はだれ雪

著者 :
  • KADOKAWA/角川書店
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本棚登録 : 105
レビュー : 11
  • Amazon.co.jp ・本 (443ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041036341

作品紹介・あらすじ

諦めず、迷わず、信じた道を一筋に――

謎の刃傷事件を起こした浅野内匠頭。
彼が密かに残した”最期の言葉”とは。
言葉を聞いた勘解由の、秘めたる想いの行方は。

直木賞作家が描く、かつてない「忠臣蔵」!


元禄十四年(1701)十一月。
若くして扇野藩の馬廻り役・中川三郎兵衛の後家となった紗英【さえ】は、江戸からやってくる永井勘解由【ながいかげゆ】という人物の接待役兼監視役を命じられた。 
勘解由は旗本であり、幕府の目付役だったが、将軍・徳川綱吉の怒りにふれて扇野藩にお預けの身になったという。

この年、江戸城内で、播州赤穂の大名・浅野内匠頭が、高家筆頭、吉良上野介を斬りつける刃傷事件が起きていた。浅野内匠頭は理由を問われぬまま即日切腹。だが勘解由は、老中に切腹の見合わせを進言し、また切腹の直前、襖越しにひそかに浅野内匠頭の"最後の言葉"を聞いたという。この行いが将軍、徳川綱吉の知るところとなり、機嫌を損じたのだった。

雪が舞い散る中、屋敷に到着した勘解由を迎え入れた紗英は、役目を全うしようとするが――。

身分を隠し、勘解由の元を訪れる赤穂浪士。
勘解由のやさしさに惹かれてゆく紗英。
扇野藩に、静かに嵐が忍び寄る。

これまでにない視点から「忠臣蔵」の世界を描き、新たな感動を呼び起こす歴史時代長編!

≪熱き信念が胸を打つ、扇野藩シリーズ≫

感想・レビュー・書評

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  •  葉室流『忠臣蔵』である。
     しかも、主人公は女性で、メインとなるのは清冽な大人のラブストーリー。その背景に、おなじみの『忠臣蔵』の物語がからんでゆく。

     吉良上野介に斬りつけた浅野内匠頭に、事件直後に近づき、襖越しにその「最期の言葉」を聞いたとされる旗本・永井勘解由(かげゆ)。役目を超えたその勝手な行いは将軍綱吉の怒りを買い、勘解由は流人として扇野藩(架空の藩)の屋敷に幽閉の身となる。

     勘解由が誰にも明かさなかったという内匠頭の「最後の言葉」とは、どのようなものだったのか? なぜ、勘解由は危険を冒して内匠頭と言葉を交わそうとしたのか? そのミステリーがストーリーを牽引していく。

     勘解由の接待役兼監視役を藩から命じられ、共に暮らすことになるのが、若く美しい後家・紗英(さえ)。身の回りの世話をし、その高潔な人格に触れるうち、しだいに勘解由に心惹かれていく。

     だが、浅野家旧臣たちの間では少しずつ主君の仇討ちへの機運が高まり、内匠頭の「最期の言葉」を知ろうと勘解由に接近する者も出てくる。大石内蔵助、堀部安兵衛といったおなじみの面々も登場し、読者に強烈な印象を残す。

     仇討ちがなされたなら、勘解由もそれを使嗾したとして、身に災いがふりかかることもあり得る。果たして、勘解由と紗英の恋の行く末は――?

     ……と、いうような話。「ううむ、その手があったか!」と唸らされる、斬新な切り口の『忠臣蔵』アナザーストーリーである。面白くて一気読み。とくに紗英のヒロイン像がすこぶる魅力的だ。

  • 元禄14年3月、江戸城内松の廊下で赤穂藩主浅野内匠頭が高家筆頭吉良上野介へ刃傷に及んだ。
    「赤穂事件」。この事件を記録した史料は多いにもかかわらず、その原因は未だに謎のままである。

    そんな永遠の謎と普遍の義が、300年にわたってこの物語を生かし続けてきたのではないだろうか。

    本書は史実としての赤穂事件と実在の人物たちのはざまに、創作上の人物と架空の国を織り交ぜて夫婦愛の観点から描く異色の「忠臣蔵」。
    舞台となる架空の国、扇野藩は著者の既刊『さわらびの譜』『散り椿』などの舞台ともなっている。

    元禄14年11月、雪が舞い、水も氷る季節に扇野に流れつく主人公・永井勘解由と、彼を幽閉先の牢番として迎え入れる紗英。
    凍える季節に始まるふたりの冷えびえとした縁が、和歌や筝曲を通して次第に温かく心通うものに変化していく描写が素晴らしい。
    彼らの関係に大きく影を落とす赤穂事件と、旧赤穂藩士たちによる、吉良襲撃計画の存在。
    大石内蔵助たちがその宿願を果たしたとき、勘解由たちにはどのような運命が待っているのだろうか。

    それにしても人びとの生きざまはまるで雪のよう。潔く消えてゆくか、泥にまみれて春を待つか。
    勘解由も堀部安兵衛も、そして浅野内匠頭ももちろんイイ男だ。なかでも内蔵助には惚れてしまう。しかしイイ男とは去っていくものなのだ。溜息。

