梅もどき (1)

  • KADOKAWA
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041034750

作品紹介・あらすじ

太閤秀吉の従弟として北ノ庄城を預かる青木勘七は関ヶ原の戦いで西軍につき敗北。その愛娘・お梅は父を案じつつ、明日をも知れぬ逃亡生活を余儀なくされていた。そんなある日、自分が徳川家の血縁でもあると知る。さらに、敵将・家康の側妾となる話が持ち上がった。しかしお梅は、家康の寵臣である本多弥八郎の凛々しい姿が忘れられずにいた――。女は政治の道具と思われていた戦乱の時代、数奇な運命から逃げずに”戦った”女性の生涯を描く感動長編。

感想・レビュー・書評

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  • 【記録】
    梅もどき
    2016.10発行。字の大きさは…字が小さくて読めない大きさ。

    皆様のレビューを見て、興味が湧いて図書館で予約するが、来てビックリ字が小さくて読めません。
    残念、返却します。
    単行本。

    文庫本が出たのでそちらを予約します。
    なお、図書館で予約した文庫本が本日(2019.10.10)来たので見てみると、読めそうなのでほっとします。
    ※【記録】の説明は、プロフィール欄に書いて有ります。

  • 徳川家康の側室お梅の方。父親は豊臣秀吉の従兄弟、しかも、その父親の青木家は徳川家康の祖母に連なる血筋であり、徳川と豊臣とも血縁である数奇な身の上であった。
    お梅は家康より本多正純に下賜されることになる。
    本作は、お梅の方を通して、関ヶ原、本多正純失脚を描いている。
    本多正純の辞世の句からこの小説が生まれたのでしょうか。非常に素晴らしい。歴史をひもとくとは、こういう事なんでしょう。

  • 徳川家康の重臣でありながら
    後に謀叛の疑いを掛けられ長い幽閉の後、他界した本多上野介正純とその妻お梅の物語。

    お梅は、徳川と豊臣、両方と血縁があることから
    家康の側女となる。
    やがて、実は心の奥で慕っていた家康の忠臣に譲り渡される。

    夫婦の深い愛が印象的

  • 本多弥八郎正純とその妻お梅。
    夫婦のきずなが良かった。
    疑惑に対してもっと抗っても良いと思うのは、現代人の感覚か。
    潔すぎる気もする。

  • 本田正純さんのお話し。吉川さんの本じゃ随分と四角四面な堅すぎるお人のようでしたが、書き様を変えればこないな感じ?梅さんが主人公やしなぁ…

  • 主人公のお梅は実在の人物だそうです。
    お祖父さんの甥が、豊臣秀吉。
    つまりお父さんの青木勘七は秀吉の従兄弟ということ。
    武士でありながら茶人でもあった青木勘七は、徳川家康とも昵懇の間柄ではあったものの、関ヶ原では西軍として戦う。
    病を押しての参戦で、結局父は病死ということになったが、敗れた西軍に属していたため、青木家は取り潰されてしまう。

    関ヶ原のあと、時代は豊臣から徳川へ移ったとはいえ、未だ豊臣を支持する者も多く、時代は混とんとしていた。
    そんな時に豊臣と徳川を繋ぐものとして選ばれたのが、お梅だ。
    お梅の祖父のおばの孫が家康。
    遠いつながりとはいえ、豊臣、徳川両方の血を持つ人間として、お梅は家康の側妾(そばめ)となる。

    その関係は、家康の跡継ぎ秀忠に長男が生まれるまで続いた。
    つまり、由緒正しい血筋の女性に徳川の子どもを産んでもらわなければならなかったということだ。
    秀忠と正室との間に男の子が生まれた後、お梅は家康から家臣の本多正純に側室として払い下げられる。

    これらは史実のようである。
    ただ、お梅と本多正純の間に、家康とは無関係に恋愛感情があったという設定は多分創作だろう。

    物語は正純が死の床に臥せっているところから始まる。
    謀反を企てたという罪で、東北の横手で蟄居させられてもはや10数年。(これも史実)
    当然彼のそばにお梅はいない。

    家康が最も頼りにしていた家臣、本多正純はなぜ幽閉されているのか。
    お梅は今、一体どこでどのように生きているのか。或いは死んでいるのか。
    それを語るのは、正純の看病をするキクである。
    長患いと高齢ですっかり体力の落ちた正純に、毎日少しずつ語られるキクの話。

    平和な時代に出会っていれば、仲睦まじい夫婦として暮して行けたはずの正純とお梅。
    しかし、家康の正室であった築山殿やその娘の加納御前と家康の生母である於大との確執、家康の二男である結城秀康と三男秀忠の跡継ぎをめぐる抗争などが複雑に絡み合って、ふたりを翻弄していく。

    ヒロインはお梅だが、実は語り手であるキクにもドラマがある。
    お梅が運命を受け止めながら人生を切り開いていったとすれば、キクは人生を切り開きながら受け入れていった。
    どちらも見事な女の生き様。

