天上の葦 下

著者 :
  • KADOKAWA
4.39
  • (71)
  • (49)
  • (12)
  • (3)
  • (0)
  • 本棚登録 :268
  • レビュー :47
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784041036372

作品紹介・あらすじ

失踪した公安警察官を追って、鑓水、修司、相馬の三人が辿り着いたのは瀬戸内海の離島だった。山頂に高射砲台跡の残る因習の島。そこでは、渋谷で老人が絶命した瞬間から、誰もが思いもよらないかたちで大きな歯車が回り始めていた。誰が敵で誰が味方なのか。あの日、この島で何が起こったのか。穏やかな島の営みの裏に隠された巧妙なトリックを暴いた時、あまりに痛ましい真実の扉が開かれる。
―君は君で、僕は僕で、最善を尽くさなければならない。
すべての思いを引き受け、鑓水たちは力を尽くして巨大な敵に立ち向かう。「犯罪者」「幻夏」(日本推理作家協会賞候補作)に続く待望の1800枚巨編!

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  • 久々の上下巻、期限内に読み切るかなと不安だったけど、全くの杞憂だった。登場人物が多くて混乱する場面はあったにせよ夢中で読んでしまった。とにかく面白い。一級のミステリー。

    この作品は面白いだけじゃなくて完全に社会派ミステリー。
    根底には作者の強い危機感が流れている。
    ここ数年、秘密保護法や共謀罪の成立をめぐってメディアで大きく取り上げられたりデモが繰り返し行われた。
    正直、私は実害を感じることもなく対岸の火事のような思いで、きちんと目を向けることもなかった。
    むしろ、なぜメディアは大騒ぎしているんだろうと。

    この本を読んで完全に考えが変わった。なるほど、そういうことだったのかと。
    小さな火のうちに消しておかないと取り返しのつかないことになる。太平洋戦争の時に日本で何が起こっていたのか。自由にものが言えない結果どうなってしまったのか。

    他のレビューでも書かれているとおり、いささか戦時下の描写が長すぎる気もする。しかしこのくらい詳細に描かないと伝わらないのかもしれない。
    作中にもあるように、戦争体験をしてきた人はみな高齢になっていて、直接話を聞く機会も格段に減っている。
    だからこそ今のうちに書いておかなければならないのだろう。

    その他の描写は全くだれることもなく手に汗握る展開の連続。それぞれのキャラクタの人間味あふれる個性が緻密に計算しつくされたプロットに相まって、どんどん引き込まれていった。
    最後の最後の手紙がこれまた泣かせるんだな・・・。
    この小説に心わしづかみですよ(笑)

    太田愛さんて初読みだったけど、なるほど脚本家なのねー。
    納得です。もちろん小説家としても一流ですね。
    東野圭吾なんかより断然面白いんじゃないの?
    この作品、シリーズものらしいので他のも全部読みますよ。
    あの主人公たちにまた会いたい!
    できることなら映像かも是非!

    でもどうしてこんな面白いのに本屋大賞ノミネートされてないの?不思議ー。

    • vilureefさん
      LUNAさん

      こんにちは。お返事遅くなりました。

      なんと、前作2作の方が面白いとは!
      これは読まねばなりません(*^^*)
      おすすめの順に読んでみたいと思います。

      私、東野圭吾は「白夜行」を超えるものがどうしても見つけられず、最近は全然読んでません(;'∀')
      ファンの多い宮部みゆきもどうも苦手で、ミステリーの大家とはどうも相性が悪いようです・・・。

