エミリの小さな包丁

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
4.25
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本棚登録 : 291
レビュー : 60
  • Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041032084

作品紹介・あらすじ

信じていた恋人に振られ、職業もお金も、居場所さえも失った25歳のエミリ。藁をもすがる思いで10年以上連絡を取っていなかった祖父の家へ転がり込む。
心が荒みきっているエミリは、人からの親切を素直に受け入れられない。しかし、淡々と包丁を研ぎ、食事を仕度する祖父の姿を見ているうちに、小さな変化が起こり始める。食に対する姿勢、人との付き合い、もののとらえ方や考え方……。周囲の人たち、そして疎遠だった親との関係を一歩踏み出そうと思い始める――。「毎日をきちんと生きる」ことは、人生を大切に歩むこと。人間の限りない温かさと心の再生を描いた、癒しの物語。

感想・レビュー・書評

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  • 読み終わったとき、心の中にトパーズブルーの海の色が広がるような、やさしい爽快感が残る作品だった。
    夏の色がまだ残るこの時期に読めてよかった。

    大三おじいちゃんがとてもよい。
    おじいちゃんのエミリに対する行動・態度や言葉に、自分の身の回りの人との関わり方を振り返り、いろいろ考えさせられた。信じて見守ること、子育てでもなかなかできないのだけれど、やっぱり大切だよね。

    そして、傷ついた心に寄り添ってくれる、たくさんの言葉たち 

    「幸せになる事より、満足することの方が大事」

    「つらいときでも鼻歌を歌っていればさ、世界は変えられなくても、気分を変えることなら出来るから」

    エミリの別れの言葉
    「毎日ごちそうさまでしたーっ!」に感動

  • 森沢明夫さんの【エミリの小さな包丁】を読みました。
    森沢さんの本は6冊目。
    心に沁みる本ばかりで、すべて☆4つ以上。


    東京で一人暮らしをしていたエミリ。
    両親は離婚。
    父は新しい家庭を築き疎遠に。
    母の生き方を嫌い、母のもとを離れ、兄はアメリカ在住。
    恋人、仕事、家、すべてを無くしたエミリが頼ったのは長年音信不通だった祖父。
    わけも聞かず、エミリを受け入れてくれた祖父。
    祖父が作る料理に癒されていくエミリ。

    【エミリの小さな包丁】もとても良い本でした。
    ちょっと気持ちも沈みがちだったので、元気をもらえました。

    心に響く言葉たち。

    流れ星に「幸せになれますように」と祈ったエミリにおじいちゃんが言った言葉。

    幸せになることより、満足することの方が大事だよ

    人はどんどん欲張りになる。
    もっと、もっと、と。
    だけど、違うのよね。
    ちょうどよい按配で”満足する”ことが大事なのよね…


    エミリが何もかも無くしたわけを知られてしまったとき。
    心平さんがエミリに言った言葉。

    あるとき、ふと思ったわけ。過去の失敗に学ばない人間は阿呆だけど、過去の失敗に呪縛されたまま生きている人間はもっと阿呆だよなって。だってさ、もったいないじゃん

    これは…
    ハートの真ん中にズキューーーン!
    ついつい過去の失敗に囚われてしまう私。
    こんなふうに考えたい!


    おじいちゃんがエミリに、おじいちゃんが暮らす町”龍浦”の言われを教えてくれたときの言葉。

    日本人は、人間についても外見を「表」とし、内面(つまり心)を「うら」とした。その証拠に、現代の日本語にも「うら」がつく単語が多く残されていて、それぞれの「うら」を「心」に置き換えても意味が通じるのだという。
    例えば、「うらやましい」は「心がやましい」状態を言い表しているし、「恨めしい」は「心が女々しい」ことを言う。「裏切る」は、相手とつながっていた「心を切る」ことで、「うら寂しい」は「心が寂しい」ことであり、そして「裏読み」は、本当の「心を読む」ことを言う。

    心が美しく保たれていることー。日本人ってのは、昔から、その状態がいちばん自然で、気分がいい状態だと考えていたんじゃないかな。

    生きていくには、いい気分でいることが大事!
    そう、そのために心をきれいにしておくことが必要なのですよね!

    これ以外にも心に響く言葉がたくさん。
    胸いっぱい。
    いい気分になれる本でした。

    森沢さんの作品は「虹の岬の喫茶店」や「あなたへ」等、映画化されていますよね。
    この本もいつかきっと映画化されるのではないかと思っています。

    私がキャスティングするなら、おじいちゃん役は田中泯さんがいいなぁ~!
    エミリは…
    広瀬すずさんはちょっと違う…
    高畑充希さんもちょっと違う…
    しいて言えば、本田翼さん…?
    最近の若い女優さんをあまり知らなくて…

    深津絵里さんの若いころみたいな女優さんがいいなぁ~
    って、今なら誰かしら…?