    もう一人。
    これも実在の人物だが、お梅の生涯の友であり、家康の側妾であったお奈津。
    彼女もまた、生涯をかけて家康を支え続けたあっぱれな女性。
    彼女のこともまた、私は知らなかった。
    まだまだ勉強が足りないな。

    ひとつだけ物申せば、本多家の家臣でキクの運命のカギを握る岡本大八の人物造形が書き込み足りなかったのではないか。
    幼いころは利発で将来を嘱望されるくらいの人物だったはずなのに、なぜ裏表のある、残虐な人物になってしまったのか。
    物語の中では一応説明があるけれど、ちょっと納得できなかった。
    言わんとすることはわかるけれど、人知を超えたところに答えを持ってきてほしくはなかった。

    それ以外は大変満足して本を置くことができた。

  • 戦国時代のお姫様は男以上に大変だなと思った。秀頼やら秀忠やら、徳川なのか豊臣なのか紛らわしくて読むのに時間がかかってしまった。歴史オンチだが、人間関係の複雑さ、狭さに興味を持つことができた。

  • 『梅もどき』という意味深なタイトルからあれこれ想像を巡らせながら読んだが、結局は素直な物語だった。
    徳川家康の重臣でありながら後に謀叛の疑いを掛けられ失意の中で他界した本多上野介正純とその側室お梅の物語。
    歴史は常に勝者側から描かれるもの、本多上野介側にこのようなドラマがあったとしても少しも可笑しくはない。
    その側室お梅を主人公に据えて、数奇な運命を描いたところも興味深かった。
    この時代の女性は単に政治の道具でしかなく、その血筋や美貌故に何度も再嫁させられることなど珍しくはなかった。そんな中でお梅が心通う相手と添えたことは、例え下賜という形であれ良かったと思う。
    女性には女性にしか出来ない、女性ならではの戦いがあったのだと思う。
    男側にも男たちならではの戦いがあり、その時々の権勢、政治の行く末までを見通して誰に付くかを決めなければならず、大変だっただろうことは想像出来る。
    しかしこの本多上野介の例のようなことは現代の政治の世界にも通じるものがあって、人間は成長していないなとも思えた。
    足の引っ張り合い、遺恨をいつまでも引き摺る故の遺恨の連鎖、不安や弱さから来る不信と疑惑だけで膨張していく恐怖。
    そんな中で離れていても互いを思い合い通じ合う男女の姿が印象的だった。ただ、これはあくまでお梅側からの物語だからそう感じるだけで、本多上野介の正妻側から描くとまた違う物語になりそうだ。

  • 戦国時代のいろいろに振り回される武士とお姫様のお話(←語彙力低っ)。「あぁ、こういう話ね」って読み終わりそうな、最後の最後でやられました。ぶわっと、涙があふれました。一緒に過ごさせてあげたかった。

  • 2015〜16年に公明新聞に連載されたものを単行本化。

     家康の寵臣で、家康の死後改易され横手に幽閉されて没した本多正純と、その側室お梅の物語。
     病の床の正純が寛永14(1637)年、死の19日前から正純の世話をするようになった阿国歌舞伎一座の踊り手であったキクから聞かされる昔語りと、慶長5(1600)年から正純の死までのお梅の人生の物語が、交互に交錯しながら進行していく。

     関ヶ原では西軍についた青木家の娘梅は人質として入っていた大阪城を出て、京都で茶屋四郎次郎にかくまわれていたとき梅もどきが飾られた茶室で正純と出会う。
    家康の母於大の方と縁続きであったことから閻魔と嫌っていた家康の側室に上がるが、お梅の味方となってくれたお奈津の働きで正純に下げ渡され駿府で倖せな日々を送る。お梅は青木一族の菩提を弔うために伊勢に小さな寺を建て、老後はそこで暮らそうと正純と語り合う。
    正純とお梅は家康の死後江戸に移り、さらに宇都宮に転封されて東照宮の造営と七回忌を取り仕切るが、突如転封、さらに改易されて家臣は散り散りになり、お梅は伊勢の寺に向かって正純を待つが正純はゆるされることなく死の知らせを聞く。

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著者プロフィール

諸田玲子
静岡県生まれ。上智大学文学部英文科卒。一九九六年『眩惑』でデビュー。二〇〇三年『其の一日』で吉川英治文学新人賞、〇七年『奸婦にあらず』で新田次郎文学賞、一八年『今ひとたびの、和泉式部』で親鸞賞を受賞。著書に『お鳥見女房』『あくじゃれ瓢六』『きりきり舞い』シリーズのほか、『四十八人目の忠臣』『波止場浪漫』『帰蝶』『女だてら』『尼子姫十勇士』『しのぶ恋』など多数。

「2023年 『其の一日 増補新版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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