大きな音が聞こえるか (角川文庫)

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  • Amazon.co.jp ・本 (752ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041032350

作品紹介・あらすじ

平坦な毎日を持て余していた高1の泳は、終わらない波・ポロロッカの存在を知ってアマゾン行きを決める。たくさんの人や出来事に出会いぶつかりながら、泳は少しずつ成長していき……。読めば胸が熱くなる青春小説!

感想・レビュー・書評

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  • 700ページ越えの大長編!

    主人公は裕福な家庭に、それなりに優しい両親、友だちもいるし、大学附属の高校に通う、恵まれた男子高校生、泳。
    でも「何者にもなれない」不安やイライラが溜まっていて、不貞腐れている。
    そんな中、趣味のサーフィンに関する情報、アマゾンには「終わらない波」ポロロッカが起きるという話を耳にする。
    退屈な毎日にうんざりしていた泳は、このポロロッカに乗るという夢を得て、実現のために奮闘していく。

    これだけのページを携えているからこそ、泳の成長や感情の揺れが丁寧に描かれている。
    初めてのバイト、親への説得、初めての一人旅。
    今まで関わらなかった年齢や国籍もバラバラの人たちと接すること。
    いろんな経験が、泳を成長させる。強くする。

    その過程を見てきた中での、ポロロッカ!
    大迫力のシーンだった。
    泳の興奮と冷静さを同時に垣間見て、「彼は大人になったんだな」と感じた。

    果たして私は、この先の人生で「大きな音」を聞くことができるんだろうか。
    自分の興味のアンテナを張りめぐらせて、「大きな音」に耳を澄ませたいと思うし、もし聞こえてきたら、その波に乗り遅れないように準備しておきたい。
    大人の私にも、そんな希望を持たせてくれたお話だった。

  • 若い!青春!
    読み始めは、挫折するかも…と思ったのだが、主人公の泳がバイトを始めた辺りから楽しくなってきて、読み切った。
    退屈な日々を過ごす高校生の泳が、唯一好きなサーフィン。終わらない波ポロロッカを知り、その波に乗りたいと動き始める。
    あまちゃんの若者が、バイトや旅を通して成長していく姿がとても素直に描かれていて、周りの大人たちも良い感じ。
    この作品を読んで改めて、子供は自分でやりたいやろうと思えば動く、逆に人から言われても動かないんだな…と痛感した。

  • 久々に色んな感情を思い出させてくれ、生きる活力をくれるような、とても沁みる小説だった。
    約700頁なうえに活字も小さく(「アンタは京極夏彦か」と感想を書いている方がいたがまさにそれを思った)、自分の中でもトップを争う分厚さだったけれど、泳の冒険にのめり込みすぎて、休むことなく読み終えてしまった。

    1人の少年が成長していく様子を丁寧に描いていてとてもいい。中高生にも出会って欲しい作品だし、大人になってからでも大事なことに気付かせてくれる一冊で、個人的お勧めしたい小説ランキングにランクインした。

    色んな人(異文化という意味でも、年齢という意味でも)に会うことで刺激・学びを得られ、なんなら手助けも得られることもあるということ、そして夢ややりたいことは口に出していくと実現に向かって進んでいくということを教えてくれて、前向きになれる。


    恵まれた環境で育ち金銭にも不自由せず、帰宅部で大学もエスカレーターな泳が冒頭で感じていた、何をするわけでもない日々や将来に対する漠然とした絶望感とか、楽しくもなさそうに日々働く大人に対する感情とか、親という存在をめんどくさいと思う気持ちとか、それでも何かやりたいという想いを秘めているところとか、自分の高校生時代と被りすぎて(みんなそうなのかもしれないが)、そうだよねそうだよね、と思いつつ、でもそれこそ大人って楽しいよって、そんな風に思っている現中高生たちに教えてあげたいと思った。

    一方で、自分で“やりたい“と思ったことでないと一歩踏み出すことってできないだろうなと改めて感じたので、自分の子どもたちが“やりたい“ことが見つかった時に全力で応援できる体制を整えておきたいとも思った。


