ハリー・オーガスト、15回目の人生 (角川文庫)

制作 : 雨海 弘美 
  • KADOKAWA/角川書店 (2016年8月25日発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041030110

作品紹介・あらすじ

一回きりの人生では、語りきれない物語――。
全英20万部突破の“リプレイ”SF大作が待望の日本上陸!

1919年に生まれたハリー・オーガストは、死んでも誕生時と同じ状況で、記憶を残したまま生まれ変わる体質を持っていた。
彼は3回目の人生でその体質を受け入れ、11回目の人生で自分が世界の終わりをとめなければいけないことを知る。
終焉の原因は、同じ体質を持つ科学者ヴィンセント・ランキス。彼はある野望をもって、記憶の蓄積を利用し、科学技術の進化を加速させていた。
激動の20世紀、時を超えた対決の行方は?

解説・大森望

ハリー・オーガスト、15回目の人生 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 物語のドライブ感がすごい。
    500ページ超という長く、複雑で、起伏に富んだ道程を、エンジン全開のトップスピードで疾走するような。

    ループものの常として、時間軸が複雑である。そして登場人物の相関図が変化するのでややこしい。しかも人生単位なので尚更である。
    ということを、実は読中にあまり感じなかった(というか気にしなかった)のだけれど、それはおそらく、物語の焦点が「主人公とその宿敵」に絞られていて、主人公の目的がはっきりしているからなのだろう。
    あと、主人公の独白形式というのも意図的なんだろうと思う。「誰かに語って聞かせている」という前提に立てば、説明が説明くさくなりにくい。それから、「誰に、どういう状況で、何の目的で語っているのか」という疑問が、最後まで読み進める一つの引金になるし。実際、最後にその疑問が解けた時にはカタルシスがあった。

    要するに、この「ドライブ感」を生み出すための仕掛けと技というのが実はすごいんだろう、ということである。

    構成上、大きく分けて4つのパートに分けられるように思う。
    その最初のパートで「この世界」の約束事がきっちり説明されていて、しかもその終わりにわざわざ冒頭の記述を繰り返して、「さあ、ここからが本題ですよ」と教えてくれている。だから後半に話が盛り上がったところでいちいち説明を挟む必要がないし、読んでいる方も「あ、あれのことか」とすぐにわかる。とても親切な設計。それも物語に没頭させる「ドライブ感」の理由の一つなのだろう。

    彼の長い長い人生は、時には21世紀という「現代」にまでたどり着く。だからだろう、あり得ないSF小説のはずなのに、「カーラチャクラと呼ばれる人々は本当に居るのではないか」、したがって「自分のこの人生も、実は彼らによって引き起こされた何度かのループの一つなのではないか」なんてことを想像してしまったりもした。

    本当は、誰もがループしていて。
    そして時々、前の人生の記憶を持っている人が居て。
    でもループ後の人生で干渉できる範囲は限られていて、それを超えてしまうとパラドクスが起きて、結果的に死ぬ展開に追い込まれるとか。
    そのルールの例外が成立してしまったとき歴史が改変されて、後に「新事実」と呼ばれるものになるのだとか。

    だから世界史上に記録を残すことが決定づけられている人物はループしないことになっていて、
    逆に言えば「彼ら」のような人々は、何度人生を繰り返したとしても世界を変えることができないとあらかじめ決められているのだ、とか。

    だとしたら、「世界に名を残す一度きりの人生」と、「何をも成し得ない繰り返しの人生」と、ではどちらが良いのだろうか。それらは等価なのだろうか。

    この小説とは関係ないけれど、そんなことまで考えてみたりしてしまった。

    こんなふうに物語の外の世界にまで働きかけてくる小説というのが、本当に面白い小説なんだと思う。

  • ハリーオーガストは、死ぬとまた生まれる。同じ年、同じ親から生まれて、人生を繰り返し生きる。前回の人生の記憶をそっくり持ったまま、今回で15回目。
    この物語は「わが敵。わが友。」に向けて書かれている。といっても手紙調ではなくて、読んでいる間はだいたい、そのことを忘れている。最後の方で、そういえばそうだよね、と認識を改めるくらい。中盤以降の、この「わが敵。わが友。」との攻防、ハリーオーガストの嘘がたまらなくおもしろい。そして最後、泣きそうな気持ちになる。泣きはしないし、泣かせるようなタイプの小説ではない(と思う)んだけど、心ががっと掴まれる。「わが敵」のおもいにも、想像を巡らせる。なにか違えば、なにかが違えば、と思う。そして、これからも16回、17回…と続くハリーの人生のことも。

    本当にいい読書だった。

  • CROSS†CHANNEL以来大好きなループものジャンルにまたしても名作現る。それなりに文字量が多いが、無駄なところがないので一気に楽しめます。
    夏目漱石の『こころ』と同じく、男性二人×女性一人(ただし女性の内面はない)の骨格を持った物語なのと、主人公と敵役の対決がだいぶ拗らせているため、BLに変換させて読むことも可能。

  • 死んだ後も前世の記憶を有して次の人生を送ることが出来るというカーラチャクラ。
    主人公のハリーは思わぬ人物との出会いから壮大な戦いに身を投じていくことになる。
    ありそうでなかった時間ループものの新境地。

    本編と全然関係ないけど、年始に【STEINS;GATE】のアニメを観てたから、「ループ系に縁があるな~」と一思案。

  • リプレイ物には甘くなる傾向があるけど、かなりよかったと思う。ありそうで なかった世界で とても楽しめました。
    もっと膨らませても よかったような気もするし、ちょうど良い尺のような気もするけど。英国作家だからか?ラストもとても好感が持てました。

  • 間違いなく2016ベスト。タイムリープ物の大傑作。いままとめを作っていますが、最高です。

  • とても面白かった。
    何度も人生を繰り返すリプレイもの。
    手に取った時、読む前の印象は、怠惰にダラダラと無為に過ごすような、ある意味反面教師的な物語かと思っていたのだが、精力的に冒険・探求を繰り返す。中盤から、世界を(結果的に)終焉に導いてしまう敵役ヴィンセントが登場する。

    物語は世界の終焉阻止を中心に描かれ、その合間にハリーの脇のエピソードが挿入される構成となっている。

    サイド・エピソードは時系列に展開されないが、整理され読みやすく、メインとサイドで飽きることがなく、読み応えがあった。

  • リプレイもの。
    500ページほどですが行間が詰まった装丁で、物理的に読み応えがあります。
    その上ややこしい。ただでさえ混乱しがちなリプレイ物なのに突然に画面転換が多いものですから、時も場所も一瞬混乱します。結果的に読み終えるのに随分かかってしまいました。
    前半は多元宇宙論など考えながら、やっぱりタイムパラドックスは躱しきれないなあなどと考えながら、苦戦しながら読んでいました。
    後半、面白くなって来るのですが、SF的というより心理戦的な面白さです。

  • 死ぬと元の自分に生まれ変わるハリー・オーガスト。彼の15回の人生を描いた小説。
    生まれ変わる人間が1人ではないこと、生まれ変わる人間にも違いがあること、彼らの団体ができていること、未来の情報の伝達方法。とても興味深い。
    世界を滅ぼす敵、同時に友との戦いが後半のテーマになるが、読み終わるとそれほど意外なことは起こらない。でも味のある、いい結末だった。

  • 最高に面白いリピートもののSFであると同時に、最高に切ないブロマンスでもある。

    君にひどいことをされ殺されても、僕は君が好きだから微笑んでしまう……。

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