- 本 ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041032107
作品紹介・あらすじ
ここは楽園じゃないけど、面白いところではある。
「残念なパーマの、残念なハーフ。人呼んでザンパ」。不名誉なあだ名とともに暗黒の少年時代を過ごした青年ザッくん。どん底から救ってくれた親友たちに背中を押されて、沖縄の安宿・ホテルジューシーでバイトをすることに。そこで待ち受けていたのは、おいしい沖縄料理の数々に超アバウトなオーナー代理、そしてやたらと癖のある宿泊客たち。困難に立ち向かいながら、諦めムードだったザッくんの人生が、南風とともに変わっていく……?
感想・レビュー・書評
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ハートフル青春物語ですね。
日常の謎も楽しめます。
主人公の松田英太は大学一年生。バイト先の弁当屋がしばらく休業することに、長い春休みのバイトを探してひょんな事から沖縄の「ホテルジューシー」のバイトが決まり、いざ沖縄へ、ということから物語は始まる。
英太は祖母がロシア人、両親も色々な国をルーツにもついわゆるミックス。その事からいじめや勘違いに悩まされてきた。この物語は問題点を探りながら、成長物語でもあります。
坂木さんの小説は、登場人物の問題点を浮かび上がらせ、同時に社会の問題点も絡めながら、ポジティブに家庭的雰囲気で描いてみせる。
悩みにくじけそうになっても、前を向いてあるく勇気ある登場人物が特長なので、とても好きな作家さんです。
今回も色々と考えさせられましたし、英太にエールを送りながら、楽しく読了しました。
沖縄の「ホテルジューシー」、行ってみたいですね。
三作目が楽しみです。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
「ホテルジューシー」から15年、続編という位置づけだと思っているのだがあとがきによると『姉弟本』とのこと。
なぜこれだけの時を経て今?という疑問についてはあとがきには書かれていなかった。
ただ2018年の雑誌連載中に首里城が消失したということで首里城についての記述が多い。いろいろと勉強になった。
今回の主人公は松田英太。通称ザッくん。
分かっているだけで五か国の血が流れているのだが、生まれた時から日本で暮らしているために日本語しか話せない。
あだ名の由来は残念なパーマまたは残念なハーフ(本当はミックスだが)。ずっといじめられていたのだが、大学生になると一転モテ始めた。だが元からのいじめられ体質で友達は作れない。
そんな彼がなぜ沖縄の<ホテルジューシー>で働くことになったのかは読まれて確認していただくことにして。
前作で浩美がアルバイト期間終了を前にせっせと作っていたマニュアルがまだあり、歴代アルバイトたちが更新してくれているのにニンマリ。
調理担当の比嘉さんは変わらず手際よく美味しい料理を作ってくれているし、クメばあセンばあの清掃コンビも変わらず元気。
そしてオーナー代理の安城もやはり天気のよい昼間は使い物にならないし、あちこちの店にツケを溜めているし、隣のバーは闇営業だし。
今回も様々な客たちがやって来るのだが、あとがきにあるような『光と闇』というほどのことはなかった。
それよりも主人公の英太がどう変わっていくのかと思いながら読んでいた。
英太は自身を『うすしお』というだけあって、こだわりなし、のめり込むものなし、自信もなしなのだが、安城が言うように意外と『見た目に囚われ』ていた。被害者体質というか『仕方ないじゃないか』の言い訳で人との付き合い方や距離の置き方がチグハグな部分があった。
この辺りは言いたいことをズバズバ言っていた前作の浩美とはかなり違う。
そのツケが最後の最後に英太へドッと押し寄せる。この展開は読んでいて辛かった。何もここまで畳みかけなくても…と思ってしまった。
<ホテルジューシー>に来るまでの英太の世界は実に狭かった。その環境の中で生きていくうちに固まった固定観念や価値観や距離感が彼を作っていたのだから、英太のそうしたチグハグさはある程度仕方のない部分もある。もちろん言い訳で済まない場面もあるのだが。
だが<ホテルジューシー>に来て、それは大きくひっくり返された。それは英太の世界が広がった、または経験値が増えたという良いことではある。
そこで英太が思い切り凹んで歪んで…で終わらなかったのはホッとした。
せっかくだから家族に頼んで様々な国の言語を教えてもらったらどうだろう…と思うのだが。もっと彼の世界は広がるかも知れない。 -
約2年前に読んだ『ホテルジューシー』の続編。主人公は異なるが、舞台となる沖縄本島にあるホテル(ホテルジューシー)は同じ。東京の男子大学生の通称「ザック」がホテルジューシーの住み込み冬季短期アルバイトに成り行きで応募。生きづらさや見た目・性格にコンプレックスを抱えているが、ホテルジューシーのオーナー代理をはじめ従業員はそんなものは一切気にせず温かく受け入れてくれる。他方、観光だけでは分からない沖縄の意外な一面(陰の部分)も垣間見られる。どんな場所でも光と陰はあるのだなぁと思わさせられた。坂木司さんの小説はほっこりした雰囲気のものが多いが、本書はほろ苦い要素も含んでいた。東京に戻ったザッくんが親友2人との絆を取り戻し、再び楽しくやっていけると良いなと思う。
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主人公のザッくんに共感しました。やり過ぎても行けないけど相手の気持ちを思わないとなって。自己中に気がつかないうちになってる。後、沖縄の事少し考えさせられました。
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野性時代2018年1月号:約束、3,7,9,11月号:風の音、11月号、2019年1,3,6,8,111月号:境界、2020年2,5,7,9月号:ローリングカラーストーン、2020年11月号、2021年1,3,6月号:フェア、6,8月号君ではない、8月号:眩しさ、に加筆修正し、あとがきを加えて、2022年2月角川書店刊。シリーズ2作目。前作と同様に一夏の出来事。大学生だが幼ない主人公の沖縄アルバイトストーリー。少しぬるい話で、あまり共感できませんでした。
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前作より面白く感じるのはラスト近くがリアルなのかな。
主人公の辛さもわかるし周りの気持ちも分かる。
楽園ジューシーの楽園を考えてしまいますね。 -
ホテルジューシーの姉妹編だそうだ。
前作を読んでいなくても楽しめると思います。
「楽園」とつけた作者の意図がわかる気がします。
首里城には行ったが、ここまで深く見ていなかったな。残念。また復元されたら是非行きたいです。
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