エスカルゴ兄弟

  • KADOKAWA (2016年8月3日発売)
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Amazon.co.jp ・本 (320ページ) / ISBN・EAN: 9784041032527

作品紹介・あらすじ

〈問題の多い料理店、本日開店いたします!〉

唯我独尊の変人カメラマンと、巻き込まれ体質の元編集者、男二人の無謀な挑戦の行方は!?
笑いと感動で心を満たす、最高の料理&成長小説!!

出版社勤務の柳楽尚登(27)は、社命で足を運んだ吉祥寺の家族経営の立ち飲み屋が、自分の新しい職場だと知り愕然とする。料理上手で調理師免許も持っているし、という理由で料理人として斡旋されたのだ。しかも長男で“ぐるぐる”モチーフを偏愛する写真家・雨野秋彦(28)は、店の無謀なリニューアルを推し進め、前代未聞のエスカルゴ料理店〈スパイラル〉を立ち上げようとしていた。
彼の妹・梓の「上手く行くわけないじゃん」という嘲笑、看板娘・剛さんの「来ないで」という請願、そして三重の養殖場で味わう“本物のエスカルゴ”……。嵐のような出来事の連続に、律儀な尚登の思考はぐるぐるの螺旋形を描く。
心の支えは伊勢で出逢った、フランス女優ソフィー・マルソー似のうどん屋の娘・桜だが、尚登の実家は“宿敵”、讃岐のうどん屋で――。

「いざという時は必ず訪れる。その時には踊れ」
真剣すぎて滑稽で、心配でつい目が離せない。凸凹義兄弟、ちっぽけで壮大な“食”の軌跡。
一気読み間違いなしの、痛快エンタメ作!!

★太鼓判!
津原泰水の料理を描く筆致は3D。味を伝える技巧は活字世界の美味しんぼなのである。
――豊崎由美氏(書評家)/「本の旅人」2016年8月号より

帯イラスト/松苗あけみ

感想・レビュー・書評

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  • 讃岐うどん屋の次男坊で元編集者の尚登と渦巻き写真家秋彦の二人が立ち飲み屋を本物のエスカルゴを提供する店に変貌するべく奮闘する物語。期待してた津原さんの妖しさは無かったけど、二人や取り巻く面々の会話が楽しかった。続編あり?

  • まず装丁がびっくりするほど中身に合っていないです。まるで70年代の怪奇小説のような佇まい。これでは書店でジャケ買いする人は皆無に等しいでしょう。
    所が、中身はテンポが良くてシュールな成長物語となっております。何故この装丁にしたのか小一時間問い詰めたい。
    出版社からリストラに近い出向を命じられ、得意の料理の技術でエスカルゴ専門店の料理人になります。そしてエスカルゴの魅力と周囲の人々の魅力に支えられて、エスカルゴと料理の世界にのめり込んで行く。恋もあるよ。
    こういうとよくあるお仕事小説風で「ふーん」で終わりそうなんですが、読んでみるとこれが妙に癖になる文章と台詞回しで、シュールさをまぶしたストーリーが大いに気に入りました。
    エスカルゴと思って食べていたのはアフリカマイマイが多いという事にびっくり。アフリカマイマイというと沖縄の木が多い所に行くと沢山いる巨大カタツムリの事ですよね。サイゼリヤのエスカルゴでも充分美味しいですが、あれはそうだったのかあ・・・。これからも美味しく食べよう。
    そしてこの本の中で出てくる本物のエスカルゴが美味しそうで食べてみたくなりました。
    そしてそれ以上に食べておけばよかったと後悔したのは伊勢うどんです。こしの無いうどんなんてとバカにしていましたが、これ読んだら食べるべきだったと思いました。

    あと文庫では題名も爽やかになり、表紙も爽やかになっています。それを見ると、このへんちくりんな装丁が逆に愛おしく感じるのだから不思議なものであります。

  • 出版社で働いていた主人公が、
    ある日いきなりエスカルゴ専門店のシェフを任される。
    ブツブツ言いながらも案外前向きに
    エスカルゴの調理に向けて進んでいく主人公が
    面白くて好感が持てる。

    エスカルゴって食べたこと無いけれど、
    主人公が作る料理は美味しそうで…
    本物のエスカルゴが食べてみたい!
    という気持ちにさせられる。
    まんまとエスカルゴの世界に乗せられる。

