エミリの小さな包丁

  • KADOKAWA
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  • Amazon.co.jp ・本 (344ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041032084

作品紹介・あらすじ

信じていた恋人に振られ、職業もお金も、居場所さえも失った25歳のエミリ。藁をもすがる思いで10年以上連絡を取っていなかった祖父の家へ転がり込む。
心が荒みきっているエミリは、人からの親切を素直に受け入れられない。しかし、淡々と包丁を研ぎ、食事を仕度する祖父の姿を見ているうちに、小さな変化が起こり始める。食に対する姿勢、人との付き合い、もののとらえ方や考え方……。周囲の人たち、そして疎遠だった親との関係を一歩踏み出そうと思い始める――。「毎日をきちんと生きる」ことは、人生を大切に歩むこと。人間の限りない温かさと心の再生を描いた、癒しの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 若いって面倒臭いけど
    やっぱりいいな。

    すべてが鮮やかでどの
    色にも濁りがない。

    だからかな、思い出す
    たびに透明になってく
    気がする。

    いつか眩しい光ばかり
    になってしまうのかな
    ・・・

    そしてエミリちゃんの
    想いに共感する人たち
    は、

    私も含めてどこか屈折
    してると思う。

    ときに臭いものに蓋を
    したり、

    どこかアンバランスな
    綱渡りをしてる生活感
    に、

    森沢さんの何も隠そう
    としない均整のとれた
    文体が、

    精神衛生上とてもいい


    おじいちゃんの酸いも
    甘いも噛み分けた言葉。

    夕凪の浜辺で見つけた
    貝殻のように、

    八十余年の人生の波に
    洗われてキラキラ輝く
    それらも、

    書き手である森沢さん
    の言葉に他ならず。

    森沢さんてば何周目の
    人生を生きてるんだろ


    読んでたらおさかなが
    食べたくてたまらなく
    なりました。

    わが家は当面おさかな
    メニューに決定!(笑

    • コルベットさん
      ねこさん、またまた素敵でした♡ 昨晩は鯵のなめろうの小鉢を出して家族にも好評でした。実は鮮魚コーナーで出来合いを買ってきてただ盛りつけただけ...
      ねこさん、またまた素敵でした♡ 昨晩は鯵のなめろうの小鉢を出して家族にも好評でした。実は鮮魚コーナーで出来合いを買ってきてただ盛りつけただけなんですけどね笑。いつも素敵な本のご紹介をありがとうございます(*^^*)
      2024/10/12
    • ねこさん
      なめろう、小鉢に入ってるだけでなんとなく特別感がでそう!
      なめろうをあてにしながら、お酒を飲んでるコルベットさんの図が浮かぶ〜(*>∀<)o...
      なめろう、小鉢に入ってるだけでなんとなく特別感がでそう!
      なめろうをあてにしながら、お酒を飲んでるコルベットさんの図が浮かぶ〜(*>∀<)o(酒)
      2024/10/13
    • コルベットさん
      デヘヘ(* ̄▼ ̄*)o(酒)"
      デヘヘ(* ̄▼ ̄*)o(酒)"
      2024/10/13
  • yuka♡さんの感想を読んで手に取った本です。

    おじいちゃんの料理が本当に美味しそう。
    おじいちゃんの深い愛情とぶれない芯がとても心に残る本でした。

    それにしてもおじいちゃんの料理はすごい。エミリを立ち直らせただけではなく、強くバージョンアップさせて、さらに母親への見方も変えさせるなんて。

    この本で一番じんときたやり取りです。
    「自分の存在価値と、自分の人生の価値は、他人に判断させちゃだめだよ」おじいちゃんは、いつにも増して、渋い声で、ゆっくりと話した。「判断は必ず自分で下すことだ。他人の意見は参考程度にしておけばいい」「……」「考えてごらん。事情を知らない人たちに、エミリとエミリの人生の価値を勝手に判断されて、しかも、エミリがそのいい加減な判断結果に従うような人生を送るハメになるなんて、道理に外れるし、何より気分が悪い」

  • 傷ついたエミリと静かに受け入れるおじいちゃん。
    「自分の存在価値と、自分の人生の価値は、他人に判断させちゃだめだよ」
    おじいちゃんの言葉はきっと彼女の芯をあたためる続けるだろう。

    おじいちゃんと台所に立つエミリ。二人の距離がいつの間にか小さくなっていくのがわかる。
    おじいちゃんの魚料理のひとつひとつが、彼女の「うら」を凛、凛と爽やかにする。風鈴のように。
    終盤、おじいちゃんとエミリが台所に立っている姿を想像するだけでジーンとくる。
    おじいちゃんの手紙には森沢明夫さんにまたしてもやられた。反則技だ。こらえきれず雫が頬を伝わる。

