小説 秒速5センチメートル (角川文庫)

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  • KADOKAWA/メディアファクトリー
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レビュー : 86
  • Amazon.co.jp ・本 (191ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041026168

作品紹介・あらすじ

「桜の花びらの落ちるスピードだよ。秒速5センチメートル」。いつも大切なことを教えてくれた明里、彼女を守ろうとした貴樹。二人の恋心の彷徨を描く劇場アニメーション『秒速5センチメートル』を監督自ら小説化。

感想・レビュー・書評

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  • 「桜の花びらの落ちるスピードだよ。秒速5センチメートル」いつも大切なことを教えてくれた明里、そんな彼女を守ろうとした貴樹。小学校で出会った2人は中学で離ればなれになり、それぞれの恋心と魂は彷徨を続けていく…。劇場アニメーション『秒速5センチメートル』では語られなかった彼らの心象風景を、新海誠監督みずからが繊細な筆致で小説化。1人の少年を軸に描かれる、3つの連作短編を収録する。

  • 叶わない初恋と、それを想い出として、けれど一面では呪縛のように抱えて生きる貴樹と、その世界の物語だった。
    映画を先に知り、「秒速5センチメートル」はとても好きな映画だ。
    繰り返し観るし、山崎まさよしさんのあの曲が別な場所で流れても、あぁこれは「秒速5センチメートル」の曲だと感じてしまうくらいに。
    明里との関係があまりにしっくりきすぎて、貴樹にぴつたり、ちょうど過ぎて、彼は明里と離れたあとの自分の扱いにいつも困っているように見えた。
    大人になっても世界に馴染めない気がするのは、明里といた世界があまりに自分の中に溶け込んでいたからなんじゃないか、と思う。
    それでもいろんな人と離れて、社会とも離れて、人も自分も擦り減らして、ひとりになって初めてわかることや見えるものはきっとたくさんある。
    貴樹はその中で少しずつ何かを取り戻していったのかもしれないなと感じた。
    最後のあのシーンは、映画を観た時も「あれはああいう風にしか終われない。あそこでやっと貴樹くんは歩き出すんだよ、きっと」なんて話を家族と何度もした。
    言葉で成り立つ小説版で改めてそこに触れられて、嬉しかった。

  • DVDを先に観て小説も読んでみたくなった。
    あまりに幼く若く可愛らしい物語なので、自分には無理だと思ったが、案外すんなり入って行けた。

    子供だった二人ともの根底にある心細さが故の想いが、初恋だと思わせてしまった訳ではなく、本当にかけがえのない初恋だったのだろう。
    家の都合で会えなくなり手紙も途絶え、子供だった二人にはなす術もなく、片方はこの恋が結ばれる事はないのだと悟り、もう片方は諦めたつもりでも初恋を忘れられず引きずった。大人になって他の人と付き合っても、相手の心を受け入れる事も、自分の心を開く事もなく前に進めない。そのために澄田花苗の気持ちに気付きながら東京に発つ日まで「好き」だとは言わせず、また‘好き’になり方の違いがつらくなったと水野理沙に言わせてしまったのだから。明里との初恋と東京の両方を忘れられなかったのか、それとも明里と過ごした東京を忘れられなかったのか。

    十数年後、踏切で明里とすれ違ったのは‘前に進みなさい’と神様が背中を押したのだろう。DVDでのラストシーンを観た時は「どうか明里がそこにいて」と思ったけれど、本を読んだ時は不思議とそうは思わなかった。自分を本当に好きになってくれた澄田や水野を傷付けた事実を受け止め、貴樹自身の十数年を乗り越えて、そこからしっかり前に進んで行けるだろう。

    新海監督の文章はとても綺麗で切なかった。

  • 映像を見たことがないけれど、桜の場面は美しく描かれているんだろうな、と想像できた。
    タイトルに惹かれて購入。
    綺麗すぎるその思い出に囚われすぎて、前をなかなか向くことができない男の子の物語。

