杜子春・南京の基督 (角川文庫)

著者 : 芥川龍之介
  • 角川書店 (1968年10月発売)
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  • Amazon.co.jp ・本 (302ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041033050

杜子春・南京の基督 (角川文庫)の感想・レビュー・書評

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  • 「秋」
    理想とは手に入れた瞬間から色あせてしまうものだと
    直観的に知っていたのであろう彼女は
    あえてそれに背を向けるのだが
    そのことが果たして正しかったのか間違っていたのか
    誰にもわからない
    後悔することもできず彼女は呆然と「秋ーー」なんて

    「黒衣聖母」
    黒の聖母は残忍かもしれないが
    祈りを強制はしないし
    少なくとも祈ってるあいだ救われてるんだよねぇ

    「或敵打の話」
    苦しい者こそ救われる
    苦しみの無い者には救いも無い
    救われたいという欲求はそれほどにも切実だが
    切実ゆえに嘘の救いであっさりだまされてしまうんだねぇ

    「女」
    芥川に最初の子供ができた直後の作品
    ちょうど「狂人の娘」に悩まされた時期にも重なっている

    「素戔嗚尊」
    題はスサノオノミコトと読みます
    力にすぐれたスサノオだったが、お人よしゆえに
    自分が嫉妬されて嫌われてるという現実を受け入れられず
    そこにつけこまれてこっぴどくだまされて
    怒りに任せて暴れたあげく、神の国を追放されてしまうのだった

    「老いたる素戔嗚尊」
    天孫降臨でニ二ギを迎え入れるまでは
    スサノオの血筋が日本を治めていたのであり
    天皇がアマテラスの末裔ならば
    庶民にはスサノオの血が混じっているとも言えよう
    …出雲国での大蛇退治の後、クシナダ姫を娶ったスサノオは
    部族の長となっておおいに栄えた
    アメノムラクモを高天原に送って、故郷に錦を飾ることもできた
    日本人好みの立身出世ストーリーは
    あんがいこんなところに原型があるのかもしれない
    しかしそんなスサノオも老いには勝てなかった
    かつて自分を陥れた者たちと同じように
    娘のボーイフレンドに嫉妬したりするのであった

    「南京の基督」
    思い込みにすがりついてもたらされた偽りの救済であれ
    それによって生きる力を得られるのならば
    人間というのはせつない生き物だ

    「杜子春」
    親子の情愛を、儒教的価値から切り離す形で書いている
    その意味ではやや描写が弱いか
    しかし物語としては十分におもしろい

    「捨子」
    物語とはペテンであるが
    ペテンが人を動かして幸せに導くこともたしかにあるんだねぇ

    「影」
    自分の分身に嫉妬してひきおこされる悲劇
    ドッペルゲンガーは芥川にとっての
    本質部分から発したモチーフであると思う
    晩年の「歯車」にも登場するが
    ここではやや唐突な扱いである
    あまり成功してるとはいえないだろう

    「お律と子らと」
    近親者が死ぬということを一口に言えば
    その人の世界に決定的な変化がもたらされるということだ
    チェンジザワールドだ
    その悲しみはもちろんのことだが
    それゆえに、そこにはある種の高揚感も生じてしまう
    芥川が同様のモチーフを書いた作品には
    「枯野抄」や「玄鶴山房」などあるけれども
    それらの中で、この作品がいちばん面白いんじゃないか
    個人的にはそう思う
    藪医者の診察に一喜一憂する展開は
    「南京の基督」をそのまま裏返しにしたものと言えるだろう

  • この書籍は、同氏の大正期の有名な作品の内短編から長編までの17作品が収録されています。また、それぞれの作品も読んでも美しい文章なので一読の必見があります。

  • そういえばあまり読んでなかった作家さんの本をそろそろ読もうシリーズ。読みやすかったし面白くて、あっという間に読んじゃった。南京の基督は、富田靖子とレオン・カーフェイで映画になったのを見たことがあったような。。。小説版の方が好きだな、これは。

  • 収録:「秋」「黒衣聖母」「或敵打の話」「女」「素戔嗚尊」「老いたる素戔嗚尊」「南京の基督」「杜子春」「捨子」「影」「お律と子等ら」「沼」「寒山拾得」「東洋の秋」「一つの作が出来上がるまで」「文章と言葉と」「漢文漢詩の面白味」

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