- Amazon.co.jp ・本 (416ページ)
- / ISBN・EAN: 9784041036204
感想・レビュー・書評
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大きな事件がある話ではないので、退屈ではあるが悪くはない。
あとをつけるとしたら、過去の自分。どういう風に見えていたのかを知りたくなった。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
ふとしたことから近所の妻子持ちの男性を尾行してみたヒロイン。すると男性が恋人と会っていることを知り…。淡々と尾行するヒロインの姿を
描く。 -
尾行。文学的哲学的尾行て何?
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ソフィ・カルというアーティストの影響で「目的なく他人を尾行する」という行為を何気なく実践してみる主人公。
近所の男性を尾けたところ、妻子持ちでありながら外の女性と関係していることを知る。
そして観察を続けるにつれて、自分と同棲中の彼氏が浮気をしているのではないか、と思い込む様になり、尾行行為に苦しんでいく。
観察者が非観察者からのリアクションによって影響を受ける様を描いている。
中々面白かったが、本書では隠し事=男女関係で、人ってそんなものかなぁという不満が残った。
ところで主人公が最後嘘を吐いた様に、彼氏もまた嘘を吐いていないと、何故言える? -
大学院生の珠は、大学時代のゼミで知ったアーティスト、ソフィ・カルによる「何の目的もない、知らない人の尾行」の実行を思い立ち、近所に暮らす男性、石坂の後をつける。そこで石坂の不倫現場を目撃し、他人の秘密に魅了された珠は、対象者の観察を繰り返す。しかし尾行は徐々に、珠自身の実存と恋人との関係をも脅かしてゆき―。
サスペンスとあるがその要素はあまりなく、文学的・哲学的な尾行と観察の中で自分の恋人にも疑念を抱くようになったり、そんな自分を嫌悪したりする。途中まで珠は何がしたいの?と思いながら読んでたけど、意外な展開になり最後は一気に読んだ。自分には哲学的要素が一切ないからか、なんか不思議な物語だった。 -
ゾクッとするあらすじに惹かれて読んだが、後半は意外性はなくコンパクトにまとまった形で結末を迎えた。
「文学的哲学的尾行」という修飾された言葉で、人の生活を覗き見する行為を美化している印象を持った。珠が自らの価値観を根底から覆すような葛藤があっても良かったと思う。 -
大学院生の珠は、淡い憧憬を抱く篠原教授が講義に用いたソフィ・カルに興味を持ち、文学的哲学的尾行をはじめる。目的を持たない、対象者に接触してはいけない。全くの他人の秘密に触れる行為は自らの澱を粟立たせ、平穏だった珠の生活に波風が立ち始める。
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2016/7/3
細々した描写がすごく生々しくリアルに感じられる。
大きな波はなく、物語性というより日情性が強い。
だからこそ先が読めない部分もある。 -
文学的、哲学的尾行」に興味を持ち、近所に住んでいる中年男性の尾行を始める女子大学院生の主人公。仕事でもないし自分とは全く接点のない人間の尾行をする主人公の心理が全く理解できず前半は感情移入できず。ただ後半は、よくあるパターンですが尾行を続けるうちに不倫を目撃したり、妻との修羅場を目撃したり、相手に尾行がバレたりで、ドラマを見ているようで面白かった。小池さんはモテる男性を表現するのが上手。このストリーの中では尾行される石坂さんが魅力的に書かれてた。
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○もはや中毒化する尾行。やがて本人をも変えてしまう。
フランス文学を専攻する大学院生の珠は、ソフィ・カルの「尾行」についての一節にゼミで触れ、一度やってみたい、と思うようになる。
ある日、近所の家族がたまたま外出先の駅に現れ、そこの主人・石坂が家族と離れた後、表情が変わることを見逃さなかった珠は、そこから「尾行」しようとして後をつける。
ここでの尾行は、<q>文学的・哲学的尾行</q>であり、何らその人の私生活を暴き告発することを目的とするわけではない。
しかし、尾行することによりその人の私生活の一部を垣間見ることができてしまうのは必然である。
石坂を尾行すると、女性とあっている現場に遭遇してしまう。
それとなくiPodを聞いているふりをして、その二人の会話を聞いていると、どうやら浮気の密会現場だったようだ。
別れ際、抱き合い、烈しいキスをしているところも目撃してしまう。
そのあと、浮気相手の女性を尾行し、名前や職業も突きとめてしまう。
さらに、自分の家の窓から見える隣家の様子で、石坂と奥さんがもめているのも目撃してしまう。そして、最初の会話でホテルでの密会をすることを突きとめていた珠は、意を決してそのホテルに潜入し・・・
尾行すればするほど自分が変わっていくことへの恐怖。
文学的・哲学的尾行とはいえ、隣の家の家族関係がどう変遷していったのか。
そして、次第に尾行という行為は、珠自身にも影響を与える。
珠の同棲相手の卓也が、仕事相手の桃子さんと不倫しているのではないかと疑い始めたのである。
時折見せる、教授の篠原とどうなってもいいという感情、卓也に本当は嫉妬されたいという感情、そして珠の振りきれない過去の恋愛や、家族関係も交錯しながら、進んでいく珠の尾行。
最後は意外な展開と結末を迎える。案外ハッピーエンド。
しかし、タイトルの「二重生活」が現す通り、珠も卓也も、石坂も、表現されていることとは裏腹にもしかしたら(まだ)二重生活を続けているのかもしれない。人間の表と裏の姿をいろんな側面から描き切ろうとした作者に拍手。
(2016年6月映画化予定)