- Amazon.co.jp ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041033753
感想・レビュー・書評
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怪談の良いところは五感がフルに働いてくれるところにある。文書から五感すべてで触れている気がする。内容か短いにも関わらずしっかりと浸ることができた。
でもさすかに量が多かった、、詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
さくさく読めるんだけど時々めちゃくちゃ怖い話がブッ込まれているので最後まで気を抜けなかった。
小野不由美の文章力が今作でも良さしかなくて最恐だった。
私は『残穢』よりもこっちの方が怖かったかも。
でも好きだなあ。
小野不由美の描くホラーはフラナガンの描くホラーと一緒だね。
どの話もただそこに怪異があって幽霊らしきものもいたりするんだけど、原因を探ったりしないし、謎解きも干渉もしない。
そこが良い。
稲川淳二の解説もめちゃくちゃ良かった。因みに2日で160ページくらいの怪談話を読んだら余裕で夜中に目が覚めました。 -
小野不由美版百物語。読者から寄せられた体験談をもとに作り上げられたものということで、内容はかなり雑多だ。女性の話が多いのもそのせいか。長いものでも4ページほどのショートショートなので、どうしても余分な部分をそぎ落として説明的にならざるをえず、作者お得意の雰囲気づくりが行き届かないのはいたしかたない。まあ素材集のようなものか。これはこういうものなのだが、ここから10篇くらいを厳選して短編集に仕立て直せばさぞかし怖い本ができあがるだろうな。
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ひとつひとつの話はあんまり印象がないんですが、一定のクオリティの話を100話も書けるのは作家としての基礎体力がすごいんだろうなと思いました。
個人的にいちばん作家性が出てると思ったのは最後のエピソードが「花簾(はなすだれ)」であることです。
まずこの本自体がかなり現代的な怪談で構成されていて、俗っぽさと卑近さが漂ってるんですが、その締めにきている花簾はかなり幻想的な話。
本の卑近な話が私たちに不可思議なものをリアルに想像させる力を向上させ、最後にいちばん美しいものを実際に見たかのように想像させる…。
ある意味、怪談特有の物語を現実に繋げてしまう性質を使って、読者にファンタジーの幻想を現実に呼び出させようとしているのではないのかな?という仮説があります。 -
残穢に連なる小野不由美の怪談本。
やはりホラーの名手による怪談だけあって怖さだけではなく郷愁と儚さを感じさせる繊細な一冊。
しかし美しさだけではなくほの暗い夕闇を彷徨するような恐ろしさも感じる。
解説の稲川淳二氏の怪談は事件であってはならないという言葉の通り、日常の延長線上にある「そういえば不思議なこと」の詰め合わせではあるものの繊細な文章に彩られたそれはうっすらと墨を流したような不気味さを感じる。
特に最終話「花簾」の幽玄の美は秀逸。 -
2012年刊。作家の募集に応じて読者から寄せられたスーパーナチュラルな体験話から編まれた99の掌編の怪談集。このように読者から怪奇体験を募っていることが、同年刊行の『残穢』の「私」によって語られており、両編のつながりを示す。
どの話も非常に短くて、小説と呼べるには至らない、というのは「肉付け」がほとんど無く小説らしいディテールを持たないものも多い。話の内容としても、いや、これは怪談なのか?と疑問に思うようなものも幾らかある。幽霊らしいものが多くの話に登場するが、たいていの場合、その霊は目撃者の知人ではなくまったく無関係な者のそれと思われ、何のために霊が現出したかという「解明」は全く得られない。
多くのホラー映画では幽霊の由来がラストの方で解明されることにより、霊存在を定位させうるコンテクストが形成される。「この霊はこの家でかつて惨殺された女性が未練や恨みの思いに駆られて出現したものだ」等。こうしたコンテクストによって不可思議なる存在者が世界の内に再統合され、物語宇宙の円環が閉じる。
が、本書に登場する幽霊(っぽいもの)は常に唐突で、その存在理由は全く示されないままに話は終わる。実際に霊を目撃する体験というものは、そうしたものだろう。本書の怪談は不可知の存在を不可知のままに残しておくという、本当は当たり前の手順を示している。
幽霊という存在はどこまでも現実態に至らない、永遠の「可能態」のようなものだ。それは存在「しうるかもしれない」と消極的に定義するしかない存在で、存在/非存在の境界をいつまでも彷徨うしかないのだ。むしろ幽霊は「存在」するのではなく「不在」であることを呈示する記号であるかのようにさえ見える。可能態に過ぎない不在者が存在者であるかのように見えてしまうという矛盾したおかしさの体験が、スーパーナチュラルな目撃談の定型なのだろう。そしてこの可能態の形相が何であるのか、誰にも分かっていないということだ。
本書を読んで怖いと思うかどうかは人それぞれだろうが、余計な粉飾(コンテクスト化)のない不可知の(了解不可能な)体験としての、不在者との邂逅という出来事を執拗に示している点で。私は興味を持って良い通した。各編がすこぶる短いので、ちょっとしたときに読むことが出来る本だ。 -
それぞれの話を読み終え感じるゾクゾクとモヤモヤに情緒を感じ、日本人で良かったと思えます。
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読者から寄せられた体験談をもとに編集された(解説より)、99話の怪異談。この後に出版された『残穢』と合わせて百物語になると言われている。
『鬼談百景』に出てくる、ある話を掘り下げたのが『残穢』という解釈も出来る。面白い趣向だ。
どの話も短くて読み易く、淡々と現象だけを綴っているのが、実話っぽい。
体験するのは怖いが、読み物としては楽しめた。 -
何を読むか迷い、積ん読の中から本作をチョイス。
家族が寝静まったリビングで、テレビの向かいのソファに座りながら本を読むことが多いのだが、
この本を読んでると、そのテレビが気になる。
勿論、テレビは点けてないのだが、その黒い画面が気になって仕方がない。
私の姿が反射してるのだが、鏡のような鮮明さはないので、もしかしたら良くないものが映り込んでしまっているような気になってくる。
こうなってくると視界の隅の暗がりまで意識してしまう始末。
本来、怖がりではないんですが。
夏の夜、1人で、夜中に読み進めると楽しめる本です。
周りの暗がりが、とても迫ってくるような良作だと思います。
でも、盆前に読むことはなかったかな。 -
怪談短編集。ふかしぎなものからゾッとするものまで、語り手も怖がっているものから強気なものまで、いろいろあって楽しめた。夜中に読んでいると、たまにゾッとしてしまい、怖くて小休止を挟まないと読み進められないこともあった。必ずしもオチがないのもリアル感を増すのにかっている。「ぶらんこ」は、残穢の原型か。
百景といいながら、99話で終わっている辺りがにくい。百話目は、99話読み終わった読み手の…ということかな。なぜ、解説でそこに触れないのか稲川さん!