    泳が自分の名前に意味を見出してウキウキしているところ、年相応の可愛さがあってよかったなぁ。

    あとは泳と二階堂の関係は勿論、泳と山下との関係もいい。男の子のぶつかり合って仲良くなるところ痺れるし憧れる。


    『何かが流れ出す。自分が動いているのか、周りが流れているのかわからない。けど、確実に何かが変わっていく。その手応えがある。水をぐんと蹴って、身体が進む感覚。それが今、俺を動かしている。』
    ここがとても好き。この感覚を、感じることができる人生でありたいし、泳のように終わらない波に乗りたい。


  • 読み終わってもまだ心臓はドキドキしている。
    700頁の中に詰め込まれたのは、16歳の少年が大人になっていく過程。
    ポロロッカに乗るためアマゾンに行く。
    そんな無謀な計画を実行すべく奮起する中で現実に打ちのめされながらも、未知の世界に飛び込んでいく。
    その生き生きとした姿が眩しい青春小説だった。

  • 和菓子のアンの作家さんとは思えない。サーファー男子の成長の話。

  • やりたいことや好きだという気持ち全てを理屈で説明できない

    自分ができるから、持っているからって、相手から奪うことは、持たざる人への侵害。

    やりたいことに近い場所にいること、声に出すこと、今私がまさに実践し始めたことだったからよいタイミングで出会えた作品でした。

  • 「行かせてくれよ」
    八田泳、高校一年生。そこそこ裕福でいわゆる幸せな家庭の息子。ーーー小さな一滴が大きな波紋を生んでいく、等身大の成長物語ーーー



    思春期でくすぶってる感覚が蘇るような一冊だった。自分自身は大人側になったので、眩しく感じながら読んだ。中高生向けと思いきや、きっと「大人」にも刺さるだろうな。波がくる感覚をとらえて、その波に向けて進む勇気が大切だと教えてくれる物語だと感じた。

  • イイ!良い!good‼︎
    親に愛され恵まれた生活環境で育つ帰宅部一人っ子の男子高校生、泳。唯一サーフィンには夢中だ。

    暇を持て余した夏休み「終わらない波は、あるよ」をきっかけに、アマゾン川のポロロッカの波乗りに行く決意を固めた。

    初めてのバイト体験で資金を貯めつつ、魅力的な人たちと関わり、ポルトガル語圏の国へ旅立つ。

    一冊のちょうど後半は一気読み。
    ブラジルに転勤になった叔父の剛のサポートを受けつつもあっという間に日本に帰国。
    泳と同化し「もう、帰ってきちゃったんだ」

    『大きな音が聞こえるか』
    象徴的なタイトルがあらためて良い。

    #中高生#中高生とその親#男子

  • 青春小説
    買って何年積読したんだろう。
    妙に長い物語が読みたくなってやっと手に取れた。
    サーフィン好きな男子高校生が、終わらない波に乗りに行く冒険もの。
    かなりの分厚さながらスルスル読めて読後爽やか。
    冒険に出たいとの覚悟を決めた主人公もそれを支える大人達も素敵だった。
    結局は恵まれた環境に居る子だし、守られている子だから冒険という言葉は勇ましすぎないかとも思うが、頑張った事には変わりはない。
    何かを踏み出す1歩はとても尊い1歩だ。

  • とてもよかった
    もっと若い頃に読んでおけばとも思うし、今だから、とも思える青春

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著者プロフィール

一九六九年、東京都生まれ。二〇〇二年『青空の卵』で〈覆面作家〉としてデビュー。一三年『和菓子のアン』で第二回静岡書店大賞・映像化したい文庫部門大賞を受賞。主な著書に『ワーキング・ホリデー』『ホテルジューシー』『大きな音が聞こえるか』『肉小説集』『鶏小説集』『女子的生活』など。

「2022年 『おいしい旅 初めて編』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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