百年法 (下) (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
4.25
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本棚登録 : 2474
感想 : 230
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  • Amazon.co.jp ・本 (496ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041027103

作品紹介・あらすじ

自ら選んだ人生の結末が目の前に迫ったとき、忘れかけていた生の実感と死の恐怖が、人々を襲う。〈生存制限法〉により、百年目の死に向き合うことになった日本人の選択と覚悟の結末は――!?

感想・レビュー・書評

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  • ⚫︎感想
    最後までめちゃくちゃ楽しませてもらいました!
    登場人物同士の関係、駆け引き、国民の不安、パニック、生きることへの尊厳、本音と建前、美醜…全てが詰まった人間ドラマ。ラストも好み。綺麗にまとまってカタルシス感あり。

    ⚫︎あらすじ(本概要より転載)
    不老化処置を受けた国民は処置後百年を以て死ななければならない―円滑な世代交代を目論んだ「百年法」を拒否する者が続出。「死の強制」から逃れる者や、不老化処置をあえて受けず、人間らしく人生を全うする人々は、独自のコミュニティを形成し活路を見いだす。しかし、それを焼き払うかのように、政府の追っ手が非情に迫る…世間が救世主を求める中、少しずつ歪み出す世界に、国民が下した日本の未来は!?驚愕の結末!

  • 今までで一番スピード感を持って読めた作品です。それだけ本書の魅力がすごいということです。

    本書の上巻では3つのストーリー、陰謀がそれぞれ蠢きます。

    下巻はその3つが1点に集約するわけでもなくまるでミサンガのようにそれぞれがゆっくりゆっくり束になっていきます。

    緊急事態が起きた時の遊佐首相がカッコ良すぎました!

    バトル漫画の主人公とは違う仕事をしていて特殊能力を使うことはないです。ですが、闘いは時より訪れます。法律に則り、自分が嫌われようと国民、日本の未来のために冷静に闘う一個人。リアルな英雄をみれました。

    こんなにかっこいい人を見たことはありません。

    本書は仕事をする我々にとってのヒーロー像を見せてくれる一冊でした。

  • 不老不死とそこに生きる人類をテーマにした作品。
    HAVIといわれる不老不死処置を受ければ、受けた時の年齢のままの容姿で生き続けられる。
    それにより世界はどうなるのか…人口が減らず新しい血の入れ替わりが起きなくなり停滞してしまう。
    そこを改善するために考えられたのが「百年法」といわれる「処置後100年をもって生存権をはじめとする基本的人権は全て放棄しなければならない」とする法律。要するに100年経ったら死になさいというもの。処置を受ける受けないは本人の自由。
    100年経っても生きようとする者、非処置者などが複雑に絡み合い、それからの日本をどうしていくべきなのか…壮大なスケールで描かれており、SF作品の中に現代の問題提起をしているようで楽しく読み進められた。

  • 山田宗樹作品、初読。
    ブクログでの評価が全体的に高かったので、手に取ってみました。
    設定はSF的ですが、全然違和感なくこの独特な世界観に入り込むことができ、登場人物の多さに初めは戸惑いましたが、いろいろな側面から進む物語は構成も巧く、それぞれの人物像もしっかりしていて誰が誰だか分からなくなるとゆうようなこともありませんでした。
    うまく言えませんが、SFとゆうベールに包んで、本当はいまこの現実の社会が直面している問題を風刺しているような印象を受けた作品でした。
    ブクログ評価が高いのにも納得の内容です。個人的にはとても面白かったです。

  • 50年続いた牛島大統領・遊佐首相体制。その間に二人の間はすっかり冷え込んでしまっていた。富士の裾野に荘厳な大統領府を構えた牛島は、遊佐を排除し権力集中させていくが、それに伴って国勢は衰退していく。

    そんな中、大統領首席補佐官の南木(遊佐への嫉妬に狂った元官僚)と警察局長の兵藤(権力欲の塊)によるクーデターが勃発。遊佐を阿那谷童仁一味によるテロの首魁へと祭り上げて失脚させるという実に手の込んだものだった。

