小説 秒速5センチメートル (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/メディアファクトリー
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レビュー : 92
  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041026168

作品紹介・あらすじ

「桜の花びらの落ちるスピードだよ。秒速5センチメートル」。いつも大切なことを教えてくれた明里、彼女を守ろうとした貴樹。二人の恋心の彷徨を描く劇場アニメーション『秒速5センチメートル』を監督自ら小説化。

感想・レビュー・書評

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  • 「桜の花びらの落ちるスピードだよ。秒速5センチメートル」いつも大切なことを教えてくれた明里、そんな彼女を守ろうとした貴樹。小学校で出会った2人は中学で離ればなれになり、それぞれの恋心と魂は彷徨を続けていく…。劇場アニメーション『秒速5センチメートル』では語られなかった彼らの心象風景を、新海誠監督みずからが繊細な筆致で小説化。1人の少年を軸に描かれる、3つの連作短編を収録する。

  • せつない。
    なんつーせつなさ。

    泣けるとか、悲しいとか、気分は落ち込む方向になるけど、
    そういうのとはチョイと違う読後感。
    切ない、というのが一番近い。

    映画見て、本となんか違うトコあるのかと思ったが、
    まさに映画まんまだったので、読みながら頭の中は、
    あの美しい映像が流れていた。
    映画見てない人は、見てください。
    切なさがドガンときます。

    水野理沙が、とういう人かわかったので、スッキリした。

  •  新海さんの映画の特徴といえば、やはりなんといっても映像美だと思います。そしてその映像美は、小説にも表れています。「小説なのに映像美?」と思われるかもしれませんが、新海さんの繊細な文章は、それを可能にするのです。

     3話で構成されているこの小説。まず第1話は、読んでいるこちらが苦しくなるような描写が続きます。

     転校で離ればなれになった女の子に会いに行くため、中学生の主人公は数時間かけ、彼女の元へ向かいます。しかし、その電車は大雪のため遅れに遅れ、当時携帯電話を持っていなかった主人公は、彼女の元に連絡をとることもできず…

     ここの描写が本当に絶望的なんです。心理描写もそうなのですが、冬や寒さ、電車の車内、乗客たちの様子、こうした情景描写がそれぞれが寒々しく、あるいは主人公の孤独感を表現する上で機能します。映画監督とは思えない表現の幅です。

     こうした描写の末二人はなんとか会えるのですが、そこからの暖かさ、そして美しさは、前半との対比があり、より読者に染みます。

     そして第2話、今度は主人公に恋心を抱く、少女目線の話。少女の一人称が思ったよりも違和感がなかったのがちょっと意外でした。新海さん、少女目線でもイケルやん!

     前半は元気でちょっと空回り気味の彼女が可愛らしく感じるからこそ、ラストの展開は効くなあ、と思います。

     そして第3話。個人的にこの第3話のテーマは呪縛だと思います。中学時代の美しすぎる初恋が、見えないところで主人公を縛り、それが人間関係、特に恋愛に関して現れてきます。

     また仕事上での悩みも深いようで、公私ともに主人公は追い詰められ、がんじがらめになってしまうのです。第3話のほとんどは、世界はモノトーンで包まれているかのように感じながら読んでいました。

     だからこそラスト、その呪縛から解放され、鮮やかで爽やかな描写を読んでいると、世界に光が戻ったような感覚になるのです! これが僕が新海さんの小説に映像美を感じた理由だと思います。

     新海さんの映画はもちろんですが、小説もおすすめですよ!

  • 叶わない初恋と、それを想い出として、けれど一面では呪縛のように抱えて生きる貴樹と、その世界の物語だった。
    映画を先に知り、「秒速5センチメートル」はとても好きな映画だ。
    繰り返し観るし、山崎まさよしさんのあの曲が別な場所で流れても、あぁこれは「秒速5センチメートル」の曲だと感じてしまうくらいに。
    明里との関係があまりにしっくりきすぎて、貴樹にぴつたり、ちょうど過ぎて、彼は明里と離れたあとの自分の扱いにいつも困っているように見えた。
    大人になっても世界に馴染めない気がするのは、明里といた世界があまりに自分の中に溶け込んでいたからなんじゃないか、と思う。
    それでもいろんな人と離れて、社会とも離れて、人も自分も擦り減らして、ひとりになって初めてわかることや見えるものはきっとたくさんある。
    貴樹はその中で少しずつ何かを取り戻していったのかもしれないなと感じた。
    最後のあのシーンは、映画を観た時も「あれはああいう風にしか終われない。あそこでやっと貴樹くんは歩き出すんだよ、きっと」なんて話を家族と何度もした。
    言葉で成り立つ小説版で改めてそこに触れられて、嬉しかった。

