無花果とムーン (角川文庫)

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 328
レビュー : 26
  • Amazon.co.jp ・本 (356ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041036235

作品紹介・あらすじ

18歳の少女・月夜の大好きなお兄ちゃんは、ある日目の前で突然死んでしまった。月夜はその後も兄の気配を感じるが、周りは誰も信じない。そんな中、街を訪れた流れ者の少年・密は兄と同じ顔をしていて……!?

感想・レビュー・書評

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  • あの日突然奈落の底に突き落とされた少女は、二度と聞けることのないまま喪われた想いに踠き苦しみ続けるしかありませんでした。信じることも涙を流すことすら許されないから、自分を守る為には一人になり月夜にただ君の名を呼ぶしかなかった。何度も何度も叫んで声が枯れて壊れようとも。誰にも言えず守りたかった真相は大切な君の想いでした。永遠の19歳。無様な泣き顔晒しても抱きしめてくれた人は、誰よりも貴方を愛している。決して諦めず離さなかった力強い手は、生きて大人になれよ!と伝えていました。

  • この人の書く女の子が好き。
    あの時こうしてなかったら、、
    のバージョンを読みたい。
    切ないな。お兄ちゃーーん。

    苺苺苺苺苺先輩けっこう好き。

  • 月夜の悲しさの川は奈落や家族の愛、それ以外の愛を感じて海へと流れて行った。
    それは忘れるのではなく落とし込んで浄化するような神聖さがある。
    世界のふちに立ち続けていた月夜はお兄ちゃんである奈落と居た日々が全てで輝いていた。
    お父さんの忘れることという一般論に奈落が忘れるなと叫ぶようにベルを鳴らして、
    ギリギリ世界のふちにいることでしか月夜は奈落と繋がれない姿が切ない。
    他人から見ると病んでいたとしても奈落と繋がれる世界のふちが月夜にとっては心地よい。
    血の繋がりの無い月夜は遠慮しないでいてもらうことでしか家族と繋がる術を知らない。
    だけど奈落とは兄妹以上の気持ちをお互いに持っていて、それが奈落の死ぬ原因になったと思って葛藤している。
    死者である奈落の声が月夜の本音をあぶり出し、自分でさえも語れない自分自身を露呈していく。
    奈落の月夜を死の世界に連れ去ってしまいたい思いと、生きて元気に暮らしていってほしい思いが葛藤しながら、絶対に来ない月夜との幸せな未来を想像する奈落が切ない。
    奈落のかっこよさがよかった。

  • 月、夏、そしてUFO
    好みのワードが並んでいたので購入

    フワフワと浮世離れした作風、文体で
    登場人物のセリフなどが間延びしているため
    抵抗を覚える人もいるかも
    全体を一言で表現するならルナティック、それに尽きると思う

    大切な人を喪った空洞を持て余し
    夏の熱気で蜃気楼のように揺らぐ世界の中で
    ひたひたと幻惑する月光に身を浴したときの
    18歳の心の内側

    読んでる最中は扱いに困ったその所作が
    綺麗に1つの箱におさまった、そんな読後感だった

    お兄ちゃん、の死の真相がもう
    初っ端からわかってしまったのは仕様だと思う
    それを月夜がどう自身で処理するのかを
    息を詰めて待つ緊張感もあったかも

  • ジャンルはSFかファンタジーですかね。
    恋愛ものでもありますが、BLっぽい内容も含んでいます。

    月夜は、父、上の兄・一郎、下の兄・奈落と暮らしていた。
    月夜は拾われた子だったが、四人は仲良しだった。

    「ずっと月夜に言いたかったことがあるんだ」と奈落に言われたが、その直後に奈落が倒れて、そのまま死んでしまう。
    葬式が済んでからも、月夜は奈落のことばかり考えていた。

    夏休みに入って、月夜の周りで不思議な現象が起こる。
    奈落に似たシルエットを見たり砂糖を入れた覚えはないのに紅茶が甘くなっていたりしていた。

    父親や一郎は「奈落のことを忘れろ」と言い、奈落の自転車のベルが鳴る音がしても「聞こえない」と言う。
    そして、月夜が一郎に放った「奈落が嫌いだったんだろう」という言葉がキッカケで、家族の仲が険悪になってしまった。