    牛島が突発性多臓器ガン(SMOC)に倒れる中、間一髪で権力を取り戻した遊佐だったが、HAVIの発祥国アメリカより、「HAVIを受けて体内にヒト不老化ウイルスを取り込んだ者は、いずれは全員、SMOCを発症」し、16年後までに全滅するとの衝撃的な発表が突然舞い込む。HAVIが導入されて150年足らずで、HAVIを受けた人へ死の宣告が下された。不老不死 はたかだか百数十年の泡沫の夢に終わってしまったのだった。

    権力を取り戻した遊佐は、直ちに百年法の凍結と拒否者の復権を決め、国家の存亡をかけて、期間限定で独裁体制を敷くべく国民投票を実施する。

    敢えて汚れ役を買って出てまで国をあるべき道へ冷徹に導こうとする遊佐、格好良すぎ。これぞザ・エリート。

    不老不死が実現したら人類は幸福になれるのか。その前に、世の中は一体どうなってしまうのか(停滞し、乱れ、自滅していくのか?)。色々と考えさせられる作品だった。読み応えあり!

  • 【感想】
    「HAVI」の持つ寿命が長すぎるせいで、時間の流れというか、「え?物語上、いま西暦何年なんだっけ?!」みたいに混乱してしまった。
    とは言え、それぞれのキャラクターがイイ味を出していたから読み物としてとても面白かったし、綺麗に物語はクロージングしていった。
    「HAVI」というシステムの持つデメリットのおかげで、非現実な世界に良くも悪くも終止符が打たれていたようにも思った。
    要するに、上巻で出てきたキャラクターの特徴や設定の伏線をしっかり回収し、イイ具合に終結した名作。

    特殊な世界観や上巻が面白すぎたのと、終盤はスピードがありすぎて若干の肩透かし感がありましたが、読みやすくて面白かったです。


    【あらすじ】
    不老化処置を受けた国民は処置後百年を以て死ななければならない―
    円滑な世代交代を目論んだ「百年法」を拒否する者が続出。
    「死の強制」から逃れる者や、不老化処置をあえて受けず、人間らしく人生を全うする人々は、独自のコミュニティを形成し活路を見いだす。
    しかし、それを焼き払うかのように、政府の追っ手が非情に迫る…
    世間が救世主を求める中、少しずつ歪み出す世界に、国民が下した日本の未来は!?
    驚愕の結末!


    【内容まとめ】
    1.ストックホルム症候群
    無意識のうちに他人を味方にしたい、気に入られたいと思う事。

    2.人生を左右するほどの大きな決断が、常に衝撃的な事件が引き金になって下されるとは限らない。
    日々の何気ない出来事や出会った言葉が、いつの間にか人の進むべき道を方向付けていく。
    後から振り返っても、どれか一つを選んだ原因だと特定することは難しい。
    生きるとは、そういうものではないか。

    3.HALLOによると、SMOCは、変異したヒト不老化ウイルスが不可避的に引き起こすものである。
    「HAVIを受けて体内にヒト不老化ウイルスが を取り込んだ者は、いずれは全員、SMOCを発症する。


    【引用】
    p14
    ・ストックホルム症候群
    無意識のうちに他人を味方にしたい、気に入られたいと思う事。


    p58
    加藤
    「前にも聞いたかもしれないが、なぜHAVIを受けなかった?」


    「小さな理由が色々積み重なった結果なので、やはり成り行きとしかいいようがないですね。」

    加藤にはなんとなく理解できた。
    人生を左右するほどの大きな決断が、常に衝撃的な事件が引き金になって下されるとは限らない。
    日々の何気ない出来事や出会った言葉が、いつの間にか人の進むべき道を方向付けていく。
    後から振り返っても、どれか一つを選んだ原因だと特定することは難しい。
    生きるとは、そういうものではないか。


    p124
    ・光谷レポート
    「もし百年法がなくなって事実上の不老不死社会が到来したら、日本共和国はどうなるか。国民は永遠の生に耐え切れず、精神に混乱を来し、国内は乱れ、国家の体を成さなくなり、やがてロシア、中国、韓国に分割・吸収され、日本共和国は世界地図から消える。」


    p182
    加藤が先頭に立って取り組んだSMOCの疫学調査は、すでにレポートをまとめて内務省の厚生局に提出してたる。
    SMOCの患者が急増している事が、発症者に何らかの共通点など全くなく、まだ罹っていない人はたまたま運がいいだけ。


    p355
    「HALLOによると、SMOCは、変異したヒト不老化ウイルスが不可避的に引き起こすものであると確認されたとの事です。」
    「HAVIを受けて体内にヒト不老化ウイルスが を取り込んだ者は、いずれは全員、SMOCを発症するということです。」