    KADOKAWAさんの文芸情報サイト『カドブン(https://kadobun.jp/)』にて、書評を書かせていただきました。
    https://kadobun.jp/reviews/439/6d98b982

  • 武士の風韻。
    かみしめてぇ。浸りながら。

    葉室麟という方にも耽る。
    忠臣蔵について、書かれたものが。
    いくつかあって。

    大石内蔵助という方の
    懐の深さにアタシもはまり。
    永井勘解由と紗英
    龍笛と琴

    浅野内匠頭最期のお言葉。

    討入りと重なる二人の行く末。
    別れが待っているんだろうな。
    と、読み進めていたのだけど。
    切腹の美学や。武士の生き様も…

    タイトルのはだれ雪
    雪‼︎も沁みます‼︎

    なんとしても、生きるに転換していった二人‼︎
    に、よかったぁ。カッコよかったぁ。

    和歌も複数登場‼︎な、感じで、ココも好き。
    内蔵助が於可留へ〜とふ人とかたること葉のなかりせねば身は武蔵野の露と答へん
    内蔵助の決意時〜照る月のまどかなるままにまどいする人の心の奥もくもらじ
    内蔵助辞世の句〜あら楽し思ひははるる身はすつる憂世の月にかかる雲なし
    そして、はだれ雪
    〜わが園の李の花か庭に降るはだれのいまだ残りたるかも
    〜はだれ雪あだにもあらで消えぬめり世にふるごとやもの憂かるらん

  • 忠臣蔵の出来事が背景で進む話。
    主人公は、浅野内匠頭の切腹直前の言葉を聞き、将軍の怒りにふれて扇野藩にお預けの身となった、幕府の目付役の永井勘解由(ながいかげゆ)と、
    扇野藩で勘解由の世話をする事になった、後家の紗英(さえ)

    最初から紗英の勘解由に対する恋心が漏れまくって、おいおいと思ったけど。
    全体的には、すがすがしい話で、ハッピーエンドで良かったと思う。

  • 浅野内匠頭の切腹直前に最後の言葉を聞いたことを咎められた永井勘解由は扇野藩にお預けの身になった.そこで接待役として仕えることになった紗英.赤穂藩残党による吉良上野介への復讐が取り沙汰される中での扇野藩の動き,堀部安兵衛や大石内蔵助と勘解由との接触など政治物語としても楽しめる.忠臣蔵を意外な面からの視点で捉えた好著だ.紗英の心の動きを綿密に捉えているところが良い.

  • 忠臣蔵のサイドストーリー。
    弥九郎さんが気の毒だ・・・。

  • 両親が不慮の自害を遂げた永井勘解由。同じように、無念や思いを抱えて切腹することとなった浅野内匠頭の最後の言葉を聞いたとされている。そんな彼を接待役として世話することになった紗英。主の最後の言葉を聞いたとされる勘解由を訪れる赤穂浪士の死を覚悟した生きざまが、勘解由と紗英の気持ちを変えていく。

    すごく期待を込めて読んだ初の葉室作品である「蜩の記」以来、やっぱりどうしても感じてしまう物足りなさ?あと一歩感。やっぱりある。

    なんだろー、これ。
    物語の設定はいつも素晴らしくてすごく興味を書きたてられるし、私好みの静かで強い男の人が出てくるのに、なぜかある後一歩感。

    でもこれまでで一番、前向きだったと思う。他の作品はどちらかというと「いかに生き抜くか」だったけど、この本は「いかに生きるか」だと思った。

  • なかなかのボリュームで読むのに時間がかかってしまった。忠臣蔵に関わる人のもう一つの物語。歴史に疎くて名前なんかも何度も前に戻って確認。でもどんどん面白くなってきてその後の紗英たちが幸せに暮らせていればいいなと。じんわりと温かくなっていくようなお話だった。

  • 葉室麟の忠臣蔵。さすがに読み応えあり。

  • 葉室さんが好きな女性像は紗英なのだろうなぁと思いました。葉室作品には凛とした女性が登場しますが、この作品も紗英の目線で語られるからか、存在感があります。『忠臣蔵』の赤穂浪士の仇討と絡んで、紗英の運命も大きく変わります。『はだれ雪』というタイトルがぴったりで、討ち入りのイメージ雪と重なって余韻を残します。葉室さんの本のタイトル、素敵だなぁといつも思います。

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著者プロフィール

葉室 麟(はむろ りん)
1951年1月25日 – 2017年12月23日
福岡県北九州市小倉生まれ。西南学院大学文学部外国語学科フランス語専攻卒業。地方紙記者、ラジオニュースデスク等を経て小説家に。2005年に短編「乾山晩愁」で第29回歴史文学賞受賞(のち単行本化)、2007年『銀漢の賦』で第14回松本清張賞受賞、2012年『蜩ノ記』で第146回直木賞受賞、2016年『鬼神の如く 黒田叛臣伝』で第20回司馬遼太郎賞受賞。
上記以外の代表作に、2018年9月に岡田准一主演で映画化される『散り椿』、第22回山本周五郎賞候補及び第141回直木賞候補だった『秋月記』がある。

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