人間の証明 (角川文庫)

  • KADOKAWA (2015年2月25日発売)
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感想 : 49
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  • 本 ・本 (512ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041025994

作品紹介・あらすじ

ホテルの最上階に向かうエレベーターの中で、ナイフで刺された黒人が死亡した。棟居刑事は被害者がタクシーに忘れた詩集を足がかりに、事件の全貌を追う。日米共同の捜査で浮かび上がる意外な容疑者とは!?

感想・レビュー・書評

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  • ご冥福をお祈りします。

  • これは凄い小説だ。
    読後、思わず心の中でつぶやいてしまった。

    「Mama do you remember?」という印象的な音楽と、黒人の子ども、そして風に舞って落ちてゆく麦わら帽子のシーンを、昔TVで見たことを鮮烈に覚えているが、映画も観ておらず、小説も読んだことがなかったが…。

    特に最終章に向かうクライマックスは、登場人物のモノローグで語られ、少しずつ真実に迫ってゆき、最後に一つの大きな物語を終結させる。

    読み手は結末に向け、隠された真実を刑事と共に追い続けるかのような気持ちになってくる。そして徐々に明らかにされてゆく過去、それぞれの切羽詰まった思いに胸を打たれてしまう。
    とりわけ、人間の情愛、怨恨、欲望や自己保身が計算されたように交差し響き合う後半部分は、引き込まれるかのように読み進んでしまった。
    いつの時代にも共通する人間の哀しさと、自分の中にもある醜さを呼び起こされるような作品だった。

    本書の初版は1977年。50年近くも経過した作品とは思えない。
    考えてみると、「事件発生に続く後半の謎解き」という流れは、本書への解説として寄稿している横溝正史の作風にも通じるものがある。この頃はこのような骨太な作品が多かったように思う。

    文句なしの星5つだ。

  • 2013年6月から真面目に読書を始めて200冊目!!
    古いながらも映画やドラマその他もろもろ映像化された名作!!
    読破して理解した。淡々と物語と進む…でもどうつながっていくのか…
    冷静に興味をそそりながら最後は安心と共に悲しい気持ちになった複雑な作品。
    私はオススメします。200冊目に相応しい作品でした!!

  • 全体的にストーリーの組立が良く出来てるなーと思いました
    最初読んでる内はどう言う風に進んで行くんだろう?と思ってましたが、登場人物それぞれの人間性が出てきてリアルな展開に引き込まれていきました
    最後はまさにタイトル通り「人間の証明」となり、今一度人の心の底にある物を改めて考えさせられる内容でした

    「全て失ったが1つだけ残したものがあった」この一文がこの作品のタイトルに込められた思いの全てを表しているんだろうなと深く心に刻まれました

    事件の真相ばかりに気持ちが行ってましたが、終わりに向けての複数の伏線の回収も見事でした

    ただ、難しい表現が多かったのと、性的な表現が好きじゃなかった、、、と言うか多く感じたので☆-1で

  • 『女妖記』西条八十を読んでネットを関連検索したら
    さんざん聴いたので耳に残っている

    「母さん、僕のあの帽子、どうしたでせうね?」

    が飛び込んできて
    『人間の証明』森村誠一をまだ読んでいない事に気づき、やもたてもたまらず。
    やはりおもしろかった。ほんと、話題が爆発している時には読まない天邪鬼。
    有名な霧積温泉がキーワードだが、ここにも富山の八尾町が登場して
    おわら節がでてくるのが偶然の妙。

    *****

    感想は古い文庫本で読了したもの

  • 今頃になって、初めて読みました
    初めて読んだけれども、動機も犯人も知っています。
    被害者が言った謎の言葉「ストウハ」の意味も知っています。
    中学校の英語の先生が「アメリカ人の発音でストローハットと言っても、日本人の耳にはストウハと聞こえる」とネタバレしましたからな。
    当時はネタバレに寛容だったので。