    森沢明夫さん作品3作目読了。胃袋をつかまれた。いや「うら」をつかまれた。

  • 大三おじいちゃんの深い愛情や優しさ、心平さんたちの温かさで、エミリの心と同じように私の心も澄んで穏やかになっていました。
    食堂シーンでのはおじいちゃんはかっこよかったですし、あの三行には涙してしまいました。
    森沢先生の小説によく登場するアイテムにも関係があって、これからも大三おじいちゃんには長いお付き合いになりそうです。凛。

  • 傷心のエミリが訪れたのは、おじいちゃんが住む田舎の漁師町。 
    ゆっくり流れるおじいちゃんとの生活に少しずつ心を癒していく。

    心平さんの言葉
     「過去の失敗に学ばない人間は阿保だけど、          過去の失敗に呪縛されたまま生きていく人間はも っと阿保」

    おじいちゃんの言葉
     「自分の存在価値と人生の価値は他人に判断させちゃだめだよ」

    風鈴の「凛」という音が聞こえてきそうな夏を感じながら、私も忙しい現実から少し離れることができた。
    「食」に対する姿勢を改めて考えさせられる作品だった。

    • TOMさん
      ミユキさん!こんばんは♪
      この作品とても癒されますよね〜
      風鈴の音色や様々な食べ物に
      そして言葉少なめに語るおじいちゃんが、とてもかっこよか...
      ミユキさん!こんばんは♪
      この作品とても癒されますよね〜
      風鈴の音色や様々な食べ物に
      そして言葉少なめに語るおじいちゃんが、とてもかっこよかったです!
      2024/07/15
    • きたごやたろうさん
      またまたオイラ(2025年から一人称はこれでいきます笑!)の本棚に「いいね」をありがとうございます。

      森沢文学というジャンルがあるみたいで...
      またまたオイラ(2025年から一人称はこれでいきます笑!)の本棚に「いいね」をありがとうございます。

      森沢文学というジャンルがあるみたいですね。
      オイラ未体験なので、読んでみたいです!
      2025/01/12
  • 新聞紙がすーっと切れるほどに研ぎ澄まされた包丁。その小さな包丁は、元からそのサイズなのだと思っていたら、何年も研がれたことで小さくなったのだと。
    研ぎ続くなると包丁って小さくなるんだ!と単純にびっくり。そして、その包丁が贈り物だと知ってどれほど大切にしてきたかが伝わってきた。
    訳ありでおじいちゃんのところに押しかけたエミリが、料理を通して心を癒し、人との距離を縮めていくのだけど、登場するおじいちゃんの料理がとにかく美味しそう!
    新鮮な魚を丁寧に料理している様子がリアルに伝わってきて、食欲を刺激されまくり。
    そんな様子をそっと見守るように「凜」と鳴る風鈴の音が涼やかで優しくて。
    レモン色の空、いちごシロップを染み込ませたような真っ赤な雲、パイナップル色の海水…
    美味しい料理と自然に囲まれると、人はきっと元気になれる。

    • ねこさん
      コルベットさん
      森沢作品にもリンクがあったとは!発行順の方が良かったかなぁと今更ながら。完全にノーマークだった(⁠≧⁠▽⁠≦⁠)
      コルベット...
      コルベットさん
      森沢作品にもリンクがあったとは!発行順の方が良かったかなぁと今更ながら。完全にノーマークだった(⁠≧⁠▽⁠≦⁠)
      コルベットさんは読みたてほやほやのうちに、こちらも是非♪
      2024/10/03
    • ねこさん
      きゅうさん
      さわらのマーマレード焼き、すごく惹かれますよね!簡単に出来そうに書かれてたけど、きっとマーマレードがおじいちゃん特製の美味しいや...
      きゅうさん
      さわらのマーマレード焼き、すごく惹かれますよね!簡単に出来そうに書かれてたけど、きっとマーマレードがおじいちゃん特製の美味しいやつなんだろうなと想像してました(⁠◍⁠•⁠ᴗ⁠•⁠◍⁠)
      2024/10/03
    • コルベットさん
      はーい♪(*´▽`)ノ
      はーい♪(*´▽`)ノ
      2024/10/03
  • 1.この本を選んだ理由 
    なんで行き着いたか忘れてしまったけど、たしか、どなたかの感想に惹かれたことがきっかけだった気がします…

     
    2.あらすじ 
    都心で暮らしていた25歳のエミリが、居場所を失い、10年以上も連絡を取っていなかった祖父の家へ転がり込む。祖父との田舎暮らしの中で、傷ついた心を回復させていく。田舎といっても、千葉の南の方で、神奈川方面が見える場所みたいだから、安房郡とか、南房総市とか、その辺のイメージかな。


    3.感想
    海の見える田舎の情景が伝わってきて、すごい優しい気持ちにさせてくれる作品でした。何度も登場する風鈴の音まで聞こえてくるようで、その辺の描写が上手なんだろうなぁ、と、読み終わった気がつきました。登場人物についてもイメージしやすかったです。
    みなさんが、良い本に出会ったとコメントしているように、私も良い本に出会ったな、というのが感想です。

