- 本 ・本 (632ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041034651
作品紹介・あらすじ
第二次世界大戦の米軍の沖縄上陸作戦で家族すべてを失い、魂(マブイ)を落としてしまった知花煉。一時の成功を収めるも米軍のお尋ね者となり、ボリビアへと逃亡するが、そこも楽園ではなかった。移民たちに与えられた土地は未開拓で、伝染病で息絶える者もいた。沖縄からも忘れ去られてしまう中、数々の試練を乗り越え、自分を取り戻そうとする煉。一方、マブイであるもう一人の煉はチェ・ゲバラに出会い恋に落ちてしまう……。果たして煉の魂の行方は?
『テンペスト』『シャングリ・ラ』の著者が20年の構想を経て描破した最高傑作!
感想・レビュー・書評
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圧巻、壮絶、悲惨、爽快…
沖縄戦のリアルな描写。そして…予測できない怒涛の展開がはちゃめちゃに面白い。
あってはならない戦争。凄惨を極めた沖縄戦。通常の生活では登場しえなかったヒロイン知花煉が爆誕した。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
読み始めてすぐ、壮大な物語の予感がし、わくわく度が上がる。
第二次世界大戦の沖縄決戦を生き延びた主人公、戦後の混乱をたくましく行き、南米を新たに生きる地として選び渡航。ボリビアでの生活を描く。
戦後の時代背景、チェ・ゲバラとの交流も書かれ、スケールも大きい。沖縄のマブイ落ちが物語を複雑に分かりづらくさせるが、本著者の味が出ていてそれが良いとも言える。
南米に日系2世、3世が多いのは知っていたが、こういった時代背景があったのかを理解することもでき学びになった。困難な時代を生き抜く女性の強さを描く。 -
ものすごく分厚い本なのにぐいぐいと話に引き込まれてしまった。時は戦争末期の沖縄
そこから生き延びた1人の少女が南米ボリビアに移住し、たくましく生きていく姿と沖縄の古くからの考えとを融合させた話
最後の結末はなかなかよかったと思う。 -
この感情の高ぶりを書き留めておきたいのに、どう書けば的確な表現になるのか、分からない。
最後の一行がなんとも言えない。
主人公、知花煉。
沖縄で生まれ育った煉は、戦争で全てを失う。
かなり破天荒なやり方でのしあがっても、運命に翻弄され、どん底まで落とされ、それでもまた這い上がり…
私はこの小説を読むまでボリビアに日系人がいること、政府が積極的に移民を進めていた事を知らなかった。
沖縄のニュースは気に留めていても、その背景を知ろうとはしなかった。
それでも毎日生きている。
のうのうと生きている。
煉の周りにいる魅力的な登場人物達(特にカルメン!)やハチャメチャな展開のおかけでぐいぐい読み進められるけど、描かれているものはとても重くて、まだ消化しきれない。
煉のようにずっと抱え続けるしかないのだろう。 -
629ページの大部。
物語の場面は沖縄からボリビアへとダイナミックに転換する。
沖縄の地上戦、ボリビアの日本人移民、ナチスの残党、キューバ危機、ゲバラ。
実際の歴史的事件・人物の間を縫って駆け抜けるのは、沖縄生まれの美女・知花煉(ちばな れん)である。
少女だった煉は、沖縄戦の業火を辛くも生き延びた。だがその激しさの中、魂(マブイ)を1つ落としてしまう。沖縄では人は7つのマブイを持つという。何かの拍子にそれを落としてしまった者は、それを探し出して自分の中に収めなおさなければならないとされる。
煉は戦後の混乱を持ち前のバイタリティで乗り切っていくが、どこからともなく聞こえるマブイの声に呼ばれ、遥かボリビアへと長い長い旅に出る。
煉はファッショニスタでもあり事業の才能もある。男どもを蹴散らしながら、したたかに生き延びるその姿はなかなかの圧巻である。
ボリビアで出会う女子プロレスのスター、カルメンも、巨躯でありつつ美女、多くのファンを持ち、人情に篤く、痛快なキャラクターである。
日系人のイノウエ兄弟を従えつつ、煉が農業に汗を流し、また空賊として活躍する姿などは、活劇的にもおもしろい。
だが、明るいだけではないのが本作の一筋縄でいかないところである。
煉はともかくも落としたマブイの問題を解決せねばならないのだ。
人生の途上で、煉は(あるいはそのマブイは)運命的な人物に出会い、歴史に翻弄される。
彼女が出会った革命家は純粋な理想に燃えていた。彼女はその純粋さを愛しながらも、一方で、革命が人々にもたらした大きな影響に、革命家が無関心であることに激しく憤る。その愛憎の激しさに胸を突かれる。
煉は長い旅路の末、沖縄に戻る。
ラストシーンは重い。結局のところ、沖縄戦や基地の問題は精算されてはいないのだ。
この大部をここで〆るのか。これには唸らされた。
力作ではあるが、読み終わってみると、いささかバランスが悪い印象を受ける。
活劇的なおもしろさとテーマの重さはかみ合っていたのか。
沖縄からボリビアへの移民団の話はともかく、ストーリーにゲバラを絡ませてくる意図がもう一つよく呑み込めない。
歴史的大事件の狂言回しとして、架空の人物を配する手法にも、いささか雑な感じが否めない。
さまざまな要素がごった煮的に突っ込まれているが、さて、全体としてこなれているか、というと、どこか荒さが目立つように感じるのだ。
著者の熱意はひしひしと感じる。煉の人物造形も好きな人は好きだろう。
だが、読者を丸め込もうとするかのような、前のめり過ぎる力技の展開には、個人的には少々ついていけない部分もあった。
おもしろくは読んだが、釈然としない点も多い。それらをひっくるめて、著者の「味」なのかもしれない。 -
沖縄戦を生き抜いた沖縄女性、知花煉の沖縄-ボリビアを巡る一大叙事詩。ボリビア社会で生き抜く原動力が、悲惨な沖縄戦に生き抜いたマブイ落ちにあった!