  • 不老不死になれるウイルスが見つかり、若い姿のままに死ぬことのなくなった世界。

    永遠に生きられる、とは聞こえはよいが、そうは言ってもやはり、歳を多くとったものが増えれば、日本が衰退していくだろうという、誰かの緻密な予測が立てられた。

    そこで、不死の措置をしてから100年経てば、生存権を失う、という法律を作ることとなった。

    というのが基本的なあらすじとなるが、当然、100年までしか生きられないという法律を作ることに対して、猛反発が起こり、制定しようとする政府側も何とか成立させようとする。こういった話が序盤に続くので、果たしてこの物語はどう終わりを迎えるのだろうか、と疑問に思いながらページをめくった。

    途中のとある展開で、もしかしたらこういう終わり方をするのかな、という予測が、結末でズバリと当たってしまったが、それでも、面白さは変わることはなかった。

    ただし、相当な長さではあるので、まとまった時間をとって一気に読み進めることをお勧めします。
    唯一読んで失敗したのは、隙間時間に読んでしまったがために、他のことに集中できなくなってしまったことですかね笑

  • 気になってはいたけど、なかなか手に入らず、かなりハードルを上げた状態で読み始めました。途中までは、この世界、この思考、この流れ、本当にありえるのか?となかなか読み進められませんでしたが、後半になるにつれ、没入。壮大なエンターテイメント作品を見せてもらえた気分になりました。

  • ものすごい想像力だと思います!拒否者への殺戮、大統領のSMOC発症、兵藤・南木のクーデター、HAVIを受けた者は例外なく16年後に死亡、ラストはジェットコースターのように動く。国民投票の結果、独裁官制度が採用され、仁科ケンが恐らくHAVIを鎮静化?させ、議会制民主主義を樹立した。上下巻を通して、人間のエゴイズムや死に対する予期不安の強さ、また人間はその時の感情に流されやすいことなど、色々と考えさせられました。話の内容は結構ぶっ飛んでいましたが、作家さんの想像力は抜きん出て、素晴らしいの一言。

  • 下巻もテンポよく読みやすい。思い切って時間経過をザッと進めたり、細かいやりとりを省略したりなどもその一因か。
    読書慣れしてない人にはとっつきやすい、玄人には少しラノベ感もあり物足りなさを感じるかもしれない。
    個人的には設定も含めなかなか楽しませてもらった。

    夢の不老不死が実現。だけど生存制限法を設ける時点でそれだけでハッピーになれないことを既に知っているとも言える。みんな心の底では分かっているんだ、生と死は一体だと。
    そして、最初の国民投票で生存制限法を凍結するという愚かな決断を下した国民も、クライマックスの国民投票では未来を担う若者のために自らを犠牲にすることを決意する。希望がみえる終わり方だったと思う。

    でも、SMOCという避けられることのない死の病がなかったらどうだろう?同じ結果になっただろうか?
    ここにきてSMOCはちょっと都合の良すぎる反則技にみえる。そんなことしたら不老不死の設定意味ないじゃんと。
    そんなものがなくても、未来を守り、発展させていく。そんなヒトの力を描いてほしかったという気持ちもある。

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著者プロフィール

1965年愛知県生まれ。筑波大学大学院農学研究科修士課程修了後、製薬会社で農薬の研究開発に従事した後、『直線の死角』で第18回横溝正史ミステリ大賞を受賞し作家デビュー。2006年に『嫌われ松子の一生』が映画、ドラマ化される。2013年『百年法』で第66回日本推理作家協会賞を受賞。その他著作に『ジバク』『ギフテット』『代体』『人類滅亡小説』『存在しない時間の中で』など。

「2022年 『SIGNAL シグナル』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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