金魚姫

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 1080
感想 : 175
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  • Amazon.co.jp ・本 (400ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041025284

作品紹介・あらすじ

勤め先はブラック企業、うつうつと暮らしていた潤。日曜の夕刻、近所の夏祭で目に留まった金魚を持ち帰ったら、部屋に妖しい美女が現れて……!? 金魚の化身に戸惑う潤。だがそれ以来、商談が成立するようになり。

感想・レビュー・書評

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  • ブラック会社に勤める主人公の潤と、飼っていた金魚が突然変化した不思議な女リュウ。

    記憶が曖昧で言動がおぼつかない、見るもの聞くもの全てが珍しいリュウと潤との日々は荻原さんらしいユーモアが散りばめられていたが、二人が抱えるものはあまりに重く、ギャップを感じた。

    それでも二人の運命がどうなるのか気になって一気に読んでしまった。
    最後は予想通りではあったが、それしかない結末で納得できた。

  • 夕暮れ時にはいつも心がざわめく。
    茜色の夕陽を見ただけで泣けてくるのは、彼女と過ごした記憶がいつまでも消えないから。
    黄昏時の紅が彼女を連想させるから。

    彼女との出逢いは単なる偶然でなく、前世から決められた必然で、見えない糸で繋がり絡まる因果そのもの。
    だから日常が彼女のペースに巻き込まれても、常ならざる世界へ誘いこまれたとしても抗うことはできなかった。

    私がこんなにセンチメンタルな気分に陥ったのは、きっと晩夏の夕暮れに読み終えてしまったから。
    評判通りとても感動した。
    出来れば映像化してほしい作品。

  • 萩原宏さんの作品は読みやすい
    好きだ
    金魚の女性
    あれ?室生犀星の「蜜のあわれ」みたいなのかな?
    全然違った
    くすっと笑わせてくれて
    ブラック企業とかリアルで
    古の中国まで連れて行ってくれる
    一気に読んだ
    「リュウ」が愛しくてかわいくて切ない

    ≪ 大きくて 深い悲しみ どこからか ≫

  • ブラック企業で神経をすり減らしながら働いている潤。
    同棲していた恋人は、未来が見えない関係に見切りを付けて出て行った。
    明日が来なければよいのに。死んでしまえればよいのに。そう思いつつ、自殺する勇気も出ない。
    泥水の中をのたうつような毎日。ある日、潤はふと祭の縁日にふらふらと入り込み、金魚すくいの夜店で1匹の琉金を掬う。

    古代中国。1人の女が夕闇をひた走る。
    女には相思相愛の男がいた。しかし理不尽にも2人の仲は引き裂かれた。
    激しい怒り、強い恨みを抱き、女は走る。
    どこへ? この憎悪の赴く先に。姿を変え、時を渡り、どこまでも。
    女は暗い沼に身を投げる。

    2つの人生が時空を超えて交錯する。
    偶然であるかのように見えた出会いは、1つの流れの先にあった。
    時に支流に入り込みつつ、最後に1つの河口に至る著者の手腕に心地よく乗せられる。

    ブラック企業の描写は、渦中の息苦しさを感じさせ、十分な取材を重ねた上と思われる。
    金魚の化身として現れる女は、艶美なだけでなく、お茶目でかわいらしく、一方で妖しの凄みも抱えて魅力的な造形。表紙も本作の雰囲気をよく醸し出している。

    タイトルから、何となく室生犀星の『蜜のあわれ』を思い出したのだが、また違った味わいで、しかし、これはこれで余韻が残る。

    夢のように水中を漂う緋の魚には、人を異界に誘い込む妖しい力が潜んでいるのかもしれない。

  • まずは表紙にヒトメボレ。実にそそられる配色なのでした。
    私は表紙の雰囲気にまず酔いたいタイプなのだと実感。

    読後の印象は、というとホラーに近いファンタジーのような、人情に泣かされるような、なお且つブラック企業を揶揄するような社会派ぶってもいて一言では表現できない美しい物語なのでした。

    とはいえ、さえない主人公の潤君に思わず渇を入れたくなるようなシーンも散りばめられていて、あ~楽しい読書タイムありがとう!という感想です。

  • 仕事に疲れ、死を考えている主人公が金魚すくいですくった金魚。主人公と金魚の奇妙な同居生活が始まる。
    現実の話の途中に、金魚の過去と輪廻が挿し込まれていて、過去が段々と現実に近付く展開がとても興奮し面白かった。復讐劇のようだが、意外とゆるく進み、結末は意外なものだったので読みごたえがあった。

  • +++
    勤め先の仏壇仏具販売会社はブラック企業。同棲していた彼女は出て行った。うつうつと暮らす潤は、日曜日、明日からの地獄の日々を思い、憂鬱なまま、近所の夏祭りに立ち寄った。目に留まった金魚の琉金を持ち帰り、入手した『金魚傳』で飼育法を学んでいると、ふいに濡れ髪から水を滴らせた妖しい美女が目の前に現れた。幽霊、それとも金魚の化身!?漆黒の髪、黒目がちの目。えびせんをほしがり、テレビで覚えた日本語を喋るヘンな奴。素性を忘れた女をリュウと名付けると、なぜか死んだ人の姿が見えるようになり、そして潤のもとに次々と大口契約が舞い込み始める―。だがリュウの記憶の底には、遠き時代の、深く鋭い悲しみが横たわっていた。
    +++

    読み終えて改めて装丁を見ると、物語の空気そのままで切なくなる。ブラック企業の仏具会社でまったく芽が出ず、明日を生きる気力も失いかけていた潤が、ふらりと立ち寄った縁日で掬った琉金との日々奇譚である。時空を超えた愛と憎しみの物語でもあるのだが、人間の女性に姿を変えたリュウの言動や振舞いが可愛らしくも可笑しく、振り回される潤の気持ちの変化も興味深い。だが、リュウが自らの出自の記憶を取り戻すにつれ、胸が痛くなってくる。どうにかならないものか。二人で乗り越えることはできないのか。ラストはあまりにも哀しく切なく、そして愛にあふれている。不思議なおかしみのある一冊だった。

  • こういうストレートな話好きだ。おとぎ話と分かっていても泣いてしまう。

  • ボロボロのときにこんな可愛い金魚を飼うことになったら気分が紛れそう。
    金魚すくいで自分でとった金魚なら、なおさら特別感が増すわ〜。
    社長が! と思っていたのに、実は、潤、その人だったなんて悲しい。リュウもそう思ったから手を緩めたに違いない。
    息子の揚河は……よね。
    最後が良かったなぁ。

  • ファンタジー色強め。よくある感じの話かなーと思って読み進めてたら、展開が少し意外だった。アニメ化したら面白そう。

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著者プロフィール

1956年、埼玉県生まれ。成城大学経済学部卒業後、広告制作会社勤務を経て、フリーのコピーライターに。97年『オロロ畑でつかまえて』で小説すばる新人賞を受賞しデビュー。2005年『明日の記憶』で山本周五郎賞。14年『二千七百の夏と冬』で山田風太郎賞。16年『海の見える理髪店』で直木賞。著作は多数。近著に『楽園の真下』『それでも空は青い』『海馬の尻尾』『ストロベリーライフ』『ギブ・ミー・ア・チャンス』『金魚姫』など。18年『人生がそんなにも美しいのなら』で漫画家デビュー。

「2022年 『ワンダーランド急行』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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