    こんなおじいちゃんがいたら、ほんとかっこいいなと思います。じいちゃんのセリフがとても心に響くものばかりで、とても心に残るものが多くありました。

    最後まで読んで冒頭に戻ってみると、「わたしを自在に動かせるのは、世界で唯一、わたしだけだから」って、エミリが言ってるのに気づき、話す人によっても受ける感覚が大きく違うことに気づきました。

    人生を考えさせてくれる、そんなお話でした。
    この作品を読んで、真剣に料理に取り組もうと思う人も多いでしょう。


    4.心に残ったこと
    おじいちゃんの言葉はよかったです。
    ・幸せになることより、満足することの方が大事だよ。
    たとえ一緒にいられなくても、誰かの存在は、誰かを照らすのだろうか。
    ・自分の存在価値と、自分の人生の価値は、他人に判断させちゃだめだよ。判断は必ず自分で下すことだ。
    ・エミリを思いのままに動かせる万能な存在は、唯一、エミリ自身だろう。エミリの人生を自由自在に創造していけるのも、エミリ本人しかいないんだ。
    ・気分よく生きればいい。淡々と。


    5.登場人物  

    エミリ
    高梨十三 おじいちゃん
    拓郎 兄
    麻衣子 母

    沙耶 エミリ友達
    野地鉄平 おじいちゃん友達
    フミさん おじいちゃん友達

    軽井心平 30歳
    直斗 サーフィンバカ
    京香


  • 都会から逃げて来た孫娘。
    そんな孫娘を黙って受け入れる
    おじいちゃんと柴犬のコロ。

    海辺の小さな家で二人と一匹の生活が
    始まります。

    釣り、海辺の散歩、ビーチサンダル、風鈴…
    そして、おじいちゃんが丁寧に作る絶品ご飯。

    読んでいるとザワザワした心が
    穏やかに凪いでいくようなそんなお話です。

  • はじめての作家さんでした。
    文章の書き方というのか表現がすごくキレイでこんな表現の仕方があるのか...と驚くばかりでした。
    料理を通じてまわりが温かくなっていく様が読んでいてもホッコリしていきました。やっぱり心のこもった料理っていいな...と思いました。後半は、涙が止まらなくて1人きりで読みました。
    心に響く言葉もたくさんあり読み終えた後もまだ温かい気持ちがしています。他のお話も是非読んでみたいです。
    鎌倉ベルズの風鈴...すごく気になっています。
    凛....凛...が印象的です。

  • 不倫がばれて仕事をクビになり、鬱状態となった25歳のエミリが都会から逃げ、頼った相手は母方の祖父だった。
    15年ぶりに会う祖父と、海の見える家で暮らした2ヶ月間の出来事。
    エアコンもテレビも無い。21時には就寝して5時には起床し、浜辺から神社まで愛犬のコロの散歩。
    畑では野菜を、港では魚を貰い二人で朝食の準備をする。
    祖父の作ってくれる料理の美味しさと優しさ、都会とは違う非日常感の中で、エミリは癒され自分を見つめ直しはじめる。
    そんな時に、元の同僚の沙耶がエミリを訪ねてやってくる。心配するふりをしながら、居酒屋でエミリの不倫をばらすフレネミーぶり。
    閉鎖的な田舎であっという間に広がった噂に、再度傷つき心が折れそうになるエミリ。
    そんな時も祖父の料理はやっぱり、美味しい。港で魚をくれる心平や、直人や京香も、変わらずエミリに接してくれた。
    世界は変えられなくても、気分は変えられる。
    祖父に教わりながら、沢山の料理を覚えて行くエミリ。祖父からもらった包丁を手に新生活の為に、海辺の街を出ていく。

    胃袋をつかまれるとはよく言ったものだ。
    祖父の作る料理達が、私の目の前のテーブルに並べられて大葉の香りや、味噌汁の湯気まで感じられるような気持ちになる。
    終始食べてみたい、これをつまみにキンキンに冷えたビールを飲みたい!!と何度想像したことか。

    海辺の漁師町も私の地元によく似ている。
    新鮮な魚を貰ったり、釣りをしたり蟹をとったり。
    両親が他界してからは帰ることもないので、懐かしくなった。
    エミリは小さくなった包丁を手に、いつか誰かの胃袋をつかんで幸せになって欲しい。

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著者プロフィール

1969年千葉県生まれ、早稲田大学卒業。2007年『海を抱いたビー玉』で小説家デビュー。『虹の岬の喫茶店』『夏美のホタル』『癒し屋キリコの約束』『きらきら眼鏡』『大事なことほど小声でささやく』等、映像化された作品多数。他の著書に『ヒカルの卵』『エミリの小さな包丁』『おいしくて泣くとき』『ぷくぷく』『本が紡いだ五つの奇跡』等がある。

「2023年 『ロールキャベツ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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