シャーロック・ホームズ 絹の家 (角川文庫)

  • KADOKAWA/角川書店
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レビュー : 30
  • Amazon.co.jp ・本 (417ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041025109

作品紹介・あらすじ

ホームズが捜査を手伝わせたベイカー街別働隊の少年が惨殺された。手がかりは、手首に巻き付けられた絹のリボンと「絹の家」という言葉。ワトソンが残した新たなホームズの活躍と、戦慄の事件の真相とは?

感想・レビュー・書評

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  • アンソニーホロヴィッツは、死に憑かれている。

    『カササギ殺人事件』『モリアーティ』『絹の家』と読んできて、私の感じたことである。

    ミステリなのだから、殺人事件がおこるのは当然だ。
    だが、それ以外に、なんだか人を死に触れさせたがる。

    その人、もう死んでいるんですか?
    その人、近々死ぬんですか?
    その人、殺されるんですか?

    よりによってその人が! から、通りすがりの人までが、死んだり、死んでいたり、死に憑かれたりしているのだ。

    前半がなかなか読み進まなかった。
    理由は二つ。

    まずは、これがシャーロック・ホームズのパスティーシュであること。
    ホームズパスティーシュにままあることだが、いちいち「正典」(コナン・ドイルの書いたホームズ譚を熱烈なファンはそう呼ぶ)のあれこれをとにかく盛り込む。

    なんとかの事件と、かんとかの事件の間の、何年頃の話であるとか、
    住居にあがる階段は17段であるとか、
    あの人物はこうしていて、この人物はなんとこんな状態であるとか、
    そういったものをあらゆるところに挿入する。しなければならない。
    それが読みどころであり、作者の読ませどころでもあるのだが、正直、ちょっと重い。
    さながらずっしりしたフルーツケーキだ。
    美味しく食べ堪えはあるのだが、どんどん進められはしない。

    そして、二つ目の理由。
    作者の社会観が透けて見えるのだ。
    ホロヴィッツが21世紀のこの世の中に、どんな批判的見解をもっていてもかまわない。
    しかしそれを20世紀初頭の、コナン・ドイルの描いた人物に語らせるのはどうだろう?
    中産階級のドクターや、他の人物たちが、作者と同質の批判精神をもっているとは、私にはとても考えられない。
    作者の厭世的な批判は、自身の作中でいくらでも述べればよいのである。

    そんなこんなで前半は読み辛かった。
    それがようやく後半になって、ギアが変わったように面白く読むことができた。

    それにしても、シャーロック・ホームズのファンというのは恐ろしい。
    全てのファンがとは言わないが、ファンの中のファン、信者、思い入れのあふれる人々は、とかく評価が辛いのだ。
    もちろん高評価をつけたファンもいるが、厳しいレビューを見るにつけ、世界中のファンに対して「どうぞ、シャーロック・ホームズの新作です」と差し出すのは、勇気も知力も体力も要っただろうと想像できる。

    私も色々述べた口ではあるが、この『絹の家』を一大事業だったと評価しよう

  • 1890年。ホームズがモリアーティー教授と最後の対決をした1890年。本作は、その前年を舞台としたパスティーシュだ。《…ほら、見えてきた。窓辺でランプの灯が輝き、二階へ伸びる十七段の階段が私を差し招いている。…》序文で一気に、読み手の心はベーカー街へ入り込む。謎が謎を呼ぶ過程や、事件の関係者たちの性格付けも大変面白く、のめり込むようにして読了した。時折差し挟まれる過去の事件の思い出にまた、著者の思い入れの強さを感じる。まさに、あの日のホームズが戻ってきたかのように錯覚させてくれる、大変完成度の高いパスティーシュだった。

  • いくつも存在するホームズ譚パスティーシュとは一線を画し、世界で始めて公式認定されたという六十一番目のホームズ作品。
    あの愛すべき二人にまた会えるのだと、期待で胸をいっぱいにしながら読み始めました。

    事件が起こった舞台は「最後の事件」の前年。
    ワトスンがこの事件をその時なぜ記録・公表しなかったのかは、序章で『ホームズの名声を傷つける恐れがあるから』『あまりにもおぞましい、身の毛がよだつような事柄が含まれているから』と語っています。

