- Amazon.co.jp ・本 (342ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041032084
作品紹介・あらすじ
信じていた恋人に振られ、職業もお金も、居場所さえも失った25歳のエミリ。藁をもすがる思いで10年以上連絡を取っていなかった祖父の家へ転がり込む。
心が荒みきっているエミリは、人からの親切を素直に受け入れられない。しかし、淡々と包丁を研ぎ、食事を仕度する祖父の姿を見ているうちに、小さな変化が起こり始める。食に対する姿勢、人との付き合い、もののとらえ方や考え方……。周囲の人たち、そして疎遠だった親との関係を一歩踏み出そうと思い始める――。「毎日をきちんと生きる」ことは、人生を大切に歩むこと。人間の限りない温かさと心の再生を描いた、癒しの物語。
感想・レビュー・書評
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yuka♡さんの感想を読んで手に取った本です。
おじいちゃんの料理が本当に美味しそう。
おじいちゃんの深い愛情とぶれない芯がとても心に残る本でした。
それにしてもおじいちゃんの料理はすごい。エミリを立ち直らせただけではなく、強くバージョンアップさせて、さらに母親への見方も変えさせるなんて。
この本で一番じんときたやり取りです。
「自分の存在価値と、自分の人生の価値は、他人に判断させちゃだめだよ」おじいちゃんは、いつにも増して、渋い声で、ゆっくりと話した。「判断は必ず自分で下すことだ。他人の意見は参考程度にしておけばいい」「……」「考えてごらん。事情を知らない人たちに、エミリとエミリの人生の価値を勝手に判断されて、しかも、エミリがそのいい加減な判断結果に従うような人生を送るハメになるなんて、道理に外れるし、何より気分が悪い」詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
傷ついたエミリと静かに受け入れるおじいちゃん。
「自分の存在価値と、自分の人生の価値は、他人に判断させちゃだめだよ」
おじいちゃんの言葉はきっと彼女の芯をあたためる続けるだろう。
おじいちゃんと台所に立つエミリ。二人の距離がいつの間にか小さくなっていくのがわかる。
おじいちゃんの魚料理のひとつひとつが、彼女の「うら」を凛、凛と爽やかにする。風鈴のように。
終盤、おじいちゃんとエミリが台所に立っている姿を想像するだけでジーンとくる。
おじいちゃんの手紙には森沢明夫さんにまたしてもやられた。反則技だ。こらえきれず雫が頬を伝わる。
森沢明夫さん作品3作目読了。胃袋をつかまれた。いや「うら」をつかまれた。 -
大三おじいちゃんの深い愛情や優しさ、心平さんたちの温かさで、エミリの心と同じように私の心も澄んで穏やかになっていました。
食堂シーンでのはおじいちゃんはかっこよかったですし、あの三行には涙してしまいました。
森沢先生の小説によく登場するアイテムにも関係があって、これからも大三おじいちゃんには長いお付き合いになりそうです。凛。 -
はじめての作家さんでした。
文章の書き方というのか表現がすごくキレイでこんな表現の仕方があるのか...と驚くばかりでした。
料理を通じてまわりが温かくなっていく様が読んでいてもホッコリしていきました。やっぱり心のこもった料理っていいな...と思いました。後半は、涙が止まらなくて1人きりで読みました。
心に響く言葉もたくさんあり読み終えた後もまだ温かい気持ちがしています。他のお話も是非読んでみたいです。
鎌倉ベルズの風鈴...すごく気になっています。
凛....凛...が印象的です。 -
不倫がばれて仕事をクビになり、鬱状態となった25歳のエミリが都会から逃げ、頼った相手は母方の祖父だった。
15年ぶりに会う祖父と、海の見える家で暮らした2ヶ月間の出来事。
エアコンもテレビも無い。21時には就寝して5時には起床し、浜辺から神社まで愛犬のコロの散歩。
畑では野菜を、港では魚を貰い二人で朝食の準備をする。
祖父の作ってくれる料理の美味しさと優しさ、都会とは違う非日常感の中で、エミリは癒され自分を見つめ直しはじめる。
そんな時に、元の同僚の沙耶がエミリを訪ねてやってくる。心配するふりをしながら、居酒屋でエミリの不倫をばらすフレネミーぶり。
閉鎖的な田舎であっという間に広がった噂に、再度傷つき心が折れそうになるエミリ。
そんな時も祖父の料理はやっぱり、美味しい。港で魚をくれる心平や、直人や京香も、変わらずエミリに接してくれた。
世界は変えられなくても、気分は変えられる。
祖父に教わりながら、沢山の料理を覚えて行くエミリ。祖父からもらった包丁を手に新生活の為に、海辺の街を出ていく。
胃袋をつかまれるとはよく言ったものだ。
祖父の作る料理達が、私の目の前のテーブルに並べられて大葉の香りや、味噌汁の湯気まで感じられるような気持ちになる。
終始食べてみたい、これをつまみにキンキンに冷えたビールを飲みたい!!と何度想像したことか。
海辺の漁師町も私の地元によく似ている。
新鮮な魚を貰ったり、釣りをしたり蟹をとったり。
両親が他界してからは帰ることもないので、懐かしくなった。
エミリは小さくなった包丁を手に、いつか誰かの胃袋をつかんで幸せになって欲しい。
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都会から逃げて来た孫娘。
そんな孫娘を黙って受け入れる
おじいちゃんと柴犬のコロ。
海辺の小さな家で二人と一匹の生活が
始まります。
釣り、海辺の散歩、ビーチサンダル、風鈴…
そして、おじいちゃんが丁寧に作る絶品ご飯。
読んでいるとザワザワした心が
穏やかに凪いでいくようなそんなお話です。 -
優しくて心を前向きにさせてくれる物語を描いてくれる作家、森沢明夫さん。今回も期待を裏切ることなく背中をそっと押してくれるような物語でした。
会社の上司との不倫がバレて、逃げるように田舎のおじいちゃんの元にやってきたエミリ。15年間も会っていなかったおじいちゃんは何も言わずに受け入れてくれた。
海の綺麗な町でおじいちゃんと釣りをしたり、周りの優しい人たちと過ごしていくうちに、エミリの心の傷は少しずつ癒えていき、生きることに前向きになっていく。
この物語は、エミリとおじいちゃんとの暮らしが軸となって、穏やかに物語が進んでいきます。その中でおじいちゃんが料理をするシーンがかなりあり、それがめちゃくちゃ美味しそう!そして、この物語をより魅力的にする役割を担っています。
物語を読んでいくうちに、登場する料理が食べたくなる人もかなりいると思います。もちろん私もその中の1人です。
読後感も爽やかで、良い物語と出会った喜びに包まれました。 -
出刃包丁を大事に研いで使っているとそのうちに小さくなっていくって感覚は今の子たちにわかるのかな?って思いました
出刃包丁ってもともとそういう使い方をするもんなんだけどそもそも包丁を砥石で研ぐというのを見たりやったりしてるのかなって
「今どきの若いのは!」って常套句を聞くと悲しい申し訳ない気持ちになります
そんな若者たちを作ったのは自分たち親世代なんだよね
自分たちがちゃんと教えなかったからこんなことになってるんだよね
そう考えてなんかちょっぴり悲しく感じる物語になってしまいました -
読んでよかった、森沢さんの本はいつも読み終わったときにそう思う。
ただきれいな気持ちだけじゃなくて、モヤモヤしたものとか、そういうのも含めて楽しいばかりじゃない。たくさんの沁みる言葉。
魚料理はただただ美味しそう。