    一郎と喧嘩して以来、奈落のいる気配がしなくなったが、夢で会うことが出来た。
    月夜がずっと「あの世のふち」で呼び続けていたので、奈落は少しの間だけ「こっち」に帰ってこられるらしい。
    「明日の朝、UFOに乗って還ってくる」と言われた。

    翌朝、月夜はUFOを探しに行く。
    月夜の住む無花果町は、よくUFOが目撃されることで有名だった。

    お盆になると「無花果UFOフェスティバル」が開催されるが、祭りの準備は季節労働者がしていた。
    季節労働者は毎年、トレーラーハウスでやって来て、祭りが終わるまで滞在する。

    一台のトレーラーハウスがガス欠になって、月夜に「自転車を貸して欲しい」と頼んできた。
    トレーラーハウスに乗っていたのは、小柄な青年・約と奈落ソックリな青年・密だった。

    月夜以外は「密と奈落は似ていない」と言う。
    密は奈落とは性格や味の好みなどが違うが、それでも月夜に優しくしてくれる。
    そして、密といる時、奈落の声が聞こえた。

    密は月夜に「歳の割に子供のような反応をしているのは、何かを避けているからではないか」と指摘する。
    月夜は、本当に色恋について分からないと思う。

    「無花果UFOフェスティバル」の前夜祭が開催されて、月夜は密達のトレーラーハウスに招かれる。
    「自白剤」と称された飲み物を渡されて月夜は飲むと、密達に奈落が好きだったことを告白した。

    「自白剤」の勢いを得て月夜は家に帰ると、父や一郎に「奈落を殺した」と言った。
    奈落が死んだ日、月夜は苺のアイスを食べていたことになっていたが、実はアーモンドが入っているアイスだった。
    月夜のファーストキスの相手は、死んでしまった奈落だった。

    父や一郎は月夜を責めることなく、「奈落は死んだのだから忘れろ」といったことしか口にしない。
    月夜が「奈落を呼んだ」言っても信じてくれなかった。
    しまいに月夜は「死んでお詫びをする」と言って、自転車に飛び乗る。

    町に近付くと濃いピンクの霧が横切るが、次第に消えていった。
    奈落がよく吹いていた「スタンドバイミー」の口笛に導かれるように走ると、奈落の姿を見つける。

    自分がもう死んでいること、月夜のことを本当に好きだったこと、自分が死んだのは誰のせいでもないことを、奈落は月夜に告げる。
    奈落は思い残すことがなくなったので、「こっち」を離れようとする。

    月夜も「一緒に行く」と言えば、奈落は「腹ごしらえ」と言ってフランクフルトを買いに行った。
    しかし、戻ってきた時は奈落ではなくて密になっていた。

    月夜が奈落を探していると、誰も乗っていないのに走る自転車を見つけた。
    追い掛けると、自転車が崖からダイブしたので月夜も落ちた。

    しかし、月夜の腕を掴んで助けたのは、会えば必ず喧嘩になる相手・イチゴ先輩だった。
    父や一郎達も駆け付けて、月夜を引っ張り上げる。

    父や一郎は、月夜の悲しみ方が激しかったので怖かったらしい。
    「幽霊はいた」「これからは無理に奈落を忘れることはしない」と言ってくれた。
    月夜は「奈落はもうここにはいない」と悟った後、今まで泣けなかったのに心の底から泣いた。

    翌朝、月夜は約と密を見送りに行く。
    密の顔を見ると、奈落とは似ていなかった。
    二人にキスをしてお別れする。

    主人公の月夜は紫の瞳をしていて、牙のような歯を持っています。
    作中で月夜は人間なのか否かは語られていませんが、死者を呼びやすい体質なのかもしれません。

    「月夜は周りを振り回し過ぎだな」と思いました。
    月夜の友達にまきちゃんという女のコがいますが、彼女の気持ちが痛い程分かります。
    拾われた子という境遇は可哀想だと思いますが、いつも悲劇のヒロイン振られてはイライラが募りますよね。
    それでも、最後はお見舞いに来ていたようです。

