シャーロック・ホームズ 絹の家 (角川文庫)

制作 : 駒月 雅子 
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 117
レビュー : 15
  • Amazon.co.jp ・本 (417ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041025109

作品紹介・あらすじ

ホームズが捜査を手伝わせたベイカー街別働隊の少年が惨殺された。手がかりは、手首に巻き付けられた絹のリボンと「絹の家」という言葉。ワトソンが残した新たなホームズの活躍と、戦慄の事件の真相とは?

感想・レビュー・書評

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  • いくつも存在するホームズ譚パスティーシュとは一線を画し、世界で始めて公式認定されたという六十一番目のホームズ作品。
    あの愛すべき二人にまた会えるのだと、期待で胸をいっぱいにしながら読み始めました。

    事件が起こった舞台は「最後の事件」の前年。
    ワトスンがこの事件をその時なぜ記録・公表しなかったのかは、序章で『ホームズの名声を傷つける恐れがあるから』『あまりにもおぞましい、身の毛がよだつような事柄が含まれているから』と語っています。

    老年期ワトスンが、今は亡き親友に想いを馳せながらこの事件を書き起こし、その後、原稿を銀行の金庫に保管して100年後に開封する指示を添えるという設定。
    『未来の読者ならば私の時代よりも醜聞や堕落に対して耐性があるだろうと見込んで...』

    ワトスンが当時 記録として残せなかったというだけあって、事件はこれまでのものとは毛色の違う悲しい内容でした。
    いや、殺人に悲しいも悲しくないもないのだけれど、それでも今回は大人に見捨てられた子供達が話の核で、また殺されるのもその子どもだから救いがありません。

    複雑に入り組んで、解きほぐせないほどにもつれ合あった事件。
    一見何のつながりもないような事柄が最後1つに纏まるところは見事です。

    読みごたえもさることながら、ホームズ・ワトスンの個性・魅力も存分に味わえる内容だったので、今もまだ、再会の余韻に浸っています。

  • 長年のホームズファンなもので、聖典の話が散りばめられていて思わずニヤリ。恐怖の谷やオレンジの種みたいな始まり方やマイクロフトやホロウィッツ先生。レストレード警部のホームズへの思い。そしてモリアティ教授との会話。ハラハラしたぁ笑

    ワクワクしながら読んだけど〜、結末で気持ちがどよん…子供が巻き込まれるのは、あまり好きではないので…殺され方もかわいそうで…

    けれど、情景の描写は雰囲気は出てると思うし、ホームズとワトソンの関係も良い感じかな。

  •  コナン・ドイル財団によって初めて「続編」と公式認定された作品だということ云々関係無く楽しめる一冊でした。

     過去にアメリカである事件に巻き込まれたという美術商の依頼人の事件と、ベイカー街別動隊の少年がとある理由から犠牲となる事件。この二つの事件を軸に物語は展開していきますが、それぞれ「過去の因縁が最終的には依頼者自身に返って来る」という意味では『恐怖の谷』、「危険だと分かっていながら結局は相手を救うことが出来なかった(そしてそれを受けて必ず事件を解決にまで持って行くと誓うホームズ)」という意味では「オレンジの種五つ」が雰囲気的には近い気がします。長編・短編ではこのあたりの話が好きな身にとってはページを捲るのが非常に楽しみな展開でした。(どちらの事件も犠牲者が出ているので「楽しみ」と言うと語弊があるかも知れませんが)

     作者が自身に課した「ドイルのホームズ物語の精神を作品に息づかせる為の十箇条」の中に「ホームズ物語の主な登場人物を積極的に、なるべく意表を突く形で入れる」という項目があるそうですが、その言葉通り「あの事件の時の依頼者が!」という人物も協力者として登場します。
     その他モリアーティ教授の悪の美学(というほど仰々しいものでもなく、大犯罪王である教授にも好む悪行と好まざる悪行があるのだなあというのが分かる発言)が垣間見られたり、作中とある理由から窮地に置かれたホームズの為に尽力するレストレード警部の姿を見ることが出来、純粋に面白いです。特にレストレード君に関してはホームズさんとは普段はある意味腐れ縁のような関係なのが、今回は互いに少し信頼関係のような、そういう良好な仲で結ばれている印象を受けたのが読んでいて少し嬉しかったところ。
     原典の登場人物の活躍の描写とこの作品オリジナルの登場人物の描写との比重がちょうど良い感じだと個人的には思いました。

     ワトスン博士の死後に彼の未発表の遺稿が発見されるという導入部の作品がよく見られますが、こちらの作品は「ホームズに先立たれた晩年のワトスンが“諸々の理由から公開は差し控えてきたが、自分が死ぬ前にこれだけは書き残しておかなければ”という意思のもとに筆を執るという形式を採っています。その為、各章の始めには事件の記述とは別に現在の(=晩年の)ワトスンがホームズが活動していた当時を回想するような文章が数行挿入されているものもあり、どことなく感傷的な気持ちにもさせられます。

