散歩する侵略者 (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041026304

作品紹介・あらすじ

絶望がやってきた。愛する人の姿で――劇作家・前川知大率いる劇団イキウメの舞台『散歩する侵略者』を前川自ら小説化。2017年秋、黒沢清監督、松田龍平・長澤まさみ・長谷川博己主演の映画版も公開。

感想・レビュー・書評

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  • 地球を侵略するために人間から概念を奪って成長する宇宙人たちと、3日間の行方不明になった後、まったく別の人格になって帰ってきた夫に不信感を抱く妻・鳴海の物語。

    劇作家・前川知大が率いる劇団イキウメの舞台『散歩する侵略者』を、自ら小説化した作品。2017年には黒沢清によって映画化された。

    映画でも思っていたが、宇宙人が人間から概念を奪っていくという設定がもう既に面白い。序盤の金魚を咀嚼したあと、同居する息子夫婦を殺害し、自殺したおばあちゃんの話のように《知識がない状態》でも十分怖いし、不気味。一方で、終盤の《知識を得た状態》もまた違った恐ろしさがあり、一冊の中で様々な恐怖を抱くことができる。

    また概念を奪うという哲学的な物語ではあるものの、「愛」という人類誰しもに共通する普遍的なテーマを扱っており、結果としてすごく響いてしまった。映画→小説と来たので、次は舞台を見てみたい。舞台でも金魚食べるのかな。

  • 薄く読み易そうだなと軽い気持ちで手に取ったが、冒頭3ページの衝撃、戦慄。
    胃液をなんとか飲み込んで一呼吸おいてから本編へ。

    侵略者が人間から奪うもの、それは概念。奪った概念を蓄積して人間らしくなっていく地味な設定。作中の街人A視点で見るならば、散歩しているだけの地球侵略者史上最も被害の少ない物語だが、読者には恐怖を与え続ける。

    読むという概念が奪われたら、本を読むことができな、、いや、読むことができないという思考にも至らないから読めない喪失感もないのか、、、と、物語に入り込みながら読み進めると、本質まで辿り着くにはかなりのニューロンを駆使しなければならない。それに追い討ちをかける圧倒的な背景描写と、読む人に任せた心理描写。つまり脳汁が半端なく溢れ出る。

    ラストは
    彼女の愛の概念を奪った侵略者の感情が1秒ごとに移り変わり怒涛に押し寄せてきて、気付いたら鼻を啜っていました。

    私史上最も心を抉られた最高の一冊でした。ぜひ冒頭3ページだけでも読んでほしい。

  • 最初のつかみからものすごく好感触で、どんどん引き込まれていった。笑ってしまう箇所も多々あり、めちゃくちゃ面白い小説だと思った。そして迎えたあのラスト。私はさっきまで笑っていたはずなのに、一瞬でどっと涙が。『太陽』もすごく面白かったけど、それ以上に良かった。今年読んだ本の中のベスト3に入るくらいの勢い。出会えて幸せ! 

  • 公開当時に映画版を視聴。
    最近改めて見WOWOWの前日譚ドラマと併せて見返し、小説も読了。

    ヒトから概念を奪うことで内側から乗っ取り、侵略する訳ではなく、あくまで概念を奪う行為は敵対する人類を知るためであり、侵略行為そのものは武力(?)を持って行われる。
    人から概念を奪い、皮肉にも様々な感情の概念を獲得することで人間らしくなっていく地球外生命体。良い。

    隣にいる大切な人が実は宇宙からの侵略者で、自分が地球の命運を握っているかもしれない時、果たしてどう行動するのか?

    セカイ系かもしれない。

  • 死んだ縁日の金魚を咀嚼するおばあちゃん――。唐突で不気味な冒頭から「どういうこと!?」と一気に引き込まれる。鳴海が愛の概念を真治に奪ってもらうというラスト、なるほど。黒澤清監督による映画も観てみたい。長澤まさみは鳴海のイメージと違うけれど。

  • 久々のがっつりSF
    面白い!

  • 冒頭はホラー要素が強かったものの、全体は通して哲学的な内容とSF要素もあってテーマとしては盛り沢山であった。
    舞台や映画にもなっていたようなので、そちらも観てみたい

  • 映画を先に観た。鑑賞時の衝撃が冷めないうちに此方の小説も読んだ。所々違う箇所があるけれど、何方の結末もとても心に残っている。

  • 宇宙人が地球を侵略に来るSFだが、
    主軸は冷めきった夫婦関係を続ける鳴海の心の動きにあるか
    普遍的なテーマに見えるものの、大胆奇妙な設定を生かしてオリジナリティ溢れたものになっていて良い
    最後の問答と決断のシーンは非常に切なく美しく、心を打たれた
    一方で、主軸以外の部分は少し物足りなさも感じ、設定が面白いだけに少し残念にも思った
    元が舞台作品との事で、どのように表現されているのかはとても気になる

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著者プロフィール

1974年新潟県生まれ。劇作家、演出家。2003年に劇団「イキウメ」を旗揚げ。超常的な世界観で、身近な生活と隣り合わせに現れる異界を描く。2011年上演の舞台『太陽』で第63回読売文学賞戯曲・シナリオ賞を、舞台『奇ッ怪 其ノ弍』『太陽』で第19回読売演劇大賞 グランプリ、最優秀演出家賞を受賞するなど、各作品で様々な賞を受賞し、注目を集めている。他の著書に、小説『散歩する侵略者』、絵本『くらいところからやってくる』(絵・小林系)など。

「2017年 『散歩する侵略者 』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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