  • DVDを先に観て小説も読んでみたくなった。
    あまりに幼く若く可愛らしい物語なので、自分には無理だと思ったが、案外すんなり入って行けた。

    子供だった二人ともの根底にある心細さが故の想いが、初恋だと思わせてしまった訳ではなく、本当にかけがえのない初恋だったのだろう。
    家の都合で会えなくなり手紙も途絶え、子供だった二人にはなす術もなく、片方はこの恋が結ばれる事はないのだと悟り、もう片方は諦めたつもりでも初恋を忘れられず引きずった。大人になって他の人と付き合っても、相手の心を受け入れる事も、自分の心を開く事もなく前に進めない。そのために澄田花苗の気持ちに気付きながら東京に発つ日まで「好き」だとは言わせず、また‘好き’になり方の違いがつらくなったと水野理沙に言わせてしまったのだから。明里との初恋と東京の両方を忘れられなかったのか、それとも明里と過ごした東京を忘れられなかったのか。

    十数年後、踏切で明里とすれ違ったのは‘前に進みなさい’と神様が背中を押したのだろう。DVDでのラストシーンを観た時は「どうか明里がそこにいて」と思ったけれど、本を読んだ時は不思議とそうは思わなかった。自分を本当に好きになってくれた澄田や水野を傷付けた事実を受け止め、貴樹自身の十数年を乗り越えて、そこからしっかり前に進んで行けるだろう。

    新海監督の文章はとても綺麗で切なかった。

  • 映像を見たことがないけれど、桜の場面は美しく描かれているんだろうな、と想像できた。
    タイトルに惹かれて購入。
    綺麗すぎるその思い出に囚われすぎて、前をなかなか向くことができない男の子の物語。

  • 詩的な文体

  • 名作アニメの監督によるノベライズ作品。
    第一話を少年の一人称、第二話を少女の一人称でほぼ映画通りに描いた後、第三話を三人称で、映画に描かれなかった部分を大きく取り上げた物語に。
    著者はあとがきで映画を未見の人にも楽しめるように描いたと仰っているが、果たして未見の人がどう読むのか。

  • 今読んでる途中だけど、遠野くんが途轍もなく暗い。
    読み始めはすごい初恋が美しくて、素晴らしくて、何にも代え難くて、胸が痛くて、早く次が読みたくて仕方なかったけど、途中からちょっと違う気がしてきた。

    コスモナウトが印象的だなー。種子島宇宙センターが出てくる。

    私が遠野くんに望むことは、きっと叶わない。
    それでもそれでも私は、遠野くんのことを、きっと明日も明後日もその先もやっぱりどうしようもなく好きなんだと思う。ー好きって気持ちはもうほんとに自分自身じゃどうしようも出来ないのです。そんな時は相手が答えを出してくれるからね。こんな気持ちもいつか思い出に出来る日が来るのかな。

    伝えたからこそ、思い出にできるはずなんだよね。私は、何かに閉じ込められている訳でもない。

    新海誠ワールドすごすぎる。

  • リアルだった。
    出会いと別れ、喪失、これが人生。

    運命の相手って、結婚する相手とか
    付き合う相手とか、そんな簡単に名前が付けられる
    相手ばかりが全てなわけじゃないと感じた。

    香苗の話がとくにすきで、
    「貴樹くんと出会ってから、世界が一変した」
    ていう表現がすごくすき。

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著者プロフィール

新海誠(しんかい まこと)
1973年長野県生まれ。アニメーション監督。2002年、ほぼ1人で制作した短編アニメーション『ほしのこえ』で注目を集め、以降『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』『星を追う子ども』『言の葉の庭』を発表し、国内外で数々の賞を受ける。自身の監督作を小説化した『小説 秒速5センチメートル』『小説 言の葉の庭』も高く評価された。2019年7月19日、映画「天気の子」公開。その公開前日7月18日に原作となる『小説 天気の子』を刊行する。

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