    そして、この本に出てくるもう一つの重要な料理、うどん。
    讃岐うどんも伊勢うどんも稲庭うどんも食べたことあり、
    それぞれ個性的で大好きなただのうどん好きな私。
    やはり世の中のうどん屋さんは
    それぞれに敵対心燃やしてるんでしょうか(笑)

  • 津原作品は大好きだけれど、それは幻想ホラーの津原泰水だしな…と思いそれ以外のジャンルはほぼ読まず。
    何となく読んでみようかな、と思い図書館で借りてきた。序盤はいまいち作風に乗る事が出来ず「あんまり(自分の中のイメージでの)津原作品ぽくないな…」と感じていたが伊勢うどん屋の娘、ソフィー・マルソー似の桜の登場の辺りから文章に「幽明志怪」シリーズのコメディシーンに近いノリが出てきて一気に面白くなる。 「ぐるぐる」に拘る螺旋収集家の秋彦の方が変人として目立つが、尚登も結構癖の強い人物ではないか。ちなみに幽明志怪シリーズの猿渡と伯爵も名前だけだが出てきてとても嬉しい。

    話の筋は同著者「たまさか人形堂」と近いなと思うし、仕事と恋、人との出会いで成長していくストーリーは自分の好みからは外れるけれど…日本版ロミジュリとも言える讃岐うどん屋の息子の尚登と伊勢うどん屋の娘の桜の恋模様(そして恋のライバルの稲庭うどん屋の息子)、血の繋がりが無くとも家族として愛情深く繋がった雨野一家、嫋やかな女性ながら男性的な名前、そして味覚は鋭いのに料理音痴という相反する要素を兼ね合わせた剛さん…登場人物の癖の強さとコメディセンスはいつもの津原ワールド。
    読み終わってしばらくして気付いたが…稲庭うどんの梶原が学生時代フィギュアスケートをやっていた、という設定ももしかしてぐるぐる(スパイラル)繋がりか?ネタが細かい。
    何やかや「幻想ホラーではないけどこの作品も好きだなぁ」と思わされてしまった。楽しい1冊である

  • リストラされた編集者尚登(実家は讃岐うどん店)が、ぐるぐるを偏愛する変人秋彦とエスカルゴをメインにしたレストランを開く、そこには明らかに外国人の血が混ざっている秋彦の妹の梓がいて、伊勢うどん店の娘である桜まで絡んでくるんだから、設定からして面白い。何度も声を出して笑いました。コメディと酒、肴が好きなら楽しめること間違いなしの傑作です。

  • 新聞の日曜版にある書評欄で見つけた。ふだんはあまり日本の小説を読まないので、どんな小説を書く人なのかも知らなかった。読んでみる気になったのは、作品のモチーフがエスカルゴと伊勢うどん、という点にある。エスカルゴの養殖については隣の市のことなので前から知っていた。三重県という極めて地味な地方都市でエスカルゴの養殖なんか手掛ける奇特な人がいるなんて、という程度の認識でしかなく、興味はあったが、現地を訪ねることもしなかった。

    エスカルゴ自体は好物で、パリでも食べたし、英国女王御用達の鳥羽のホテルでもいただいたことがある。まさか、あれも全く別物のアフリカ・マイマイだったのだろうか?本物のエスカルゴを養殖している松阪市と鳥羽市は伊勢を挿んで隣同士だから、鳥羽の某有名ホテルで供されるエスカルゴは松阪由来のものと信じたいのだが、小説を読んでいると、ほとんどの日本人が食べているエスカルゴは本当のエスカルゴではないということになる。

    もう一つの伊勢うどんのほうだが、これは郷土のソウルフードで、小さい頃はあれが「うどん」というものだと思っていた。浪人時代、京都の町で立ち食いうどんを食べに入り、出てきたつゆの薄さに驚いた。まちがってそばつゆを入れたのではないか、と本気で訊こうとしたくらいだ。

    小説の中では、卵の黄身をのせて食べる食べ方が何度も出てくる。今は知らないが、伊勢うどんといえば、子どもの頃から、ごく少量のたまり醤油主体のたれをからませた上に小口切りにした青葱と一味をふりかけ、うどんがたれの色に染まるまでかき混ぜてから食べるものと決まっている。卵の黄身でカルボナーラ状にした伊勢うどんなど気味悪くて食べられない。

