一八八八 切り裂きジャック (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 364
レビュー : 24
  • Amazon.co.jp ・本 (781ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041036198

作品紹介・あらすじ

19世紀末、霧の帝都ロンドンを恐怖に陥れた連続娼婦殺人事件。殺人鬼「切り裂きジャック」の謎を日本人留学生の美青年探偵・鷹原と医学生・柏木が解き明かしていく。絢爛たる舞台と狂気に酔わされる名作ミステリ!

感想・レビュー・書評

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  • 『この闇と光』に続き、服部まゆみの絶版文庫が復刻!こちら2002年に文庫化、元の単行本は1996年の出版なのでおよそ20年近く前の作品になりますが、舞台になっているのはタイトル通り1888年のイギリス、切り裂きジャック事件の謎解きものということで、まったく古さは感じません。760頁越えの分厚さには一瞬腰が引けますが(苦笑)皆川博子で免疫があるのでなんとかクリア。膨大なパズルのピースが組み合わされた巨大な迷路のようで、消耗したけど満足度も高かったです。

    切り裂きジャックものの映画や小説はいくつか観た(読んだ)けれど、同時代、同地域に存在したエレファントマンとここまで絡めてあったのは初めてかも。(私が吸血鬼もの好きなせいもあるけど、今まで読んだ小説では切り裂きジャック吸血鬼説とか多かった・笑)

    スッシーニのヴィーナス(蝋人形)なども含め、見世物小屋で晒し者にされていたエレファント・マン(それを是とする文化)、連続殺人鬼に震撼しつつも被害者が皆娼婦であることからどこか他人事として無責任な観客化していた人々、フリーメイソン、犯人説もあった英国王子など、ヴィクトリア朝ロンドンの闇の濃厚さが、個人的にはこの作品世界最大の魅力と感じました。結局、切り裂きジャック事件そのものが、陰惨で目を背けたいと思いながらも「怖いもの見たさ」の好奇心をくすぐられずにいられない人間を今も引きつけてやまないわけで。

    実際の事件をモチーフにしているだけあって、事件とは直接関係ない有名人なども含めて実在の人物が沢山出てくるのも、遊び心&時代の空気が感じられて重層的な構造に一役買っているかも。日本人ではプロローグでの谷崎潤一郎、留学生の森鴎外や北里柴三郎、英国では当時わずか6歳のヴァージニア・ウルフ、アラビアンナイトの紹介者バートンや、ラファエル前派の画家シメオン・ソロモンなどとにかく同時代人を網羅。バーナード・ショーだの、田中稲城と図書館のエピソードまで入れるのは盛りすぎかなと思ったけれど、表面的には切り裂きジャックのミステリーを装いながら、実は裏テーマ的に主人公が作家を目指そうと思うまでの成長、文学との関わり方というのがあったのだと思うので、この、盛りすぎとも思える小ネタ感もやっぱ大事なのかな。名前だけならもっと大勢の文学者や主人公が愛読する本の名前が出てくるし。

    で、肝心の謎解きをする主人公とその相棒のみが架空の人物。伯爵家の長男でイケメン才気煥発社交的で隙なしの通称「光の君」鷹原惟光をあえて脇役に、主人公も名前からして源氏物語パロディな柏木薫、けれどこちらは素朴で可愛い系。おそらく特定のモデルではなく漱石や荷風など複数の作家の要素を継ぎ接ぎした感じ。ただこの薫くん、主人公ゆえ仕方ないのかもしれないけれど、いささか優柔不断で思い込みが激しく、感情の揺れが激しいのでちょっと面倒くさい。かといって鷹原のほうを主人公にするとそれはそれでソツがなさすぎて盛り上がらないのだろうけど。しかしさすがに終盤、勘違いで大暴走、切り裂きジャックどころかホモの痴話喧嘩の原因作って引っ掻き回しただけだったのは残念でした(苦笑)

    まあ最終的に、真犯人が誰かということはもしかしてそんなに重要じゃなかったのかもという気もしますが、ひとつの仮説としてとても面白かったです。

  • 私はめっっちゃくちゃ面白かったです!
    主人公二人がすごく好き!!魅力的!
    そして実際の事件や人物が出て来るのに
    全然説明じみたり取ってつけた感もなく
    自然に胸の中に収まっていく物語の面白さと繊細な描写でした。
    ただ推理小説としては後手後手に回りすぎているので
    つまらないと思う方もいるかもしれませんが、
    私は、これは主人公である柏木薫の転機・成長を記した手記のようなものと思って読んでいたので、
    純朴で真面目だけど人の心の機微に疎い柏木の心の動きにも惹きつけられたし、
    日本人でありながら欧州の人をも虜にする美貌を持ち如才無く王族とも接し、
    光源氏のように皆に愛される光こと鷹原の活躍と
    その奥に疼いているしこりを覗き見ることができて
    非常に満足しながら読めました。

  • 舞台は19世紀末のロンドン、実際に起きた切り裂きジャックの事件について、医学を学ぶために渡欧した日本人の目を通して、犯人を暴いていく。

    切り裂きジャックと呼ばれる犯人による娼婦連続殺人は、未解決の猟奇事件ということもあり、ミステリーの素材として取り上げられることも少なくない。これもそのひとつで、史実を織り混ぜながら重厚な読み物に仕上げている。
    主人公はまったく冴えない青年で、対照的に事件を解決していく友人は、容姿も性格も頭脳も正反対。そのコンビは、主人公が事件を日記風に綴っていくところも含め、ホームズとワトソンの姿と重なる。番外編で、別の事件も読みたいと思ったほどだ。

