虚構の城 完全版 (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 114
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (448ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041028902

作品紹介・あらすじ

組合設立騒動に巻きこまれ左遷された若手エンジニア田崎。家族的経営の欺瞞に直面しながら田崎は自らの信念を貫こうとするが…。組織の旧弊や矛盾望に翻弄されるエリートを描いた高杉良のデビュー作。

感想・レビュー・書評

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  • 「海賊とよばれた男」とセットで。
    古臭い会社からフランクな外資系に転職できてよかった生真面目な技術屋社員の物語。
    昔の話だけれど、出光興産の社風がなんとなくわかり、興味深かった。

    ・「技術屋はいいよ、どこへでも行けて。我々は会社を辞めたくなって、辞められないんだ。潰しがきかない。」
    たしかに日本の闇。事務職はかわいそう。

    ・話の本筋とずれるどうでも良い部分ですが、他のお方のレビューにもある通り、男女関係の古さに衝撃を受けた。女性がかわいそう。「家族サービス」とか。
    また登場する企業人たちのビジネス感覚の古さにもびっくり、時代を感じた。
    いたるところで彼らの認知的不協和を感じた。

    ・スマートな紳士に描かれる義父に非常に違和感を感じた。こういう人嫌いだけれど、会社では評価される時代だったのだろうなあ。
    家族のリーダーもちゃんとできない人物が、ちゃんと仕事ができるわけがない。自分が気に入った主人公と自分の娘を結婚させて、二人の相性とか考えてない、自分勝手。不幸を作っている。
    わざわざこの結末にしたということは、モデルがいて、著者も嫌いなタイプなのかも?

    ・主人公は、騙されやすいかんじでヒヤヒヤするけれど、好感が持てた。

  • 若手エリート社員の挫折から成功までを辿った内容。昔の大企業内部がわかるが、いまも昔もそうかわらないな。違いとしたら、昔は交際費を自由に使った時代なんだなと思えた。

  • 深く考えずに図書館の棚からとった本。
    読み始めて出光興産が下敷きになっていたことに気づく。同社については、世代的にまず『海賊と呼ばれた男』を先に読んでいるため、本書に書かれていたことはある意味で衝撃的だった。

    高杉氏の他の著作から類推するやに、出光興産の現実の姿にどちらが近いのかといえば、本書だと思われる。労働組合がないこと自体も、もしかすると相当に時代錯誤だったのかもしれないが、驚くべきはその話すらタブーとされるという社の姿勢である。

    どんな人にも光と陰があるというが、出光氏については、現代の尺度からすれば陰の部分の影響が大きすぎたのではないかと思わされる。

  • 海賊と呼ばれた男で賞賛された出光興産。

    一方で、出光興産の裏の事情を小説化してデビューされたのが高杉良先生であり、今作は出光興産の裏の顔、内部事情の歪さを如実に描いている。

    出勤簿がない。定年がない。大家族主義の闇を描いた作品は今ブラック企業に苦しめられている人に是非読んで欲しい。

  • 社労士の勉強をしてた時に専門学校の講師の方が紹介してた作品。不利益取り扱いとはどういうことかが肌感覚で理解できて良かった。

  • 封建的な会社に勤めるエンジニアが、経営層の反感を受け、転職する物語。伏線として家庭不和や悲壮な恋愛物が描かれている点が面白い。

  • 海賊と呼ばれた男で描かれた出光興産を全く逆の視点から描写した作品。
    一番の驚きは銀座のクラブで一目惚れした女性がまさかの父親の愛人。

  • 高杉氏の作品をはじめて読みました。かの出光興産の社風、文化等をリアルに描写している。75年に発表された本作だが、現在でも同社独特の考えは続いている。労働組合は今でも存在せず、創業家が影響力を持っている。

    しかし出光のような大企業が残業無し、労働時間管理無しというのは驚かされた。時代の要請か少し変化しつつあるようだが、体質が変わるには時間がかかるだろう。

    昨今話題となっている昭和シェルとの合併についてもこのような会社文化が強く影響してしるのは間違いないだろう。

  • 20150726

  • 出光興産をモデルにした作品で、海賊とよばれた男の出光興産のイメージとはまた違う感じで読めた。

  • 歳取ると企業小説もちょっと染みてくるなあ。

  • 海賊と呼ばれた男を読んで、出光興産に興味を持ったことから、この作品も読んでみました。

    書かれている事実に大きな違いはないものの、捉え方によってこうも違うか!というくらい、両極端な作品でした。

    例えば、「海賊と~」では、店員が自ら望んでタンクの底に潜り、どぶさらいの仕事をし、それがどんな辛いことでも乗り越えられるための根幹となっている、的な書かれ方してたけど、「虚構」では嫌々ながらにも崇められる存在である店主の言うことには逆らえず、どぶさらいをさせられたと書かれてていた。

    個人的な見解を述べると、「海賊」に書かれていることは経営層の妄想、思い込み、理想であり、「虚構」に描かれていることが、実際の現場の本音やと思う。

    自分が仕事をしていても、やっぱ経営層が考えている理想と現場の現状ってのは異なるものやし、それが極端に表れてたのが、この出光興産って会社なんやと思う。
    なので、個人的には「虚構」に描かれている現実を支持するかな。

    ストーリーとしては、どっちもとても面白いです。
    石油という商材のダイナミズムを感じられるのは「海賊」かな。

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著者プロフィール

1939年東京生まれ。専門誌記者や編集長を務める傍ら小説を書き、75年『虚構の城』でデビュー。83年、退職し作家に専念。緻密な取材に基づく企業・経済小説の問題作を次々に発表する。代表作は『小説日本興業銀行』『小説ザ・外資』の他『金融腐蝕列島』シリーズ全5部作など。

「2023年 『転職』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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