- 本 ・本 (264ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041030363
作品紹介・あらすじ
結婚して五年目の夏、植物性皮膚硬化症候群にかかり、妻の恵理が倒れた。昏睡状態に陥った恵理を病院から連れだした俺は、農園に恵理を埋めた。それが彼女の遺言だった。謎の人物から農園の存在を知った恵理は、自ら埋められることを望んだ。農園には同じような境遇の男が大勢おり、自分のパートナーを丁寧に「栽培」している。やがて熟した女性たちは、かくも美しく甘美な果実となる――。
選考委員が驚愕した第九回『幽』文学賞短篇部門大賞受賞作を含む連作集。
感想・レビュー・書評
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「愛する人を食べたい」が「愛する人に食べられたい」より強く感じられました。
食欲と恍惚。「食べたい」も「食べられたい」も業が深いです。
読む前は、皮膚が果実の皮として実って、身体の中身が全てみかんの果実とかりんごの果実なのか?と思ってたのですが、いろんな果物がゴロゴロ入ってるんですね……不思議です。パイナップルは輪切りになってるとか書いてあるし。食べやすさ重視なのかな。
アップルパイの話と、食べに行っては皮もらって帰ってくる話が印象的でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
作者の頭の中だけで作られたであろう不思議で不気味な話。理性も吹っ飛ぶかぐわしき匂い
果実を貪り喰う獣…。その描写に魅力を感じて引き込まれもしたが、ちょっと悪趣味かな。
幻想的、官能的、耽美的。当てはまるものを考えたが結局「ちょっと悪趣味」に落ち着く。 -
ファンタジーだと私は思いましたが。
食ってみたいなぁ。 -
いやもう官能的。抜群になまめかしい。だいぶファンタジーな設定で、ん?となるところもありましたが。
3話の伏線回収のしかたが好きすぎて、読了後一旦置いた。
一気読みするのがもったいないと思ったの久しぶり(読んだけど)。 -
皮膚の硬化、頻発する立ち眩み、昏睡状態を経て息を引き取る、女性に広まりつつある新種の難病、植物性硬化症。彼女らがある出会いを経て最期に望んだのは、植えて育てて実った果実をぜひ食べて。なんて美しい耽美な世界なのか。植えた妻を慈しみ育て、貪り食う男たちが可愛いと思ってしまう私は、埋められたい女たちに同調するには少し年を重ねてしまったようだ。一番美しい時までの私だけを愛でないで。長くともにしたすべての私が私。もし私がもっとずっと若かったなら。それでも埋められて熟すよりも男より長生きして、愛する男を……
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私も果物になって、好きな人に食べられたかった。
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実写化しても面白そうな…映像が良く浮かんでのめり込める作品でした
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いい加減にしてほしい現実ばなれ、白けた
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「幽」文学賞受賞作品。不思議で幻想的な連作短編。ジャンルとしてはホラーと言ってもいいかもしれないし、怖いと思える部分はたしかにあるのですが。怖いとか綺麗とか不思議とかいうよりもまず出てしまう感想は……「美味しそう」なのかもしれません。
一歩間違えればグロテスクになってしまいそうな描写がとても美麗。そして香り立つような雰囲気に満ち溢れていて、こんな果実があるのなら口にしてみたい、と思わざるを得ません。でも果実になりたいかどうかと聞かれたら……それはちょっと悩むな。 -
怪談が取れた『幽』文学賞短編部門大賞作品集。
カニバリズムにうっとり出来ないので、終始気持ち悪かった。たとえ果実でも。うええ。
長編部門の大賞が出るのがますます楽しみ。怪談ってなんだ。