城下町は今日も魔法事件であふれている (2) (角川スニーカー文庫)
- KADOKAWA (2015年11月1日発売)
- Amazon.co.jp ・本 (324ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041034194
作品紹介・あらすじ
魔法が人々の生活に根づいた世界――騎士のノエルと従騎士のアリエスは「全てを貫く魔法の槍と、全てを防ぐ魔法の盾」が起こした不可解な事件を調査する。そこに天才魔術師のエスティカが首を突っ込んできて――。
感想・レビュー・書評
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魔法が人々の生活に根づいた世界。城下町の治安を守る騎士・ノエル、堅物の従騎士・アリエス、天才魔術師・エスティカが、魔法によって起きた不可解な事件を解き明かすシリーズ第二弾。
基本は連作短編ミステリ風味に進みつつ、一作目よりもファンタジー要素が濃いめになったストーリーが楽しめる。特にクライマックスはまさしくファンタジーという展開になっている。全てを貫く魔法の槍を作る武器屋と、全てを防ぐ魔法の盾を作る防具屋の間で発生した殺人事件の謎。食べた人が混乱してしまうクレープの謎。町に出現した消せないが時間とともに消える落書きの謎。街角で発生した事件をたどる内に、とんでもない大事件へと巻き込まれていく。
今回はとあるキャラの過去とドラマが描かれる。彼女とエスティカとの出会い。彼女の追い求めたある魔法が、何者かによって最悪な使われ方をしてしまう。城下町どころか国がどうなるかの瀬戸際で、自分が研究してきた成果を全力でぶつけるのがアツかった。今回はシリアスよりもコミカルさが立った内容で、一作目よりもさらにサクサク読める。ノエルとアリエスのかけ合いが好き。
「絵の才能があるのかないのか、よくわからないな」
「才能ですか? 私は子供の頃に、絵画を習っていて、先生から『君の描いた絵は、苦悶と愛憎と悲哀が表現できている』と褒めてもらった事があります」
「子供が描く題材じゃないだろうに」
「子供が描く題材ですよ」
「苦悶と愛憎と悲哀が?」
「いえ、題材として描いたのは、先生の顔です」
これを真顔で言ってると思うと面白い。ノエルもなぜかツッコまずスルーするのもいい。
キャラの関係性ができてきて、事件の黒幕がチラついてきたところで、シリーズ終了になってしまったっぽくて残念。回収されない伏線はあるものの、ある程度は明かされたのでそこまで消化不良感はないかなあ。ここでの下地が“強化”と“硬化”されて、後の特殊設定ミステリ作品たちが生まれたと思うと感慨深い。井上悠宇先生のファンで、ライトノベル的にサクッと初期の雰囲気を知りたい方にはオススメ。詳細をみるコメント0件をすべて表示