  • やっぱり良かった。森沢明夫。
    「毎日をきちんと生きる」ことは、人生を大切に歩むこと。と帯にあった通り、きちんと料理して食べる。そういう基本的な事が大切なんだろうな。そして出てくる料理が美味しそう。
    おじいちゃんの「幸せになることより、満足することのほうが大事だよ。」という言葉が素敵。

    エミリにはおじいちゃんの所にずっといて欲しかったなぁ。
    それとこの本は真夏に読んだ方が良かったかも。

    2017.3.15…7

  • リゾートとしての海ではなく、
    漁港
    生活者としての「海」
    食べ物の描写が上手なせいか
    におい、潮風のべたつき、日差しの強さ、
    五感で感じる物がひしひしと伝わってくる。

    ○幸せになるより満足することのほうが大事だよ
    ○自分の存在価値と、自分の人生の価値観は他人に判断さあせちゃダメだよ
    ○周りを変える必要なんてない。自分の「うら」を変えれば、それがそのまま自分の人生を変えるってことだからな

    2016年 角川書店 
    装画:小川かなこ
    装幀:坂詰佳苗

  • 「海のおじいちゃん」のところに
    身を寄せることになった孫娘。

    おじいちゃんの家で、
    エミリは自分の生まれる前、
    幼い頃のこと、
    大嫌いな母親のことをゆっくり知る。

    作中に出てくる
    「やさしさに包まれたなら」の歌詞が
    作品によく合っていて泣かされた。

    母親ももっとわかる方法で
    愛を伝えればよかったのにね、
    と思ったけど、
    エミリが愛されてることを知れて
    ほんと嬉しかった。

    森沢さん、やっぱり優しいです。

    心がとげとげしたときに読みたいなぁ。

  • 苦労した分だけ、心が磨かれる。だから、人は優しいのだー。

    都会で暮らしていたエミリ25歳。
    信じていた恋人に裏切られ、仕事もお金も居場所さえ失った。
    藁をもすがる思いで15年振りに連絡をとった「海のおじいちゃん」
    大三おじいちゃんの家に身を寄せた。
    お祖父ちゃんは銅を素材にした風鈴作りの職人。
    職人気質で無口だけど、温かく迎い入れてくれた。
    毎日淡々と包丁を研ぎ、丁寧に食事の仕度をする。
    そんなおじいちゃんと、早朝から犬のコロの散歩。
    一緒に釣りをして、一緒に食事を作る。
    豊かな自然の中で自然の恵みを感じながらおじいちゃんの姿を見ている内に、
    食に対する姿勢や、人との付き合い方…小さな変化が起こり始める…。
    しかし、元同僚の沙耶が遊びに来て毒をまき散らしてしまう。
    エミリがこの町に逃げて来た理由をばらしてしまった(*`Д´*)
    人の噂という毒は強靭で、しかもそれを打ち消す血清がない。
    尾ひれがついた噂に再び傷付くエミリだったが、
    以前と同じように接してくれる周囲の温かい人の心に支えられ、
    負けない〝武器〟を手に新しい一歩を踏み出していった…。

    大三おじいちゃんの強さと優しさがとっても良かったなぁ(*´˘`*)♡
    文中に本当に沢山お魚料理が登場した。
    もーそれがとっても美味しそうで、新鮮なお魚料理を凄く食べたくなった。
    そして、いつものように心の琴線に響く素敵な言葉が散りばめられてた。
    〝辛い時は身の回りの小さな幸せを眺めて良い気分を味わっていればいい〟
    〝いい気分でいるためには心をきれいにしておく〟
    〝自分の存在価値と自分の人生の価値は他人に判断させちゃ駄目〟
    公園での心平とのシーンは一番印象的でした。
    軽くてオチャラケてる心平…とっても良い奴だったぁ♪
    文中に登場する作家の鉄平さんは森沢さん自身なのかなぁって…(๑´ლ`๑)フフ♡
    プロローグを読んでエピローグが理解出来たのですが、
    大三さん目線の気持ち…切なくてホロッとしました。

    風鈴の〝凛〟って音色が聞こえるような爽やかで、温かくて優しいお話でした。

  • 料理の本・・・じゃなくって(笑)、最近の森沢さんの本の中では、一番宗教観が感じられるような気のする本でした。ちょうど山岳宗教に関する本を読んでいるせいもありますが、一つ一つのフレーズに、宗教的な感覚を持ちながら読むという、変わった感じのするひと時でした。といっても、かたっ苦しい本ではないので、気軽に読んでくださいね>みなさん。