日本兵を相手にしたたかに生き抜いていくパワーがその後のアメリカ軍やCIC相手とのやりとりでさらに昇華していく。
沖縄戦もボリビア移住、ボリビアでの生活もどれも悲惨、かつ波乱万丈。そこでここまでのし上がっていく、落ちても落ちてものし上がっていく気力と才覚がどこから生まれてくるのか?
池上永一が本書に込めた思いは、これまで日本国内ではそれほど日の当たらなかったボリビア移民について光を当てることであったのかもしれないが、本書はそこを超えて一大エンターテインメントとして花開いた。
一貫して続く知花煉の一人称語り。しかしそれは「語り」というおとなしいイメージとは異なり圧倒的なパワーとスピード、テンポ感で押し寄せてくる。
しかも二人のレンが一人称で語り続けるのだから、レンを通した世界観がそのまま瞼に焼き付くようだ。
それぞれ当時の沖縄情勢、南米情勢、冷戦状況などがうまい具合に散りばめられており、雑多感よりも繋がり感が強い。
特にボリビアにおける国民性というか民族性をうまく言い表したコミュニティの形と「公陸」の概念は、「ボリビア多民族国」そのもので激しくハラオチした。
マブイ込めのために再び降り立った沖縄で、マブイの煉が閉じ込められたままの現実が痛々しいが、この物語の進み続ける未来を示しているようでもある。
しかし、どうしても記載しておきたいのだが、何故本書の表紙絵はチェ・ゲバラなのか?本書の主要な登場人物ではある。しかし、トップ主題というわけでもないような気がする。
チェ・ゲバラ(本書ではエルネストだが)人気にあやかっているのか、読了後の高揚感のなかにあって、あるいはだからこそ、この違和感が抑えられない。 -
沖縄戦より生き延びボリビアに渡り南米をかけめぐる女。最初は沖縄の戦争から始まり重い内容で、正直読み進めることができるか不安だったけれど、女性の強さ、沖縄、南米、ゲバラ、文化、非常に興味深く読めた。凄い、凄い。読んでよかった。ボリビアに渡ってからCIA、ナチ残党、キューバなどこの先どうなるかとページをどんどん進めたが、移民の暮らし、終わらない戦争、心の傷も非常に深い、深い内容。読み応えあり。
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テンペスト、シャングリ・ラ、黙示録など、池上永一の描く主人公は簡単にへこたれない。
つまずいても、失敗しても、何度でも立ち上がって成功を求める。
ただの野良犬ではない、狼のような射貫く視線で前を見つめて突き進む。
沖縄戦の最中、知花煉は艦砲射撃の一斉掃射の中を逃げ続けていた。
死が支配する世界で何度も死にかけながらも、彼女だけは死ななかった。
彼女は、魂(マブイ)を落としてしまっていた。
戦後、不屈の闘志と商才からコザ市で成り上がった彼女だったが、米軍CICから追われる身となる。
誰かからの呼び声に応じて沖縄を脱出し、琉球政府移民の一人として二か月後にボリビアの地にいた。
この地で彼女が出会ったのは、艦砲射撃の衝撃で地球の裏のボリビアまで吹き飛ばされた自身のマブイだった。
実態を持たないもう一人の私は、幾度となく私の肉体を奪おうと画策する。
ボリビアでの出会い、
幾度とない身の破滅と復活、
容赦なく巻き込まれる革命の嵐、
その末に出会った青年ゲバラとの恋、
魂が分かれた二人の煉の視点から、不屈の彼女の成長が描かれる。そしてラスト。彼女の戦いは未だに終わることが無い。
池上永一の著作は風車祭、レキオスは現代の沖縄を描いているが、最近ではテンペストやトロイメライ、黙示録では琉球時代についての著作のほうが多い。
しかし、今までに明らかに戦中から戦後にかけての沖縄については書かれていなかった。
そして今作、ヒストリアでこの時代の沖縄が描かれている。
魂が落ちて地球の裏側まで飛んでいった。
ありえない話だが、今までの池上永一作品を読んでいると、沖縄ではさもありなんと思ってしまう。
何につけてもご都合主義なシーンも、ウチナーンチュの力づくで突破してしまう。
そんな強引な話の筋にも、沖縄の問題を読者に付きつけている。
著者プロフィール
池上永一の作品