     原典におけるホームズという人は基本的には沈着冷静で感情に左右されない、もしくはあまり感情を表に出さない印象の人物ですが、この『絹の家』ではどちらかといえば感情的な彼の姿を見ることが出来る気がします。ベイカー街別動隊の少年が犠牲になったことに対する自責の念に駆られる姿然り、作中でとある人物に対して「こんな卑怯者には会ったことがない。人間のくずだ。虫けらだ!」とまで罵った姿然り。
     そういう意味では「公認続編」ではあるものの少しドイルのホームズとは違った印象を受けるかも。ドイル本人が書いているわけではないので当然と言えば当然なのですが、「ワトスン君が自分の本にはそのへん詳しく書かなかっただけで本来はこういう感じの人だったのかも?」という方向に想像を持って行くのもアリかも知れません。原典でも「三人ガリデブ」では意外な情の篤さが垣間見えたし。

     途中まで「繋がりがあることは確かだがその繋がりが明確に分かるまでは別々の事件」として展開していく二つの事件(美術商の抱える事件とベイカー街別動隊の少年の事件)も結末ではきちんと繋がりが明示されてスッキリします。(事件の動機に関しては陰鬱なのでそういう意味では後味は悪いけれども)
     “絹の家”の正体に関しては現代社会でも大問題になるものですが、とある法律が残っていた当時のイギリス社会ではより重いものだったのではないかと思います。政府に対し多大な影響力を持つマイクロフトですら弟に「この件から手を引け」と命ずるレベルの“絹の家”からはあらゆる観点から底なし沼のような闇を感じます。(ネタバレになるからあまり具体的には言えない)

     ワトスンの遺稿ではなく「現在生きている」最晩年のワトスンの回想録というもの淋しさ、人間的な感傷が垣間見えるホームズ、という精神的な面でも興味深い話でした、し、それよりも何よりもやはり『恐怖の谷』「オレンジの種五つ」系の話が刺さる人間にとっては倍掛けで心が躍る作品だったと思います。個人的にはこの作者の方のキャラクターの動かし方が結構好みだったので、同じ方による『モリアーティ』の方も読もうと思います。

  • シャーロック協会認定のシャーロックシリーズの公式続編で読んでいてもコナンドイルらしい展開を含みつつオリジナルも加えているので楽しんで読めました。

  • 初めてコナン・ドイル以外の手によるホームズもの、パスティーシュを読んでみたが、これはコナン・ドイル財団により、公式に"続編"と認定された初の作品であるとのこと。
    確かに作中からは、ガス燈の仄かな明かりが灯り辻馬車が行き交う霧がかって薄暗いロンドンの街並みや、ベーカー街221Bの下宿の部屋の様相などのイメージがありありと伝わってきて、小学館の「名探偵ホームズ全集」を繰り返し読み耽っていた30数年前の記憶を鮮やかに甦らせてくれる。
    といっても中身はいささかショッキングな場面もあり、年端もゆかぬ少年少女向きのストーリーではないかもしれないが。
    いつものワトスン節は健在、ホームズの気分屋ぶりもしかと描かれ、またレストレイドは登場するしベイカー街別動隊も、さらには得意の変装術やアクションシーンまで盛り込まれ、まさにシャーロキアンも満腹になるほどのトリビュートものと言ってよく、本格ミステリーとしてシヴィアに読み込めばいろいろと突っ込みたくなるところもあるだろうが、あくまでも"ホームズもの"という、いわば著者と読者の間に暗黙の共通認識が端からある"ハーフファンタジー"のようなものとして読めば、何の文句もつけようがない傑作である。
    ただ1点、途中でモリアーティ教授をああいった形で登場させる必然性が果たしてあったのかどうか、個人的にそこだけは違和感が残る。

  • 二次創作物にありがちの、原作キャラ&エピソード盛り込みすぎてる感じではありましたが悪くなかったです。

  • 面白かった。やや軽忽な場面もあるが、じっくりと読めるホームズ譚である。

  • 読んでて違和感なし。パスティージュとして素晴らしかったです。ホームズ好きなら手にとって損はないかと。

  • 面白かった…かな。
    パスティーシュものとしては、良い出来だったと思います。
    ワトスンの扱いが本編(聖典)に近いのが安心した。
    銃で撃たれたのに「役立たず」と言って放置するとかw 結構酷いのとかあるからねー。

  • コナン・ドイル財団初公認と謳うだけのことはある。
    シャーロック・ホームズ作品ではアメリカでの出来事に起因するいくつかの物語を読んで、文学作品としての面白さに感心したのだが、本作も劣らず「読ませる」作品だ。
    翻訳も良いと思う。

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