バベル九朔

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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  • Amazon.co.jp ・本 (430ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041034644

感想・レビュー・書評

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  • 小説の題名を考え倦ねる主人公が変な世界に連れて行かれる話。

    現実世界の小説に関する悩みと異世界の混乱にどんな関連があるのか、はじめは皆目検討がつかなかった。しかし、それは異世界ではなくつながっていることにだんだん気付く。


    聖書でのバベルの塔は、天におられる神に届く高さを目指して作られた。しかし神様はそれを高慢だと怒り、塔を潰した。実現不可能なことの例えとしても用いられる。

    一方、バベル九朔では、影(無駄)をたくわえて塔が形成され、それがないと崩壊の危機を迎える。

    聖書で塔は高慢さの象徴であり悪しきものとして扱われているようだが、バベル九朔では、不可能なことを目指したって人間臭くていいじゃないか、それが人間だ、というメッセージが含まれていると思う。

  • 徒労に終わった情熱 それに付随する失望や絶望を源にする大九朔のバベルに対して、満大は未来を源に新たなバベルを築いて現実に帰る結末がとても好き。

    満大が完成させた三部作の長編は、本書の構成である 現実の諦観や焦燥、バベルで取り込まれそうになる甘い夢、それでも信じる己と未来 に対比してるのかしら。

    傲慢ゆえ太陽に近づきすぎて崩壊する塔も 、分たれなかった“言葉”が最も力を持つ設定も、タイトルの妙。

    一読して分かりやすい話ではないけれど、読めば読むほどよく出来ている構成。

    才能があると保証されれば努力も苦にならないだろう。向き合い続けることこそ才能。何者にもなれない苦悩や恐怖を抱えてもがく彼が、最後には自分の未来を信じて再び歩き出すところが希望があって良かったな。

  • 破天荒な世界観だなぁと楽しんでいたけど、読み終わって実は現実世界ってこうなんじゃないかと思い直した。
    人はたいてい夢見たようには生きられない。夢破れた結果の集合こそがこの世界を構成しているといっていい。歴史だってそうで、予定通りいかなかったことの積み重ねこそが歴史を形作って来たんだもんね。

  • ただの万城目学ファンです(笑)

    この作品いつもとは違うような気がしました。
    もちろん万城目ワールド全開ですが。

    私結局最後がどうなったかよくわかりませんでした(笑)

    バベルと現実世界に主人公が2人いるってことになるんですかね??
    (若干のネタバレすいません)

    若干分からなかったけど、面白かったからよし!(笑)

  • 古いビルの管理人は、デビュー前の万城目さんを連想させますね。リアルで面白いです。
    まだ日の目を見ない小説を書いている時間は無駄なのか。失敗することは意味のないことなのか。そこで終わりなのか。
    負のエネルギーを自在に操り、影の世界を構築したものがいた。そんな世界にもし迷い込んだら・・・。
    主人公の立場から描かれるので、読者も一緒に、何度もだまされてしまう。しまいにどれが現実なのか、誰が味方なのか、この世界を脱することができるのか、わからなくなってくる。しかし、物語の螺旋は次第に収束していき、最後は・・・。
    カラス女は敵なのか味方なのか、黒づくめの少女の正体は?そしてこの世界を創造した者の狙いは何か。

    壮大なSFなのですけど、内省的になりすぎ、難解さが増してしまった感じですが、文学としての完成度は高いと思います。
    昔、文芸カドカワに書かれた長編の始まりみたいな作品が、これになったんですね。

    発表するたびに、毎回違った顔を見せてくれる作家さんです。今後の万城目学に期待を込めて、★4つ。

  • 祖父ののこした古いビルを管理する九朔。烏のような全身黒ずくめの女に出会ってから 不思議なことが起こり始める。目の前の事実は真実なのか夢なのか・・・読むほうもまか不思議な謎に手に汗握る、久々に面白い小説だった。

  • バベル九朔の5階に住み、管理人の仕事をこなす男。日々小説を書き続けているが、新人賞どころか一次選考も突破できていない。
    カラス女に追われるまま、男は異世界に迷い込んでいた。
    8の字のように位置関係が歪んだ世界で、男は少女に導かれながらバベルの塔を登り続ける。自分の祖父、大九朔の思惑をわかったようなわからないようなまま、少女とカラス女と大九朔をやっつける。
    危険な状態にあるバベルは清算しないと、影が溢れて世界戦争を起こす要因になりかねないため、カラス女は清算しようとするが男はそれを止める。
    現在と少し前、それぞれの男の「未来」とも言える小説原稿を解き放つことで、バベルは維持された。

    ---------------------------------------

    最後まで大九朔の性格が掴めなかった。完全な悪役でもないようだったけど、話している内容が本心ではなかったのかもしれないから、全部謎のままだった。

    バベルの世界から戻ってきたときに少しだけ過去に戻れた理由もわからなくて混乱してしまった。
    謎が多いまま、フィナーレを迎えてしまったけど、結局九朔青年は影のままなのだろうか。
    ずっとワクワクしながら読んでいたのに、不完全燃焼で終わってしまった。とてもくやしい。

