藤原定家●謎合秘帖 幻の神器 (角川文庫)

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  • KADOKAWA/角川書店
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感想 : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (398ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041024881

作品紹介・あらすじ

藤原定家はある日、父俊成より三種の御題を出された。これを解いた暁には「古今伝授」を授けるという。公家社会に起こる政治的策謀と事件の謎を追い、背後に潜む古代からの権力の闇に迫る鎌倉和歌ミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • 鎌倉時代初期、藤原定家を主人公にした小説。定家の父の俊成から「古今伝授」を受け継ぐためには、三種の御題を解かなければならない。その俊成が誘拐されてしまい、解放されには早急に三種の御題を解かねばならなくなる。美形だが毒舌びんびんの僧侶長覚と紀家の少年潮丸の助けを得て、謎解きと父俊成の解放に奔走する。
    折句、隠し題、本歌取りなど和歌の技法が散りばめられた謎に感心する。篠綾子さん、和歌の蘊蓄が好きだねえ。もともと高校の古典の先生だったというから、好きな和歌に邁進と言う感じだね。定家は意外と優柔不断な常識人に描かれている。

  • 後鳥羽天皇の御世、まだ、左近衛少将 因幡権介の、藤原定家は、帝の外祖父で、天下を牛耳ろうとしている、源通親と、定家が支えている、関白九条兼実の息子、良経の二人から、「定家の御子左家に伝わる『古今伝授』を授けてくれれば、官位、財宝、何でも差し上げよう」と、言われる。

    『古今伝授』とは、「古今和歌集」を編んだ紀貫之が弟子に伝授した、歌の指南書と言われているが、単なる、歌の書ではなく、天下を二分する政争の具となり得る物らしい。

    定家は、権力の頂に近い二人の男が、「古今伝授」を狙っているとなると、「古今伝授」を知る者のみが危うくなる。と見て、父親の俊成卿を尋ねる。

    「そなたに、古今伝授を行おうと思う」
    俊成は、そう言って、

    ●さらばこれ高きみ空のをちに問ふ
    供物の花や雪にまがふる
    ●大事は、四柱の一を
    日の隠す所にあり
    ●三木は三鳥より重し

    この、『三種のお題』を解き明かしたなら、それを授ける。と言う。

    千百首からなる『古今和歌集』の中から、それの謎を解くのは、至難の技。

    謎解きに、頭を悩ましていた、ある日、父 俊成が、何者かに、誘拐されてしまう。
    「早く御題を解け。さもなくば、俊成の命はない」との書き置きが。

    父親を助ける為に、一刻も早く謎を解きたい、定家。

    園城寺の美僧で毒舌家の、長覚
    権別当の息子、潮丸

    そして、
    密かに思いを寄せる、式子内親王

    の力を借りて、
    父親を助けるべく、皇統の秘宝「幻の神器」を求めて、悪党に挑む。

    折句、隠し題、本歌取りなど、和歌ならではの修辞法が出てきたり、
    事件を解決した後、去って行く長覚法師に、李白の「友人を送る」を朗詠させたり、
    流石、高校の教壇に立つ国文学の専門家。

    解説の郷原宏氏は、
    「この作品は、ひょっとすると篠さんの代表作になるのではないかという予感がします」と、解説に書いているように、
    とてもスケールの大きな内容だった。

  • 頼朝が鎌倉幕府を開いていた頃の京が舞台。
    紀貫之が弟子に伝授したと言われる「古今伝授」。
    藤原定家は父、俊成より「古今伝授」の相承者の証に必要と、三種の御題を出される。
    御題の謎に取り組み始めた数ヶ月後、俊成が何者かに攫われる。
    三種の御題を解き明かすことが俊成を救う手立て。
    定家は父を救うため、博学な僧侶、長覚に協力を求める。

    この時代は苦手。
    鬼の漫画「夢の碑」で読んだくらいの知識。
    「平家物語」を児童書で読んだのでなんとなく時代背景を把握できてる感じ。
    「唐衣」を読んで、「百人一首の常識」を読んでいたのもラッキーだった。
    敵の目的は何か?敵は誰なのか?
    京の政権争い、頼朝の思惑。
    読んでいるうちに和歌の世界の奥深さが紹介されていくのも楽しい。
    折句、物名歌、本歌取り。
    人が良く、短気で、おろおろする定家の人柄も良かった。
    けど、他の方々が濃すぎて勿体無い。
    御手洗さんみたいな長覚、腹黒そうな潮丸、出来過ぎ美女の式子内親王、奈良の貴人、宇智秋久。
    もう少し長覚が名探偵でも良かったのかな。

