメインストーリーになる)。

    なぜか第二の正義の怪獣が現れてケリを付ける場合。
    人間わみぃんな殺られてしまう場合。
    人類が別の場所へ逃げてしまう場合。別の星とかタイムマシンで、とか異次元へとか。

    まあ、いろんなパターンがあるのだ。別にどのパターンでも不服は無い。面白ければそれでいい。でもやはり幼児期からズバリ怪獣とともに成長した私達の世代には堪らないのです。
    え、ではなんですぐにベストセラーにならないのか?って。いやぁー、みんなちょいとはづかしいのですよ。わはは。

著者プロフィール

有栖川 有栖(ありすがわ ありす)
1959年、大阪市東住吉区生まれの小説家・推理作家。有栖川有栖・創作塾の塾長。
同志社大学法学部法律学科卒業後に書店へ就職。それまでも学生時代から新人賞や雑誌への投稿を繰り返していたが、1989年江戸川乱歩賞に投稿した『月光ゲーム Yの悲劇 '88』が東京創元社編集長の目に止まり、大幅に改稿した上で刊行し、単行本デビューとなった。1994年、書店を退職して作家専業となる。1996年、咲くやこの花賞(文芸その他部門)受賞。1999年から綾辻行人と共作でテレビ番組『安楽椅子探偵』シリーズ原作を担当する。
2003年、第56回日本推理作家協会賞(長編および連作短編集部門)を受賞した『マレー鉄道の謎』、2007年発表作で「本格ミステリ・ベスト10」で第1位、「週刊文春ミステリーベスト10」で第1位、「このミステリーがすごい!」で第3位、「黄金の本格ミステリー」に選出と高く評価された『女王国の城』など、多くの作品がミステリ賞で高く評価されている。
2000年11月より2005年6月まで、本格ミステリ作家クラブ初代会長を務める。

怪獣文藝の逆襲 (幽BOOKS)のその他の作品

有栖川有栖の作品

ツイートする