    現実世界ともう一つの世界、という設定がドラクエ6みたいだな、と思ったら、その後ずっと頭のなかでドラクエ6の『さすらいのテーマ』が流れていた。今も流れ続けている。

    『さすらいのテーマ』
    https://www.youtube.com/watch?v=6-fsWqlXnfc

  • コレは凄いなー。

    以前の作品よりは分かりづらいし、
    登場人物の魅力に欠ける印象は残るけど。

    うん、読んだなーって満足感。

  • なかなか面白いと思った。万城目作品は好きだが、これはなかなか印象的な作品だった。また読みたい。

  • 読了後、あまりに壮大な異世界譚に訳がわからなかったのですが、この小説全体が主人公の九朔満大が3年かけて書き上げた大長編という入れ子型をとっているのかも知れないとも思いました。主人公が3部作と言っていたのもバベル九朔(元の世界)、バベル(大九朔の作った世界)、互いの世界が接続した世界の3つを順に書いていることに矛盾しません。あまりスッキリとしない読了感や壮大すぎる内容は小説家を目指す主人公の拙い部分の現れではないかな、、、というのは考えすぎなのかもしれませんが、そこまで考えて内容を構成していたのだとすると万城目さんには脱帽するばかりです。

  • 現実を超越している点では万城目さんらしいのだが、それにわけのわからなさが加わったという感じがします。
    何が本当で、何が本当でないのか。光と影。そんなテーマだからなのかもしれません。
    章のタイトルも不思議というか良く分かりませんでした。
    核心に迫っていく感じは出ていましたが。
    カラスはやっぱり好きにはなれないです。

  • 万城目学さんの小説はまだ読んでいなかったので、以前テレビで紹介されて気になっていたこの本に挑戦。カラス女と呼ばれる奇妙な人物の存在感に圧倒される。大九朔は本当に死んだのか、オノ・ヨーコのような少女はバベルの外に無事出られたのか、主人公はどのようにしてバベルの管理人としてやっていくのかなど、その後が気になる。カラス女に段々好感を持っていく自分がいた。世界観が私の好みだった。

  • あいかわらずのファンタジーやな~

  • 序盤は今までの作品と違うのかと思わせるような展開。
    と思っていたら、やはり展開される万城目ワールド。
    何が何だか分からなくなりつつも、読み続けてしまう不思議な世界です。

    今までの作品へのオマージュを感じるものの、今までの作品より文学的でその分難解です

  • 取っ付きやすい代物ではないが、頑張ってはる作品でした。惰眠を貪る一人としてこの力が何かの役にたっているのか、お天道様には、惰眠は赦し難いのか、考えても詮のないことに、新しい考えを加えて頂いて感謝しています。

  • 相変わらずの万城目ワールド、今回も新たな世界観に引き込まれた。ラストも不思議な終わり方でいい意味で裏切られた。

  • 塔を……登る……登る……登る……!

  • 少しおどろおどろしいが映画にはなると思われる。

  • #読了。
    九朔満大は会社を辞め小説家を目指しながら、今は亡き祖父が建てた雑居ビル「バベル九朔」の管理人をしている。ビルで出会った黒ずくめの女性はカラスと呼ばれる泥棒の一味と考えていたが、その女性に追い詰められ、空きテナントとなった部屋に残る一枚の絵を見つけると。。。
    かなり不思議というか、訳が分からなくなるような話だった。どこまでが現実で、どこからが・・・そしてこの登場人物は誰の味方で誰なのか・・・と何度も考えさせられる。このように、とりとめのない無駄なことを考えさせるということが、筆者の狙いの一つだったんだろうか?

  • ビルの管理人をするかたわらで小説家を目指す30男が、祖父の遺した絵に触れたことで影の世界に飛び込んでしまう。タイトルにあるバベルはビルの名前、九朔は主人公の名字だ。

    管理人をしながら小説を執筆していた、作者自身の経験が下敷きになっていると言う。執筆開始時には全体のストーリーが決まっていた訳ではなく、現実的な世界を描いた第1章からしばらくの時間を経て継ぎ足していったそうだ。そのためか、始めのうちはやや冗漫な感じもする。
    でも、影の世界に引きずり込まれてからは一転、誰が味方で、何が真実なのか、そもそも主人公が取り込まれた世界は何なのか、謎は深まり一気に読ませる。

    奇想天外な世界を舞台にしているが、その謎解きをメインと考えるよりも、夢を追うこと、誰かを救うこと、自分の存在する意味などを考えていくと、ストーリーがぐっと重くのし掛かってくる。
    小説家を目指す主人公の厳しい現実には、哀しさと寂しさと、でも腹をくくった爽快さを感じた。
    それにしても、美女のサングラスの下のカラス目、怖くて絶対見たくないわぁ…。

著者プロフィール

万城目学(まきめ・まなぶ)
1976年生まれ、大阪府出身。京都大学法学部卒。
2006年、『鴨川ホルモー』(第4回ボイルドエッグズ新人賞受賞)でデビュー。主な作品に『鹿男あをによし』、『プリンセス・トヨトミ』、『偉大なる、しゅららぼん』などがあり、いずれも文学賞ノミネート、映像化等など、大きな話題を呼ぶ。また、エッセイ集に『ザ・万歩計』、『ザ・万遊記』、対談本に『ぼくらの近代建築デラックス!』がある。

「2013年 『ザ・万字固め』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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