    個人的には、主人公が関わっていくエレファントマンは、その昔映画を観たが(若い頃映画館で観たため、映像にも内容にもかなりショックを受けたことを思い出した)、切り裂きジャックと同時期だとは考えもしなかった。
    伏線等は比較的分かりやすく、おのずと犯人の目星もつく。が、それはともかくとして、ロンドンの匂いたつような光と闇の、くらりとするような妖しい雰囲気が存分に楽しめる。途中、皆川博子の長編を読んでいるような錯覚に陥った。

    ただし、とくに前半はかなり冗長で、物語に入り込むまでに根気が必要。もう少し削ってアップテンポでもいい。
    同時に、800ページ近い作品を1冊の文庫本というのは物理的に重い……。せめて2冊に分けてくれれば。あと、これだけの長編なので、人物一覧がほしかった。

  • 旧版を積読で持っていたことを忘れて購入する。「あるある」である。データ管理は大切、データ管理は大切。この作者の他作も多数持っているようなのだが、実は今回初めて読んだ。何故だろう、物凄いストライクゾーンだと思うのに…おそらく「皆川博子の亜流」疑惑からかもしれない。そうやって死蔵しているうちに作者が他界しておられるとは、まだお若い(皆川氏と比べて)のになんとも残念なことだ。合掌。今更ながらだが、これからはたんと読ませていただくつもりだ。それくらい面白かった。源氏絡みのネーミングや、ビクトリア朝のゴシック倫敦、時代の著名人達の登場、そして美形だの男色だのと、もう「我々の組合」を狙い澄ましたようなあざとさではあるが、それらを差し引いても余りあるエンタテインメントだ。すらすらと読みやすい作品なので(その分浅いとも言えるが)、どうぞ分厚さにめげず手にとって頂きたい。

  • 長い〜とにかく長い〜
    でも実在の人物や事件も登場して面白かった
    作品に漂う暗くてどんよりした感じ、好きだー
    皆川博子氏の作品の雰囲気に似ているので、そちらが好きな人はこの作品も好きかも

  • 読み終わりましたー。

    久しぶりにシャーロックホームズを読んで、そのままイギリスが舞台の小説を…と思って読み始めたら、ぐいぐいズルズルとはまり…

    気がつけば、3時。

    仕事のときも休憩中に読んだりしましたが…
    長いので、休みの日にイッキ読みするのがよいかなと。

    ヨーロッパの歴史と並行しながら進みますが、私は心境が変わっていく柏木さんが好き。本の虫同士、仲良くなれそうな気がします。

  • 長っ!
    翻訳物のように私には読みづらく時間がかかった。
    前半のよくわからない交友録は必要だったのだろうか。
    当時のイギリスがらよくわかり、そーゆー面では面白かったけど、柏木が悩む姿が多く後半どうでもよくなってしまった。
    斜め読みしてもとにかく疲れた。

  • 読み終わるのが死ぬほどしんどかった。
    前半、本筋がはじまるまでの交友録、あれは意味があったのか、、、。

    有名すぎる事件を取り扱った小説だけに、
    犯人をどうするのか、
    それだけが気になって、ひたすら気合で読みました。
    後半の後半、
    犯人探しになってからはやっとミステリっぽくなりました。そこまできつかった〜
    そしてそして、犯人は本当に彼だったのかな?

    煮え切らない柏木くんにイライラ。笑

  • 登場人物達がすごく魅力的でイッキ読みした上に2回目に突入中〜。柏木のナイーブさが好きだなぁ。モラトリアム期の揺れというか。愛おしいです。鷹原と柏木の関係も良い。2人とも容姿がいいからその辺りも楽しめます。
    実はずっと以前もう20年程前?創元から出てたのを図書館で借りて読んでます。20代、ミステリを読みだしたばかりで、それまで切り裂きジャックの事件の知識も無く、その後も切り裂きジャックについての本を読んでいなかったため、私の中ではかの事件のあらましはこの本の内容で記録されていました(汗)そして多分これからもf^_^;
    ステキな作品に再び出会うことができて本当に嬉しいです!

  • 皆川博子さんの「開かせていただき~」の装丁に似ていていたので手に取ってみたのだが、なんとなく中の雰囲気も似ていた…。
    とんでもなく長かったのだが、美貌の伯爵家長男(鷹原惟光)に胸キュンで何とか読み終える。しかし、もう少し整理してこの半分でテンポよく読みたかった。また、登場人物が多すぎたし、愛称も似ていて混乱した。
    ミステリーとしては面白かった。私も、犯人は彼だと勘違いしていたので…。
    ただ、犯行の動機としてはいまいち納得できなかったけど。
    光に薫…ね。美しい青年が出てくると、それだけで読んでいてワクワクしちゃう!

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著者プロフィール

1948年生まれ。版画家。日仏現代美術展でビブリオティック・デ・ザール賞受賞。『時のアラベスク』で横溝正史賞を受賞しデビュー。著書に『この闇と光』、『一八八八 切り裂きジャック』(角川文庫)など。

「2018年 『罪深き緑の夏』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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