    老年期ワトスンが、今は亡き親友に想いを馳せながらこの事件を書き起こし、その後、原稿を銀行の金庫に保管して100年後に開封する指示を添えるという設定。
    『未来の読者ならば私の時代よりも醜聞や堕落に対して耐性があるだろうと見込んで...』

    ワトスンが当時 記録として残せなかったというだけあって、事件はこれまでのものとは毛色の違う悲しい内容でした。
    いや、殺人に悲しいも悲しくないもないのだけれど、それでも今回は大人に見捨てられた子供達が話の核で、また殺されるのもその子どもだから救いがありません。

    複雑に入り組んで、解きほぐせないほどにもつれ合あった事件。
    一見何のつながりもないような事柄が最後1つに纏まるところは見事です。

    読みごたえもさることながら、ホームズ・ワトスンの個性・魅力も存分に味わえる内容だったので、今もまだ、再会の余韻に浸っています。

  • 長年のホームズファンなもので、聖典の話が散りばめられていて思わずニヤリ。恐怖の谷やオレンジの種みたいな始まり方やマイクロフトやホロウィッツ先生。レストレード警部のホームズへの思い。そしてモリアティ教授との会話。ハラハラしたぁ笑

    ワクワクしながら読んだけど〜、結末で気持ちがどよん…子供が巻き込まれるのは、あまり好きではないので…殺され方もかわいそうで…

    けれど、情景の描写は雰囲気は出てると思うし、ホームズとワトソンの関係も良い感じかな。

  • シャーロックホームズの公式続編。ここしばらくハマっているアンソニーホロビッツの作品という事ですぐに買ったが、期待を全く裏切らない出来栄え。この作家は本当に凄いと思う。これまでの正典と並んでもほとんど違和感はない。強いて言うなら、犯罪が現代風な気もする。コナンドイルが生きていた時代には考えられなかったような犯罪ではないかと思う。でも充分な出来で、楽しめた。相変わらずの質の高いミステリー。オススメです。

  • 3+

  • 次々と起こる事件が見えない糸で繋がっている。それが見えるのはホームズだけ。そんな名探偵に降りかかる危機。息を飲む結末にページを進める手が止まらない。

  • 最後の事件の一年前、ホームズの捜査に協力した少年が惨殺される。正体不明の「絹の家」の謎をめぐり、ホームズとワトソンのコンビが活躍するパスティーシュ。

    ホームズ作品をすべて読破したのは、もう数十年も前のこと。熱烈なファンというほどではないものの、コナン・ドイル財団初の公認しかもホロヴィッツの作品となると読んでみたくなる。
    なるほど、薄暗いロンドンの阿片と貧困を背景とした闇の事件では、おなじみの面々がドイルの作品さながらに登場して、違和感などまったくなく懐かしさを覚えたほど。おぞましい事件だから、ワトソンが100年後に開封されるように配慮したという設定もおもしろい。

    先日、ホームズの若い頃という設定で三谷幸喜が書いた芝居を観てきたのだが、笑いと推理とホームズ兄弟の愛憎にワトソンの屈折した思いも加わって、じつに楽しかった。しかも、ちょうどこの本を借りた頃に本人のエッセイが新聞に掲載されたのだが、参考にこの作品を読んだことが書かれていてびっくり。世界中で愛されているホームズに、またどこかで出会えるといいな。

  • 悪くはなかったかな。ホームズとワトソンもとてもらしい。だけど、事件がやりきれない。

  • 2019.04.17読了
    アンソニーボロヴィッツが61番目のシャーロックホームズとして書いた作品。
    実は私、コナンドイル作/シャーロックホームズシリーズを読んだことがありません。お恥ずかしい。
    だからこれが初のシャーロックホームズ。
    とてもおもしろい!蒔いた種の回収はキチンとされているし、なんといってもこの先どうなるのか?とワクワクする!
    これぞミステリー!ととても満足しています。
    さあ、次はモリアーティに手をつけます!楽しみ

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著者プロフィール

1955年生まれ。イギリスの作家、脚本家。世界で1900万部の人気を誇る「アレックス・ライダー」シリーズや、コナン・ドイル財団公認のシャーロック・ホームズ・パスティーシュ『絹の家』『モリアーティ』を執筆するなど、多数の著書がある一方、「刑事フォイル」など脚本家として数多くのテレビ・ドラマ作品を手がける。18年『カササギ殺人事件』は年末ミステリランキング4冠を達成。

「2019年 『007 逆襲のトリガー』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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