殺意の水音 (角川ホラー文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (277ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041030189

作品紹介・あらすじ

空港近くのホテル。人々の笑い声は、包丁を持った元ハウスキーパーの青年、香取純一の侵入で悲鳴に変わる。彼を凶行に駆り立てたものとは? 痛切な回想と現在の悪夢に圧倒される、怒濤のホラーサスペンス!

感想・レビュー・書評

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  • 過去様々なタイプの殺人鬼にフィクションの中で出会ってきたけれど、この主人公はその中で動機その他があまりにもありがちすぎた。

    でも実際殺人を犯す人の心理としてはこのパターンが多いんだろうかと思うとリアルっちゃリアルか。 しかし読み物としては面白みに欠ける印象。

  • 主人公がクズで共感できない上、なぜか主人公にとって都合がよすぎる展開になっていて、バカバカしいという印象しか残らない作品。空港近くのホテルが舞台であるにも拘わらず、主人公が襲った宿室のうち、部屋の内側からロックを掛けている部屋がひとつもないのは、あまりにも不自然すぎる。さらに、被害者の中に、色仕掛けで逃れようとする、常軌を逸した人がいるのに、誰もが思いつきそうな、手あたり次第に物を投げて逃れようとする人が一人もいないのも不自然な気がした。

  • これほどまでに面白くない大石本は初めて。今までが過激過ぎたのか?

  • ホラー小説を読みました。人生初です。大石圭 著 殺意の水音です。

    連続殺人の話で、さらにまた、性描写も過激でしたのでかなりどぎつい作品でした。

    さて、その中で、主人公がボソっとつぶやいたことがとても印象的でした。実は私も以前から考えてきたことと近いことです。

    主人公曰く・・・「幸福の総量は変わらない。」と言うのです。

    どういう事かと言いますと、大きく幸せになっている人がいるのは、大きく不幸になっている人がいるからだ。

    言い換えるなら、「俺の不幸はお前の幸福のせいだ。」と、こういうことです。

    さらにマクロ的視点で考えますと、つまりは、

    ”幸福とはゼロサムゲームだ。”と言えます。

    それが主人公の主張です。いかがでしょうか。例えば、巡り巡って貴方の幸せは誰かの不幸の上に成り立っていると思いますか?あるいは、巡り巡って貴方の不幸があるからこそ誰かの幸福があると考えますか?

    もちろん、今回読んだ小説の中で明確な主人公の主張を裏付ける根拠が提示されていたわけではありませんが、果たしてこの問をどのように受け止めるべきでしょうか。

    もっとも、私が久しく考えてきたのは、幸福でなく、経済についてです。

    ”果たして経済はゼロサムゲームなのだろうか?”というものです。経済=幸せとは限りませんので一概に言えないというのはありますが。

    さて、私の考えは・・・経済にしろ、幸福にしろ、今のところ私はゼロサムゲームではないと考える立場をとっています。

    私が誰か愛する人のために自分の技術や知識を提供したとします。

    例えばですが、パソコン関係でとても困っていたところを相談に乗った。あるいは、いろいろ仕事で切羽詰まっていたところ愚痴を聞いた。それによって相手の気持ちが軽くなった。

    それは経済的に十分な効果を生み出していますが、一方で誰かの経済的不利益を奪っているわけではありません。

    もしかしたら、私が存在しなければ困った彼なり彼女なりはパソコントラブル相談に駆け込んだ。あるいは、カウンセリングを受けた。それらを生業としている方たちの売上の邪魔を私はしていることになりますが、恐らく彼なり彼女なりは別に私がいなければ、他に相談対象を求めなかったことでしょう。

    逆に私が存在しなかったことで彼なり彼女なりの労働生産力が低下することになるのであればむしろ逆に全体的には経済的損失を被ります。

    一方で幸福について・・・私が至福の瞬間を感じるのは疲れて帰宅しシャワーを浴びた後に、冷たいジャスミン茶を飲みながら静かにゆっくりと勉強している時です。窓を開けていると心地よい風が入ってきます。

