光秀の定理 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA
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本棚登録 : 311
レビュー : 46
  • Amazon.co.jp ・本 (464ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041028100

作品紹介・あらすじ

明智光秀はなぜ瞬く間に出世し、信長と相前後して滅びたのか――。

厳然たる「定理」が解き明かす、乱世と人間の本質。
各界絶賛の全く新しい歴史小説、ここに誕生!

永禄3(1560)年の京。
牢人中の明智光秀は、若き兵法者の新九郎、辻博打を行う破戒僧・愚息と運命の出会いを果たす。
光秀は幕臣となった後も二人と交流を続ける。やがて織田信長に仕えた光秀は、初陣で長光寺城攻めを命じられた。
敵の戦略に焦る中、愚息が得意とした「四つの椀」の博打を思い出すが――。
何故、人は必死に生きながらも、滅びゆく者と生き延びる者に分かれるのか。
革命的歴史小説、待望の文庫化!

解説・篠田節子

感想・レビュー・書評

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  • 明智光秀さん。
    こどもの頃の私にとっては『裏切り者、反逆者、逆賊、3日天下』といったマイナスイメージばかりでした。ところが大人になってからふと時代小説を読んでみると、光秀さんとは何とも真面目で義理人情に厚く、文武両道のカッコいいお人なんだと気付いたのです。
    そうしたらなおのこと、何故、本能寺の変という未だに謎多き一大事件を起こしたのか、その心の遍歴はどんな道筋を辿ったのか、どんな思いで、またどんな覚悟で、その時に至ってしまったのか。あぁ知りたい、知りたい。この光秀さんをもっと知りたいという気持ちはずんずんと大きくなっていました。
    そんな時に出会ったこの一冊。
    光秀さんの周りにいるこれまた魅力的な登場人物(愚息&新九郎)により、明智光秀像を描き出すようなそんなお話です。
    信長さんも革命児ならば、光秀さんもこれまた違った意味での革命児であり、歴史に名を残した武将たちも其々が意味ある生と死を繰り返していたのが戦国時代なんだなと感じます。儚くも惚れ惚れする心意気を持った人達、それぞれの目指した天下=理想の世界の実現のために生きた人達はやはり魅力的ですね。
    光秀さんのこともまた少し知れたような、そんな気分になりました。

  • これは確かに歴史小説だ。だが、その一方でこれほどロジカルな歴史小説は初めてだ。
    真の主人公の二人が光秀の本能寺の変を解釈しているところを読むと、分かりきっていたはずなのに、確かにそうだ、と納得してしまう。本能寺の変は必然的なものだったのだと。
    しかし、個人的には細川藤孝の名脇役ぶりが際立っていて、この作者に藤孝を主人公にした作品を書いてもらいたいと思うレベル。

  • 史実とフィクションを上手く合体させた物語だった。
    動乱の時代を情に厚く、誇り高く生きた光秀の姿が描かれていて、彼が本当にこのような人柄だったらいいのに、と思った。
    最後、愚息たちが刃を向けようとしたシーンも印象的だった。
    フィクションなのに、すごくリアルで一気に読めてしまう物語だった。

  • 歴史関連の本を読むのが好きですが、小説の形を取りながら、歴史上の人物の苦悩を上手に記述してある本に出会えた場合は嬉しいものです。石田光成、素晴らしい父を持った故に苦しんだ二代目の大名達と並んで興味を持っているのが、この本の主人公である、明智光秀です。

    小学校の歴史の授業で、明智光秀はクーデータを起こして、豊臣秀吉に負けるまでの「3日天下の武将」と習った数十年前、なんてことをする人なのかと思いました。ところが真実は事情がかなり複雑だったようで、単なる怨恨説では済ますことができないようですね。

    この本は、本能寺の変の真実に迫るものではありませんが、その首謀者である明智光秀が、信長に取り立てられて出世する前に焦点を絞って、さらに彼の知人二人(具足という名のお坊さん、新九郎という兵法者)が話を盛り上げてくれます。楽しい本でした、最近、この本の著者は「信長の原理」という本を出版しました、読みたくなりますね。

    以下は気になったポイントです。

    ・兵法者が合戦に出て目覚ましい功名を上げたという話はきかない、集団戦の中で甲冑を身に付けた相手をなで斬りに切っていく技など、兵法には無い。ようは、刀術と戦場での槍働きは、まったく別ものである(p26)

    ・己にとって本当に大事なことは、人に聞いたくらいで分かるものではない、懸命に考えて初めて自分なりのものが見えてくる。それも最初は一歩だけ(p40)

    ・人は、その生まれ落ちた立場を忘れては、一日たりとも生きられない、育まれてきた意識が、そして過去の記憶が人間を形作っていく。つまり現在の自分とは、その過去の集積の結果に他ならない(p73)

