失われた過去と未来の犯罪

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
3.68
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本棚登録 : 246
レビュー : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041034699

作品紹介・あらすじ

ようこそ、謎と人間の新しい可能性へ――。
『アリス殺し』の鬼才が贈るブラックSFミステリ、ここに開幕。

全人類が記憶障害に陥り、長期記憶を取り外し可能な外部装置に頼るようになった世界。
心と身体がバラバラになった今、いくつもの人生(ル・ものがたり)を覚えている、「わたし」は一体何者――?


◆女子高生の結城梨乃は、自分の記憶が10分ともたないことに気が付いた。いち早く状況を理解した梨乃は急いでSNSに書き込む――「全ての人間が記憶障害に陥っています。あなたが、人類が生き残るために、以下のことを行ってください」。それから幾年。人類は失った長期記憶を補うため、身体に挿し込む「外部記憶装置」(メモリ)に頼り、生活するようになった。

◆「わたし」の中には、なぜか何人分もの記憶、思い出が存在している。「替えメモリ受験」をしようとした学生の話。交通事故で子供を亡くした父親の話。双子の姉妹の話。メモリの使用を拒否する集団の話。謎の「声」に導かれ、「わたし」は自分の正体をついに思い出す……。

物語の終幕に、「進化の果て」が浮かび上がる。

感想・レビュー・書評

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  • 2018.8.17読了

  • 全人類が10分しか記憶を保てなくなってしまった世界。
    二部構成で、一部は記憶障害が起こっていることに気づいた人々が、日常生活を維持するために奮闘する話。
    二部は、記憶を『外部記憶装置(メモリ)』に頼ることになった人々の、諸々の話。

    多分作者は、二部を書くための前提として一部を書いたのだと思うけど、面白かったのは圧倒的に一部。
    10分しか記憶が続かないという現実を受け入れるまでのドタバタ劇。
    もちろん書かねばならないのはドタバタではなく、どうやって日常生活を取り戻すのかの話がメインなんだけど。

    娘に事情をノートに書いて説明してもらっても、手にマジックで「ボケてません」と書いてもらっても、10分立つと「私ボケちゃった」と泣く美咲。
    仕事の休憩時間にイカ釣りをしていたのを忘れてしまい、手がイカ臭いと騒ぐ風見。
    多分自分がやったことを忘れてしまい、「誰かが僕のパソコンを勝手にいじった」と騒ぎ続ける氷川。
    重大な局面に、真剣にピンボケをかます人たち。
    でも、人ってそういうものだと思うのだ。
    というか、そういう人もいるのが、人間なのだと思う。

    翻って二部は、自前で記憶をとどめておくことができないので、メモリを体内に差し込むことによって記憶を維持することになった人類

    の、悲喜こもごもな短編集を装った中編。
    自分と他人のメモリが入れ替わることによって起きる、自分とは記憶なのか肉体なのかという哲学的な葛藤。
    他人のメモリを差し込むことによって、自分を媒介に亡くなった人の記憶を呼び起こすイタコ。

    自分が自分であるための、一番よりどころとなる自分の記憶を、そんなに簡単に出し入れ可能状態にしていいのかという件についてはおいておくとしても、やっぱりもやもやは残る。

    だって、メモリって記録に過ぎないでしょ。
    同じ出来事を経験したって、同じ映画を観たって、同じ本を読んだって、反応は様々。
    人の個性というのは経験した出来事からつくられる部分もあるけれど、身体的な癖だったり、思考の偏りだったりもあるはず。
    生まれたての赤ちゃんだって、ひとりひとりの泣き声は違う。

    出来事を記録したメモリを交換しただけで、人格の移動が完璧に行われるはずはない。
    人はそんなにデジタルではない。
    と、思うんだけど。

    脳がおぼえていること。
    身体がおぼえていること。
    心がおぼえていること。
    これらがあってはじめて、その人という唯一無二の個性が現れるんじゃないかなあ。

    そもそも絶対に忘れることのない記憶を挿入された時点で、忘れん坊な私のキャラクターは消滅するよ。
    そうそう、何を忘れて何をおぼえていようという選択も、無意識の私の判断なわけで、何物をも忘れないというのはもうすでに別人格になっているともいえるよなあ。

  • 2018/3/24(土曜日)

  • 記憶と時間、ライフワークのテーマがまた結実した感じ

  • 【あらすじ】
    全人類が記憶障害に陥り、長期記憶を取り外し可能な外部装置に頼るようになった世界。
    心と身体がバラバラになった今、いくつもの人生(ル・ものがたり)を覚えている、「わたし」は一体何者――?


    ◆女子高生の結城梨乃は、自分の記憶が10分ともたないことに気が付いた。いち早く状況を理解した梨乃は急いでSNSに書き込む――「全ての人間が記憶障害に陥っています。あなたが、人類が生き残るために、以下のことを行ってください」。それから幾年。人類は失った長期記憶を補うため、身体に挿し込む「外部記憶装置」(メモリ)に頼り、生活するようになった。

    ◆「わたし」の中には、なぜか何人分もの記憶、思い出が存在している。「替えメモリ受験」をしようとした学生の話。交通事故で子供を亡くした父親の話。双子の姉妹の話。メモリの使用を拒否する集団の話。謎の「声」に導かれ、「わたし」は自分の正体をついに思い出す……。

    物語の終幕に、「進化の果て」が浮かび上がる。

  • 小林泰三のSFの中では読みやすい

  • 201706
    ある種の思考実験のような小説。
    自我とは、と考え始めると恐ろしくなる。

  • ある日突然記憶を保てなくなった人類のエピソード集。

  • 她思想的回路是好意思。哲学的,真理的和露茜(电影)的。

  • 03/01/2017 読了。

    図書館から。

    SF。
    人間の脳って凄いんだなー。

    こういう設定ってどうやって思いつくんだろうってくらい、
    不思議な感覚でした。

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著者プロフィール

1962年京都府生まれ。95年「玩具修理者」で第2回日本ホラー小説大賞短編賞を受賞。98年「海を見る人」で第10回SFマガジン読者賞国内部門を受賞。『アリス殺し』で啓文堂文芸書大賞受賞。その他の著書に『人獣細工』『肉食屋敷』『家に棲むもの』『脳髄工場』『忌憶』『臓物大博覧会』『人造救世主』など多数。

「2016年 『失われた過去と未来の犯罪』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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