    主人公が讃岐うどんを商う店の次男坊で、伊勢うどん店の娘と恋に落ちるというロミオとジュリエットをパクった設定。腰の強い讃岐うどんを愛する一族と茹ですぎたように腰のない伊勢うどん命の一族の互いに相容れないうどん愛の悲劇を描いている。全国区となった讃岐うどんに対するに、伊勢うどんのほうは、遷宮とサミットで少しは知られるに至ったが、まだまだ全国的にはローカルな食べ物である。その意味で、郷土食を宣伝してくれる小説をちょっと推してみたく評など書いている次第。

    今、人気のアニメが売れるべき要素を全部詰め込んでいるだけ、という評価が玄人筋から出されているが、この小説にもそんなところがある。就職難の時代、やっともぐりこんだ職場が出版社で、仕事が編集業というのは、マンガ原作でテレビ化された『重版出来』や『地味にスゴイ!』を思い出させる。

    それがすぐリストラされ、社長が送り込んだ次の就職先がモツ煮込みが売りの吉祥寺にある立ち飲み屋。ところが、マスターの事情で写真家の長男が後を継ぎエスカルゴ専門のフレンチレストランに模様替え。調理師免許を持つ主人公にはうってつけの職場だと料理通の社長は考えたらしい。

    物分かりはよいが適当すぎる上司、スパイラル(螺旋)に固執する変人写真家、といった男たちに、味は分かるが料理を作ることはできない女店員、写真家の妹で高身長の女子高生、酒豪の伊勢うどん店の娘、といった女たちがからんで、ストーリーは軽快に展開する。

    ちょっと昔の音楽にイージー・リスニングというジャンルがあったが、あの毒にも薬にもならない聴き心地のいい音楽に似て、読んでいて楽しいが、特に後に何も残らないイージー・リーディングな読み物である。

    料理が主題なので、いろいろ美味そうな料理が出てくるのがご愛敬だ。油揚げを斜めにカットした中にチーズを挿んで弱火で焼いたチーズキツネという酒肴は、ちょっといけそうで作ってみたくなった。しかし、伊勢うどんにエスカルゴを併せたウドネスカルゴはいただけない。ましてや、スパイラル好きの店主の気を引こうとグルグルに巻いて出すなど狂気の沙汰だ。

    軽妙な会話のノリを楽しんでいるうちに、あっという間に読み終えてしまう。ちょっと重いものが続いた時など、口直しに手に取るにふさわしい一冊といったところだろうか。深夜に読むと食テロと化すので要注意。。

  • エスカルゴをメインにした料理店に挑戦する元編集者とカメラマンの凸凹コンビの成長物語。キャラがそれぞれひねくれているので、会話が楽しい。続編のありそうな最後、楽しみ!

  • ふむ

  • 2023.6 表紙と題名みて「なんじゃこりゃ」と思ったけれどなかなか面白い小説でした。

  • 渦巻きに美を感じるプロカメラマンの実家が立ち飲み屋。弱小出版社の若手編集マンが担当になるなりクビになり二人で本格エスカルゴ料理を出す店を開店する話。
    カメラマンの男が個性的で妹も個性的なこの家族と過ごす日々が面白い。

  • R2/7/6

  • 出版社で編集の仕事をしていたはずが、いつの間にか立ち飲み屋をエスカルゴ専門店にして料理人をするということになっていた主人公。巻き込まれ型の彼は本物のエスカルゴとの出会いの後、ぐるぐるを愛する立ち飲み屋の長男秋彦ともに、ぐるぐるしながらお店を完成させていきます。その一生懸命のぐるぐるが凄く良かった。料理描写は見事で、ずっと想像して葛藤していました。エスカルゴファームでの寮生活や雨野家の居候生活など、家族同様の優しい集団生活の描き方も素敵です。一気読みしてしまったけど読み終わりたくなかった。すごく好きです。