    ・聖(ひじり)とは、古来は学徳を積んだ僧への敬称であったが、時代を経るにつれて、聖本来の品格も地に落ちて、正規の僧侶でない者、あるいは乞食同然の遊行者を指す蔑称となっていた(p117)

    ・実力の伯仲した者同士が一合、二合と切り結べば、どんな名刀でもたちまち刃先は毀れてしまい、廃棄するか小柄に打ち直すしかない(p127)

    ・美濃の土岐氏、あるいは甲斐の武田氏と同様、鎌倉幕府創建以来、代々続いた名門守護大名である(p219)

    ・明智光秀は、織田家に仕えるや否やわずか数年で5万貫(約10万石)の領主となり、直轄領で50万石、与力大名をあわせれば、京都を含めた近畿で5か国240万石を支配し、近畿管領ともいわれるまで出世した(p236、391)

    ・織田信長は、永禄9年には西美濃一帯を手中に収めて、翌年には、美濃国主の斎藤龍興を破り、尾張・美濃2か国の太守となる、110万石である(p262)

    ・信長の正妻帰蝶の生母である、小見の方は明智城城主の光継の娘、この長子が光綱、これが光秀の実父である。光秀と信長の正室は、祖父母を同じくする従妹同士となる(p269)

    ・美濃稲葉山の陥落を受け、朝倉義景のもとには斎藤龍興が流れてきた、明智一族を滅ぼした斎藤家と光秀は一緒にいたくなかったのであろう(p282)

    ・光秀思うに、人間が持って生まれた本来の能力に、たいした違いはない、それを本人たちがある目的意識に向かってひたすら磨き、鍛錬していくからこそ能力が初めて他を圧倒する才能を産み落とす(p286)

    ・本圀(ほんこく)寺の変にて足利義昭を襲撃してきた三好の軍を撃退し、光秀は信長の信任が厚くなる。越前、近江の戦いでも活躍し、2年間で近江10万国(もともと比叡山の所領)を与えられ、坂本に城を築いた。古参の同僚をまたまくまに抜き、初の国持ち大名となった(p390)

    ・光秀軍の中核は、ほぼ明智系美濃源氏の郎党で占められていた血族の連盟である(p399)

    ・信長が寡兵をもって大軍に立ち向かったのは、桶狭間の戦い以降では、石山本願寺との天王寺砦の戦いのみ(p404)

    ・仕事ができる能力と、それを絶え間なく受け入れることのできる度量は、また別の問題である(p417)

    ・丹波は、福知山周辺以外は、深い山塊に覆われている、平安鎌倉以来の古い土豪が無数に住み着いている、それを光秀は平定した(p421)

    2018年9月30日作成

  • 面白いけど、あっちこっちにいってる気は否めない。

  • 再読

  • 人望・信頼度の無さでは他の追従を許さない明智光秀の描かれ方がなんともよい。浮世の理(ことわり)など、4つの椀の中の小石にすぎない。本能寺の変もまたしかりだ。垣根諒介の時代物がまだまだ読みたい!

  • 最近新しい明智光秀像に迫る作品が多いような…

  • 歴史の史実を利用して面白く仕上げた生き方について考えさせられる小説。
    勧善懲悪ではなく、努力すれば救われる系の安直な小説でもなく、登場人物の立場や生き方、動く周りの環境と個性とをうまく織り交ぜながら、なかなか面白く仕上げた小説。
    久しぶりに面白いものを読みました。
    ちょっと4つの椀からものを選ぶところに固執しすぎている気がして、そこは少し幻滅。(なければ星5つでもいいと思う)

  • 明智光秀は主人裏切りの悪者という印象しかなかったけれど、その裏切りを起こした理由を考えるとそうでもないのね。ただ、光秀よりも新九郎が人として成熟していくサイドストーリーのほうが自分に重なってためになりました。

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著者プロフィール

垣根涼介(かきね・りょうすけ)
1966年4月長崎県生まれ。筑波大学筑波大学第二学群人間学類卒。
2000年『午前三時のルースター』でサントリーミステリー大賞と読者賞をダブル受賞しデビュー。2004年『ワイルド・ソウル』で吉川英治文学新人賞と日本推理作家協会賞、大藪春彦賞の史上初の三冠に輝き、2005年『君たちに明日はない』で第18回山本周五郎賞を受賞。2013年、初の歴史時代小説『光秀の定理』を発表、歴史時代小説第二弾である本作『室町無頼』は第156回直木賞候補、第7回山田風太郎賞候補となり、第6回本屋が選ぶ時代小説大賞を受賞した。

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