    世の中にこれ以上幸せな事ってあるのでしょうか。といつも思います。

    そんな私の一人だけの幸せを甘受することで誰かの幸せを奪っているとは到底考えられません。いかがでしょうか。

    ・・・

    作品自体はとてもおもしろく一気に読んでしまいました。ただ、私は性格的に”もっと深くその理由が知りたい”タイプです。

    (ネタバレ注意)
    ざっとあらすじをご紹介しますと・・・ひどい家庭環境に育った若い男性が抑えきれない怒りとそして絶望とともに連続殺人という狂気に走る。というものです。

    そうなってしまった理由は理解出来るようにも思いますが・・・私は何故そうなってしまったのかがもっと深く知りたいのです。

    つまり、では、同じ劣悪な家庭環境であれば誰しも必ず連続殺人という狂気に走るのか。

    未然に防ぐことは出来ないのか?未然に防ぐことが成功したケースはどのような有効手段だったのか?それは、心理学的アプローチか、精神分析的アプローチか、認知行動療法か、投薬によってか。

    なぜ、その劣悪な家庭環境が生まれてしまうのか。それは日本だけか?海外のが多いのか?東洋か、西洋か?その差はどこからくるのか?歴史的にみてメジャーなのかマイナーなのか?その劣悪な家庭環境を生まないために、経済学的にあるいは財政学的に何か打つ手はないのか?

    そういうところまで考察しているものが本当は読みたいのです。

    結局そういうところを知りたければ勉強するのが一番手っ取り早いと言えるでしょう。だから私は勉強が好きなのです。

    ホラー小説を読んで考え始めた事 | 最速で頭の整理Web http://clearmyhead.dynu.com/digitaropiano/?p=1523

  • うーん、ありきたりな感じもしつつ、殺人者の心理としてはリアルなのかな?

  •  色々なことが積み重なって、壊れていく青年の話。

     うーん。
     単に運が悪いとか、環境が悪いとかで、片付けられない感じなのがなんとも後味が悪いのである。
     まぁ、やってることはひたすらエグいんですけど。

     でも、結局のところ閉塞された場所から抜け出せなかったのは、彼自身の視野の狭さ、というか、価値観の偏狭性のためのように感じる。
     って、そういう人格に育ったのは、その環境故であるのは間違いないのだろう。

     人は、神とか何かそういう大きなものの掌の中で、もてあそばれているだけなのかもしれないと、思った。

  • 鬱々としたホラーサスペンス。不幸のどん底な主人公が自分よりも幸せな人間を妬み、殺戮を繰り広げる。ただそれだけの物語。……と言ってしまえれば簡単なのだけれど。
    この程度の「不幸」って、まだまだそんなでもないんだよなあ。世の中もっと不幸な人はいくらでもいるはず。なのにこんな凶行に走ってしまう主人公に同情はできないのだけれど。哀れというかなんというか……ほんの小さな幸せでも見つけられれば救われていたのに、と思えてしまうところが何とも切なくって。
    不幸のまったくない人間などいないのだし、逆にまったく幸せのない人間もいない。そう思いたいものです。

  • 久しぶりにエロスよりもホラー色の強い大石圭の作品を読んだ。文庫書き下ろし。しかし、自分の勘違いかも知れないが、ストーリーは以前に読んだ事があるように感じた。

    主人公の香取純一が空港近くのホテルで残虐な無差別殺人を繰り返す一夜が描かれる。そして、惨劇の進行とともに純一が無差別殺人を引き起こすに至る理由と過去、心理が少しずつ明かされていく。

    ストーリーは至って単純なので、読みどころは主人公の過去と少しずつ壊れていく心理描写だろう。

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著者プロフィール

1961年、東京都出身。法政大学文学部卒業。93年、『履き忘れたもう片方の靴』で第30回文芸賞佳作を受賞し、デビュー。『アンダー・ユア・ベッド』『殺人勤務医』『絶望ブランコ』『愛されすぎた女』『裏アカ』など、著書多数。2019年には『殺人鬼を飼う女』『アンダー・ユア・ベッド』が立て続けに映画化され、話題に。

「2023年 『破滅へと続く道 右か、左か』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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