  • 香川のうどん屋の二男坊柳楽尚登,仏文科を卒業し編集者になるが,ある日突然吉祥寺にある立ち飲み屋への出向を命じられる。店の長男は渦巻き状のものを愛して已まないカメラマン天野秋彦。彼は本物のエスカルゴ料理を提供する店を尚登の手を借りて立ち上げようと考えていた。秋彦の家族や元従業員,伊勢うどんの店の娘(美人)も文字通り入り交じり,運命に翻弄されていく尚登。一気読み。エスカルゴもうどんも美味そう。

  • 編集者とカメラマン。接点がなかった二人がなぜか「エスカルゴの店」を開くことになり……。とちゅうまでは面白かったのに、あれ……あれというラストだった。うーん。

  • 突然実質的クビを言い渡された、調理師免許持ちの編集者のナオノコトノボルこと尚登が送り込まれたのは、ぐるぐる写真家秋彦が開店を目論むエスカルゴレストランだった。
    個性的な家族、讃岐と伊勢のロミオとジュリエットなど、人間的魅力のある面々のやり取りが面白い。笑えることをさらっといれてくるのがよい。桜がちょっと何を考えているのかよくわからず、あまり好きに慣れなかった。女性でいうなら梓の方が、何だかんだで大人で格好いい。尚登と秋彦のエスカルゴ兄弟も何だかんだで息があってる。飲食業はそんなに簡単ではなかろうと思いつつ、楽しい気持ちになれる本だった。

  • 幸せになる。
    「何かを作る(創る)」ことに対する、著者の深い愛情を感じる。

    和洋様々、そしてエスカルゴ!!という馴染みのない?料理の数々。
    どれも美味しそうで、もう、食べたい……

    うどん対決にも笑ってしまったが、まさかエスカルゴを乗せるとは???
    まるっきり発想しなかったレシピなので衝撃。
    なお、軍艦巻きが一番食べたい。食べたいったら食べたい。

    キャラクターがどれも愛おしく、読者の「コレ!」というツボを押さえている感じもいい。サービス満点。
    みんなちょっとずつはた迷惑で、可愛い。
    桜というキャラの存外無遠慮なところと、酒豪に笑った。

  • 面白かった。この続きが読みたい!憧れの人との関係はどうなるのか、お店の人たちはどうなっていくのか、気になる〜

  • 期待以上に楽しめたエンターテイメントだった。強引な部分もあるが、流れのテンポが良いのが心地よい。

    書籍紹介サイトから
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     主人公は、出版社に勤務する柳楽尚登、二十七歳。ある日、社命でカメラマンの実家を訪ねた尚登は、自然界の螺旋=ぐるぐるに魅せられたそのカメラマン・雨野から、ある計画を聞かされる。立ち飲み屋をエスカルゴ料理メインのフレンチレストランに変える、ついては、シェフは尚登だ、と。要するにワンマン社長から、問答無用の出向というか、実質上のリストラをされたのである。

     かくして、尚登の人生そのものもまた、ぐるぐるし始める。三重にあるエスカルゴの養殖場で、“本物”の美味しさに開眼した尚登は、「日本初の、本物のブルゴーニュ・エスカルゴをふんだんに供する店」の実現を雨野と共に目指すようになるのだが……。
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  • 軽快な会話に読みやすかったので、さくさく読了。
    面白かったけど、どこが面白かったのかイマイチ説明しにくい作品。

  • 13:津原作品にしては(?)コミカルで読みやすかったです。ごはん処モノはどうしても冷めた目で見てしまって「そりゃ才能と材料が揃えば美味しいものが作れるでしょうよ」って思ってしまうんだけど、これは題材がエスカルゴだからか、それなのにモツ煮やチーズキツネなんて庶民的なメニューが登場するからか、あまり気取った気配を感じずに最後まで楽しく読めました。
    うどんをめぐる戦争や、ぐるぐるに命賭けてる秋彦のぶっ飛びっぷり(主人公以外はみんなそこそこぶっ飛んでるんだけど)など、個々の要素は尖っているのに、ひとつにまとまると不思議とすっと入ってくる。不思議。
    ふんわりした「家族」の書き方も好きです。

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著者プロフィール

1964年広島市生まれ。青山学院大学卒業。“津原やすみ”名義での活動を経て、97年“津原泰水”名義で『妖都』を発表。著書に『蘆屋家の崩壊』『ブラバン』『バレエ・メカニック』『11』(Twitter文学賞)他多数。

「2023年 『五色の舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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