      LUNAさんの本棚、ミステリーたくさんありますね♪
      参考にさせていただきます。
      2018/04/10
  • 公安の執拗な追跡を逃れ、今行われようとしている陰謀を暴こうと、3人組は協力者の助けを借りながら、縦横無尽の活躍をする。
    もはや絶体絶命だと思わせながらも、彼らはそんな危機を再三にわたって乗り越える。読者は、その活躍に爽快感を感じながら読み進むことができる。著者の筆の冴えは、作品ごとにグレードアップするようだ。
    しかし、この作品は、そんなハラハラドキドキの面白さばかりではない。
    この書は、著者が脚本家として、テレビあるいは報道の現場でそのアンテナに引っかかったある兆しを、小説の形式で書き下ろした、現代への警告の書として読むこともできるのではないだろうか。(むしろ、著者の意図はこちらか)
    「ひとつの国が危険な方向に舵を切る時、その兆しが端的に現れるのが報道です。報道が口を噤み始めた時はもう危ないのです」
    「しかし、いいですか、常に小さな火から始まるのです。そして闘えるのは、火が小さなうちだけなのです。・・・大火となればもはやなす術はない。もう誰にも、どうすることもできないのです」
    戦時下、大本営の報道に携わった元軍人が、後悔の念に駆られながら慙愧の思い出語りかける。
    そして我々の時代に目を向けた時、戦時下に類似した行為が、今どこかで進められていないだろうか。
    小説が時には、時代を先行してそれを暗示する。

  • 犯罪者シリーズ、3作目。

    修司、鑓水、相馬の三人がまた見たい!って、このシリーズ3作目を読んでみたのだが、まさかこんな、今、まさに!!のタイムリー過ぎな内容だとは思わなんだ。治安維持法など、戦時中の情報統制についてはある程度知識としてはあったものの、結局今までは表面でしか受け止めてなくて、軽くスルーしてしまっていたんじゃないかと胸にズシンと突き刺さるような思いに何度も駆られた。今と昔では社会背景も犯罪規模も違うし、テロ共謀罪=治安維持法だとはさすがに思わないけれど、一歩間違えば、それこそ本書に描かれる小さな火になってしまいそうで、リアルな恐怖を感じざるを得ない。テロ等共謀罪法案に対して賛成・反対関係なく、あの時代の真実の姿を皆が知っておく必要性を強く感じた。
    三人のキャラや彼らを取り巻く脇キャラも含めて凄く良いので、シリーズものとしても面白いのはもちろんだが、今作は、今の社会、政治状況がこれからの未来、どこにどう向かっていくのか見極めるのに必要な一冊になっていたように思う。

  • 「大本営発表」
    「公安警察」
    「学童疎開」
    「東京大空襲」
    「秘密保全法」
    興味深い負のイメージをもつ固有名詞の
    ついた言葉がタイトルについている
    「主な参考文献」が
    巻末にざっと並んでいる

    小説ですが
    お気楽に読み飛ばせるフィクションではない
    それでも
    ぞっとするほどの
    迫真性を帯びて物語が進んでいく

    また
    そのしたたかな登場人物たちが
    縦横無尽に動き回る
    その描写も秀逸

    つい先日(3/27日 各紙新聞)に
    今の政府の「放送事業の見直し」が
    載せられたばかりだ

    あくまでも
    小説の上だけの
    話にとどまって欲しい

    今、どうなのだろう…
    現実を憂いてしまう

  • 12月-4。4.5点。
    行方不明の公安刑事、戦時中の悲劇、マスコミへの介入。
    散らばったテーマを、圧倒的な筆力で一気読みさせる。
    スピード感あり、上下700ページ超をあっという間に読んだ。

    ラストの手紙は感涙。。

  • あの時、あの場所で、一人の老人が何もない空に向かって指差していたもの。
    真相とその背景が分かりただただ泣けた。

    あまりにも理不尽。何が真実で何を信じれば良いのか…。
    時代のせいだった、と簡単には済まされない。
    あの戦争での色々な立場の人が出てきたけれど、誰もが後悔の念を背負って生き続けている。
    思ったことを話し悲しい時に泣き可笑しい時に笑う、そんな当たり前の自由はこんなにも有り難いものなんだ。

    今回もキャラの違う3人の絶妙なやり取りにより、笑い怒り泣き等読み手の様々な感情を巧みに引き出す太田愛さんの文章力に唸った。
    回を追う毎にスケールも大きくなっていって、是非とも映画化してほしい。
    3人の各々の生い立ちも分かり内容的に深みも出たところで、次回作にも更に期待したい!