  • 詩的な文体

  • 名作アニメの監督によるノベライズ作品。
    第一話を少年の一人称、第二話を少女の一人称でほぼ映画通りに描いた後、第三話を三人称で、映画に描かれなかった部分を大きく取り上げた物語に。
    著者はあとがきで映画を未見の人にも楽しめるように描いたと仰っているが、果たして未見の人がどう読むのか。

  • さわやかな恋愛小説。いや、そこまでさわやかではないかも。でも、甘酸っぱい場面がいっぱいで、アニメーションを手がける作者だけに、キラキラした場面が目の前に再現されます。アニメは見てないんですが。

  • 漫画家という職業には、本来小説家としての文学的センスと画家としての美術的センスの両立が求められる。ごく限られた天才だけが就くことの出来る職業と言えるだろう。2007年に公開されたアニメーション映画「秒速5センチメートル」は、アニメーション・クリエイター新海誠のオリジナル作品である。この映画における実写を超えたとも評される風景描画の緻密さ、青春期の登場人物の映像による揺れ動く心理描写の緻密さは「芸術の領域」と言っても過言でないほどに圧巻であった。

    多くの新海作品は「想いを伝える」ことをテーマにしており、本作中でも想いを伝える手段が時代とともに移り変わる。伝えたいことを伝えられないもどかしさを描かせたら彼の右に出る者はいないのではないだろうか。

    映画と同じ時期に「ダ・ヴィンチ」誌上で連載された小説の単行本も発売されている。台詞が適度に抑制された映画で語られることのなかった彼や彼女たちの繊細な内面が綴られ、映像を補完することで行間が埋まる趣向となっている。

    それは後悔に似た感情だったが、だからといって当時の自分にはやはりあのように振る舞うことしかできなかったということも、彼にはわかっていた。どちらにしてもいろいろな結果は変わらなかったんじゃないかとも思う。僕たちの人生は嫌になるくらい膨大な出来事の集積であり、あの手紙はその中でのたった一つの要素にすぎないからだ。結局のところ、どのような強い想いも長い時間軸の中でゆっくりと変わっていくのだ。

    間違えた初期条件で始めた仕事は、根本を正さぬ限りは前に進んでもより複雑に誤謬を重ねていくだけだ。

  • 儚い初恋、でも奇蹟は起こる。
    『あなたは大丈夫』この一言に救われ、背中を押され、前に進み続けていた少年は、ここは自分のいる場所じゃないと、どこにいても思い続け、いつも何かを求めている。登場する彼女たちは、そんな彼を理解しようとするが、やっぱり・・・

    新海誠作品はストーリーはもちろんだが、背景の綺麗な映像が鮮明に頭に浮かびます。桜並木、雪景色、海に沈む夕景など。

    本書は一人の少年を軸に3つの連作短編で構成されています。

  • 引っ越しで離れ離れになった小学生から中学生に掛けての貴樹の大事な初恋、貴樹に片想いをする花苗目線の種子島での高校時代、くすんだ社会人生活を送る貴樹。皆が常に綺麗な標準語でちょっと残念。筋は極なだらかであまり印象に残らないけれどそれを補う小さな塵がキラキラとしているような精緻な描写の情報量に惹かれる。

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著者プロフィール

新海誠(しんかい まこと)
1973年長野県生まれ。アニメーション監督。2002年、ほぼ1人で制作した短編アニメーション『ほしのこえ』で注目を集め、以降『雲のむこう、約束の場所』『秒速5センチメートル』『星を追う子ども』『言の葉の庭』を発表し、国内外で数々の賞を受ける。自身の監督作を小説化した『小説 秒速5センチメートル』『小説 言の葉の庭』も高く評価された。2019年7月19日、映画「天気の子」公開。その公開前日7月18日に原作となる『小説 天気の子』を刊行する。

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