- Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041031766
作品紹介・あらすじ
満開の桜の下の墓地で行き倒れたひとりの天使――。昏い時代の波に抗い鮮烈な愛の記憶を胸に、王寺ミチルは聖地サンティアゴ・デ・コンポステーラを目指す。愛と憎しみを孕む魂の長い旅路を描く恋愛小説の金字塔!
感想・レビュー・書評
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哲太郎はミチルの眉間の傷に触れてそっと撫でた。ミチルは哲太郎の足に触れて撫でさすった。人のからだのぬくもりと、人の言葉のぬくもりを噛みしめて、二人は穏やかに見つめあった。二人は同じことを考えていた。ただやさしくしてやりたい。ミチルは哲太郎に、哲太郎はミチルに、ただひたすらやさしくしてやりたいと思うだけだった。
「俺は行けない。ひとりで逃げるんだよ、ミチルさん」
それはせいぜい二分か三分に満たない東の間の時間だった。二人は絶望的に見つめあっていた。もう二度とやり直せない人生を、舞台の暗転のように鮮やかに場面転換して次のシーンにつなげないものかと夢想しながら。稽古場でダメ出しをしているときのように、もう一度同じ場面をやり直すことができたらと焦がれるように願いながら。二人のあいだを、十年という時間が、十年分の愛憎が、風のように砂のように吐息のように流れていった。
神なき時代の、愛なき世界に、愛の国はあるか?
ミチル三部作完結。ミチルの心中はノリ的なきらいがあって好きになれない。しかし愛に生き愛に死んだ、文字通り愛の国で生涯を遂げた彼女の姿は賞賛に値する。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
3部作読んだ。最後まで闘う力、とても孤独だけど、愛する人たち、愛してくれる人たちがいるミチルさんは、とても魅力的ない人だと思う。他の人たちのその後の姿も見たかった。
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28.12.30読了。
王寺ミチル三部作の完結編。
四国、スペイン巡礼をする中で久美子の死によって失われた記憶を取り戻していく。
ミチルが最後なんで心中しちゃったのかはわからん。やっぱり周りをひっかきまわす自己陶酔な人でした。急にファンタジー世界のような設定になるし…誤字脱字なのかな?多かったなぁ。
でもたぶん新作出たらまた買っちゃう。 -
前提となる政治的バイアスの強すぎる世界感は安っぽく、その無用で過剰な装飾は物語本来の輝きを蝕んでいるように思えてしまいます。
楽しみ読んだのに、作風がこうだったでしょうか。自分こそが期待故に記憶を粉飾していたでしょうか。 -
『猫背の王子』から始まるシリーズの完結編(?)で、とても壮大な物語になっています。
もう一度、シリーズ最初から読んでみようかな。