  • 「犯罪者」が修司の物語ならば、「幻夏」は相馬の物語。そして、この「天上の葦」は鑓水の物語。
    渋谷のスクランブル交差点で、老人が空を指さして、亡くなった。その時、老人が見ていたものが何だったのか?鑓水は因縁の相手から、依頼を受ける。
    一方、公安の刑事の動向を探っていた相馬だったが、鑓水の追っていた件と繋がり、いつしか公安から追われるようになり、老人と繋がりのあった「白狐」と言う人物を探しに、ある島にたどり着く…
    島での話がかなり長く、少し飽きてしまったが、老人たちが重い口を開いた時、それまでの描写の意味が理解出来た。
    奇しくも、この作品を読んでいたのが、お盆中で戦争について、深く考えていた時期で、太平洋戦争を語り継ぐ大事さ、戦争を「やめよう」と言えなかった時代背景の答えの一端が作品の中に見えた気がした。戦後72年経って、兵役経験者が90歳を超える時代。やっと口に出来る人の気持ちも伝わり、思わず涙が溢れた。
    サスペンスとしての魅力は前2作には劣るが、違う意味で、作者の力量を感じた一冊。

  •  島に公安の魔の手が迫り、いつあの3人が捕まってしまうのか?
    とハラハラ・ドキドキの臨場感は半端じゃなかった。
    でも、その後の白狐と正光との戦争時代の回顧は結構長く感じてしまった。
     それが、軍部によって実際の行われた卑劣な、人間のましてや、戦闘力の無い女性や子供の命を全く無視した結果の、痛ましすぎる都市空襲での莫大な被害者数。
     情報操作の恐ろしさがかなりのページ数を使用してしっかり書かれていた。
    大本営発表の内容が嘘八百なのは知っていましたが、大都市空襲の怖さを知りながら、それを軍需物資を作るためや、日本の負けている実態を知らせない為に隠ぺいし、その為に死ななくても良い多くの命が失われたことに対する罪はひどすぎる。
     同じようなことが起きないように、しっかり自分の目で情報をきちんととらえて考えられる力をつけていきたい。

  • 凄惨な戦争体験を持つお年寄り達が抱く決意に何度も気持ちが揺さぶられた。3人に関わった島の人達の心意気も熱くぐっと胸にきました。彼らが守ろうとしたもの、焦燥感、私達はもっと意識した方がいいのかもしれない。作品中にも何度も出てくる『忖度』という言葉、憲法改正や、共謀罪、政治とメディアのあり方など、読後考えさせられました。火は小さなうちに消さなくてはいけないという作家さんの切迫感が伝わる作品でした。

  • スゴイ。
    よく書ききったと拍手を送りたい。
    東京編→曳舟島編→戦時中編→対決編。
    特に戦時中編は鑓水たちを放っりっぱなしで読みながらツライところもあったけど、きっとこれを書きたかったんだろうなと思わせるスゴミがありました。
    前作までのテレビ的だったラストも、今回はなんと頭脳戦。

    本当に堪能させて頂きました。

全47件中 1 - 10件を表示

天上の葦 下のその他の作品

太田愛の作品

この本を読んでいる人は、こんな本も本棚に登録しています。

有効な左矢印 無効な左矢印
伊坂 幸太郎
米澤 穂信
三浦 しをん
東野 圭吾
奥田 英朗
西 加奈子
高野 和明
宮下 奈都
太田 愛
佐藤 正午
伊坂 幸太郎
東野 圭吾
東野 圭吾
吉田 修一
伊坂 幸太郎
塩田 武士
雫井 脩介
柚月 裕子
辻村 深月
ピエール ルメー...
横山 秀夫
柚月裕子
辻村 深月
有効な右矢印 無効な右矢印
ツイートする