    まきよりも、なみの方が関係修復に厳しそうです。
    なみちゃんはまきがキレていた時は宥めていたし、月夜が苦手なのに好きな本をオススメしていたのに。

    正直な話、月夜よりもイチゴ先輩の方が断然好きでした。
    凄く良いコじゃないですか。
    よく衝突はしていますが、月夜が卑屈になっているからイチゴ先輩が怒るんだと思います。

    月夜が密と喋っているところを見て、「気を付けろ」と言っています。
    月夜が落ちた時、最初に助けようとしたのはイチゴ先輩ですもんね。

    密と約に関しては、「えいえんにおしあわせに」としか言いようがありません。
    二人は男同士ですが、愛し合っています。
    当作のセクシー担当です。
    「ここまで二人のイチャイチャ振りを書かなくてもいいんじゃないか」と思ったくらいです。

    当作のキーパーソンは密ですが、私は約に惹かれました。
    月夜よりもヒロイン力があります。

    無理にこの二人を捻じ込まなくても話は進みそうですが、地元の人間でないからこそ孤立してしまった月夜が心を開けたのだと思います。
    何故、タイトルに無花果が入っているのかも、アダムとイヴのエピソードを聞けば納得です。

    月夜や奈落がぶっ飛んだキャラクターなのに対して、お父さんと一郎兄さんは常識的です。
    共に月夜を凄く心配していて優しいです。
    一郎兄ちゃんの気の回し方はやり過ぎな気もしますが。

    奈落は話がはじまってすぐに死んでしまいますが、存在感が一番あります。
    ラストで月夜を道連れにしなかったのは格好良かったです。
    ただ、本命の相手にキスをしたら死んだなんて、不謹慎ですがコントのようです。

  • 主人公が死んでしまった兄の気配やそっくりさんに振り回されてる! 頑張れ〜! っていう話と見せかけた主人公の周囲の人間が普通に真っ当であるからやっぱり主人公がひたすら周囲を振り回してる話だった。
    桜庭一樹の書く女だった。

  • 16/11/12
    酒井駒子さんの装画に惹かれて借りた本。桜庭さんの文章はわたしと相性が良くないみたいです。

    ・「生者が死者に対してできる唯一のことは、"忘れること” なんだよ」(P125)

  • 桜庭一樹さん!「砂糖菓子~」の時も思ったけど、読み終えた後の不思議な感じ(でも、爽やか)好きだな。最初は、月夜の幼い感じや変な一人称が鼻についたけど、後半は逆に、アンバランスな文章が凄く心に響いた。この人の書く人物、凄く魅力的。お父さんや、兄貴、お兄ちゃん、イチゴ先輩、密、約…みんな。桜庭さん、好きな作家さんに追加!

  • 旅行に持って行った本。

  • お兄ちゃん、なんで死んじゃったの…!?あたし、月夜は18歳のパープル・アイで「もらわれっ子」。誰よりも大好きなお兄ちゃんの奈落に目の前で死なれてから、あたしの存在は宙に浮いてしまった。そんな中、町で年に一度開かれる「無花果UFOフェスティバル」にやってきたのは、不思議な2人連れ男子の密と約。あたしにはどうしても、密がお兄ちゃんに見えて…。少女のかなしみと妄想が世界を塗り替える傑作長篇!

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著者プロフィール

桜庭 一樹(さくらば かずき)
1971年、島根県生まれの小説家。
1999年「夜空に、満点の星」で第1回ファミ通エンタテインメント大賞小説部門佳作を受賞しデビュー。
『赤朽葉家の伝説』で第60回日本推理作家協会賞(長編及び連作短編部門)、『私の男』で直木賞を受賞。他の代表作に『GOSICK -ゴシック-』『砂糖菓子の弾丸は撃ちぬけない』『赤朽葉家の伝説』などがある。
ゲームのノベライズやライトノベル作品や、山田桜丸名義でゲームシナリオを手がけるなど幅広く活躍している。

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