- 本 ・本 (208ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041028070
作品紹介・あらすじ
虚弱で人見知りの強い、臆病な私を溺愛し育ててくれた伯母。小さな私の口に薬を含ませるため、伯母が探してきた銀の匙。私はいまも飽かず眺めていることがある――。少年の日々をリリカルに描いた自伝的小説。
感想・レビュー・書評
-
さまざまな賛美の言葉で表しても足りない抒情世界。
静かでありながら、奥底にある心は常に潤い、沸き立っている。身体の弱いコドモであっても感情がないわけではない。そんな世界を静かに静かに語っている。主人公が生まれた直後の文の波(=主人公の命の波)は静かで頼りないが、子どもが成長し、知識や体力をつけていくごとにぐんぐんと跳ね上がるリズムで引き込まれる。
宝箱に銀の匙が入ってる子どもは幸い哉。宝箱は持たずとも心に銀の匙を大切に持っていられる子どもも幸せ。心に銀の匙を持っていられる限り永遠の子どもでいられる。
漱石先生が絶賛した作品らしい。素晴らしい。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
透明でほんのり甘く、きらきらかがやきを閉じこめた、水飴のような涙のような印象。
-
こんなにも日本語が美しいと感じた小説はありません。
著者独特の擬音語擬態語に酔わされて、巧みな描写に夢中になりました。
するすると、明治時代の少年の日常にタイムスリップして、主人公と古き良き日本を味わいました。 -
作家の半エッセイのような物語。生まれつき体の弱い主人公を、死んだ主人公の兄の生まれ変わりと信じ、甲斐甲斐しく世話を焼く伯母の愛情。気持ちの細やかな主人公を“男らしくない”と鍛えようとする兄の心の奥の寂しさ。主人公と友となった可愛らしく、もうどこか女の香りのする女の子たちや、やんちゃな男の子たち。主人公の目線で描かれる日々の彩り。表現がいちいち面白い。
やさしい、とは少し違うが、やわらかな感性の伸びていく様を綴った一作。-
「やわらかな感性の伸びていく様を綴った」
子どもだった頃をこんな風に語れるのが素晴しいし、羨ましい。。。読んだ人に、一時だけど永遠に安らぎを...「やわらかな感性の伸びていく様を綴った」
子どもだった頃をこんな風に語れるのが素晴しいし、羨ましい。。。読んだ人に、一時だけど永遠に安らぎを与える一冊。2012/04/17
-
-
うまくは説明できないのだけれど、とても詩的な世界観。
前半のお惠ちゃんとの話もはかない感じだが、後半さいごの友だちの姉様の描写も気になる。ばあやと3人での最後の晩餐シーン。なぜただの豆腐があんなに旨そうに思えるのか! -
日本にこんな美しい描写の本があったとは知らなかった
-
日本の景色を描いた水彩画のような、綺麗な印象のある本です。
高校以来久しぶりに読んだ日本の文芸作品だったため、
薄いわりに読むのに時間がかかりました。
夏目漱石の作品を思いおこさせると思ったら、著者の中勘助は大学で夏目漱石の講義を受けていたのですね。
背景の描写などが、影響を受けているように感じました。 -
まるで京料理のやうな、味はいがあつて、実に美しい。感性の鋭い、透明な、そして文才のある子どもが日々の自身の営みとそのまま綴つたやうな筆致だ。
-
とても美しく情緒豊かな作品で読んでいて心地よく面白かった。
しかし作品を読んたあとこのような情緒ある作品はなぜ面白いのかが疑問に思ってしまい夜眠れなくなってしまった、 一体自分はこれのどこが美しくどこが面白いと思ったのだろうか? -
素晴らしかった。
明治の中頃が描写されていると思うが、全くの普遍性を感じる。
就学前後の年齢の主人公の周りに起こる出来事とそれに対する主人公の感性。
伯母さんの存在が大きく素晴らしい。
巻末の解説で平岡敏夫は「比類なく美しい幼少年期の物語」といい、郷原宏は「永遠に錆びない『銀の匙』」といっている。
平岡敏夫の解説も素晴らしい。
「銀の匙」を最初に読み、最初に認めたのは夏目漱石だそうだ。
そんな知識などなくても素晴らしい小説だ。
うーん、なぜもっと早くに読まなかったのだろう。
著者プロフィール
中勘助の作品