  • 都会で人に裏切られ仕事も失ったエミリは、長い間会っていなかった海辺の町で一人暮らす祖父の家に逃げてきた。
    両親はエミリが小さいころに離婚し、母親は年下の男と再婚し、エミリは信用していない。唯一したっている兄は、アメリカで暮らしている。その兄の助言で、祖父の家にきたエミリ。小さな海辺の町で、祖父は銅の風鈴を作りながら、やはり年とった犬のコロと暮らしている。近くに住むカフェのマスターでサーファーの直斗が風鈴をネット通販をしてくれているが、ほとんどは昔経営していた会社をたたんだ時に残ったお金で暮らしている。
    作家(エッセイスト?)の鉄平や愉快な漁師の心平、農家のフミさん網元の娘で美人の京香さん。心優しいご近所さんたちと祖父の優しさに触れ、少しづつ心の傷を癒していくエミリだったが、都会から職場の同期だった沙耶が遊びに来たことからエミリが何故海辺の田舎町に来たのかが周囲に知られてしまう。

    登場の段階から沙耶の役回りが何となく想像できていたのだが、それを乗り越える後半は、おじいちゃんの柔らかな存在と、家族というものについて考えさせてくれる。
    あまり期待しないで読み始めたのだが、思っていたより良い読後感だった。

  • 心に傷を負っていまったエミリと昔堅気で少し口下手で
    シャイなおじいさんとの会話や接し方が
    微妙な心の距離感で傷ついた心を癒してくれて
    本当に良かったと思ってしまいました。

    エミリの過去を洗いざらいに話してしまった
    同僚の沙耶の行動というか性格は読んでいて腹ただしかったです。
    こうゆう友達とはなるべくなら近くにいたくないです。
    この発言からエミリの過去を聞いて少し衝撃的だったのは事実ですが、
    何もこんな場でというのは誰でも思ってもしまうかもしれないです。

    おじいさんの生き方は魚を釣り、読書をして、美味しい料理を作る
    そして周りの人達と楽しく一日を大切に生きているなと思いました。
    こうゆうことが人生を濃くしているのかと思えました。
    何か大きなことをするのではなく、一日を大事に生きる事の方が
    大切だと教えてくれました。

    森沢さんの作品では心に残る温かい言葉が沢山詰まっています。
    この作品でもいくつもありました。
    その中でも
    おじいさんの言葉
     幸せになることより、満足することの方が大事だよ

    心平さんの言葉
     生きていれば、誰にだって悪いことは起こるし、
     だからって、ずっと嫌な気分で生きている
     必要もないわけじゃん

     辛い時でも鼻歌を歌っていれば、世界は変えられなくても、
     気分を変えることなら出来る
    この言葉がシンプルだけれどすぐに実行できそうで
    心にいつまでも留めておきたいと思いました。

    なぜ作家を「先生」と呼ばせないのかという理由が
    これまた納得のいく説明だったので、
    もしかしたら森沢さんも同じような事を考えているのかと
    思ったら余計に親近感や謙虚さなどが伺えてました。

    エミリにとっては辛い経験をしてしまったことだけれど、
    おじいさんや田舎の優しい人達を触れ合うことにより
    人生の再スターとを歩み出せることができたと思ったら、
    この夏での出来事は人生での夏休みだと思えば
    本当に良い経験と思い出だなと思いました。
    居場所を無くしてもありのままを受け入れてくれる
    人と場所があれば人は何度もやり直せるかとも思いました。

    エピローグではおじいさんの本音や
    エミリのお母さんも登場して昔の事から
    これからのことのも語っていたのでとても後味の良いラストでした。

    田舎の海辺が舞台となっているので
    清々しい海と青空が想像できて、
    早く暑い夏が来ないかなと思ってしまいました。

    以前の作品でも風鈴の凛という音色に特別な想いを
    感じていましたが、今回は更にこの音色が色々な想いが
    乗せられているように思い、これから風鈴の音色を聞いたら
    そっと耳を傾けたくなりたくなる心境になりました。

    今回も心がとても温まり癒されて、
    毎日をきちんと生きるということは
    人生を大切に歩むということを教えられて大事な一冊になりました。

  • 都会の生活に疲れ田舎のおじさんの家へ。魚料理や周りの優しさで、癒されていく。この作家らしい優しい話だ。 2018.3.6

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プロフィール

小説家。1969年生まれ、千葉県出身。早稲田大学卒業。2007年、『海を抱いたビー玉』でデビュー。『津軽百年食堂』『虹の岬の喫茶店』『ライアの祈り』『夏美のホタル』など多くの作品が映画化。小説に『癒し屋キリコの約束』『大事なことほど小声でささやく』『ヒカルの卵』『きらきら眼鏡』など、エッセイに『あおぞらビール』『東京湾ぷかぷか探検隊』など著書多数。

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