    でも知っていたのはマスコミで流れた部分のみ。
    実はいくつかの事件が縄を綯うように互いに絡みながら進んでいく話とは思いませんでした。

    で、読んだ感想としては「因果応報」。
    これに尽きると思います。
    森村誠一と言えば社会派ミステリーで、社会はミステリーと言えば刑事が足で証拠をみつけていく話だと思っていましたが、この作品に関していえば、確かに社会派で、足で証拠を探していますが、ラッキーな偶然が多すぎます。

    それというのもこの作品は、通奏低音として「因果応報」が存在しているからと思いました。
    表立った意見の被害者と加害者だけではなく、関係者の心の中で消せない、事件とならなかった事件が、その無念を晴らすかのように偶然を連れてきたのかな、と。

    作者あとがきで、当時この作品が「情念のミステリー」と言われていたことを知りましたが、確かにこれは情念の物語です。
    黒人青年を殺した犯人は、今でいうサイコパスのように描かれていますが、多分心から大切にしていたのが黒人青年との日々だったのだと思います。
    その後の人生は犯人にとって何の意味もない、興味もない、形だけの人生だったのかもしれない。
    ただその形だけの人生が成功してしまったから、大切だった心から愛していた過去と形だけ成功した現在との相剋の中の一瞬の躊躇が、すべてを終わらせてしまったのではないでしょうか。
    だとすると、哀しい物語だなあ。

    ママは思い出しはしなかった。
    だって忘れてなかったのだから。
    読んだ気になってパスしなくてよかったなあ。

  • ずっと昔から読みたいと思っていたが、救いがない作品だった。DNA鑑定やNシステムが無い時代の捜査は大変だったなぁ。

  • 戦後のアメリカと日本と人種差別。
    恭子に人間の心が残っていたというのが納得できなかった。
    最後の方でどうしても新しい家族を守りたかったから的なことが動機として書いてあったが、しょせんは商売道具としか思っていなかったんじゃなかったのか?
    大切にしてなかったので子どもに執着がない女として書いてくれた方が納得がいったと思う。
    守りたかったのは自分の名誉と地位なのであんなにも子どもを思っていた的な後半の描写は違和感があった。

  • 棟居刑事は刺殺された黒人の事件を捜査するが、次第に過去の因縁や様々な人間の業をも手繰り寄せてくる。
    緊張の高まりに伴って、徐々に謎が明らかになり、最後には周到に用意された意外性が待っている。
    名優、松田優作さんが出演してる映画版もいつか観てみたいな。

  • 2回目の読了。初読の20代前半に読んだ際はテーマを理解しておらず、推理小説ばかり読んでいたこともあり証拠不十分で母性に訴えた落としというものが気に食わなかった。
    だが今回の読了では、実際に確実な証拠が揃った事件など殆んどなく、殺人事件では加害者の多くが近親者ということから、現場ではこういった落としが多く行われているのではないかとリアリティを感じられた。
    全体の構成は伏線が見事に回収されていて素直に面白い。
    が、浮気相手がやけに協力的だったり、戦後の混乱期についてはやや理解し難いところがあり、この作品の面白さを理解するには自身の人生経験や想像力がまだ不足していると感じた。

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著者プロフィール

森村誠一
1933年1月2日、埼玉県熊谷市生まれ。ホテルのフロントマンを勤めるかたわら執筆を始め、ビジネススクールの講師に転職後もビジネス書や小説を出版。1970年に初めての本格ミステリー『高層の死角』で第15回江戸川乱歩賞を受賞、翌年『新幹線殺人事件』がベストセラーになる。1973年『腐触の構造』で第26回日本推理作家協会賞受賞。小説と映画のメディアミックスとして注目された『人間の証明』では、初めて棟居刑事が登場する。2004年に第7回日本ミステリー文学大賞受賞、2011年吉川英治文学賞受賞など、文字通り日本のミステリー界の第一人者であるだけでなく、1981年には旧日本軍第731部隊の実態を明らかにした『悪魔の飽食』を刊行するなど、社会的発言も疎かにしていない。

「2021年 『棟居刑事と七つの事件簿』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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