  • こんなに和歌が盛り込まれた作品は初めてです・・・当然手に負えないのですが、歌事態が内容に深く関わるからシツコク読んでいました。古今伝授をめぐるなぞはまだ続く。
    感想を書いていて「シリーズ」だと気がついた
    本も唐突に終わった訳じゃなかった(安心)

  • 歌に隠された謎解きは面白いが、結局定家が解いた謎はほとんどないという…優秀なワトソンがたくさんいる系ミステリだった。長覚とのコンビの要だが、長覚よりも潮丸のほうが目立っていたような。

  • 和歌のなかに隠された暗号を解き、「幻の神器」を探す歴史ミステリー小説。園城寺の美僧長覚、紀氏の血をひく岩清水八幡宮権別当の息子潮丸、式子内親王などの助けをかり、藤原定家が難題に挑む。読後感のいい歴史ミステリーの秀作。

  • 百人一首をつかったパズルゲームをカギにした小説かな と思っていましたが、平安時代初期の歴史を題材にしたものでした。
    その時代の小説を読んだばかりだったので、楽しく読書できました。

  • 高名な歌人・藤原定家は、ある日、敵対勢力の一員である源通親から呼び出され「古今伝授」の話を切り出される―曰わく“治世の道理を説くものである”と。
    その後、関白・九条兼実の息子良経からも同様に訊ねられる。
    権力の頂きに近い男たちが共に狙う「古今伝授」―
    そんな折、定家は父・俊成から三種の御題を解けば「古今伝授」を授けると言われるが、解読が進まぬ中、俊成が何者かに誘拐されてしまう…
    鍵は御題の解読にある―
    美貌で毒舌の僧侶・長覚と、紀貫之と同じ紀氏の血を引く少年・潮丸と協力し、父の救出の為に奔走する定家。
    伝統的な和歌の修辞法と謎合わせをモチーフに公家社会の権力の闇に迫る、平安鎌倉ミステリー。

    なんか私が想像していたものとは違いました-勝手に期待しすぎてた…
    言うほど定家と長覚はコンビっぽくないし、名探偵でもない感じ-
    どちらかというと定家は流され系主人公かと…
    長覚と潮丸で良いトリオでしたが。
    怪しい…と思った人物がまんま犯人(一味)でちょっとがっかり。
    ただ、その代々に渡って受け継がれる意志は凄いな-と。
    しかし系図、姻戚とか複雑過ぎてこんがらがるよ~

    .

  • 歌詠みの名手にして本歌取りの旗手。後の冷泉家当主を胸に抱いて読み始めたものだから、頼りなくて優柔不断で、気が短いくせに臆病な定家像への違和感は残っているが、実のところ、その家柄や置かれた立場を推し量れば、案外、定家はこんな人だったのかもしれないとも思える。

    偉大な父を持つがゆえに、その父に認められたくて努力も欠かさなかったのではあろうけれども、定家の人間としての魅力は、天賦の歌才ゆえに周囲の人々を惹きつけるのだろう。自分ひとりでは読み解けるはずもなかった三種の御題だが、彼を認め、また放って置けない人たちがいつの間にか彼を取り巻き、支え、答に導く。

    この放っては置けない頼りなさこそが定家の魅力だと、父の俊成は見抜いていたのかもしれない。

    困難に一人では立ち向かえぬほど弱い人間でも、仲間が自然に集い、力を貸してくれる…そのような引力に恵まれた男、藤原定家。

    この頼りない歌人の成長物語として、しばらくシリーズを追ってみたいと思う。

    謎は荒唐無稽だし、その鍵となる歌の読み解きは少し無理を感じたが、既存のものに新たな意味を含めることの難しさを思えば、とても面白かった。

  • 伝統的な和歌の修辞法を使った暗号解読、和歌の中に隠された暗喩。
    道具立ては興味深い。
    近くシリーズ第二弾も出るらしいので、だんだん登場人物の造形に深みが出てくれば面白くなると思う。

    鎌倉初期の公家がどういう生活をしていたのか、あまりピンと来ないせいか?まだ主人公に思い入れできていない。

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著者プロフィール

埼玉県生まれ。東京学芸大学卒。第四回健友館文学賞受賞作『春の夜の夢のごとく―新平家公達草紙』でデビュー。短篇「虚空の花」で第十二回九州さが大衆文学賞佳作受賞。主な著作に『蒼龍の星』、第一回日本歴史時代作家協会賞作品賞を受賞した『青山に在り』、シリーズに「更紗屋おりん雛形帖」「江戸菓子舗照月堂」「絵草紙屋万葉堂」「万葉集歌解き譚」などがある。

「2021年 『蛇含草 小烏神社奇譚』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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