余命二億円

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 74
感想 : 24
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  • Amazon.co.jp ・本 (269ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041033821

感想・レビュー・書評

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  • 人間の本性を剥き出しにされる作品。この登場人物が直面した問題を考えながらも、自分にも同じことが起こったら、果たしてどうなのだろうかと。
    ある兄弟。兄はロクデナシだが、どこか憎めない。弟は気持ちは優しいのだが、腎臓病をずっと患っている。兄とは腹違いの兄弟。その兄弟には誰からも慕われる強く正義感なお父さんがいる。
    そんなお父さんが、近所の子どもがクルマに轢かれそうなところを身をもって助けたのだが、その後遺症で生死を彷徨うことに。
    兄には借金とやはり腎臓病の子どもがいて、金がいる。そんな時に保険金の話が舞い降りて。弟は金なんていらないからお父さんを助けたいと言うが、人間の本性はそんな簡単なものではなく。
    金だけの話ではなく、色々な問題点が絡んできて、自分だったらどうだろうと考えずにはいられない作品。最後のシーンでは心が救われた。

  • 73生きる価値と困難を乗り越える難しさ。家族は難しいねえ。財産なんてものがあると問題が起きるという教訓か。暗くなり過ぎず軽やかなタッチで一気に読みました。

  • 命とカネの話し。蠢く欲望と思惑。そして、女は怖いという話し。この話しの結末には未来がある(と思う)。

  • 延命措置、腎臓移植、夫婦、親戚、遺産相続

  • 親を思う気持ち、自分の病気のこと、家族のこと
    なんだか切ないんだけど、
    どうしようもない兄貴なのかと思いながらも
    最後には、スカッとさせられた
    自分だったらどうするのかなとたくさん考えた

  • 田村 一也と次也の兄弟とそれぞれの妻 玲子と孝江が父 田村工務店の社長 俊司の死をめぐって織りなす物語だ.打算的な一也に翻弄されてきた次也だが,一也が連れてきた弁護士 村上和彦から俊司が死亡すると2億円が遺産だという話を聞き,妙な気持になる.そんな折,俊司が交通事故にあったという連絡が来て東京に住む次也と大阪の一也が九州に帰る.その時は父俊司の容態は問題はなかったが,リハビリ中に卒中を起こし,植物人間状態になり,兄弟は延命治療の是非について延々と議論を重ねる.お互いの意見が変動するなかで,遂に俊司が死亡する.葬儀が終わった段階で,俊司の世話をしていた好美が正式の妻だったことが判明し,ひと悶着が起きる.次也は腎臓病で父の腎臓を生体肝移植で貰っており,一也の息子 湘も腎臓で苦労している.この腎臓病が話の全体に覆いかぶさっている感じだ.

  • 舞台は九州最北端のK市。主人公の父親の葬式の場面から物語は始まるが、その死を心から悼む家族はいない。彼らに何があったのか。物語は5ヶ月前へとさかのぼり…。最後のまとめ方には性急さも感じられるけれど(いっそ金金言うてた人間が全員不幸になるような突き放した終わり方でもよかったのではw。そこは著者の優しさなんだろうか)、命とお金について考えさせられる良作。

  • 車の事故で入院することになった父親がもし死んだら、その時は遺産が2億円ほどになるらしいと知った兄弟。延命治療を望む弟と、望まない兄と、兄弟それぞれの妻、また、父の内縁の妻、父の会社の従業員…多くの人を巻き込んで、命の重さと命の値段、価値について深く考えさせられる小説でした。
    テーマは重いのですが、文体が読みやすくスラスラ進みます。
    ただ、やっぱり割り切れない部分、同意できない部分、納得できない部分がありました。
    それは、それぞれの家族にそれぞれの考えや結論があるのであって、これがという正解はないから仕方ないと思います。
    本人の意思と残される者の意思や事情、どちらが優先されるべきなんでしょう。

著者プロフィール

1964年生まれ。作家。早稲田大学第一文学部卒業。編集者・ライターを経て、『八月の青い蝶』で第26回小説すばる新人賞、第5回広島本大賞を受賞。『身もこがれつつ』で第28回中山義秀文学賞を受賞。日本史を扱った他の小説に『高天原』『蘇我の娘の古事記』『逢坂の六人』『うきよの恋花』などがある。

「2023年 『小説で読みとく古代史』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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